LIMBO THE KING(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『LIMBO THE KING』とは、田中相による近未来SFアクション漫画作品。本作は2016年から2018年にかけて『ITAN』にて連載後、「コミックDAYS」に移籍、2018年から2019年にまで連載された。
2086年、海軍での事故で片足を失った軍人のアダム・ガーフィールドは家族を養うため、かつて「ゴールデンゲートの英雄」と呼ばれたルネ・ウィンターと相棒となる。2人は「眠り病」と呼ばれる奇病の感染者の記憶にダイブし治療を行う一方、その謎に迫る。

『LIMBO THE KING』の概要

『LIMBO THE KING』とは、田中相による近未来SFアクション漫画作品。本作は2016年から2018年にかけて漫画雑誌『ITAN』にて連載した。その後、漫画アプリ「コミックDAYS」に移籍、2018年8月から2019年8月まで連載され全6巻で完結した。「このマンガがすごい!2018」オンナ編16位にランクインしている。

2086年、事故で片足を失った軍人のアダム・ガーフィールドは家族を養うため、ルネ・ウィンターと相棒となる。「眠り病」と呼ばれる奇病が感染者を増やしており、感染者に最も負担なく治療できる唯一の人物がルネであった。「眠り病」は3ヶ月後に死ぬ「記憶のガン」ともよばれており、感染者の記憶にダイブするため治療者のルネと、そのサポートをするコンパニオンとしてアダムは選抜された。一度治療すれば治るはずだった「眠り病」だったが、再度発症する「新型」に感染した患者が発見される。「新型」が人工的に作られた可能性があると感じたルネはアダムと2人極秘で謎に迫る。当初ギクシャクしていたルネとアダムが信頼し合う相棒となっていくのが魅力である。

『LIMBO THE KING』のあらすじ・ストーリー

キングとの出会い

時は2086年、アダム・ガーフィールド二等兵曹は任務中の事故により大怪我を負い、生死の境を彷徨っていた。2週間後、目が覚めた彼は右足を欠損したことから退役を覚悟するが、JSOC(統合特殊作戦コマンド)の中将だと名乗るアーサー・トラヴィスから、今後はCNASという研究所で「コンパニオン」という仕事をするように命じられる。それは過去に猛威を奮った眠り病を治療することだった。
眠り病とは一度感染すると眠ったまま昏睡状態に陥り、3ヶ月以内に治療を施さないと死に至る病である。唯一の治療法はダイバーが感染者の脳に侵入し感染元を探り消滅するのみである。そしてコンパニオンはダイバーのパートナーとして一緒に脳へダイブし手助けする。アダムは前回の眠り病によるパンデミックを収束させたルネ・ウィンターとの適合率がずば抜けて良かったことから選出されたのだった。

増え続ける眠り病の感染者達に、アダムたちは実践を兼ねて発症してから日の浅い感染者にダイブすることとなる。感染者の脳内世界・LIMBOと呼ばれ、ダイバーはそれを映像化し、コンパニオンは感染源の場所を突き止める役割がある。LIMBO内での事象はすべて感染者の記憶であり、基本的に変えることはできない。
制限時間がある中で感染源を探るアダムたちだったが、突如LIMBO内の住人たちがアダムを襲撃する。先程はアダムに触れることの出来なかった住人たちはアダムに触れることが出来、反対に触れられたアダムの体は黒く変色する。それは逆転移と呼ばれる現象で、脳が膨張しダイバーたちを意識不明にさせていたもので且つ新型の特徴だった。ルネの能力によって、アダムは一命を取り留める。LIMBO内の住人が襲いかかってくるのは自分だけだと気づいたアダムは囮となることを一方的に宣言し逃げ回る。その間にルネが感染者と会話、トラウマの記憶を消すことで2人は現実世界に帰還したのだった。

