黒薔薇アリス(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ
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『黒薔薇アリス』とは、2008年より『月刊プリンセス』で連載を開始した水城せとなによるゴシック系少女漫画。
1900年初頭のウィーン。人気のテノール歌手だったディミトリは、事故で命を落としたことをきっかけに、「吸血樹」と呼ばれるヴァンパイアになってしまう。そして、仲間のレオ・櫂・玲二の3人とともに、現代の日本で高校教師をしていた菊川梓に繁殖の協力を求めるというストーリー。魅力あふれる男性キャラクターとアンティーク・ゴシック調の描写で多くの女性から人気を集めている作品。
『黒薔薇アリス』の概要
『黒薔薇アリス』とは、水城瀬せとなによる少女漫画。1900年代のヨーロッパと現代の日本が交差するゴシック・ヴァンパイア・ストーリーで、『月刊プリンセス』の2008年4月号から2011年9月号まで第一部が連載されていた。
第一部が完結し、単行本全6巻が発売された後、第二部となる『黒薔薇アリス D.C.al fine』が『月刊フラワーズ』2020年6月号より連載された。2016年には第一部のコミックスの新装版が発売されている。また、2009年には、ドラマCDが制作・発売され、2017年5月には本作の舞台化作品が上演された。
物語は、1900年初頭のウィーンから始まる。ウィーンで人気のテノール歌手であったディミトリ・レヴァンドフスキがひょんなことから事故にあい、吸血樹となる。
描かれるのは、いわゆる血を求めるヴァンパイア・吸血鬼の話ではなく、吸血樹と呼ばれる生き物に寄生された男性たちのストーリー。ディミトリは世界各国を放浪した後、日本に居を落ち着ける。渋谷で他の4人の吸血樹たちと暮らし始めるがやがて寿命が近づいてくる。吸血樹は首に年輪のような痣が一周するか、繁殖(SEX)をするとその命を落とす。命が尽きる前に繁殖すべく、ディミトリは日本で高校教師をしていた菊川梓(きくかわ あずさ)に目をつけ、ウィーンから連れ出してきた幼馴染で親友の婚約者であったアニエスカにその魂を移す。そしてアニエスカとして目覚めた梓が、自らの繁殖相手を探していく様子が描かれる。
最終的に梓がどの吸血樹と繁殖をするのか、という登場人物たちの想いの交差に惹き込まれてしまうところが本作の魅力である。また、ウィーンを彷彿とさせるアンティークな建物の描写や、吸血樹となったディミトリと梓のせつない恋愛模様の行方が気になり多くの女性を魅了した。
『黒薔薇アリス』のあらすじ・ストーリー
物語の始まり ウィーン編
1908年のウィーン。流浪の民ロマ出身であるディミトリ・レヴァンドフスキは、幼少期にマイアー侯爵に買われ、オペラ歌手として活躍していた。兄弟のように一緒に育った侯爵の息子、テオドールとともに楽しい日々を送っていた。テオドールと彼の婚約者であるアニエスカ・フォン・ローゼンフェルトの二人が、彼女の16歳の誕生日に初めて一夜を共にしたことを聞き、アニエスカに淡い恋心を抱いていたディミトリは動揺。馬車に轢かれて命を落としてしまう。
しかし、ディミトリは、吸血樹となって目を覚ます。吸血樹は命を落とした人物に寄生し人間の血や死肉から養分を吸って生きる生物だ。特別な力を得ることができ、c(ツェー)の音程で出す声で人を服従させることができる。ディミトリがそれを知らずにオペラを歌ったため、仲間が大量に自殺してしまった。絶望したディミトリは吸血樹が命を終える方法、女性を抱き繁殖することで、自らの生を終えようとする。ディミトリはアニエスカと繁殖するためにとテオドールのもとを訪れるが、彼と口論になってしまい、能力でテオドールを自殺に追い込んでしまった。その様子を見たアニエスカも自刃してしまう。アニエスカを死なせたくなかったディミトリは、吸血樹について指南してくれたマクシミリアンを頼り、アニエスカを魂の抜けた不老不死の人形とさせるのであった。
高校教師と生徒の恋 菊川梓編
高校教師である菊川梓(きくかわあずさ)は、受け持つ生徒の生島光哉(いくしまこうや)から想いを告げられ困惑していた。真っ直ぐでその名の通り光のような彼に惹かれつつも一回り年下の彼の想いは一時の迷いでないかと不安も感じ、教師として想いに応えるべきではないと思っていた。しかし、彼の将来を案じ、きっぱり断った直後二人は交通事故にあってしまう。一命を取り留めた梓だったが、光哉は瀕死の状態であった。意識が朦朧する中、梓のもとにディミトリが現れ、自身の願いを叶えてほしいと懇願する。梓は、願いを受け入れる代わりに、光哉を助けるようにいう。ディミトリは、吸血樹の力を使い、光哉を助けた。
