LIMBO THE KING(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『LIMBO THE KING』とは、田中相による近未来SFアクション漫画作品。本作は2016年から2018年にかけて『ITAN』にて連載後、「コミックDAYS」に移籍、2018年から2019年にまで連載された。
2086年、海軍での事故で片足を失った軍人のアダム・ガーフィールドは家族を養うため、かつて「ゴールデンゲートの英雄」と呼ばれたルネ・ウィンターと相棒となる。2人は「眠り病」と呼ばれる奇病の感染者の記憶にダイブし治療を行う一方、その謎に迫る。

ルネがアンジェラの呼びかけにより心を取り戻したシーン

アンジェラ(画像右)を抱きしめるルネ(画像左)

孤児だったルネは、眠り病研究の第一人者であるエムナント・シュタイナーから、その能力を買われ育てられていた。ダイバー保護法などのない過酷な労働環境に加え、威圧的な養父からのプレッシャーでルネはアンジェラにも冷たい態度をとる。しかし養父に口答えし、体罰を受けようとしていたところをアンジェラに助けられたことをきっかけに、ルネは徐々に彼女に心を開くのだった。5年にも及ぶハードな状況下で、ただ1人治療できるダイバーとしてLIMBOに潜り続けるルネはやがて現実世界との境が混濁しつつあった。一方眠り病を治す「スパイスコード」が開発成功し、眠り病は一旦終結する。お役御免となった廃人同然のルネをアンジェラは引取り、日々介護する。アンジェラの献身的な世話と、笑顔の絶えない彼女の涙ながらの「お願い 戻ってきて」という懇願にルネは心を取り戻すのだった。

アダム・ガーフィールド「ルネよ 俺の相棒 後は頼んだ」

ナイフでルネ(画像右)を刺しながら、抱きしめるアダム(画像左)

アダムとルネは真犯人であるジョージのLIMBOに潜ることとなる。出発の前夜、アダムは教授のドミニクに呼び出されLIMBO内で使用できるナイフを手渡される。それはパートナーであるアダムの脳波を足場にして、強制的にルネのみを目覚めさせる装置であった。ルネは唯一「眠り病」を感染者の被害が少なく成し遂げられる人類の希望である。一方、ルネのコンパニオンであるアダムがルネとの適合性が高いのみで、過去アンジェラがコンパニオンを務めていたこともあり、替えの効く人間である。このことから、ジョージのLIMBO内で異常事態が起こった場合にはアダムが犠牲になり、ルネだけを生きて返すように頼まれたのだった。アダムからそのことを聞かされたルネは1人で帰ることを拒絶する。しかしアダムは彼をナイフで刺しながら、抱きしめ「ルネよ 俺の相棒 後は頼んだ」と全幅の信頼を置く相棒としてルネに全てを託すのだった。

『LIMBO THE KING』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

アダムのタトゥーの意味は「献身を誇りとせよ、名誉と共に帰れ」

アダムの腕にあるタトゥー

アダムの右三角筋周辺に入っているタトゥーは「献身を誇りとせよ、名誉と共に帰れ」という意味である。
錨にロープが絡まった「からみ錨」は米海軍の下士官のシンボルと言われており、毎日の積み重ねや柔軟性を示すと言う。USNは、米国海軍の略ではなく、「U」は「Unity(団結)」の略で、調和、目的、行動の維持を確実にするために船員全員が協力することを意味する。「S」は神と祖国への「Service(奉仕)」を象徴し、「N」は「Navigation(航海)」を表す。

吉田秋生などの少女漫画からの影響を受けている

作者の田中相はWebメディア『マンバ』におけるインタビューにて影響を受けた作品を挙げている。 吉田秋生『BANANA FISH』『カリフォルニア物語』や、成田美名子『CIPHER』に出てくる少女漫画内のアメリカに昔から憧れがあったと語っている。その他にも萩尾望都の名前を挙げており、「SF的設定の中でもう少し人間関係にスポットを当てたようなハートフルな方向のものを懐かしく思う気持ち」を作品に込めたと言う。このことから、本作はあの頃の漫画を知る読者たち、逆に触れてこなかった人たちにも読んでほしいと話している。

アダムとルネは「いっしょにいなくちゃいけない2人」

作者はウェルネスメディア「Yoi」のインタビューにてサスペンスやスリラーが好きなことを公言している。特に『トゥルー・ディテクティブ』などのバディものが好きだと言い、アダムとルネの関係性については、「いっしょにいなくちゃいけない2人を描きたいなと思って」描いたと話している。しかし本作完結後、コロナ禍と体調不良の影響で、「人が死んでしまったりする作品を全然見られなくなってしまった」と語り、次作『天狗の台所』では「ハラハラするというよりは、落ち着けるもの。」を目指したと言う。

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