デス・ビリヤード/デス・パレードのネタバレ解説・考察まとめ

『デス・パレード』とは、監督・脚本は立川譲、アニメーション制作はマッドハウスよるアニメ映画『デス・ビリヤード』のテレビアニメ版作品である。映画は2013年に公開され、アニメは2015年に放送された。舞台は「クイーン・デキム」という謎のバーで、バーテンダーのデキムが客としてやってくる死者たちに命懸けのゲームをさせ、彼らの生き様や心の闇を見て魂を裁定するストーリーである。
人間の感情が鮮やかに細かく映し出され、見る人の心を揺さぶる作品となっている。

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『デス・ビリヤード』『デス・パレード』の概要

『デス・パレード』とは、監督・脚本は立川譲、アニメーション制作はマッドハウスよるアニメ映画『デス・ビリヤード』のテレビアニメ版作品である。映画は2013年3月2日に公開され、アニメは2015年1月から3月の間で放送された。
若手アニメーターの人材育成プロジェクトである「アニメミライ2013」の1作として『デス・ビリヤード』が制作され、その後『デス・パレード』とタイトルを変更しテレビアニメ版として放送される。
舞台は「クイーン・デキム」という謎のバーで、バーテンダーのデキムが客としてやってくる死者たちに命懸けのゲームをさせ、彼らの生き様や心の闇を見て魂を裁定するストーリーである。
人間の感情が鮮やかに細かく映し出され、見る人の心を揺さぶるストーリーや独特な世界観、繊細な演出などが魅力である。また人間にとって生きる意味や死とは何かを考えさせられる作品となっている。

『デス・ビリヤード』のあらすじ・ストーリー

来店

謎のバー「クイーン・デキム」に1人の老人がやってくる。老人は黒髪の女に迎えられバーの中へ入って行った。バーにはすでに男が1人座っており、カウンターにはバーテンダーが立っている。老人が男性の隣に座ると、バーテンダーが2人の客に対してこのバーに来る前の記憶はあるかと尋ねた。男は仕事から帰って家で彼女に会ったところまでは覚えており、老人はいつものように縁側で漬物を食べながらビールを飲んでいたという。
それだけ聞いてバーテンダーは、2人の置かれている状況について、ここがどこであるかは教えられないこと、2人にはゲームを行ってもらうこと、ゲームの内容はルーレットで決めてもらうこと、ゲームは命を懸けてもらうこと、ゲームが終わるまではここから出られないことを説明した。
突然のことで納得のいかない男は、ゲームしないでいる場合はどうなるのかバーテンダーに尋ねる。バーテンダーはあまりお勧めしないと言いながら、バーカウンターの奥の部屋を見せた。暗い部屋の中には人間のようなものがいくつもぶら下がっていた。それを見た老人はすぐにルーレットを回し、ゲームはビリヤードに決定する。
ビリヤードのルールはエイトボールだが玉には数字は書いておらず、代わりに男と老人の体の器官を模した図柄が記載されていた。淡々とルールを説明し終わった後、器官の図柄は2人の心拍数や血圧、その状態をも連動していると話す。

ゲーム開始

訳も分からないままゲームがスタートしたが、男は初手から玉を入れ続け順調に進めていく。学生時代に好きだった女の子がビリヤードが上手く、自分も上手くなるために何度もビリヤード場に通っていたという。最近その彼女とケンカしてしまいここから出て謝りたいと言い、老人に対して遠慮はしないと宣言した。
男のターンが終わり老人のターンになると、昔ビリヤードの経験がある老人は一度に2球入れるなど次々と男の玉を落としていく。男は玉が落とされる度に体に違和感を覚えていた。気づけば男の玉は残り2つになっており、男の中で不安が募っていく。
焦る男をよそに老人は自分の話を始め、自分の妻の作るぬか漬けがビールやウイスキーにも合う優れもので、人生の最後にそれを食べると決めており、そのため自分も遠慮しないと男に宣言した。