現実世界に戻ると、ルネは卒倒する。それは囮となったアダムが逆転移で死にかけていたのをLIMBO内で治療したことによるオーバーヒートだった。一方アダムは過去のトラウマがフラッシュバックしていた。それはLIMBOから現実世界に帰るために、感染者とダイバーたちの3つの脳波を切断するためLIMBO内でルネを殺したことが原因だった。それはコンパニオンであるアダムにしか出来ないことだったが、彼にとって大きな負担でもあった。
目覚めたルネを見舞いにアダムは彼の家を訪れる。そこでアダムはルネがCNASに疑いを持っていると聞かされる。根拠の1つはLIMBO内でアダムのみが狙われ襲われたことである。LIMBOから脱出するためにアダムに殺されないとルネは永遠にLIMBO内に閉じ込められたままである。LIMBO内の感染者は黒い炎に包まれている。ルネはそれが旧型とは異なり、新型は人工的に見えると感じていた。つまりルネは新型が意図的に人によって作られた感染だと考えていた。そして新型感染を拡大させているのは軍直下のCNASであるとルネは推測していたのだった。

線虫のコネクトーム

CNASが信用できないことから、ルネとアダムはルネと旧知の仲である近代感染学の教授をしているドミニク・ウィルソンを訪ねる。アダムはドミニクから旧型の感染経路がある広告のホログラム動画であることを明かされる。加えてその事実は民衆のパニックを避けるために、WHOと政府によって隠蔽されたのだった。
感染対策センターに新型の再発が明るみとなり、CNAS内においてダイブ治療よりも、広く早く患者に対処できる薬の開発が最優先事項となる。自宅待機を命じられたルネとアダムは新規感染者を事前に把握することはできないか、ルネが持つ直観像記憶能力により記憶していた新型患者のカルテを書き出し、分析を始める。アダムが感染者の住所を地図に記すうちに、ルネはそれが「線虫のコネクトーム」の図と一致していることに気づく。「線虫のコネクトーム」をきっかけダイブ技術はこの発見から発展したことから、ダイバーたちの所属するダイバーズギルドのバッジのアイコンとして採用されていたのだった。その図と感染者の住所が一致したことから、ルネたちは新型が人工的に感染させられたことを確信する。

「線虫のコネクトーム」の図からルネとアダムは感染者が近日中に発生する地域を割り出す。身分を偽り、一軒一軒訪問するうちに2人は感染者を発見する。ルネは感染者にこの場でダイブすることにする。治療するとCNASにバレる可能性があるため、あえて治療せず感染者の「見たもの」の共通点探すことにした。CNASよりも先回りするもルネたちは成果を得ることができない。次の感染者候補を探すべく2人はある大学寮を訪れる。そこはアダムの弟・クリスがサマーカレッジで入寮していたのだった。クリスは幸いにも感染しておらず、ホッとしたアダムはそのまま近くの実家を訪問する。そこでアダムは末の弟・ハリーが眠り病に感染していることを発見する。
ハリーはクリスの荷物持ちとして大学寮を訪問しており、そこで感染したのだった。大学寮でハリーが1人きりになった時間が特定されたことから、ルネとアダムはその時間の記憶にダイブすることにする。ダイブ後、ハリーを観察するうちルネは感染源が、紙の表面にコーティングされた電磁波だと突き止める。その紙は青い封筒に入れられていた。感染源が判明したことからダイブを終了しようとするルネに対し、アダムはこのままハリーを治療したいと主張する。ここで治療した場合2人の行動がCNASにバレる可能性があることからルネは反対するが、娘にも同じことができるか、というアダムの言葉にルネは絆されてしまう。

ハリーのトラウマの記憶を見たアダムは眠り病の治療に加え、過去の記憶も消すようルネに頼む。しかしルネはそれを拒否する。ルネは旧型の感染者からESVごと記憶を消していたが、それは良くなかったと考えていた。「過去が現在を作っているんだ」と主張するルネの言葉にアダムは幼少期の記憶がフラッシュバックする。その衝撃によってハリーの記憶はアダムの過去の記憶と混ざってしまう。
アダムの過去の記憶は虐待されていた父親を畑で殴り殺そうとしたことだった。結局父親は死ななかったが、衝動的に人を殺そうとしたアダムは自分を責めていた。「いつか誰かを殺す」と父親に言われていたアダムを、ルネは「いつか陽気な軍人になって人を助ける仕事に就くかも」と励まし現実世界へと誘うのだった。

