防御力ゼロの嫁(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『防御力ゼロの嫁』とは矢野トシノリが2017年、PIXIVとニコニコ静画に掲載した4コマ漫画から始まったWEB漫画である。主人公である柳瀬川朱里は、1歳年下の高坂攻輝と同棲期間を経て夫婦となった。毎日全力かつ元気な朱里は大好きアピールを攻輝に送るものの、攻輝もまた朱里が大好きなのでそれを上回る言葉や行動で厚意のカウンターを繰り出す。想定外の愛のこもった言動により、いつも朱里は悩殺されている。新婚である高坂夫妻のラブラブな様子を描いた日常系作品だ。

『防御力ゼロの嫁』の概要

『防御力ゼロの嫁』とは、矢野トシノリが書いたWeb漫画。2017年11月26日にPIXIVとニコニコ静画に掲載した4コマ漫画が元となっている。両サイトに2022年7月31日まで連載を続けて完結した。また作者自身が運営する同人サークル「ほしまきProject」にてシリーズをまとめた同人誌作品を2018年8月10日より全19巻を発売し、その年のニコニコ漫画年間ランキング2018ユーザーマンガ部門ベスト100で第3位を受賞した。さらに2019年4月26日に一迅社から同人誌作品に書き下ろしのストーリーを加えた全7巻になる商用単行本の販売も開始した。また作者である矢野トシノリは作家活動に加えて、自身が書いたアバターを使った作家系Vtuber天野リノとして配信活動も行っている。

新婚ホヤホヤで夫がとにかく大好きな本作の主人公高坂朱里(たかさかじゅり)があの手この手を使い大好きであることをアピールする。ところが夫である高坂攻輝(たかさかこうき)から想像を上回る大胆なアピールを受けて朱里が照れて戸惑う。タイトルの「防御力ゼロ」はこれを指している。容姿端麗でとにかく元気で振る舞い、家事全般もこなせる完璧な奥さんが旦那からの「好意のカウンター」により悩殺されてしまうギャップを楽しむ日常系漫画だ。日常を過ごしていく中で様々なイベントやトラブルが起こるがお互いが協力して乗り超える夫婦の絆の強さも描かれている。笑いと涙、ちょっぴりお色気ありのとある夫婦の物語である。

この漫画は元々存在していた4コマ作品を商業用単行本に集約した作品なので1話完結型の内容になっている。例外として一部の話は完結せず、数話続く内容も含まれている。

『防御力ゼロの嫁』のあらすじ・ストーリー

高坂夫婦の新婚生活

ラブラブな朱里(右)と輝攻(左)の2人。

この物語は主人公である高坂朱里(たかさかじゅり)の後の夫となる高坂攻輝(たかさかこうき)の大胆なプロポーズから始まる。一日中朱里から大好きアピールをされた日の夜、ベッドに誘う朱里の目の前で唐突に婚約指輪を差し出すプロポーズだった。驚きつつもOKをして結ばれた2人はラブラブな夫婦生活を送っている。いつも元気でパワフルな専業主婦の朱里は、とにかく攻輝が大好きだ。いつも攻輝の事を考えながら得意な家事をこなしている。そんな朱里と結ばれた攻輝は、1歳年下だがしっかり者で朱里の事を大切に思っている。新婚ホヤホヤで朱里は大好きアピールを欠かさないが、攻輝の素直な性格と大胆な行動力から繰り出される「厚意のカウンター」によっていつも朱里は悩殺されている。
食べ終えた愛妻弁当の中に感謝を伝える手紙を忍ばせたり、朱里からマッサージを提案されるものの最終的には攻輝のマッサージテクニックでそのまま骨抜きにされる。結婚後も2人は変わらず、仲良くラブラブで過ごしているのだった。

日常生活以外にもバレンタインデーでは愛の籠った手作りチョコを口移しで渡したり、逆にホワイトデーでは攻輝が「朱里さん自由券」を渡して1日のんびりしてもらう日を設けたりと、相手を気遣うプレゼントを渡し合う仲の良い夫婦だ。また、ハロウィンでは朱里の趣味であるコスプレを駆使して大胆な姿で攻輝をお出迎えしたり、クリスマスでは体調を崩した朱里に代わって攻輝が家事をしたりと、一年を通してラブラブなやりとりだけではなく、お互いが協力して助け合う夫婦の姿がそこにはあった。

