デス・パレード

デス・パレード

『デス・パレード』とは、立川譲が制作・脚本・監督を手掛け、マッドハウスが制作した日本のアニメシリーズ。2015年1月から3月までテレビアニメが放送された。死者の魂が客として訪れ、その後の行き先をゲームで裁定される謎のBARを舞台に、人間の生きかたを描いている。元は若手アニメーター育成プロジェクト「アニメミライ 2013」の参加作品で、2013年3月に公開された短編映画『デス・ビリヤード』。基本的な世界観・ストーリーは『デス・ビリヤード』に準じており、主人公のバーテンダーも引き続き登場している。

デス・パレードのレビュー・評価・感想

デス・パレード
9

隠れた名作!感動とサスペンスの大人のアニメ『デスパレード』

ご紹介するのは『デスパレード』。2015年1月9日から2015年3月27日に、全12話で放送されたオリジナルTVアニメです。基本1~2話で完結する物語で、全て「裁定」と呼ばれる行為を元に物語は進みます。

※ここからは1話のネタバレを含みます。

エレベーターから出てきた2人の男女。名前は「たかし」と「真智子」。新婚旅行に出掛けていた彼らは自分たちが何故エレベーターから出てきたのか記憶がありません。不安を抱え奥に進むとバーのカウンターが見えてきます。そこで白髪の男が2人を出迎えます。

「ようこそクイーンデキムへ。バーテンダーのデキムと申します」そう名乗る白髪の男は2人を席に座らせると、「店のルール」について語り始めます。
1つ.当店が何処なのか教えることは出来ない
2つ.2人にはゲームを行ってもらう
3つ.ゲームの内容はルーレットで決める必要がある
4つ.ゲームは命を懸けて行う事
5つ.ゲームが終わる迄、退店することは出来ない

そして「このアニメの肝はルールの4つ目です」と告げるのです。誰だって理由も無く命を懸けたゲームなんてやりたくはありません。当然これには、たかしも猛反対します。
そこで彼らを強制的にゲームに参加させる為、デキムはある部屋を彼らに見せます。
その部屋は人型の何かが無数に吊るされた部屋でした。

真智子「あなた...これ!?」
たかし「なんだこれは...まさか、死体!?」

「従わなければ自分たちもこうなる」と考えた、たかしと真智子は渋々ゲームに参加する事になります。
ルーレットで決まったゲームはダーツ。ここから彼らにとってのデスゲーム...そして「裁定」の始まりとなります。

ダーツのルールは各々が持っている得点を先に0にした方が勝利。もしくは全てのダーツを投げ切って0に近い方が勝利という単純な物。ここまでは普通のダーツのルールですが、ここからが違います。

デキム「的には体の部位が表記されており...そして神経と連動しております」

つまり心臓が表記された部位にダーツが刺されば相手の心臓に痛みが伴うという事です。
非現実的すぎる内容にたかしは、「連動なんて…そんな訳ない」と、ダーツを投げ肩が表記された部位に刺さります。その直後、真智子の肩に痛みが走り彼女はショックで膝から崩れます。

たかし「真智子!!...そんな馬鹿な!?」

たかしは彼女に駆け寄ると直ぐに彼女の肩を調べますが、傷跡1つありません。彼の慌てた様子を見て「勘違いかも。もう痛くないわ」と安心させようとする真智子。
次は真智子の手番です。彼女が投げると胸が表記された部位にダーツは刺さります。

たかし「ぐぅああぁ!!」

たかしは短い悲鳴を上げると胸を押さえます。驚く事に体の痛みと的の部位は本当に連動していた事を、2人はこの時初めて実感したのです。
たかしは真智子の時と同様に急いで患部を調べますが不思議な事に、またもや傷口が見当たりません。
この事実に怒りが湧き、たかしはデキムに詰め寄ります。しかしデキムは彼に冷酷に告げます。

デキム「初めから命を懸けてとお伝えした筈ですが」

表情ひとつ変えずに告げる彼に、たかしは恐怖を覚えます。そしてデキムは続けて彼にアドバイスを送ります。

デキム「痛みから逃れたいのであれば的に当てなければ良いのです」

ダーツに体の部位が連動している箇所は、あくまで点数が得られる場所。つまりは点数を取らなければ良いという事になります。そしてデキムは最後にこう告げました。

デキム「ただし、勝者は真智子様になりますが…」

今の得点では真智子が483点たかしが495点で得点を取らなければ真智子の勝ちになります。この事実にたかしは一瞬焦りを覚えますが、構わずゲームを続けようと真智子に提案します。

