トムとジェリー(トムジェリ)のネタバレ解説・考察まとめ

『トムとジェリー』とは、ウィリアム・ハンナとジョセフ・バーベラによって製作された、アメリカのアニメーションシリーズ。ドジだけどどこか憎めないネコのトムと、頭脳明晰でずる賢いネズミのジェリーによるドタバタ劇をユーモラスに描いたギャグコメディ。短編作品を中心に80年以上に渡り様々な作品が展開されている、世界中で人気のアニメ。日本では世界でも特にファンが多く、キャラクターグッズの販売も多岐にわたる。2021年にはクロエ・グレース・モレッツ主演で実写アニメーション映画としても公開された。

誰もが笑ったハチャメチャなケンカ=ギャグバトル

何よりもトムとジェリーの2匹によるハチャメチャなバトル=ケンカの数々である。
トムもジェリーを捕まえるためには家にある道具や家具、時には凶器や武器までもを駆使して追いかけるものの、頭脳明晰なジェリーの機転を利かせた反撃によって基本的に返り討ちに遭う。

その結果は散々たるもので、打撃や火傷はもちろんのこと、ときにはジェリーによってトムは上空から叩きおとされた挙句花瓶の中に突っ込んだり階段に叩きのめされて、その形状になってしまうほど。
更には全身の毛を刈り取られたり顔のパーツが全て取れてしまったり、釣り竿で引っ張られるとトムの毛がまるで服を着ているかのように吊り上がり、足首が見え「中に人間が入ってるのでは?」と勘ぐるクスっと笑ってしまうシュールなものから、人間ならば確実に死に追いやってしまうほどの斬撃によってバラバラにされてしまったり、ゴルフクラブやフライパンなどでフルスイングで吹き飛ばされて壁を突き破って遠くの彼方に飛んでいってしまうなど、とにかく痛快である。

ちなみにそんなジェリーもたまにはトムにやり返されてしまい、ワッフルメーカーで熱せられてしまいワッフルの形になったり、パンで挟まれサンドイッチにされた挙句トッピングも施され、食べられる寸前までいくこともある。

お互いを心配するときも

アカデミー賞ノミネート作品『メリー・クリスマス』のワンシーンより

壮絶なケンカを繰り返す二人だが、たまにはお互いを気遣い合うことがある。
例えばアカデミー賞ノミネート作品の『メリー・クリスマス』では、聖夜の豪雪の中に逃げ込んだジェリーをトムが心配し居ても立ってもいられなくなり、外でカチカチに凍ってしまったジェリーを外から救出し、クリスマスプレゼントをあげる。
ジェリーもそのお返しに、トムの大好きなミルクの皿に入れていた罠を取り出してあげるという、普段とは違うほっこりとしたシーンもある。

良き友でありライバルであり冒険の仲間

90年代の作品以降に特に顕著だが、近年のトムとジェリーの二匹は基本的にケンカはしない。
仲良しで、一緒に寝たり遊んだりして毎日を過ごしている。長編映画やOVA作品などでは一緒に冒険をする良きパートナーである。
後述する暴力シーンの規制の影響もあるが、これは『トムとジェリー』という作品自体が「大人向け映画の最初に流れる短編アニメーション」から「子ども向けのTVアニメーション」に大幅方向転換されたのも大きい。

『トムとジェリー』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

3つに分けられる『トムとジェリー』の作品群

《ハンナ=バーベラ》期

ハンナ=バーベラ期のアカデミー賞受賞作『ネズミとり必勝法』のワンシーンより

『トムとジェリー』を生み出したウィリアム・ハンナとジョセフ・バーベラの関係性は、彼らが作り出したネコとネズミのように実に理想的なものだった。
お互いがお互いの苦手な側面を補えるような技術を持ち合わせており、2人はそれぞれ役割を分担していた。

ジョセフ・バーベラはキャラクターデザインとレイアウト、そしてストーリーを書くことに力を発揮し、ウィリアム・ハンナはそれを最大限に活かせるアニメーションのタイミング調整やペース運びを演出し、監督をした。