ある日先輩夫婦である成増みずほ(なりますみずほ)と成増一郎(なりますいちろう)夫妻の提案で、高坂夫妻と攻輝の妹の高坂響子(たかさかきょうこ)とその彼氏である朝霞大(あさかひろし)の3組で温泉旅行に出掛ける事になった。昼間は海水浴で思いっきり遊んで夜は温泉旅館へ。温泉に浸かりながら、響子がなぜ朱里を師匠と呼ぶのか、夜はどんな感じで誘っているのか、といったガールズトークで盛り上がる女性陣。質問に対するみずほや響子の返答を聞いた朱里は、夫婦やカップルによって悩みや問題が全然違う事を初めて痛感したのであった。

高坂夫婦の心境と生活の変化

周囲のキャラクター達と楽しく幸せな日常を送っていた高坂夫妻。お正月休みで朱里の実家である柳瀬川家に帰省する。家の中が騒がしく、出迎えてくれた朱里の父である柳瀬川治(やなせがわおさむ)が見慣れない子供を抱っこしていた。話を聞くと、朱里の双子の姉である下赤塚朱美(しもあかつかあけみ)の子供で名前は下赤塚歩(しもあかつかあゆむ)。旦那が長期出張で自宅にいない為、初孫の顔を見せに帰省していた。遠くない将来に朱里との子供が欲しいと思っていた攻輝は、歩の世話を率先して行う。子育てに前向きな攻輝を、朱里と朱美は驚いた様子で見ていた。

そんなことがあった後日、朱美から歩を1日預かって欲しいとお願いされる。悩む朱里と攻輝だったが、子育ての練習として預かる事になった。やんちゃな男の子のお世話は想像をはるかに超えていた。朱美が戻ると疲れ果てた2人がそこにいた。子供がいる生活は楽しい反面、今は2人の時間を大切にしたいと改めて思う朱里と攻輝だった。

疑似子育て体験があって以来、今まで以上にラブラブな日常を送っていた。そんなある日、職場の上司だった鶴瀬真咲(つるせまさき)から復職の誘いを受ける。攻輝と相談して、家事の分担と仕事で無理をしない事を条件で職場に復帰することになった。後日採用に関しての打ち合わせで合流した真咲と高坂夫妻。攻輝はセクハラに関して朱里を心配するが、「不逞な輩がいれば私が断罪する。この『鶴の目』が届く範囲はな!」この真咲の心強い言葉でひとまず胸を撫でおろす。そんな真咲はお互いを大切に思う夫婦を間近で見て、密かに結婚に対して憧れを持つのであった。

職場に復帰して忙しい毎日を過ごしていた高坂夫婦が帰宅の途中、攻輝の学生時代の幼馴染である池袋成美(いけぶくろなるみ)と偶然出会う。自分の旦那を「こーくん」呼びする馴れ馴れしい態度やスキンシップが激しい所。何より自分の知らない攻輝の学生時代を知っている成美に羨ましさを覚えつつ、焼きもちを焼く。成美から初めて聞いた学生時代の攻輝は、今と同じような堂々としてストレートに物を言う性格ではなく、すぐ同級生に泣かされる弱虫で朱里のイメージとかけ離れていた。そんな泣き虫だった攻輝を成美が守っていたのだった。その後、攻輝の実家でアルバムを見せながら高校の体育祭の借り物競争で学ランを奪われた思い出や、守ってもらっていた成美に対して好意のような気持ちを持っていた事を朱里に打ち明けた。攻輝の新たな一面を知った朱里は、改めて嫁として攻輝を支えていこうと決意するのであった。

防御力ゼロの嫁から防御力ゼロの母へ

婚活の為の第一歩としてマッチングアプリを始めた真咲。朱里が相談に乗り、無事解決したのでお礼としてゴスロリ衣装をプレゼントされた。初めて見るゴスロリ服の朱里が魅力的過ぎて、攻輝は大興奮する。その後、興味本位で攻輝は朱里のワンピースを着た。中性的な顔立ちや細めのスタイルを見て、攻輝を女装させることにした朱里。メイクをして髪を整えた攻輝の女装は完璧。たまたま訪ねてきた成増一郎に「抱ける!」と言わせる程だった。後にも先にも攻輝の女装はここでしか見ることが出来ない。コスプレが趣味の朱里は夏祭りの浴衣姿、体力作りのスポーツでテニスウェア。会社の同僚たちと行ったリゾートプールでは水着、攻輝をおもてなしするために着たスク水と今まで以上に多くのコスチュームを披露した。