政府は、眠り病が再発することを発表、世界的なパニックが巻き起こる。一方ルネとアダムは新型が人工的に発症させられていることを世間に公表するため、記者と接触する。記者からは記事にするために証拠が必要だと言われ、アダムの提案ですべてを知っているであろう、トラヴィスの記憶に潜ることとなる。ルネたちはトラヴィスの移動時を狙って誘拐を目論むが、反撃に合いそれぞれ眠らされてしまう。

ルネのトラウマ

2人はトラヴィスの名の下、強制的にダイブさせられてしまう。そしてそのLIMBO内には他のダイバーであるゾエとそのコンパニオン・セスの姿があった。LIMBO内で目覚めたアダムはコンパニオン特有の能力でルネを探す。そこにはルネに謎の注射を打とうとするゾエとセスの姿があった。アダムの機転でルネは助かる。一旦その場を離れようとルネが攻撃を繰り出すとゾエはその攻撃を打ち消してしまう。LIMBO内で改ざんできるダイバーはおらず、ルネはゾエが自分と同じ特殊なダイバーだと認識する。攻撃が効かないことから、アダムはルネを抱えて逃走する。逃走中ルネはゾエの生体コネクトを乗っ取ることを発案する。格闘の末、生体コネクト書き換えまで後一歩となるが、セスの告白で失敗してしまう。それは彼がルネの恋人・アンジェラをダイブ中に殺そうと提案したと言うことだった。恋人の死の真相を知り呆然とするルネに、セスは注射を打ち込むのだった。

事の発端は2年前に、ある眠り病研究者が死亡したことだった。さらに彼女の研究所からは感染予定者のリストが発見された。そしてそのリストの最後には丁寧にルネの名前が囲ってあったのだ。このことから、CNASは新型の眠り病を感染させている犯人はルネへ挑戦しており、ルネの感染を偽装すれば新型の感染拡大を防ぐことができると考えた。それが、ルネをLIMBO内に閉じ込めようとした理由だった。しかし、アンジェラの死の真相を知ったルネの能力は暴走する。ゾエとセスが目覚めた後も生体コネクトなしでアダムはルネのLIMBO内に閉じ込められてしまう。

アダムはルネのLIMBO内で彼とアンジェラの出会いを体感する。アンジェラはルネと高い適合率で採用された経緯があった。幼い頃に母親から銃撃され孤児となったルネは、眠り病研究の第一人者であるエムナント・シュタイナーから、その能力を買われ育てられていた。最初はアンジェラに対して冷たい態度を取っていたルネだったが、養父に口答えし、体罰を受けようとしていたところを彼女に庇われたことをきっかけに、徐々に心を開くのだった。その後、眠り病を治す「スパイスコード」が開発成功し、眠り病は一旦終結する。お役御免となったルネは過酷な労働環境により廃人同然となっていた。そんなルネをアンジェラは引取り、日々介護する。アンジェラの献身的な世話と、笑顔の絶えなかった彼女の涙ながらの懇願によりルネは心を取り戻す。