ハンナ=ジョセフのまるで兄弟のような仕事ぶりは、トムとジェリーの作中でも見て取れるようになっていった。
元々の設定であった、ネコであるトムがネズミであるジェリーを食べてしまいたいという描写よりも、ライバル意識の描写が顕著になり、ネズミであるジェリーに負けたくないという気持ちの方が前面に描かれるようになった。

同じように、ハンナ=バーベラも自分自身のベストな仕事によってお互いを上回ることを目指し、そうした切磋琢磨がなされたことで、彼らの作り出すキャラクターたちは世界中で人気を得ることができた。

ハンナ=バーベラは、シリーズの製作に力を注ぐと同時に、生涯にわたるパートナー関係を築くこととなる。

MGMが1957年にアニメーション部門を閉鎖したことにより、ハンナとバーベラはMGMを去って独立し、《ハンナ・バーベラ・プロダクション》を設立する。

ハンナ=バーベラ期の『トムとジェリー』は合計18年、114本もの作品が製作された。日本のテレビ放送でも繰り返し使用されており、『トムとジェリー』のアニメ、及びキャラクターデザインといえば彼らの作品群である。

《ジーン・ダイッチ》期

ジーン・ダイッチ期のトム

MGMがアニメーション部門を閉鎖した1957年前後、『トムとジェリー』は既存作品の劇場での再公開が中心だったが、1961年にジーン・ダイッチを監督に新作の公開を決定。
1962年までの間に作品数は13本と少ない。スタッフ陣はハンナ=バーベラ期の作品をあまり見ておらず、予算も少ない状況だったため、アニメーションの動きがぎくしゃくしている。興行的には成功したものの、批判的な意見も多いシリーズとなった。
が、一部のファンの間では、ジーン・ダイッチ本人の手による脚本と、ぎこちないアニメーションの相乗効果による独特でシュールな作風が高く評価されている。

この時期の作品は通常版のDVDやワンコインDVDには一部の作品しか収録されていないが、全巻購入者特典で付いてきた「スペシャルDVD」には全13作品が収録されている。

《チャック・ジョーンズ》期

チャック・ジョーンズ期のトムとジェリー

1963年からは、当時ワーナー・ブラザーズを退社したばかりのチャック・ジョーンズが新シリーズの監督に抜擢された。

ストーリーは変わらないが、トムの眉毛が太くなったりジェリーの表情に憎たらしさが増したりなど、キャラクターデザインはチャックの独特のスタイルで大きく生まれ変わった。
当時は音楽やアートなどでサイケデリック・ブームが巻き起こっており、幻覚的で抽象的、色鮮やかな色彩や複雑な模様などが流行していた。
チャック・ジョーンズ期の『トムとジェリー』もこの影響が強く見られる。また、そのような非常に個性的なデザインにプラスして、《リミテッドアニメーション》と呼ばれる技術(キャラクターの動く部分を限定し、カメラワークの工夫や背景の繰り返しといった手法で作業工程を短縮する)が用いられた。
そのため、カクカクしたアニメーションの動きと相まって、今までの滑らかでスピーディーな『トムとジェリー』とは一味違うニュアンスが加えられた。

ジーン・ダイッチ期と比べ製作期間は4年、合計34本と多く、日本でのテレビ放送でも度々使用されていたので、この独特な『トムとジェリー』が記憶にある視聴者も多い。

また、初期から続くオープニングのMGMのロゴが映し出されてメインテーマが流れる『Leo the Lion』だが、チャック・ジョーンズ期ではトムとジェリーがパロディする形に置き換えられている。

日本での人気

『ファニー・シリーズ』の一部イメージ

世界各国で人気の作品だが、特に日本では高い人気を誇っている。
近年ではSNSで個人が製作した、トムとジェリーがケンカの末に体の形が変わってしまった『ファニー・シリーズ』を公式であるワーナーがグッズ化し人気が再燃。
様々なアイテムが販売されており、『トムとジェリー展』などの催しも毎年各所で開催されている。

アカデミー賞受賞・ノミネートの常連

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