たかし「良い事を聞いた。ハズレに撃ち続ければいいんだ。そうすればすぐに終わる」

そして彼らはハズレに向けてダーツを投げ続けます。たかしは真智子さえいれば勝ち負けなんてどうでも良いと考え投げ続けましたが、不意に恐怖が彼を支配します。それは最初に見せられた人型の何かが吊るされた部屋です。
残りのダーツは2本。このままハズレに投げ続ければ彼は負けてしまいます。そこで彼は再び体の部位が表記された箇所に投げてしまいます。その直後、真智子の口から血が出てきて痛みで口を押えます。

たかし「すまない、真智子!手元が狂ってしまった...」

痛みに耐え「大丈夫よ、あなた」と告げる真智子。次は彼女の手番です。彼女はハズレを狙いダーツを投げます。しかし、たかしの悲鳴が上がります。

真智子は先程の口の痛みに耐えかねて思わず手元が狂ってしまったのです。刺さったのは目が表記された部位のトリプル。ルール説明には点数が高い部位程、痛みが強くなるというルールがあります。
これは目が表記された部位の中で最高得点で最も痛みが走る部類になります。

真智子「大丈夫、あなた!?わざとじゃないわ!本当よ!」

彼に駆け寄る真智子。しかし、たかしは彼女の言葉を信じず、その手を払い除けます。痛みが治まってきた彼の目は既に恐怖などありませんでした。あるのは勝利への渇望。
たかしが体の部位を狙う事を悟った真智子は彼に必死に謝り、お腹だけは当てない様に懇願します。

真智子「せめてどうかお腹だけは当てないで…あなたの子が…」

突然告げられた衝撃的な告白に彼は驚きます。真智子は新婚旅行中にサプライズする予定だったと言い、2人は抱き合います。たかしは父親になった幸福感を胸にダーツを投げます。
その時、「結婚式当日の記憶」が蘇ります。

真智子「あああぁああぁああ!!」

筆者も嫌な予感がするなぁと思いつつ視聴すると、やはり的に刺さったのは腹部が表記された部位。
彼は「思いだした結婚式の記憶」から、真智子の子を自分の子だと思えなかったのです。
たかしの素っ気無い「わざとじゃない」というセリフに対し、これには真智子も「嘘よ!この子に何かあったらどうするの!」と反論します。
そして、たかしは彼女の言葉を鼻で笑うと結婚式当日の事を話し出します。彼は式場でトイレに立ち寄った時、真智子の友人の会話を聞いていたのです。その内容は浮気。真智子はたかしと結婚しておきながら浮気をしているのではないかと彼女に話します。
真智子は誤解だと弁明しますが彼は信じず口論となります。
そしてたかしは決断します。

たかし「なぁあんた、まだ黙ってるルールがあるんじゃないか?」

たかしはデキムにルールの確認をします。それは自分のダーツで的を撃たなくても良いというルールです。
つまり相手のダーツを奪って自分の的に当てれば自分の得点になるという事です。
たかしはルールの確認を終えると真智子のダーツを手に「マッチ君に敗北の味を知ってもらうとするか」と言い放ちダーツを構えます。
その言葉を聞いた真智子は彼女の友人である「まちだゆうき」がマッチだと彼に言います。
「マッチ」というあだ名は一見、自分の妻の真智子から取られたものだと思っていた彼ですが実は真智子の友人のあだ名だったのです。
たかしは自分の誤解だったと気付き彼女に駆け寄り肩を抱きしめますが誤ってダーツの矢が真智子に刺さってしまいます。そこで真智子の怒りは限界を迎えゲームを終わらせる為に彼からダーツを奪い、あらぬ方向に向かって投げようとします。
しかしそれを止めようと、たかしは彼女の服を掴むとバランスを崩し的に向かってダーツは飛んでいき、心臓が表記された箇所に刺さるとゲームは終焉を迎えました。心臓に強烈な痛みが走り吐血するたかし。勝者は真智子に決まりました。
たかしは自分が負けた事に納得できず、デキムにもう1回ゲームをやらせろと言い放ちますが、ここで真実が明らかになります。