老人が失敗し、ようやく男のターンが回ってくる。ゲーム前、玉に自分の体の臓器が描いてあり、その玉が落とされても痛みが伴うわけではないと説明されていたが、男はどうしても信じられなかった。確かなことは、今度自分がミスをすれば老人に全て落とされてしまうということであり、男はかなり緊張状態に陥っていた。
そして玉が臓器と連動している可能性を信じて、老人の心臓の絵が描いてある玉を狙う。しかし失敗し、手玉は残っている男の玉が両方とも入れられる位置になってしまった。男は勘弁してくれ、まだ死にたくないと老人にすがるが、老人はゲームに負けても死ぬとは言われていないと言い続けようとする。
男はバーテンダーにゲームに負けたらどうなるか詰めるが、それには答えられないと言われてしまった。
明らかな実力の差に不公平だと言う男に、バーテンダーは冷たい目をして生きるということは常に不公平なことだと告げる。
老人は男に謝りつつ最後の玉を入れた。その瞬間男は人生の記憶を思い出す。そして負けて殺されるぐらいならと、キューを掴んで老人に殴りかかった。しかし老人は意外にも軽い身のこなしとキューさばきで男を倒してしまう。その瞬間に老人もこれまでの人生の記憶が蘇ってきた。男はまだ諦めておらず、老人に体当たりしてバーにある水槽にぶつけ老人は意識を失ってしまう。呼んでも老人が返事をしないため、男は老人を殺してしまったとうろたえ、もう終わりだと泣き叫んだ。
ゲームの相手が死んでしまった場合はどうなるのかとバーテンダーに尋ねると、ゲームは続いていてエイトボールを入れた人が勝ちであり、暴力も禁止されていないため続行しても構わないと言う。
男はあの状況なら負けたら殺される、殺されるぐらいなら殺すしかないと誰でも考えるし仕方がなかったのだと頭の中で言い聞かせながらエイトボールを入れ、ゲームを終わらせた。

裁定

ゲームが終了すると、男の後ろで老人が立ち上がる。死んだはずの老人に怯える男に対し、老人は久しぶりにビリヤードで体を動かせて楽しかったと感謝を述べた。さらに男に殴られたことで生前自分がしばらく寝たきりだったことを思い出す。そしてそれを聞いた男も、浮気をして彼女に復讐として刺されて死んだことを思い出したのだった。
ゲームも終了し、バーテンダーは2人に対して死後人間は基本的に天国か地獄へ送られることや、同時刻に死んだ人間のみ「クイーン・デキム」に招く決まりがあることを説明する。
そして自分は天国か地獄かを決める裁定者であり、判別のためにゲームを行うのだと伝えた。
男は自分が地獄へ行くかもしれないという不安でいっぱいになっており、バーテンダーに詰め寄るが、糸のようなものですぐに拘束される。すると、男は人間は生まれる国や時代、親、場所、様々なもので生まれた時から平等ではなく、それでも生きているのだと言った。そうして社会や人間と関わってきた結果が人生なのであり、それをどうして平等に判断できるのだと泣き叫ぶのだった。
バーテンダーは、自分は生きていた経験はないが、言っている意味はよく分かると言ってお疲れ様でしたと男を抱きしめたのである。
そうして最後に男は天国行きの、老人は地獄行きのエレベーターに乗りバーを後にした。

『デス・パレード』のあらすじ・ストーリー

「クイーン・デキム」

人は死後、裁定者による魂の裁定を受けて天国か地獄へ送られる。天国は別の人間への転生、地獄は虚無で死者の魂は失われ深い闇に落ちていく。
謎のバー「クイーン・デキム」は死者の魂の裁定所として存在し、バーテンダーのデキムによってバーにやってきた人間は制定されるのだった。
バーに来るのは基本2人1組で、2人は命を懸けたゲームを行う。裁定者は事前に頭の中に送られる人間の生前の記憶と、ゲームによって引き出される人間の本性とも言える心の闇を元に裁定を下すのだった。デキムの他にも何人もの裁定者が存在し、それぞれのバーで同じように裁定を行っている。

ある日、死者の1人として黒髪の女が「クイーン・デキム」にやってくる。死者は生前の記憶や自分が死んでいるという自覚がないはずだが、女は記憶はないが自分が死んだことを覚えていた。そのため命を懸けたゲームに誘導することができず、一度記憶を消して裁定の期限を延ばすことになる。そうして女は「クイーン・デキム」でデキムの裁定の手伝いをすることになった。

