少女革命ウテナ 決闘曲まとめ(歌詞付き)
「世界を革命する力を!」でおなじみ少女革命ウテナ。斬新な世界観に衝撃を受ける、決闘シーンの挿入曲をまとめてみました。
円錐形絶対卵アルシブラ
哲学的存在
通俗奇術のグランギニョールの領域
吐息、溜息
青息、嘆息、鼻息
息の蒐集、息の貯蔵器、虫眼鏡
溜息、吐息
青息、嘆息、鼻息
溜息、吐息
青息、嘆息、鼻息
溜息、吐息
青息、嘆息、鼻息
溜息
ハハハー
一切合切エネルギーなし!
一切無駄なエネルギーなし!
絶対人 息する機械
絶対人 肉の人体模型
絶対人 ラッキョの分解
絶対人 超なる合成
アッアー 天体回転
アッアー 存在合成
新種の誕生か
人間の成れの果てか
どっちも コチコチ
こっちも ドキドキ
時打つハンマー
トントントントン
時行くボクが 戸をあける!
この決闘でいちばんこわかったのは、やはりビターチョコを持ったハニワでした。今回はきっと、机の上にチョコがのっているに違いない、と思って見ていたら、予想は半分当たったけど、まさかハニワが持っているとは思わなかったので、「このアニメやっぱり変だ…」と妙に感心した覚えがあります。石蕗が七実から抜き出した心の剣は2本。いろんな解釈をする人がいるんだろうけど、単純にカッコイイので、深くは追及しません。そしてこの曲ですが、すごく良くできた曲。黒薔薇編に使われた曲はかっこいいのが多いのだけれど、これに関しては、歌メロがとてもいいと思うのです。『溜息、吐息、青息、嘆息、鼻息~』のところでまずびっくりするでしょう、その次の展開でリズムが倍になって『絶対人~』というところでもういちどびっくりして、最後はどんどん音階をかけあがっていく、というもうほんとにキ○ガイ曲。もちろんいい意味でです。普通1曲にこれだけもりこまないと思います。それも3分ほどの曲に。素晴しいです。歌詞のほうは、じつはあまりわからないのです。これは予想ですが、曲のパワーにひっぱられて勢いで作った感じかもしれません。でもほんとにかっこいい、この曲。
幻燈蝶蛾十六世紀
いたはしや老の身の
手馴れし剣に
力こめしも
老いたる腕のあわれなる
覘は外れて太刀風に
よろめきまろぶ
老人よ!
唸る太刀風
トロイの城楼
燃ゆる頂上
雷火と砕け落ちければ
ビーラス暫く
耳聾ひたリ
見よ! 白頭の老爺!
斫らんと上げし
剣は空にとどまりて
ピーラス立縮む
ピーラスやがて敵意を復し
血汐したたる血刀を
老王めがけて打下す!
黒薔薇編、いや「ウテナ」全体の中でも、最高のエピソードの一つでしょう。最初に見たときは涙しました。なんといってもエンディングで、若葉が誰もいない部屋に戻ってきた時の表情には戦慄します。この決闘も、絶望的に悲しい決闘です。決闘広場にやってきた若葉が『薔薇の花嫁に死を!』と言うとき、もはやそれは象徴としての薔薇の花嫁ではなく、姫宮アンシーという個人に向けられた、嫉妬と苛立ちにみちみちた言葉となって響きわたります。ウテナは親友の若葉には剣を向けられないと言い、素手で若葉の黒薔薇を散らしますが、そのときに若葉の目から流れるひとすじの涙は何を語っているのでしょうか。すべてを忘れたいと願う心なのか、やはり「特別な存在」には勝てないのだという悔しさとあきらめなのでしょうか。この曲は、決闘曲のなかでも珍しくスローな曲です。大部分の決闘曲が終始攻撃的なのに対して、この曲には悲劇的な響きがあります。歌詞が素晴しい。一瞬の情景を見事に捉えた名作だと思います。歌詞の内容と決闘の内容との関連はとくに見い出せませんが、雰囲気的にはぴったりです。最後に、若葉が着ている決闘服、とてもかっこいいです。
成熟年齢透明期
Vanish! Fade away! Melt away!
消えうせろ!
ありとあらゆるものたちよ
Vanish! Fade away! Melt away!
消えうせろ!
インスタントのニセモノたちよ
望みに裏切られ
希望に復讐される
こんな時代はもうウンザリだ
ボクは逃げる
みんな消えろ!
ボクはもう
何も欲しくない!