真智子「もう無駄よ...私たち、もう死んでるんでしょ?」

彼女は最後にダーツを投げた瞬間、記憶が蘇ったのです。
その記憶は新婚旅行中たかしが運転する車で真智子の携帯に着信があり、不貞を疑ったたかしが携帯を奪おうと、よそ見をしてそのまま崖へ転落したというものでした。
彼女の言葉に反応する様にたかしの記憶も蘇り、2人は既に他界している事を悟ります。

デキム「騙して申し訳ありません。人間は死後、天国か地獄に送られます。その為にクイーンデキムは存在しています」

クイーンデキムは現実世界ではなく端的に言えば「あの世」。
つまりはこれが「裁定」であり、デキムは彼らの心の内を曝け出し天国に送るべきか地獄に落とすべきか「裁定」していたのです。

真実を知った2人は絶望します。たかしは自分の子を殺してしまった事実に耐えられなくなり泣き叫び、デキムに助けを求めます。その光景を真智子は涙を流しながら見続けます。
そしてゲームが終わったからと言って裁定が終わるわけではありません。ここからが本当の裁定になるのです。
たかしは子供の死に耐えきれず、真智子にお前の子は自分の子ではないと言い放ちます。真智子は、その言葉を聞き自分の夫が泣き叫ぶ様子を見ていました。程無くして彼は生気が薄れ膝から崩れます。
真智子は不意に歩き出し、たかしから距離を取ると、「あなたの子なんて嘘に決まってるじゃない!お金目当てに決まってるでしょ!」と発言しました。

その言葉を聞いたたかしは怒り狂いダーツを手に彼女に襲い掛かります。しかし既所でデキムに阻まれると、たかしは気絶させられました。デキムは彼を抱え上げると彼女と共にエレベーターへと連れて行きます。
エレベーターの先は天国と地獄。
心の綺麗な者は天国に、心に闇を持った者は地獄に送られます。たかしは気絶させられたまま天国行きのエレベーターに。真智子は地獄行きのエレベーターに乗せられ出発しました。

さて、どうなのでしょう?本当にたかしが天国で真智子が地獄で合っているのでしょうか?
これは第1話の内容で第2話まで続きます。
今回の話数では、よくある構成で前半は謎解き編、後半は解答編の様な形になっています。
2話で本当の意味での真実が語られる内容となっていますが、アニメの内容からはスピード感は感じられないものの、他作品と比較すると割と早い段階で真実が明らかになる点はスピード感があると言えます。

天国と地獄という題材も他の作品で取り上げられている物ですが、これも実は違います。終点は天国でも地獄でもないのです。
基本的な流れとしては、この様に全話進んでいきます。
ただし、主人公のデキムの他に、もう1人の主人公である物語に関わる重要な人物が、第1話の最後に現れます。
登場人物の全てが生きていない事を前提に話が進んでいく作品で、様々な「死」と「心を曝け出した人間」を裁定していく物語。時にハラハラし時にほっこりしてしまう。1話1話がそれぞれ毛色が違う内容です。
特に最終話は2度見ても涙が出てしまう、心に訴えかける内容で非常におススメです。
そして「死」とは、どういう事かを考えさせられる深い作品でもあります。

作品の特質上、子供には向かない大人が楽しむアニメと言えるでしょう。

デス・パレード
7

人間性が面白い

2人の死人が地獄行きと天国行きの分かれ目に立ち、どっちにいくのかゲームで決めるという内容なのですが、最初はダークファンタジーなアニメだと思っていました。ですが、実際は人間の心理や人間性が問われるストーリーになっており、面白いです。
胸糞悪いお話から感動するお話もあり、その世界に飲み込まれます。また、1話でしっかり完結するので、みやすいかなと思います。人生って人の数だけあるし、やっぱり不公平。
人は失って初めて大切なものに気づけるんだな、としみじみ思いました。
ゲーム設定もホラーとかグロってほどじゃないけど、スリリングなゲームをやらされているので、プレイヤーの本性が段々出てくるのがよかったです。
追い詰められた人間の本当の姿がゲームでわかるようになっているのが面白いです。

少しずつ主人公の過去の記憶なども出てきて、死人だけではなく、主人公のストーリーも少しずつ見えてくるので、飽きることがないと思います。
いつか死ぬから生きるのではなく、生きているからいつか死ぬ。
とても生死について考えさせられる作品です。OPの選曲や雰囲気がストーリーと全く違って、ギャップそれも癖になります。