キズナイーバー(Kiznaiver)のネタバレ解説・考察まとめ

『キズナイーバー』とは、アニメ制作会社TRIGGERと脚本家の岡田麿里によるオリジナルアニメである。またそれを原作とした漫画も刊行されている。アニメは2016年4月から9月にかけて全12話放送された。「キズナイーバー」として選ばれた阿形勝平たちが相互に痛みを共有し、傷を背負いあいながら数々の試練を乗り越えて絆を深めていく青春群像劇である。独特な世界観やアニメーションの力強さが魅力であり、少年少女たちの葛藤や人間関係の複雑さが見どころの作品である。

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『キズナイーバー』の概要

『キズナイーバー』とは、アニメ制作会社TRIGGERと脚本家の岡田麿里によるオリジナルテレビアニメである。2016年の4月から9月までの間で全12話が放送された。
高校生の少年少女たちの思春期特有の葛藤や恋愛、成長を描いた青春群像劇である。
脚本は『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない』や『心が叫びたがってるんだ』を手がけた岡田麿里、アニメーション制作は『キルラキル』や『ダーリン・イン・ザ・フランキス』を手がけたTRIGGERが担当した。また監督は小林寛、キャラクター原案は漫画家の三輪士郎、音楽は『ハイキュー!!』や『僕のヒーローアカデミア』などの数々のアニメ音楽を作っている林ゆうきが務めるなど豪華な製作陣となっている。
彼岸ロージの作画で漫画化もしており『電撃マオウ』にて2016年から2017年まで連載され、全2巻刊行された。

高校生の阿形勝平(あがたかつひら)はある日突然、謎の少女・園崎法子(そのざきのりこ)により6人のクラスメイトたちと痛みを共有する仲間「キズナイーバー」に選ばれる。7人は本来なら仲良くなることはない別々のグループに属していたが、園崎から課せられるミッションをこなすために行動をともにするようになった。困難を一緒に乗り越えていくうちに友情は深まっていくが、仲間内で恋愛感情など新たな感情も芽生えるなど人間関係に悩むことになる。様々な葛藤や人間関係に悩みながらも成長していく勝平たちのひと夏を描く物語である。

『キズナイーバー』のあらすじ・ストーリー

7人の「キズナイーバー」

埋立地にある街・洲籠市(すごもりし)に住む男子高校生・阿形勝平(あがたかつひら)は、幼い頃から痛みを感じない体質である。その体質もあり自分の感情に鈍く無気力な性格で、殴られるなどのいじめを受けたりカツアゲされたりしても気にせず無為な日々を送っていた。
夏休み目前のある日、勝平にクラスメイトの園崎法子(そのざきのりこ)が接触してくる。話をしている時、園崎に階段の上から突き落とされて重傷を負い、運ばれた病院で目を覚ますと勝平のクラスメイト5人がいた。勝平の幼馴染でもある高城千鳥(たかしろちどり)を始め、天河一(てんがはじめ)、由多次人(ゆたつぐひと)、牧穂乃香(まきほのか)、新山仁子(にいやまにこ)も園崎の手引きで拉致されていたのである。
園崎はこの世界に争いが絶えないのは他者の痛みを知りようがないからだと言い、園崎の所属している組織「キズナの会」が、他者との痛みを共感するための「キズナシステム」という実験によって世界平和を実現させようとしていると話した。勝平たちの住む洲籠市はそのための実験都市として造られたのである。
そして勝平を含む6人は「キズナシステム」により痛みを等分して分け合う仲間「キズナイーバー」になったと告げられた。
「キズナイーバー」たちにはより絆を深めるため、園崎から様々なミッションが課せられることとなる。2つ目のミッションで、不登校のクラスメイト・日染芳春(ひそむよしはる)も「キズナイーバー」であることが発覚し、7人が傷の仲間としてミッションを乗り越えていくことになった。