数年後、ルネの養父・エムナントが死去する。葬式でドミニクと再会したルネはアンジェラが娘を妊娠していることを打ち明ける。ドミニクから祝福を受けるルネを見つめる者がいた。それはエムナントの孫であるジョージ・シュタイナーであった。彼もまたCNASの研究員で他でもないアダムに眠り病のレクチャーをした人物であった。「スパイスコード」によって眠り病患者の数は減ったものの、感染源の記憶そのものを消すため批判もされていた。その状況にトラヴィスは不満に思っていた。そんなトラヴィスは当初からルネに治療させる患者を意図的に選抜しており、ルネは改めてトラヴィスに感染者の減った今こそ平等にルネが治療すべきだと提言する。彼が治療すれば感染者の記憶は消えずに残るからだ。トラヴィスはすべて自分の手でコントロールしたいがゆえそれを一蹴する。それを悟ったルネはCNASを辞めることを宣言し、その場をあとにする。
後日、ルネとアンジェラはトラヴィスに呼ばれ辞める前の最後のダイブを懇願される。それこそがアンジェラの亡くなることとなるダイブであった。

過去の所業と失言により、ルネの能力が暴走しアダムのみならずルネ自身の命が危ない状況にセスは深く反省する。そのことからゾエ、ドミニクと共に2人を救出するために作戦を立てる。2人の命よりも、犯人確保に注力するためトラヴィスはルネのLIMBOに潜ることを禁じていたことから、トラヴィス不在の日にセス達はルネのLIMBOに潜ることとする。

その頃、LIMBO内ではルネとアンジェラが今まさに最後のダイブを行うところであった。アダムの心配をよそにルネとアンジェラは無事帰還する。それを見たアダムはルネが記憶を改ざんしていることに気づく。以前ルネに言われた、未来のために過去の意味は変えられるの意味が違うと主張するアダムの言葉に、ルネは一瞬動きを止める。アダムは記憶に干渉できないものの、彼の言葉をルネは認識することができるのだった。アンジェラを助けられなかったことから、現実世界で生きることに疲れたとルネは涙を流す。そんな彼にアダムは記憶内で見たアンジェラがルネにかけた言葉、自分次第で「未来も変えられる」を引用し、未来を変えるために一緒に帰ろうと言いルネはやっと了承するのだった。そんな2人はゾエとセスは発見する。一触即発かと思いきや、アダムは以前ゾエと会ったことがあると言う。それは足を失い昏睡するアダムのLIMBO内で、ゾエの手によってアダムは何かを注射されていたのだった。ゾエはそれがアダムの命を守るコードだったと話す。混乱するアダム達だったが、ルネはゾエ達が敵ではないと判断し一旦LIMBO内から出ることとする。

真犯人

アダムが目覚めるとそこは屋敷のベットの上であった。ルネに仕えるという執事の説明により、アダムは自分が1ヶ月近く眠っていたことが判明する。ルネはアダムに比べ脳の負担が多いことから未だ眠っているが、いずれ目覚めるという。屋敷はルネが養父・シュタイナーから譲られたものであったから、ルネがシュタイナーにとって親族以上の存在だったのではないかと執事は話すのだった。アダムはセスからルネとアダムの達の死亡届を提出し、2人が生きていることはごく一部の人間のみであることを説明される。そしてルネの死亡届が提出された翌日、アメリカ全土にあるメッセージが送信されていた。それは「もし君が目覚めたら、目覚めの場所へ」というものだった。CNASはこのメッセージが犯人からルネに宛てたメッセージだとし、犯人がルネの死を疑っているのではないかと考えていた。ルネのLIMBO内ですべてを目撃したアダムは「目覚めの場所」はルネが意識混濁から復活した場所だと予想、実際にアダムがその場所に行くと、そこには古びたテディベアが置かれていた。首に巻かれたリボンのみが新しく「おめでとうキング」と記載されていた。