休日の昼下がり、コンビニへ向かう攻輝が事故に巻き込まれてしまう。命に別状は無いものの、足の骨折で急遽入院することに。いつも側にいた攻輝と離れ離れで過ごす朱里。仕事に集中して気を紛らわせようとするものの、手につかず寂しさのあまり次第に元気も無くなっていく。家に帰っても誰もいない為、気分転換も兼ねて帰省をした。突然の帰省で驚く両親だったが、実家での生活で両親のありがたみを存分に味わうと共に孤独感も薄れていった。攻輝の退院の連絡を受け、落ち着きを取り戻した朱里は、妻として攻輝を支える決意を胸に実家を出るのだった。

攻輝の怪我も完治し、朱里と攻輝は新たな家族を迎えるべく妊活を始める。徹底した準備と行為、病院で相談も行ったがなかなか上手くいかない。何度やってもダメなのは自分のせいなのではないかと攻輝は自分を責める。それを見た朱里は自分から強引にホテルに誘う。攻輝と抱き合い激励して「攻輝さんの子供が欲しい!」と自分の思いをぶつけた。まっすぐな愛する妻の思いに自信を取り戻して妊活を再開。やがて懐妊したことが分かり、それぞれの両親や兄弟、職場の同僚たちに報告。特に高坂家の両親は初孫になるので大喜びだった。朱美に報告した際、歩にもお腹に赤ちゃんがいる事を伝えたら「うん、ぼくたちなかよくする」と身籠っている子供が双子である事を示唆した。子供の感性に驚く朱里と攻輝であった。つわりで動けなくなったり体調を崩すことがあれば率先して動く攻輝。母子手帳を受け取り妊婦になった事を改めて実感し、育休に入り夫婦共に忙しい日々が過ぎていった。そして予定日より早く、男の子と女の子の双子を無事出産した。初めて我が子を抱きかかえた朱里と攻輝はその小ささと可愛さに驚きつつ、感慨深い気持ちになった。「防御力ゼロの嫁」は「防御力ゼロの母」になるのであった。

『防御力ゼロの嫁』の登場人物・キャラクター

高坂夫妻

高坂朱里(たかさかじゅり)

本作の主人公で防御力ゼロの嫁。旧姓は柳瀬川で結婚前の年齢は27歳である。新婚ホヤホヤの姉さん女房。攻輝をグイグイ引っ張ろうとするがいつも厚意のカウンターを受けて撃沈する。女系家族で女子高に通っていたため異性との接点が無く免疫が無い。積極的な性格を持つ姉と仲が悪いわけでは無いがぶつかることもしばしば。

高校卒業後は男性に負けたくない、弱い所を見られたくない一心でバリバリ働いてキャリアウーマン兼ムードメーカーとして職場内で目立っていた。第1話で攻輝からプロポーズされ結婚する。子供が早く欲しい2人の考えで結婚後は専業主婦になった。

高坂攻輝(たかさかこうき)

朱里の夫で1歳年下の高坂家長男。いつも朱里を第一に考える優しい性格の持ち主で、困ったり迷ったりする時はまず朱里に意見を仰ぐ。普段は見えないが筋肉質(腹筋が割れている)な体つきをしているので脱ぐだけで朱里は照れる。とことん素直でお礼や好意はストレートに伝える所と尋常ではない行動力でいつも朱里の予想をはるかに超えてくる。嫁が防御力ゼロなら旦那は攻撃力カンスト(上限最大値)である。

成増夫妻

成増みずほ(なりますみずほ)

朱里の女子高時代の先輩。朱里の1つ年上でロングヘアが美しい上品な雰囲気を漂わせる。既婚者仲間でもあり危なっかしい朱里を気にかけてたまに高坂家に遊びに来る。

趣味でボクシングに通っていて引き締まったスタイルは朱里と違った方向で魅力的だ。デリカシーの無い夫の言動に対してツッコミ(全力の右パンチ)をして黙らせる事がよくある。

成増一郎(なりますいちろう)

Koala_Ishitsuka3
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@Koala_Ishitsuka3

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