ホムンクルス(漫画・映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ホムンクルス』とは、2003年より山本英夫が『週刊ビッグコミック スピリッツ』で連載していた漫画、およびそれを原作にした2021年公開の映画作品。
映画化が発表された2020年時点でのコミックス累計発行部数は400万部を超えており、コミックス版の衝撃的な最終話も話題となった。
「第六感が目覚める」というトレパネーション手術を受けた主人公は、人々の心の歪みを投影した「ホムンクルス」が見える能力を得て、次第に自らの内面とも対峙していくようになる。

名越が右目を覆い、左目だけで見ることで出現する「ホムンクルス」

トレパネーションの手術を受けた名越が、左目だけで見ることができる世界。
身体の一部が変形したり、姿形そのものが水や砂など別の物体に変容して見えるほか、顔のみが他人のものに変わるなど、人間が異形に見えている。
伊藤は「トラウマやコンプレックスなど、心の中の歪みが投影されたものを見ている」と推測し、これを脳科学分野の「脳の中の小人」になぞらえ、ホムンクルスと名付けた。

トレパネーション

伊藤が高額な報酬と引き換えに名越に持ちかけた、未承認の医療行為。
頭皮を切開して頭蓋骨に穴を空けるという民間療法の一種で、脳の潜在的な能力を引き出し、第六感を目覚めさせると言われている。
この手術を受けた名越は右目を覆って左目だけで見ることにより、視界に「ホムンクルス」が現れるようになった。
ただし手術を受けた人物全員が能力を引き出すことに成功するわけではないようで、映画版で名越よりも先に手術を受けていたチヒロには何の変化もなかった。

『ホムンクルス』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

伊藤学「要は、人々の心の深層に沈んだ歪みが、いろいろな化け物…「ホムンクルス」として見えるんです。」

手術後、人間が異形として見える現象に怯える名越が相談した際、医大生である伊藤は状況を医学的、心理学的に分析し「要は、人々の心の深層に沈んだ歪みが、いろいろな化け物…「ホムンクルス」として見えるんです。」と答えた。
この発言で、見えているものを「他者が心の深層に抱えるトラウマやコンプレックス」として捉えることができた名越は、組長やユカリの心に触れることで、次第に自らの内にある深淵も覗き込んでいくことになる。
物語全編においての指針を示した重要な場面である。

名越進「キミ…どうしてそんなことするんだ…?」

ヤクザの組長とトラブルになり、小指を切り落とされそうになった名越が彼のホムンクルスと対峙する場面。
組長のホムンクルスは等身大のオモチャのロボットを纏った少年だが、彼は泣きながら手にした鎌で自らの小指を傷つけ、切り落とそうとしていた。
それを見た名越は、思わず「キミ…どうしてそんなことするんだ…?」と問いかけ、組長のホムンクルスと対話を試みる。
無意識下ではあるが、過去の事故で負った罪悪感に触れられたことで、組長は涙が止まらなくなり、その場を離れていく。
後の対話によって、内心では友人の小指を切り落としてしまったトラウマと罪悪感を消せずにいることを看破された組長は、77本目に自分の小指を詰め、足を洗うことを誓った。

伊藤学「ホムンクルスが…自分自身だということを…」

ホムンクルスが見える人間と見えない人間がいることに気が付き、恐れる名越に伊藤は「うすうす気づいてるんじゃないですかあ?」「ホムンクルスが…自分自身であることを…」と言葉をかける。
この発言を機に名越は見えているホムンクルスは自らの心の歪みでもあることをハッキリと自覚して向き合い、依存していくようになる。

名越進「ひとつになろう。」

ななみにトレパネーションの手術を施した名越は、自らと同じ顔に見えるようになった彼女に「ひとつになろう。」と語り掛ける。
募らせていった劣等感や孤独感から「自らを見てほしい」という欲求を押さえられなくなっていった名越は、ななみと互いの心を見せ合い、1つになることで救われることを望んでいた。
ななみはこの件でコンプレックスから抜け出ることができたのか、事後に元の顔に戻って見えるようになっており、結果として名越だけが救われることがなかった様子が仄めかされている。
自分と同じ顔をした女性と一夜を共にするという展開もさることながら、絵面としても非常にインパクトの強い場面となっている。

最終話の名越の笑顔

名越が逮捕されたことを示唆する場面で本作は終幕を迎えるが、近寄ってくる警官たちが、名越の目には自分と同じ顔として見えている。
名越が彼らに見せた、気さくさと、底知れない不気味さの同居する笑顔は多くの読者の考察を呼んだ。

『ホムンクルス』の裏話・小ネタ・トリビア/エピソード・逸話

心理状態が表れた名越の寝相

丸くなって眠る名越

物語の要所で名越が丸まって眠るシーンが登場するが、この寝相は「胎児型」と呼ばれている。
甘えたい、保護されたいという心理や安心を求める心理、強いストレスに曝され、世界から身を守ろうとする心理などを表しているとされ、実は名越の抱える本心が垣間見えている。

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