菊川梓の目覚めとヴァンパイアとの繁殖
梓の魂を抜き取り、人形と化していたアニエスカの身体に移したディミトリ。時間をかけ、魂を定着させた梓は目を覚ます。その姿に困惑する梓だったが、光哉が無事生きていることを確認し、ディミトリの願いを受け入れることを改めて宣言する。ディミトリの願いは、同じ邸宅に住むレオと双子の兄弟玲二(れいじ)・櫂(かい)の中から繁殖相手を決め、繁殖をすることであった。吸血樹と繁殖、すなわち肉体関係をもつとその吸血樹は命を落とす。その1ヶ月間女性は種を体内で育て、死ぬ。女性の体内で育った種は女性の死後次の肉体を求めて旅立っていく。生前の吸血樹と女性の吸血樹に対する気持ちや考え方が大きく影響するため、じっくり相手を選んで欲しいとディミトリから指南される。そして、吸血樹4人と梓との生活が始まり、梓は生前飼っていた猫の名前・チェシャにちなんで「アリス」と名乗るようになったのだった。
レオの死と生島光哉の来店
アリスに選ばれるため、レオ・玲二・櫂はそれぞれアピールを始める。レオはお兄さんポジションでアリスに尽くす。そして、玲二・櫂はともに得意の料理でアリスをもてなす。しかし、実はレオには寿命が近づいていた。吸血樹の寿命は首に現れる痣で決められており、その痣が首を一周した瞬間首が落ちる。レオの痣の進みは人より少し早く、アリスに選ばれる前に寿命がきてしまう。レオは玲二・櫂が営んでいたカフェ「静寂館」に通っていた鳴沢瞳子(なるさわとうこ)と繁殖し、命を終えた。レオが亡くなり、瞳子が繁殖を終えてしばらくして「静寂館」にアリスの弾くピアノの音色を聞きつけた光哉が来店する。姿形は違うがアリスのことが梓に見えてしまうことを不思議に感じ、自分自身でも信じられないが、アリスが梓であると確信していた。アリスを梓と思い迫る光哉を拒否するアリスだったが、梓が亡くなってからの彼の思いを聞き、アリスは後悔の念から彼を受け入れ一晩一緒に過ごしてしまう。それにより、梓と一緒に過ごせると勘違いしてしまった光哉を、アリスは完全に拒絶し追い出すのだった。
櫂・玲二の過去とアリスの決断
アリスと光哉のやりとりをきっかけに、亡くなる前後の記憶が薄れていた玲二に記憶が戻る。実は、櫂・玲二には幼馴染の女の子あかねがいた。玲二はあかねと想い合っていたが、自身が病弱であったため、あかねと結婚することも難しい状態であった。櫂もあかねに想いを寄せていたが、あかねが玲二しかみていないことに嫉妬し、むりやりあかねを犯してしまう。その現場をみた玲二は二人を銃殺していたのだ。記憶を取り戻し、櫂の裏切りに気づいて玲二は自暴自棄になってしまう。
アリスは、光哉と肉体関係をもったことを後悔しディミトリに謝罪するがその謝罪がディミトリの癇に障ってしまう。アリス自身は、ディミトリは自分を通じてアニエスカを想っていると想っていたが、ディミトリの中にはアニエスカの記憶が薄れ、アリス自身を想い始めていた。アリスのその勘違いに怒るディミトリであったが、正直に、アニエスカではなく今は、アリス自身を愛していると伝えるのであった。その気持ちに打たれ、アリスもディミトリを選ぶことを決断したのだった。
第2部 黒薔薇アリス D.C.al fine
ディミトリとアリスが繁殖してから2年後の渋谷。「静寂館」に二人の種を受け継いだ山本黎司(やまもとれいじ)が訪ねてくる。彼を迎えた櫂は、黎司に彼の種であるディミトリとアリスの話を始める。
アリスがディミトリを選んだ後、ディミトリが寿命を迎えるまで二人は、慎ましく幸せな日々を過ごしていた。しかし、そこに、ディミトリの種であるブラッドレイにマクシミリアンとともに仕えていたエドヴァルドが吸血樹となったテオドールとともに訪れる。ディミトリがウィーンを離れたあと、テオドールは、芸術家の発掘や美術品を扱いながら世界を転々としていた。テオドールはほどなく寿命を迎え、ディミトリはアリスと繁殖するように提案するが、寿命のままに生きることを美学とし拒否をした。
一人になったエドヴァルドのもとに玲二が訪れ、一緒に過ごすが、エドヴァルドがディミトリを殺す可能性があることがわかり、吸血樹の未来のため、ディミトリとアリスの種を守るため、エドヴァルドを脅し自刃をする。
その後、寿命を迎えたディミトリはアリスと繁殖を行うのであった。
『黒薔薇アリス』の登場人物・キャラクター
吸血樹たち
ディミトリ・レヴァンドフスキ
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CV: 中村悠一
