トランセンデンス(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『トランセンデンス』とは、2014年のイギリス・中国・アメリカ合衆国で製作されたSF・サスペンス映画である。
製作総指揮はダークナイトシリーズのクリストファー・ノーラン。メガホンを取るのは『インセプション』を世に送り込んだウォーリー・フィスター。
出演はジョニー・デップ、レベッカ・ホール、ポール・ベタニー、モーガン・フリーマン。
人工知能と化した科学者の姿を通して、過度に高度化した科学技術がもたらす危機を描く。

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物質をナノメートルの領域、すなわち原子や分子のスケールにおいて、自在に制御する技術のこと。

ナノマシン

0.1 - 100 nmサイズの機械装置を意味する概念。

『トランセンデンス』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

丁寧に創り込まれた大人な映画

『インセプション』のような物語を期待していると少し肩透かしをくらうかもしれない。というのも、SFというジャンルは共通しているものの、この映画はどちらかというと地味な、ある一つの可能性を深く掘り下げていくような映画だからである。
派手な演出や奇抜な発想はなく、終始落ち着いたトーンで未来の世界を描いている。SF、サスペンス、ラブストーリー。これらの1つでも駄目な場合は評価が低くなってしまうかもしれない。

映画全体を通して分かるのは、とにかく1つ1つのシーンを丁寧に描写していこうという意志だ。視聴者を置いていくようなハイスピードな展開はなく、順を追って世界の変革を描いている。途中時系列は飛ぶが、そのタイミングも絶妙。この時代で描くべきことはもうないと判断したことがよくわかる。馬鹿丁寧に描くだけでは冗長な展開になるだけだったところが、時系列を一気に動かしたのは成功だったと言える。

また、俳優陣はさすがというべき演技力である。表情まできちんと役に入りきっていて、とかく停滞しがちなストーリー展開に刺激を与えてくれる。特に主演のジョニー・デップは淡々とした物言いの中に様々な感情を内包させる演技が抜群だ。

広げられるところをあえて広げない絶妙な塩梅

この手の話は広げようと思えばどこまでも風呂敷を広げることができる。しかしこの映画はあえてそこまで話を広げなかった。フォーカスを当てるのはあくまで世界が一人の科学者の手によって支配されるかされないかの、その部分。下手な映画だと、ここであえて世界を支配させ、レジスタンスが奮闘して、という展開を続けたりするものだが、監督の手腕はさすが。ギリギリのところで風呂敷を畳み始めた。

世界が支配されるという描写は確かにあり、事実小さな村でそれは行われていた。クライマックスはその支配が世界に及ぶかどうかという部分になる。
結局、最後には「愛は世界を救う」的なエンドになるのだが、序盤からの丁寧な描写がここに活きる。死んでしまった夫を懸命に生き返らせようとする妻の姿。それがなければ、ラストの説得力は皆無になってしまう。壮大なラブストーリー。この映画はそんな見方もできるかもしれない。

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@keeper

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