死者はゲームで負けたら死ぬかもしれないという不安と恐怖の中でプレイする。裁定者はより極限状態にして追い込み人間の心の闇を引き出すために、ゲーム中に特殊な装置を使ってゲームを妨害することがあった。生きたことも死んだこともない人形である裁定者にとって、極限状態の時に出る人間の闇こそが判断の材料なのである。
そんなやり方で行われる裁定をデキムの横で見ていた黒髪の女は、無理やり心の闇を引き出しているだけだと憤りを感じていた。デキムは裁定には必要なことなのだと言い、女の考えがあまり理解できていない様子である。しかしそれでもデキムは生を全うした人間のことを尊敬しており、人間の感情を理解しようとしているのだった。

ノーナの計画

デキムの上役であり、裁定者を管理しているノーナという裁定者がいる。ノーナは裁定者だが、死んだこともない人形の自分たちが死んだ人間を裁定することに疑問を抱いていた。
そして死者の記憶を編集する情報部のクイーンや死者を裁定者たちに振り分ける整理係のカストラに協力を得て、人間と同じような感情を持つ裁定者を生み出そうと考える。
ノーナがその可能性を見出していたのがデキムだった。デキムは、人間を尊敬していたり人間の考えを気にしたりと、裁定をただの役割としてこなしている他の裁定者とは違っていたのである。
感情を芽生えさせるため、ノーナは黒髪の女を裁定の時が来るまでデキムの手伝いとして行動を共にさせることにした。結果、女の考えや行動が少しずつデキムに影響を与えていく。

ある日、ノーナはカストラに頼み殺人を犯した人間をデキムに送らせた。本来、人を殺した人間は専門の裁定者に送られることになっているが、無理を言ってデキムに送ってもらったのである。実は黒髪の女の裁定の期限が迫っており、デキムに感情を芽生えさせるのに時間がなくなってきたのだった。
デキムの元に送られた人間は2人とも人を殺していた。1人は辰巳(たつみ)という刑事で妻を殺され、もう1人は島田(しまだ)という青年で、妹をストーカーに襲われた。その復讐のために2人は人を殺したのである。
黒髪の女は2人の残酷な過去を知ってゲームを中断するようデキムを諭すが、デキムは2人の心の闇を引き出すようゲームを進めていった。
復讐を果たした辰巳は、その後他の被害者の復讐のために生きていくようになった。その被害者リストには島田の妹も入っていたが、島田の妹が襲われていた時、辰巳はただ観察していただけだったのである。
島田はその事実に驚愕し激怒するが、辰巳は最後まで確認しないと復讐できないと淡々と話した。ゲームは島田の勝ちで終了し、黒髪の女が再び裁定を終わるようデキムを止めるが、デキムは最後まで2人の行動を確認しなければ裁定できないと無表情で言う。
そして辰巳への殺意が湧いている島田に対し、ナイフと辰巳の内臓を模したメダルを差し出した。黒髪の女が必死で島田を止めて一度は思いとどまったが、辰巳に煽られ結局島田は理性を失い、思うままに何度も刺し続けた。
黒髪の女は今回の裁定もこれまでの裁定も、デキムのやっていることは人の闇を無理やり引き出して、無表情で見て分かった気になっているだけだと責める。そしてそれは裁定などではないと怒りをぶつけた。感情がない人形であるはずのデキムは、女のその言葉に動揺し、苦しそうに胸を押さえていた。

感情を持つ裁定者

黒髪の女の言葉で、裁定の手段に疑問を持つようになったデキムはノーナに会いに行く。そして裁定に必要とされている極限状態は、人間の心の闇を引き出すのではなく作り出すものなのではないかと話し、自分はもう裁定できないと伝えた。
しかしノーナは黒髪の女の裁定期限が迫っていると言う。初めて女が「クイーン・デキム」に来た時、デキムは自ら女の裁定は自分にやらせてほしいと頼んでいたのだった。
デキムはその後、人間の記憶を受け取らず、極限状態も作らずに裁定することに決めた。
黒髪の女と2人で行う最後の裁定では、デキムと女もゲームに参加する。ゲームを進める中で女は、名前が知幸(ちゆき)であることや母との思い出などの記憶を完全に思い出した。
裁定の後、デキムは改めてこれまでの裁定方法ではダメだと考える。裁定は人間に寄り添って行わなければならず、そのためには人間の感情を知る必要があると言い、知幸に全てを見せてほしいとお願いした。