目覚めたルネはアダムからメッセージとテディベアの報告を受ける。テディベアを手にすると、幼い頃の記憶がフラッシュバックするものの詳細が思い出せない。アダム達は犯人がアンジェラの記憶にダイブした重度のストーカーであることを知る。セスが確認したところ、アンジェラが処置室を利用した日の責任者が空欄の日を見つけることが出来た。アンジェラは当時なかった生体コネクトの開発に1人協力していたのだった。ルネの記憶能力からアンジェラを呼びに来た責任者の声をルネが聞いた日が1日だけあったことが判明する。LIMBO内のルネの記憶がとても鮮明だったことを知っているアダムは、僅かな手がかりを求めてルネのLIMBO内にダイブ、過去の記憶からジョージが犯人だと判明する。
犯人がわかったルネたちは、CNASの協力を仰ぐべく、トラヴィスを訪問する。施設内にデータがないことからトラヴィスはジョージが新型のデータを自宅に隠し持っていると確信する。CANS主導でジョージの自宅に突入するも、ジョージは1週間後に新型の感染源をばら撒くという予告と共に自身を新型に感染させていた。

新型に関するデータがすべて消去されておりアダムたちは暗礁に乗り上げる。そんな中、ルネは研究データがジョージの頭の中にあることから彼の記憶にダイブすることを提案する。セスは罠だと反対するが、トラヴィスは他に方法がないとその案に乗る。

対決

翌日、大統領による非常事態宣言を見守ったアダムたちは皆が見守る中、ジョージへのダイブを試みる。ダイブしたアダムたちが目撃したのは、ルネが相続した屋敷の庭にいる幼いルネとジョージであった。ジョージは「目覚めの場所」の木の下にあったものと同じルネのテディベアを強請っていた。会話を楽しむ2人だったが、ジョージはルネの腕に痣を見つける。ルネはジョージの祖父から頻繁に暴力を振るわれていたのだった。憂いを帯びた顔をするルネにジョージは自分と「ずっと一緒にいる」代わり「願いごとを1個叶えてあげる」と提案する。そして彼にジョージは微笑みながら「消しちゃおうよ 全部」と言う。ルネと指切りをして約束を交わしたジョージは、その後二度と屋敷に来ることはなくなった。

当時を思い出したルネは、ジョージの暴走のきっかけは自分だと責める。否定するアダムだったが、空間が歪みアダムたちはジョージが新型を初めて感染させた現場へと誘われる。アダムたちが推理した通り、1人目の感染者はジョージの共同研究者の女性であった。現場には研究データもあったため、生体コネクトを使用してCNASに送ろうとするルネだったが妨害される。LIMBO内の人物に干渉できるルネは新型感染の成功を喜ぶジョージに話しかける。幼い頃の約束を果たせるとジョージは笑顔を見せる。ルネはそれを「俺はこんなこと望んでない」拒絶する。コンパニオンとしてダイブしているアダムも不要だと、再び空間を歪ませアダムだけを別空間に飛ばしてしまう。そこまで自分に執着することをルネは理解できないと言うが、ジョージは祖父の体罰からルネが庇ってくれた過去を思い出しながら「あなたを守りたいんです」と笑うのだった。
何とか解決の糸口を見つけようと、ルネはジョージに悟られないよう慎重に会話を進める。そんなルネの心情も知らずに浮かれたジョージは会話の流れから、眠り病解析の鍵となるアルゴリズムをルネに説明しだす。提示された膨大なデータを、以前アダムに褒められた記憶能力でルネはすべて記憶することにする。

一方別空間に飛ばされたアダムはLIMBO内のCNAS施設で、ジョージの意思により職員たちに襲撃されていた。追い詰められた瞬間ルネからの呼びかけがあり、すんでのところでアダムはコンパニオンの能力でルネのいる空間へと戻ることができた。アダムに邪魔をされたジョージは激怒し、ルネの生体コネクトを破壊した上でアダムを襲う。しかしアダムはルネと阿吽の呼吸でジョージを反撃、LIMBO内で殺すことに成功する。刺殺されたジョージは幼い頃の姿となり、約束したから「ルネ 一緒に来て」と懇願する。そんなジョージの手を握りながら一緒に行けない、苦しい現実の中であっても「もう少しやってみたい」と言う。そんなルネの姿に幼いジョージは涙を流しながら「嘘つき」と呟き消えるのだった。

