『ホムンクルス』とは、2003年より山本英夫が『週刊ビッグコミック スピリッツ』で連載していた漫画、およびそれを原作にした2021年公開の映画作品。
映画化が発表された2020年時点でのコミックス累計発行部数は400万部を超えており、コミックス版の衝撃的な最終話も話題となった。
「第六感が目覚める」というトレパネーション手術を受けた主人公は、人々の心の歪みを投影した「ホムンクルス」が見える能力を得て、次第に自らの内面とも対峙していくようになる。
ユカリの本心を知るきっかけがあったSNSの「裏垢」
ユカリが名越の車の中に置き忘れていた携帯電話の内容を見ることで、彼女が内心で抱えているコンプレックスに気が付くという点では共通しているが、原作連載当時から映画化までには10数年経過していることもあり、携帯電話はスマートフォンへ変わっている。原作では、携帯電話に残された文章を見てユカリの本心の一端を見た名越だが、映画版ではSNSの裏アカウント(裏垢)にアンクルカットの画像と共に文章が添えられているのを見る形に。原作発売当時からの時代の流れを反映し、よりリアリティを持たせた設定に変更されたといえる。
映画オリジナルの人物「チヒロ」の登場
映画版では伊藤の勤務先の病院で名越が出会う「のっぺらぼう」のようなホムンクルスを持った女性として、チヒロが登場する。記憶喪失に陥っており、失った記憶を取り戻す治療のために病院に通っている女性だが、名越は彼女が「ななこ」であると信じ込んでいた。後になって記憶を取り戻したチヒロは「自分はななこを死なせた事故の車に同乗しており、罪滅ぼしのため、記憶を失った名越の前にななことして現れ、寄り添っていた」という真実を語った。原作には登場しないながらも、映画版の展開において非常に重要なキーパーソンとなっているキャラクターである。
変更されたななこの人物像
原作版では「整形する前の名越と心を通わせて交際していたが、不美人ゆえに妊娠中の子供もろとも名越に捨てられた」という設定のななこ。
映画版では、同棲している恋人という設定は共通しているものの、遊び回って自宅に帰らず、向き合ってくれない名越に対して不満を募らせている女性となっており、容姿に対する言及はない。
更に、生死が不明の原作版に対し、映画版では自分と向き合ってくれることをしない名越に対して不満を露にして家を飛び出し、追いかけてきた名越と共に交通事故に遭ってしまう。
この事故でななこは亡くなり、死後に名越は彼女が妊娠していたことを知った。
グッピーから金魚へ変更された伊藤のホムンクルス
原作版での伊藤のホムンクルスは、人型の水の中に一匹のグッピーが隠れていたが、それは、厳しい父親に抑圧されている彼の中での「美への憧れ」を象徴するものだった。
名越との対話を経て父と和解した彼は、最終話で女性の姿で登場している。映画版では、人型の水という点では共通しているものの、グッピーは金魚に変わっている。
この金魚は、伊藤に対しては無関心だった父が可愛がって飼育していたというもので、「父に見てほしい」という気持ちを募らせた少年時代の伊藤が殺してしまったことがトラウマとして、ホムンクルスに表れていた。
この設定変更に伴ってか、映画版では伊藤が女装をする展開はなくなっている。
ラストシーンの大幅な改訂
伊藤が警察と共に彼を見つけた時には、名越は孤独感から手術を繰り返し、完全に壊れてしまっていた、というのが原作版のラストシーンであるが、映画版では、ななこを失った時の記憶を取り戻し、その上でチヒロを許して共に旅に出る、という形に変更されている。これに対し、名越の助力もあって父と和解し、原作ではあるがままの自分を受け入れることができるようになった伊藤は、映画版では名越に胸の内を吐き出した後で自らにトレパネーションを施している。その後、屋上から虚ろな目で街を見下ろしているところが最後の登場シーンであり、その後の安否は不明。
「自分を見てほしい」という欲求が強く出ていた点などは、原作版での名越の設定の一部を引き継いでいるようにも窺える。
『ホムンクルス』の用語
ホムンクルス
名越が右目を覆い、左目だけで見ることで出現する「ホムンクルス」
トレパネーションの手術を受けた名越が、左目だけで見ることができる世界。
身体の一部が変形したり、姿形そのものが水や砂など別の物体に変容して見えるほか、顔のみが他人のものに変わるなど、人間が異形に見えている。
伊藤は「トラウマやコンプレックスなど、心の中の歪みが投影されたものを見ている」と推測し、これを脳科学分野の「脳の中の小人」になぞらえ、ホムンクルスと名付けた。
トレパネーション
