神作家・紫式部のありえない日々(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『神作家・紫式部のありえない日々』とは、D・キッサンにより月刊コミックZERO-SUM (一迅社)にて 2021年12月号から連載が開始された歴史コメディ漫画。『源氏物語』を同人誌にたとえ紫式部をその神作家、そして読者は宮中の人々として描いている。紫式部を支える家族や、中宮彰子の事、宮仕えする中で感じた事などを『源氏物語』の制作過程を辿りつつストーリーが進む。シングルマザーで陰キャな紫式部が中宮彰子のために、かつての輝かしい定子サロンのような宮廷サロンを作る過程と紫式部の成長を描いている。

彰子のために『源氏物語』の新刊を書き始めたものの、物語の内容に自信が持てずこれを世に出してもいいのか迷う藤式部。賢子に「ママの性癖がつまっている世界に一つしかない物語なんだよ」と励まされた結果たどり着いた藤式部の言葉が「出ない神本より 出るクソ本」。この後一気に書き上げ倫子に新刊を渡す。

藤式部「紙をくれる機械としてな…!!」

平安時代は紙が貴重な品だった。時の権力者である道長が夜、源氏のように局に訪ねてきても『源氏物語』の「空蝉」に例えて風流にいなす藤式部。なぜなら紙をくれる道長は創作にとって欠かせない大切な存在。邪険に断れないし、流されて道長の正室倫子の機嫌もそこねたくない。藤式部にとって藤原道長の存在はあくまでも「紙をくれる機械としてな…!!」なのである。

藤式部「だから これはあくまでも私の経験則ですが、苦手なところは他人に任せて 自分の得意なことで変化した方がいい」

小少将は彰子サロン作りを手伝いたいのだが、自分に何ができるのか思い浮かばない。今までの自分の宮仕えに対する向き合い方が消極的すぎたと思い、自分自身を変えたいと思うようになっていた。しかし、どうすれば良いのかわからない。そんな時に藤式部が「だから これはあくまでも私の経験則ですが、苦手な所は他人に任せて 自分の得意なことで変化した方がいい」と言う。小少将の得意な「褒め」で彰子を褒めて、それで自信がついた彰子の存在がサロンの質の向上につながるのだと説く。

藤式部「地獄に落ちるのではないか――と」

俊賢に新刊「須磨」は、暗に以前左遷された事がある伊周をモデルにし、伊周を貶めるようにと道長が指示をしたのではないかと疑われる。藤式部は事実無根と訴え、むしろ俊賢が自身の父を「須磨」の物語に投影しているのではないかという。それを聞いた俊賢は、自身の不遇で屈辱的な大学寮時代の話しを始める。藤式部は俊賢の辛かった話しを聞くにつれて「かわいそうに」「気の毒に」と思う前に、「面白い」と思い手がうずき創作欲がわく。自身の深く暗い業を感じて自分自身に放ったことばが「地獄に落ちるのではないか――と」である。

彰子「あなたにとって同人誌を書くことが 自分を救うことに…なるなら やめてはいけない…と 私は思うわ」

物語を読むことで夫を亡くした悲しみを癒されていた藤式部。自らも人の心に届くような話を書いてみたい、と思った時に思い出したのが先の中宮定子のこと。そうして始まった『源氏物語』を定子を寵愛していた帝に献上したら、さらに定子に思いを馳せてしまうのではないかと心配する藤式部。その時、彰子があなたのためならと「あなたにとって同人誌を書くことが 自分を救うことに…なるなら やめてはいけない…と 私は思うわ」と言い、一緒に定子を語れて嬉しいし、続きを読みたいと言う。藤式部はこの言葉で彰子のためにも『源氏物語』を書き続けようと奮い立つ。

彰子「チューしたい」

藤式部に心をゆるすようになってきた彰子は、藤式部になら自分の思いを語ることができるようになってきた。しかし、まだ帝とは『源氏物語』を通して以前より話せるようになって来たものの、顔すらじくっり見られない。帝が寝ているすきに自分から「チューしたい」と思うのだが出来ないと、オタオタしながら話す姿を見て萌える藤式部。もっと二人の仲が進む力になるように努めると誓う。

彰子「主上の考えてらっしゃることを もっと深く…知りたいの」

漢詩文が好きな帝にならい自身も漢詩文を学びたいと藤式部に頼む彰子。女性が大ぴらに漢籍を読むのは、はばかられる時代だがそれでも学びたい理由は健気にも「主上の考えてらっしゃることを もっと深く…知りたいの」である。

賢子「これからは どんな態度を取られても同じことを言うような アホになりきること!!」

落ち込む藤式部をさとす賢子(左)

倫子の命で宮仕えのため宮中に入ったものの、女房達のいじめにあい早々に宿下りして引きこもる藤式部に娘賢子が放った言葉が「これからは どんな態度を取られても同じような事を言うアホになりきること!!」。
同人誌をきっかけにスカウトされて宮中に入り調子こいていたら、思った以上に同僚女房たちに嫌われてしまったのだ。賢子は優しく宥めつつも働くことをナメていたのではと指摘し、藤式部の書き続けたい気持ちを確認する。そして書き続けたいのであればと、藤式部の強みを引き出しつつ良い作戦を授けた。この言葉を聞いて藤式部は「ケンちゃん あなた人生何周目…?」と感心する。

賢子「正解の道を選ぶんじゃなくて 自分の選んだ道を正解にしていく って思えばいいんじゃないかな」

人生何回目?な賢子(中央)

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