絆の新たな境地

7人は園崎の指示で絆を深めるために合宿をすることになる。同じ空間で過ごすことで仲良くなることを目的として行われたが、「キズナの会」の会員で勝平たちのクラス担任でもある山田一直(やまだかずなお)によって肝試しのミッションが課せられた。そのミッションを通して7人は心の痛みも共有し始めていることに気づく。これまでの実験で心まで共有できた例はなく、勝平たちは新たな境地に到達しようとしていた。それは穂乃香を心の傷から救ったことで急激に加速する。
一緒に過ごす時間が長くなり、少しずつ心を開いてきた勝平たちだが、穂乃香だけは未だにみんなから一線引いている状態だった。穂乃香には中学の頃に「シャルル・ド・マッキング」という名前で一緒に漫画を描いていた親友を亡くした過去があり、深い傷となっていたのである。
実験の一環で園崎がその傷を刺激したことで穂乃香の心の傷を「キズナイーバー」全員が共有することになった。穂乃香の過去を知り、心の痛みが分かる勝平たちは穂乃香を救うために行動を起こす。親友の本当の気持ちを知り、穂乃香が過去を乗り越えた時、痛みだけではなく切なさなどの新たな感情を共有することができたのだった。

夏休みも終盤に差し掛かった頃、勝平たちの絆はさらに強力なものとなる。ある日勝平たちは「夏休みの補習」と称して山田に学校へ召集される。そこで山田は心の絆を深めるため「キズナイーバー」たちの間で芽生え始めている恋愛感情を刺激した。試みは成功したものの絆がより深く繋がったことで、7人は心の声までも共有してしまうようになる。心を曝け出した状態では一緒にいられないと感じ、夏休みが終わりキズナが解除されるまでは距離を置くことになってしまった。
しかし夏休みが終わりキズナが解除されても7人の関係はギクシャクしたままになっていた。

「キズナイーバー」の真実

「夏休みの補習」の際に園崎と話をした勝平は、幼い頃に「キズナイーバー」の実験に園崎や他の子どもたちと一緒に参加していたことを思い出した。そして、一定の期間しか保っていられないはずのキズナで園崎と未だに繋がっていたのである。
そんなことがあり、夏休みが明けて「キズナイーバー」の実験が終了しても勝平は園崎のことが気になっていた。
校内で園崎を探し回っている時、日染に声をかけられる。2人が話ているところへ仁子もやってきて、2人に対しキズナがなくなっても7人で友達でいたいという気持ちを伝えた。それなら友達になろうと勝平が提案したことで3人は改めて友達になったのである。その時勝平は園崎から強い痛みを感じ取る。そして幼い頃の記憶を頼りにかつての「キズナイーバー」の実験施設へ日染と仁子と共に向かった。
そこで「キズナの会」の会員で、勝平たちが通う高校のカウンセラーでもある漆原睦(うるしばらむつみ)と遭遇し、「キズナイーバー」の真実を告げられる。

漆原は山田と共にかつての「キズナイーバー」の実験で集められた子どもたちの世話係をしていたのだった。子どもたちの痛みをは等分に分けたはずが、後に全て園崎に集中してしまうようになり、実験は失敗に終わる。園崎が激痛で苦しむ一方で、他の子どもたちは痛覚とそれに伴う感情が徐々に希薄になっていった。その中でも最低限の感覚を保有できた子どもたちは解放され、勝平もその内の1人だったのである。感情を失い、生きていながらも人形のようになってしまったかつての仲間を見た勝平は、感情を露わにして涙を流すのだった。