知幸は自分の死に至った過去を話す。家族や友人はどれだけ大切であっても他人であり、人と人は分かり合えないと感じ、辛くなって自ら命を絶ったのだった。
話を聞いたデキムは、分かり合えないとしても知幸の感情を知りたいと思うことは間違いなのかと尋ね、自分は知幸に出会えて良かったと伝える。

その後デキムは知幸のことをより知るため、知幸が死んで3ヶ月が経過した家へ彼女を連れて行く。そこで知幸が自殺したことに対して、気持ちを分かってあげられなかった後悔と知幸に会いたいという気持ちで泣く母親を知幸に見せた。そして、誰か1人の命と引き換えに知幸が生き返ることができると伝え、特殊な装置を渡す。
知幸は母に会いたい、会って謝りたいと泣くが、これまでの「クイーン・デキム」でのことを思い出してボタンを押すことはなかった。自分には関係ない人でも自分と同じように誰かが誰かのことを思っていると言う。それでも生き返って母と話がしたいと苦しむ知幸を見て、デキムは悲しみの涙を流した。
実はその場所はデキムが知幸の記憶を元に作ったものだったのである。知幸の感情を理解したくて騙すような方法しかできなかったと泣いて謝るデキムを知幸は抱きしめた。
その後ついにデキムは知幸に裁定を下す。見送りの時、デキムは知幸と過ごした時間を思い出しており、その顔には笑顔が浮かんでいた。

『デス・ビリヤード』『デス・パレード』の登場人物・キャラクター

「クイーン・デキム」

バーテンダー(『デス・ビリヤード』)/デキム(『デス・パレード』)

CV:前野智昭
ノーナが担当するタワーの15階にあるバー「クイーン・デキム」のバーテンダー。
感情の起伏がほとんどなく、無表情で淡々と話す。
人形であるために自分が生死を経験していないこともあり、生を全うした人間のことを尊敬している。また裁定者であることに誇りを持っており、バーにやってくる客への敬意も忘れない。
これまで自分が裁定してきた人間の魂が抜けて人形になった身体は全て引き取り、保管している。裁定者は一定の期間を過ぎると人間の記憶を削除されるように作られているが、人間の生の証がなくなったことのようになるのが嫌で、形として残しているのだった。

糸のようなものを操る能力を持っている。これを使い暴れる客を捕えたり人を運んだり、リアルな世界を作り出すこともできる。

知幸と過ごして彼女の言動に触れるうちに、裁定の方法などに疑問を持つようになる。やがて裁定は人間に寄り添って行うべきだと考え、裁定する人間の記憶を受け取ることと極限状態を作り出すことも止めた。
感情がなく常に無表情だったが、最終的には知幸の感情に触れて涙を流し、笑顔まで見せるようになった。

黒髪の女/知幸(ちゆき)(『デス・パレード』)

CV:瀬戸麻沙美
「クイーン・デキム」でデキムの裁定の手伝いをしていた謎の女。
バーには客としてやってきたが、何かの手違いで自分が死んだという記憶を保持しており、ゲームに誘導できないため記憶を消して裁定期限を延長された。
その後ノーナに促され「クイーン・デキム」で働くことになる。
気が強く、思ったことは口にするが、人の気持ちを汲み取り寄り添うことができる優しい心を持っている。
その言動から人形であるデキムに感情を芽生えさせる大きな影響を与えた。

自身の裁定を受ける中で、名前や母に読んでもらった絵本など全ての記憶を思い出す。
かつては将来を期待されたフィギュアスケートの選手だったが、膝を怪我して2度とスケートができなくなってしまった。
そこから、家族や友達などどれだけ大切でも他人であることに気づき、他人とは分かり合えないのだと思うようになる。そして何もかもが嘘のように思えて、自分には何もないかのように感じられて自己嫌悪に陥り自ら命を絶った。

デキムが下した裁定は天国(転生)だった。

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