幽麗塔(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『幽麗塔』とは、乃木坂太郎によるサスペンスミステリー漫画。『ビッグコミックスペリオール』(小学館)にて、2011年12号から2014年22号まで連載。2014年度第14回センス・オブ・ジェンダー賞の大賞を受賞している。
主人公天野は幽霊塔と呼ばれる時計塔で何者かに襲われ死の寸前、謎の美青年・テツオに救われる。太一はテツオの「幽霊塔の財宝探しを手伝えば、金も名誉も手に入る」という言葉にのせられ財宝探しに乗り出す。謎解きのおもしろさと、幽霊塔にすくう怪物「死番虫」とのスリリングな対決が魅力。

神戸市警の刑事。
陣羽笛警部とともに行動しそのとんちんかんな言動にツッコミをいれる役割も果たす。
のち太一とテツオと出会い行動をともにするようになる。
少年に性的欲望を感じる。
幽霊塔の財宝を発見しマイノリティが自分を偽ることなく生きていける国を作ることを夢見る。

テスラ研究所

テスラ博士(てすらはかせ)

マッドサイエンティスト。
臓器移植や脳移植の研究を独自に進める。
非合法的に臓器移植を行い多くの命を救っている。
丸部と共同で脳移植の研究のため幽麗塔と呼ばれる施設を建設。

Q(キュー)

テスラ博士の助手であり、看護師。

『幽麗塔』の用語

幽霊塔

江戸時代後期に越後屋伊兵衛という商人によって建てられた。その地下迷宮には莫大な財宝が眠っている。迷宮の扉の開け方は伊兵衛本人しか知らなかったため子孫も宝を手に入れられず神戸大空襲でついにその血は途絶える。その後藤宮たつが購入するもたつも時計塔に磔にされ惨殺される。現所有者は検事であり資産家である丸部道九郎。

スカラベ

スカラベは幽霊塔の所有者に代々伝えられているもので、フンコロガシの形を模した装飾品。
これを地下迷宮の入り口の壁にはめ込むとその扉が開かれる。
もともと輪田お夏が所有していたが、そこでお手伝いとして雇われていた酒井浦子が領得しその後所持していたと思われる(作中では詳しい経緯は明らかにされていない)。

幽麗塔

丸部とテスラ博士が共同で設置した脳移植の研究のため施設。
ここで丸部はテツオと脳交換の手術を行おうとするが、テツオは太一とともに脱出する。

『幽麗塔』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

囚人「男だろうが女の子として扱えば女のコになるんだよ。そういうもんだぜ、エヘヘヘヘ。」

丸部が財宝探しをするにあたって用意した囚人のひとりが、女装した太一に下品な冗談を言い太一は実際は男だと周りから言われた際に「男だろうが女の子として扱えば女のコになるんだよ。そういうもんだぜ、エヘヘヘヘ。」という。
ネットでミーム化している有名なセリフだが、実際のこの次のコマではテツオの複雑な表情が描かれている。

山科刑事「……そう!物語で語るのもいいなぁ。そこに人間が描けていれば、人の心を打つはずだ。もっと自由に性を考えてもらえば、俺たちにも誇りがあるとわかってもらえるはずだ。」

山科が財宝を手に入れたら、出版社を作り自分たちのようなマイノリティーが理解される社会をめざすという思いを語る際に「……そう!物語で語るのもいいなぁ。そこに人間が描けていれば、人の心を打つはずだ。もっと自由に性を考えてもらえば、俺たちにも誇りがあるとわかってもらえるはずだ。」という。
性的マイノリティーの抑圧や苦悩というのは本作のテーマの一つであり、物語を通してそういった人への理解を深めたいという作者自身の考えを反映しているともいえる。
最終的に財宝を手にした太一は山科の遺志を継いで出版社を設立する。

丸部道九郎「俺は誰かを変態と思ったことは一度もないよ。みんな生きることに真正面から向き合っているだけだ。変態なんてどこにもいないよ。」

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