真実を知った勝平は、「キズナイーバー」の仲間や園崎がどんな気持ちだったのかを考えるようになる。そしてみんなが感じているような辛さや悲しさ、怖さといったこれまで園崎やかつての仲間たちに押し付けていた感情を自分も感じられるようになりたいと「キズナイーバー」たちに伝えた。システムで繋がれるのではなく、友達として辛いことや悲しみ、痛みを自分も一緒に感じたいのだと話す。
それを聞いていた「キズナイーバー」たちは、キズナが解除されているはずなのに胸が苦しくなるのだった。キズナで繋がれていなくても、7人はお互いに共感できるようになっていたのである。
一方で園崎は市長から「キズナイーバー」の実験中止を告げられ、強行手段に出ていた。賛同者と共に洲籠市民に対して痛みを分け合おうと呼びかけ始めたのである。
幼い頃から寂しさを抱えていた園崎は、「キズナイーバー」の実験で勝平たちと繋がり、お互いを理解し合える喜びを知ったことで、痛みで繋がることこそが幸せなことなのだと信じ続けていた。その意思の強さからかつての実験で得た勝平たちとのキズナを保ち続けていたのである。
園崎が洲籠市民と痛みで繋がろうとしていることを知った勝平は、園崎の元へ向かう。痛みで繋がっているからこそ自分は1人ではないと実感でき、傷を手放すことを恐れていた園崎に対し、勝平はキズナがなくても離れないと伝えた。その言葉で園崎はキズナを手放すことができたのである。

『キズナイーバー』の登場人物・キャラクター

主要人物

阿形勝平(あがたかつひら)

CV:梶裕貴/古賀瑠(幼少期)
本作の主人公で洲籠市に住む高校生2年生。現代日本の七つの大罪では「愚鈍」とされている。
感情の起伏に乏しく、他人だけでなく自分のことにも無頓着で無気力な性格をしている。無頓着だが相手のことを思いやる優しさを持っている。
自分や他人に興味がないまま生きてきたが、キズナイーバーと繋がったことで他人の痛みや感情を知り、相手のことももっと知りたいと思うようになった。また徐々に感情表現も増えていく。
実は幼い頃にキズナイーバーの実験に参加しており、その時の実験失敗の影響で痛みや感情を失ってしまっていた。感情をなくす前までは明るく元気で優しい男の子だった。

園崎法子(そのざきのりこ)

CV:山村響/財前咲来(幼少期)
勝平のクラスメイトで、勝平や「キズナの会」の大人たちからは「のりちゃん」と呼ばれている。勝平たちを拉致して手術をし、キズナイーバーにした張本人である。
常に無表情で勝平以上に感情表現に乏しくクールな性格をしており、キズナイーバーたちに対して痛みを伴うような危険なミッションも平然と課す。
幼い頃から寂しさを抱えており、実験で他の子どもたちと痛みで繋がりお互いを理解し合えたことで幸せを感じていた。実験は失敗に終わってしまったが、幸せを得た経験から痛みで繋がることが他者と深く繋がり幸せなことなのだと信じ込むようになる。
勝平に、キズナがなくても離れないと伝えられたことで心を入れ替えることができた。

高城千鳥(たかしろちどり)

CV:寺崎裕香
勝平のクラスメイトであり幼馴染で、勝平のことを「かっちょん」と呼ぶ。
キズナイーバーのメンバーの1人で、現代日本の七つの大罪では「独善ウザ」とされている。
世話焼きで、自分のことに無頓着な勝平を気にかけご飯を作るなどしている。感情が乏しくなる前から勝平のことが好きで、キズナイーバーとしての最初のミッションで勝平のことが好きだったという秘密を打ち明ける。過去形にしているが、現在進行形で好きであり、勝平以外のキズナイーバー達にはバレバレだった。

天河一(てんがはじめ)

CV:前野智昭
勝平のクラスメイトで「キズナイーバー」の1人。現代日本の七つの大罪では「脳筋DQN」とされている。
頭よりも身体が先に動くタイプで、言動も粗暴だが情に厚く仲間思いである。
「狂犬」という名で恐れられているが、実は大の犬嫌いである。そのコンプレックスなため、近所で犬を飼っている家や犬の散歩の時間を調べあげ、秘密がバレないように徹底していた。
キズナイーバーとなって千鳥と知り合ってから、千鳥が勝平のことを好きだと分かっていつうつも好きになる。さらに千鳥と勝平の仲を取り持つことも自ら申し出た。

由多次人(ゆたつぐひと)

es3218
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@es3218

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