伊藤が高額な報酬と引き換えに名越に持ちかけた、未承認の医療行為。
頭皮を切開して頭蓋骨に穴を空けるという民間療法の一種で、脳の潜在的な能力を引き出し、第六感を目覚めさせると言われている。
この手術を受けた名越は右目を覆って左目だけで見ることにより、視界に「ホムンクルス」が現れるようになった。
ただし手術を受けた人物全員が能力を引き出すことに成功するわけではないようで、映画版で名越よりも先に手術を受けていたチヒロには何の変化もなかった。
『ホムンクルス』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
伊藤学「要は人々の心の深層に沈んだ歪みが、いろいろな化け物…「ホムンクルス」として見えるんです。」
手術後、人間が異形として見える現象に怯える名越が相談した際、医大生である伊藤は状況を医学的、心理学的に分析し「要は、人々の心の深層に沈んだ歪みが、いろいろな化け物…「ホムンクルス」として見えるんです。」と答えた。
この発言で、見えているものを「他者が心の深層に抱えるトラウマやコンプレックス」として捉えることができた名越は、組長やユカリの心に触れることで、次第に自らの内にある深淵も覗き込んでいくことになる。
物語全編においての指針を示した重要な場面である。
名越進「キミ…どうしてそんなことするんだ…?」
ヤクザの組長とトラブルになり、小指を切り落とされそうになった名越が彼のホムンクルスと対峙する場面。
組長のホムンクルスは等身大のオモチャのロボットを纏った少年だが、彼は泣きながら手にした鎌で自らの小指を傷つけ、切り落とそうとしていた。
それを見た名越は、思わず「キミ…どうしてそんなことするんだ…?」と問いかけ、組長のホムンクルスと対話を試みる。
無意識下ではあるが、過去の事故で負った罪悪感に触れられたことで、組長は涙が止まらなくなり、その場を離れていく。
後の対話によって、内心では友人の小指を切り落としてしまったトラウマと罪悪感を消せずにいることを看破された組長は、77本目に自分の小指を詰め、足を洗うことを誓った。
伊藤学「ホムンクルスが…自分自身だということを…」
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目次 - Contents
- 『ホムンクルス』の概要
- 『ホムンクルス』のあらすじ・ストーリー
- トレパネーションを受ける名越
- 「ホムンクルス」との邂逅
- 砂の女子高生
- 似たもの同士の名越と伊藤
- 見えなくなるホムンクルス
- 名越の崩壊
- 『ホムンクルス』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- 名越 進(なこし すすむ/演:綾野剛)
- 伊藤 学(いとう まなぶ/演:成田凌)
- その他
- 組長(くみちょう/演:内野聖陽)
- ユカリ(演:石井安奈)
- 七瀬 ななこ(ななせ ななこ/演:伊藤茄那)
- ななみ
- ケンさん
- イタさん
- 伊藤の父
- 映画版にのみ登場する人物
- チヒロ(演:岸井ゆきの)
- 『ホムンクルス』の原作漫画と映画の違い・相違点
- 名越と伊藤の職業の設定変更
- ユカリの本心を知るきっかけがあったSNSの「裏垢」
- 映画オリジナルの人物「チヒロ」の登場
- 変更されたななこの人物像
- グッピーから金魚へ変更された伊藤のホムンクルス
- ラストシーンの大幅な改訂
- 『ホムンクルス』の用語
- ホムンクルス
- トレパネーション
- 『ホムンクルス』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 伊藤学「要は人々の心の深層に沈んだ歪みが、いろいろな化け物…「ホムンクルス」として見えるんです。」
- 名越進「キミ…どうしてそんなことするんだ…?」
- 伊藤学「ホムンクルスが…自分自身だということを…」
- 名越進「ひとつになろう。」
- 最終話で名越が見せた笑顔
- 『ホムンクルス』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 心理状態が表れた名越の寝相
- 実際にホームレス生活を送ってみた作者の山本英夫
- ロシアに実在するトレパネーションの研究機関
- 『ホムンクルス(映画)』の主題歌・挿入歌
- 主題歌:millennium parade「Trepanation」
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