無人のサイドカーにまたがって
空想旅行三千里
地下鉄、高速、飛行場
ゆくぞ 時速百キロの
怪傑、疾風、逃亡者
曲も詞も好きです。イントロのギターなんて、かっこいいですよ。ダサかっこいいとかいうのじゃなくて、本気感とワザと感の間で鳴っていてよろしいです。このエピソードでの決闘相手、苑田茎子のことを、決闘に勝ってからウテナは「ボクはこの子の名前も知らなかった。」と言います。このあたりまでくると、黒薔薇編もそろそろマンネリ化していて、このエピソードじたいもなんとなく最初から展開が読めるような感じになっているので、そんなに印象的な話ではないのですが、ウテナのこの台詞がとても物悲しく聞こえたものです。しかし鳳暁生編に進んで、七実をめぐる2回のエピソードを見たあとでは、この第21話は重要に思えてきました。伏線になっているというと、ちょっと違う気もするけれど、鳳暁生編でボロボロになってしまう七実をさらに追い込むのが苑田茎子だったりするので、やっぱりこのエピソードはおもしろい。ナナミストとしては敵ですが。ただ、この曲の歌詞の内容は、鳳暁生編、第32話での七実の決闘にこそぴったりだったのではと思います。『無人のサイドカーにまたがって/空想旅行三千里』というフレーズは、まるでアキオカーでのドライヴのよう。たしか、冬芽がバイク、西園寺がそのサイドカー、っていう絵がどこかで出てきましたね。
ワタシ空想生命体
暗黒灼熱 誕生人形
名付けられて人道説
世界あやつる 単一存在
他は空想人形術
暗黒零下 誕生生物
関係づけられ人道説
天然舞台に 単元存在
成るは空想生物術
言葉誕生出会いそして迷い
知識誕生出会いそして現ろ
ああ、どこよここはいつよわたし
呪文、まじない、神秘、祈り、わたし
舞台運命魔術鏡
満月 謎の 変幻自在 わたし果てなる空想生命体
満月 謎の 変幻自在 わたし果てなる空想運命体
時を求めて 安息なしの
生きつづける 空洞形態
土地を求めて 手なく足なく
在りつづける ワタシ 透明無形 かすかに吐息
ハッハッハッハ
黒薔薇編のラストを飾るにふさわしい決闘、そして決闘曲。歌詞の内容と決闘の内容が非常によく合っていると思います。たとえば『時を求めて 安息なしの/生きつづける 空洞形態』なんて、まさに御影草時のことじゃありませんか。草時は永遠を手に入れたかったわけだけど、永遠というのはまさに連続し続ける時のことであって、そのために時を止めている草時という人は、ここでパラドックスにおちいってしまったわけですね。『世界あやつる 単一存在/他は空想人形術』という気分でいたのが、ウテナとの決闘によって『ああ、ここはどこよいつよわたし』というふうになってしまった。「草時=ミニ暁生説」をうちたてたわたしにとっては、(こちらを参照)ひときわ大事な曲のように思えます。あと、『人動説』という言葉がおもしろいですね。造語でしょうか。天動説、地動説よりも、世の中を説明するには、人動説がぴったりかもしれません。
わたし万物百不思議
顔の賦 首の賦 髪の賦
爪の賦 胴の賦
両手の賦 両足の賦
全身の賦
つまり紋章
人体紋章学
鏡の中のその姿
複雑微妙な有職(ゆうそく)文様
黒地白斑 宮廷作法
白地黒斑 楯形模様
人が着かざる難解象徴
バロック技巧の歴史の芸術
火蜥蜴(サラマンドラ)
ドラゴン 豪猪(やまあらし)
聖体 秘蹟
信仰 美徳
閉じ込められた
薔薇の奇蹟
人獣花
真珠 宝石
人間 年齢
花菱十字架
金・銀・紫・緑・赤・青・黒
金・銀・紫・緑・赤・青・黒
アルハンブラ
イスパハン
カセルタ
リンダーホフ
シュヴァル
ボマルツォ
フローラ
マティアス
ヴェルサイユ
オベリスク
ザーメック
イゾラ・ベッラ
アンフィテアトロ
オルフェウスグロッタ
ノイシュヴァ・シュタイン
サンタ・マリア・デラ・コンチェツィオーネ
洞窟 彫像 噴水 庭園 宮殿
青銅 壁画 架空 古城 別荘
いたるところで
生きる 生きてる
自分の姿
遠くに近くに
わたし百不思議
近くで遠くで
わたし百不思議
万物ワタシ百不思議
世界ワタシ百不思議
樹璃のエピソードは、どれもなんだかぐっときますね。もしかしたら、生徒会の中でもいちばん人間ぽいというか、感情移入しやすいキャラなのかもしれません。髪形その他は普通ぽくないですけど。「ウテナ」のなかには、3種類の「届かぬ思い」---七実と冬芽、幹と梢、樹璃と枝織---が出てきます。このなかで一番つらいのはやっぱり樹璃なんでしょうね。ほかの2組は兄弟だから、男と女にはなれなくても、血のつながりとか共有するものの多さとかでもともと特別な関係にいられるわけです。でも樹璃と枝織はそうではない。おまけにこのエピソードには土谷瑠果までからんでくる。だからここで瑠果と樹璃というもうひとつの「届かぬ思い」ができてしまって、ここはもう暁生さんだのみになるしかないわけですね。樹璃が出てくると、ウテナは全くかすんでしまうような印象をうけます。やはり大人の女とまだまだお子様の違いなのでしょうか。といってもウテナと樹璃はそんなに年はかわらないはずだけど。 さて、この曲ですが、歌詞の中に非常に固有名詞が多い。最初に『顔の賦 首の賦~』と出てきて、『つまり紋章/人体紋章学』とつながっていくのですが、これがどうしてつながるのかというと、それはフランス語の"blason"という言葉にあります。この"blason"(ブラゾン)は「紋章」の意味なのですが、 もうひとつ、16世紀に流行した詩の呼び方でもあるのです。澁澤龍彦氏若かりしころの短編に「撲滅の賦」というのがあり、「賦」を「ブラゾン」と読ませているので、ここからつながるのでしょうか。この「ブラゾン」は、辞書には「褒貶詩(ほうへんし)」という難しい言葉でのっていますが、どのような詩なのかというと、人体の一部を誉めたたえたり、いろんな比喩を使って人物や事物をほめたり皮肉ったりするといったものでした。そこを理解すると、この曲がどうしてこんなに固有名詞いっぱいなのかが何となくわかってきませんか?そうです、これは「わたし」についてのブラゾン、超ナルシスティックな歌だったのです!そこが樹璃にぴったりだったのか??
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