本作の主人公の1人、26歳。1908年、ウィーンで活躍していた人気テノール歌手。実は、中東欧を起源とされる流浪の民ロマの出身である。ハンガリーで歌っていた時にたまたまマイアー侯爵に気に入られ、買われた。侯爵に礼儀作法や学問教養から歌の稽古までつけてもらい感謝をしている。侯爵の息子であるテオドールとは兄弟のように育ち、唯一無二の親友となった。テオドールの婚約者であるアニエスカとも幼少の頃から親交があり、美しい姿と声で歌うディミトリに「…あなたは天使?」と聞かれ、身分に負い目のあったディミトリはその言葉を聞き、アニエスカに恋心を抱くようになった。
アニエスカをないがしろにするテオドールに怒り、家を出た際不慮の事故にあい、吸血樹となってしまった。主となる人物の種が寄生することで吸血樹となる。ディミトリの主人はブラッドレイという吸血樹で彼が持っていたc(ツェー)の音程で出す声で、人間の心を操り、ヴァンパイアにその身を捧げることを強要する力を引き継いでいる。その力を知らず、舞台でその力を使ってしまい大量殺戮事件が起きてしまった後、ディミトリはウィーンを離れ、オカルト好きであった日本人の和泉小路伯爵(いずみこうじはくしゃく)の元を訪ね、養子となった。多くの関係者を殺してしまったことに落ち込み、自身の命を終えるため、アニエスカと繁殖しようとした際、アニエスカはディミトリを拒否するために自刃してしまった。アニエスカを助けたい一心で吸血樹の力を使い、魂が抜けた人形のような状態で保存させ、日本に連れてきている。
日本で居を構えた際、菊川梓を見出し、アニエスカの身体に魂をいれ、吸血樹の伴侶となり繁殖をするよう依頼した。もともとは梓にはレオと繁殖することを想定していたが、梓が拒否した。その後お互い出会った頃から想い合っていたことがわかり結ばれ、繁殖しその生命を終えた。
マクシミリアン
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CV:諏訪部順一
吸血樹の1人。ヴァンパイアになったディミトリの種となったブラッドレイに仕えていた。ディミトリを迎え、吸血樹について詳しく伝える。ディミトリが、事件を起こした際、彼に懇願されアニエスカを不老不死の肉体に変えディミトリに変わり世話をしていた。厳しく近寄りがたい雰囲気だが、嘘をつかない誠実な人物。
ディミトリとともに、日本にわたり、和泉小路伯爵のもとで過ごすうちに寿命を迎え、和泉小路伯爵の一人娘である彰子(あきこ)と繁殖を行った。
レオ/楠瀬太一郎(くすのせ たいちろう)
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目次 - Contents
- 『黒薔薇アリス』の概要
- 『黒薔薇アリス』のあらすじ・ストーリー
- 物語の始まり ウィーン編
- 高校教師と生徒の恋 菊川梓編
- 菊川梓の目覚めとヴァンパイアとの繁殖
- レオの死と生島光哉の来店
- 櫂・玲二の過去とアリスの決断
- 第2部 黒薔薇アリス D.C.al fine
- 『黒薔薇アリス』の登場人物・キャラクター
- 吸血樹たち
- ディミトリ・レヴァンドフスキ
- マクシミリアン
- レオ/楠瀬太一郎(くすのせ たいちろう)
- 櫂(かい)
- 玲二(れいじ)
- ブラッドレイ
- テオドール
- エドヴァルド
- クラレンス
- 吸血樹の周辺人物
- アリス
- アニエスカ・フォン・ローゼンフェルト
- 菊川 梓(きくかわ あずさ)
- チェシャ
- マイアー侯爵
- 生島 光哉(いくしま こうや)
- 鳴沢 瞳子(なるさわ とうこ)
- あかね
- 山本 黎司(やまもと れいじ)
- ありさ
- ディミトリの周辺人物
- 和泉小路伯爵(いずみこうじはくしゃく)
- 和泉小路 彰子 (いずみこうじ あきこ)
- 中西 灯(なかにし あかり)
- ローレンツ侯爵夫人
- 『黒薔薇アリス』の用語
- 吸血樹関連の用語
- 吸血樹(きゅうけつき)/ヴァンパイア
- 遣い魔(つかいま)
- 繁殖
- 年輪
- 静寂館(しじまかん)
- 『黒薔薇アリス』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- アニエスカ・フォン・ローゼンフェルト 「…あなたは天使?」
- 菊川梓「何でもするから早く光哉を助けて!!」
- アリス「理性の羅針盤を狂わせる人を選んだの!!」
- 『黒薔薇アリス』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 作品の舞台は渋谷
- 作者の長年の夢であったヒロイン像
- 2017年に舞台化され六本木で上演