ヴァイスの空(SF冒険漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ヴァイスの空』とは、あさりよしとおが原作、カサハラテツローが漫画を手掛けたSF漫画。学習研究社が出版していた小学生向け科学雑誌『4年の科学』で2002年4月より連載が開始された。2003年にコミックが出版されるが一度絶版し、2009年にジャイブ株式会社から新装版コミックが発売された。近未来の都市を舞台に、「失われた空を見る」という夢を持った一人の少年ヴァイスと、その仲間たちの冒険を描いた王道ともいえるストーリー展開は、多くの少年たちの心を動かした。

本作のヒロイン。黒髪で黒い服を身に付けた美しい少女。ヴァイスたち「白の市民」を管理する側の「黒の市民」という種族だが、彼に対して空は存在しないことを明かし、当初からやや協力的な姿勢で接していた。
ヴァイスに秘密を明かしたため「管理者法違反」の罪で投獄されていたが、自身を助けに現れ、一緒に来るよう説得しにきた彼の説得に心を動かされる。
その後は自身の仲間であるアトルムに捕らわれたネロとルージュを救出すべく、ヴァイスと一緒に宇宙空間へ飛び出していって彼に知恵を貸し、地球に帰還することを人類に発表する際にはヴァイスの横に並んで街頭ビジョンに出演するなど、最後まで仲間として共闘する。
ルージュ
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ルージュ。小さな女の子の姿だが、実は一番年上。
ガイアの中にある「農園」という名のジャングルにたった一人で暮らしていた小さな少女。「~でちゅ」などという赤ちゃん言葉で話す。
農園に迷い込んだヴァイスたちが縄張りを荒らしに来たと勘違いしたことから、奇妙なお面を被り、ローブに身を包んで襲い掛かってきたが、誤解が解けて意気投合し、自身の「秘密の場所」へ2人を案内するほど気を許すようになる。
その後エネルギー対策の一環として住処であるジャングルを潰されてしまい、なし崩し的に彼らと行動を共にするようになるが、仲間として共闘する中で友情が芽生え、物語終盤でロッソをアトルムの攻撃から庇い、「ずっと一人で暮らすのは寂しかったから、自分よりも仲間が死ぬことが辛い」という心境を吐露し、彼の腕の中で命を落とした。
ヴァイスたちやノワールたちとも違う「赤の市民」という種族で、命を落とさない限り、一定の年齢に達すると子供に戻って生き続けるという生態を持っているため、赤ちゃん言葉で話しているものの仲間たちの中では一番年上。
亡骸はヴァイスたちと共に地球に帰還し、ラストシーンで彼らはルージュの墓標の傍に集まり、空を見上げていた。
その他の重要人物
シュバルツ
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ネロの父。かつては黒の市民の幹部だったが、同胞であるアトルムが、ガイアを数万年維持する方法として提唱した「人類標本化計画」に異を唱え、自身のクローンであるネロを連れ出して姿を眩ませていた。
ネロが自力で食料調達をこなせるようになったことを機に、アトルムの計画を阻止するべく動き始めるもうまくいかず、諦めかけていたところでヴァイスの存在を知る。
その後は愚直なまでに夢を追うヴァイスに心を動かされて奮起し、密かに自身に賛同する仲間を集め、革命に備えていた。
ネロが出自不明であることを原因にアトルムに襲われた際に姿を表して窮地を救い、革命へ彼らを誘った重要人物。
アトルム
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黒の市民の幹部。白髪が特徴の40くらいの男性で、二人の取り巻きを連れている。ノワールを奪還するために乗り込んできたヴァイスたちに「隠しても仕方がない」と世界についての真実を明かした。
非常に優秀な科学者だが、数百年で使えなくなるガイアを長く保つためのエネルギー対策の一環として、白の市民たちを捕獲し、生きたまま固めてしまうという「人類標本化計画」を企てるなど、やや傲慢で過激な思想も目立つ。
シュバルツの計画を阻止するべく、人類標本化計画を実行しつつネロとルージュを拉致してガイアを離れるが、シュバルツたちの機転で人類標本化よりも優先される地球帰還プログラムを作動され、ガイアに戻ることもできなくなる末路を辿った。
『ヴァイスの空』の用語
ガイア
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死の星と化した地球を離れた人類の移住先である宇宙コロニーで、現在ヴァイスたちが生きている、宇宙空間に作られた巨大な人工建造物。
何層かの階層に分かれており、「白の市民」、「黒の市民」、「赤の市民」がそれぞれ暮らしている。
しかしこのガイアの存在は黒の民によって厳重に伏せられている。
地球に帰還するプログラムも搭載されており、宇宙船のように移動することが可能。
警察(ポリツァイ)
ガイアの秩序を守っている、警察のような姿をしたロボット。刑罰を与える「黒の警察」、工事を行う「黄の警察」など、役割ごとで色が異なる様子。
作中では特に「ルールを破ると厳罰を与えてくる存在」として黒の警察が恐れられており、ルール違反を見つけると腹部から触手のように伸ばした腕のようなもので捕縛をしてきたり、高圧電流の流れる十手のような武器で攻撃を加えたりしてくる。
黒の警察は黒の市民の背後についていたりと、ボディガードのような役割もしているようで、行方不明になっていたシュバルツは、黒の警察に変装してアトルムの背後に控え、監視していた。
白の市民(しろのしみん)
ガイアの市街地に住む人々で、作中ではヴァイスがここに属している。
自然な交配で繁殖し、一般的な人類としての扱いをされているが、世界についての情報の一切は伏せられている。
黒の市民による厳重な情報管理や厳しいルール下で生きている。
黒の市民(くろのしみん)
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黒の市民の複製室での一コマ。培養した細胞をこの部屋の人工子宮で育て、ここから黒の市民が誕生する。
ガイアの上層部に住む人類で、ノワールやシュバルツ、アトルムなどが属している。
そして後にネロもここに属することが判明した。
自身のクローンを作る形で種を存続してきており、高度な技術と知恵を持った、ガイアの管理を担っている人々。
ルールを守らない白の市民を取り締まるほか、ガイアについての情報を漏洩すれば同胞の黒の市民でも厳しく処罰する。
8人の黒の市民が集まり、自身の持つ制御棒を装置にセットすることで、ガイアが地球へ帰還するプログラムを作動させることができる。
赤の市民(あかのしみん)
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目次 - Contents
- 『ヴァイスの空』の概要
- 『ヴァイスの空』のあらすじ・ストーリー
- 空を見たい少年
- 「ノワール」との出会い
- ルージュの森と新たな仲間
- 世界の真実
- 陰謀と地球への帰還計画
- ヴァイスの見た空
- 『ヴァイスの空』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- ヴァイス
- ネロ
- ノワール
- ルージュ
- その他の重要人物
- シュバルツ
- アトルム
- 『ヴァイスの空』の用語
- ガイア
- 警察(ポリツァイ)
- 白の市民(しろのしみん)
- 黒の市民(くろのしみん)
- 赤の市民(あかのしみん)
- 人類標本化計画(じんるいひょうほんかけいかく)
- 『ヴァイスの空』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- ノワール「空なんて ないの」
- ルージュ「…はああ…あっ…たかい…」
- 生まれて初めて「空」を見るラストシーン
- 『ヴァイスの空』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 訳すとそれぞれ色の意味になるヴァイスたちの名前
- 風呂で爆睡して打ち合わせに4時間遅れたあさりよしとお
- もともと『学研』の読者だった作者たち