終幕

崩壊するジョージのLIMBOの中、生体コネクトを破壊されたことで現実に戻れない2人だけがいた。アダムはジョージのLIMBOに潜る前にドミニクから特別なナイフを預かっていた。それはアダムの脳波を足場に強制的にルネを目覚めさせるものだった。ルネさえ生存すれば、今までのように新しく適合するコンパニオンを探せばよいことから、最悪アダムは犠牲になるよう暗に促しているようなものだった。全てを理解したアダムは何度も謝罪するドミニクの肩を優しく叩くのだった。

ドミニクから預かった特別なナイフでルネを刺しながら、「自分は一緒に行けない」と説明するアダムにルネは納得しない。「ぜってえお前を許さない」と言うルネをアダムは強く抱きしめ「後は頼んだ」と、とどめを刺すのだった。

ジョージのLIMBOから強制退出させられたルネが目覚めると、アダムがまだ生きていると聞かされる。ドミニクがアダムに渡したナイフを使った場合、すぐにアダムの脳は機能停止し死ぬとされていたのが、アダムは昏睡するに留まったのだ。おそらくゾエがかつてアダムに打った彼を守るためのコードとナイフの力が拮抗しているのが原因と思われた。しかし目覚める可能性は数%で、植物状態のまま一生を終えるのではないかとCNAS職員たちは考えていた。しかしルネは諦めず、養父から相続した屋敷でアダムの世話をし続けるのだった。新型の眠り病はルネが記憶したデータからワクチンコードが作成され、それ以降の感染は防がれた。また感染拡大を隠蔽したとして、事件から1年半後にトラヴィスやセスたち関係者は裁判にかけられていた。トラヴィスはCNAS維持のため、すべての責任を負うことを決意したようである。

事件から3年後のある日、いつも通りアダムの世話をしに来たルネに話しかける者がいた。それは目覚めたアダムだった。3年という月日がなかったかのように振る舞うアダムに、ルネは二度と自分を犠牲にするなと叱る。1人で抱え込まず一緒に考えることこそが相棒だと言うルネに、アダムは筋力の衰えた腕を懸命に上げ「今後もよろしく」と握手を求めるのだった。

『LIMBO THE KING』の登場人物

主要登場人物

アダム・ガーフィールド

海兵で二等兵曹。坊主に近いツーブロックの高身長男性。任務中の事故により片足を失い、退役を覚悟する。しかし眠り病治療の伝説的存在「キング」との適合率が高かったことから、彼のコンパニオンとして軍に残ることとなる。幼少期から父親に体罰や罵倒などの虐待されており、畑で父親を瓶で殺しかけたことが大きなトラウマとなっている。現在実家には祖母と妹1人、弟2人が暮らしている。コミュニケーション能力が高く、すぐに誰とでも打ち解けられる。人を拒絶しがちなルネにも果敢に挑み「クソネイビー」と呼ばれることもある。

ルネ・ウィンター

8年前の眠り病を収束させた通称「LIMBO THE KING」または「ゴールデンゲートの英雄」とも呼ばれるプラチナブロンドの細身の男性。本人はダイバーから引退したつもりだったが、眠り病が再び猛威を奮ったため、娘の存在を口実に半ば無理やり現場に復帰させられた。全ダイバーの中でルネのみがLIMBO内で直接感染者と会話することが出来、眠り病に至るウイルスであるESVを消すことができる。それは一命を取り留めたとしても記憶の一部を失う可能性のある感染者たちにとって、最も後遺症のない治療であった。ルネは8歳の時に右前頭骨を撃ち抜かれ重症を負ったことが、ダイバーとしての能力が高いとする研究者もいる。ココペリという名のプードル犬を、LIMBO内での生体コネクトとし、サポートをさせている。毎週木曜ダイナーでハッシュブラウンと卵2つを食べることが習慣化していた。シャーリーという名のハチワレ猫を飼育している。直観像記憶の持ち主で一度見たものは忘れない。

CNAS関係者

palmym
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@palmym

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