鬼の花嫁(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『鬼の花嫁』とはあやかしと人間が共存する世界での物語である。
平凡な高校生の柚子(ゆず)は両親から不当な扱いを受けて育ち、妖狐の花嫁に選ばれた妹の花梨(かりん)は溺愛されていた。ある日、柚子は優しく接してくれる祖父母からの誕生日プレゼントのワンピースを、花梨に破かれてしまう。そんな花梨に柚子は手を上げてしまい家を飛び出す。そして、あやかしの中で最上位に位置する鬼龍院一族の次期当主・鬼龍院玲夜(きりゅういん れいや)と偶然出会う。そのとき柚子は玲夜から「会いたかった、俺の花嫁」と告げられる。

『鬼の花嫁』の概要

『鬼の花嫁』は、noicomiにて富樫じゅんによるコミカライズが2021年12月より連載された、クレハによる小説でイラストは白谷ゆうが担当している。略称は「鬼花」である。コミックシーモア年間ランキング2022少女マンガ部門では1位を獲得し、同サイトによるみんなが選ぶ!!電子コミック大賞2023では大賞を受賞。さらに第7回みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞では3位を獲得している。小説はノベマ!にて2019年から連載され、書籍版はスターツ出版文庫にて2020年10月から刊行されている。「第1回ノベマ!キャラクター短編小説コンテスト」では優秀賞を受賞している。また、はまぎんホール・ヴィアマーレにて本作の朗読劇が2023年11月18日と19日に上演された。(一部キャストは日替わりで行われている)

あやかしと人間が共存する架空の日本が舞台である。そんな世界で生きる平凡な高校生の柚子は両親から不当な扱いを受け育つ。一方、妖狐の花嫁に選ばれた妹の花梨ばかりが溺愛されていた。家族から必要とされない柚子は誰かに必要とされることを求めていた。そんな柚子に告白してきたのが大和(やまと)だった。誰かに必要とされていると感じた柚子は告白を受け入れる。しかしその後、恋人になった大和から花梨に一目惚れしたことが理由で別れを告げられてしまう。しばらくして柚子は祖父母から誕生日プレゼントにワンピースを貰う。祖父母は柚子が幼いときから優しく接してくれる唯一の存在である。しかし、花梨からそのワンピースをデートに着るために貸すようにせがまれる。そして柚子がこれを拒否したことから姉妹喧嘩へと発展し、結果的にワンピースが破れたことで(コミカライズでは花梨がワンピースをゴミ箱に捨てる描写が追加されている)激怒した柚子は花梨に手を上げる。そのことを知った妖狐のあやかし・狐月瑶太(こげつ ようた)は、自身の花嫁である花梨が傷つけられたことで激怒する。そして柚子に炎を浴びせ、柚子は手に火傷を負ってしまう。こうして家では誰からも愛されず、必要ともされないことへの絶望感から家を飛び出した柚子は、あやかしの中で最上位に位置する鬼龍院一族の次期当主・鬼龍院玲夜と偶然出会う。そして、柚子は玲夜から「会いたかった、俺の花嫁」と告げられ溺愛されていく。平凡な高校生だった柚子が鬼龍院玲夜と出会い、愛されて必要とされることで自分の居場所や存在価値を見つけていく物語である。

『鬼の花嫁』のあらすじ・ストーリー

出会い

あやかしはその美貌と能力で社会の中枢を担っている。その中でも特に位の高いあやかしの花嫁に選ばれることは、人間の女性にとって最高の名誉とされていた。花嫁はあやかしから生涯にわたって無償の愛を注がれ、一族にとっての宝として大切にされる唯一の存在である。物語の主人公である女子高校生・柚子(ゆず)は、家族から蔑ろにされ、愛されぬ日々を送っていた。その理由は両親の関心が全て妹である花梨(かりん)に向けられていたからだ。社交的で愛想が良く、甘え上手な花梨なら必ずあやかしの花嫁に選ばれると両親は信じていた。そのため借金をしてまで、あやかしが通う学園に花梨を通わせていた。花梨は両親の思った通り、妖狐のあやかしである孤月瑶太(こげつ ようた)の花嫁に選ばれることになる。妖狐のあやかしはあやかしの中でも上位の存在で、資産家でもあるため花嫁の家というだけで多額の援助が与えられていた。そのため両親は花梨のわがままを見過ごし、花梨を中心に家の中が回り始めた。それでも柚子には祖父母という心の支えがあった。祖父母は柚子が幼い頃から気にかける存在で、両親が祝ってくれない柚子の誕生日をいつも祝ってくれていた。今回の誕生日にもらったワンピースを柚子はとても嬉しく思っていたが、花梨に見つけられてしまう。譲って欲しいとせがむ花梨と抵抗する柚子で喧嘩になりワンピースは破けてしまう。そのとき柚子は花梨に手を上げてしまい、そのことを知った瑶太はあやかしの力を使って、柚子の右腕に火をつける。家の中に味方はいないと絶望した柚子はそのまま家を飛び出してしまう。しばらく走って歩道橋にたどり着いた柚子は、右腕の火傷と心の痛みに涙を流す。そこで美しい青年の鬼龍院玲夜(きりゅういん れいや)と出会う。彼は紅い瞳と漆黒の髪を持つ最強のあやかしであり、鬼の次期当主になる存在だった。

決心

玲夜と出会った柚子は、いきなり花嫁と言われ戸惑ってしまう。しかし孤独を感じ、誰かに愛されたいと願っていた柚子は少しずつ歩み寄ろうと決める。柚子と家族の関係を知った玲夜は家族と縁を切り、祖父母と養子縁組をすること柚子に提案する。家族から離れることは嬉しいが、祖父母に迷惑をかけたくないと迷う柚子。そんな柚子に養子縁組をするだけで、一緒に住むわけではないことを説明する玲夜。幼い頃から甘えることができなかった柚子は、玲夜の家で花嫁として暮らすという提案に戸惑い、考える時間をもらう。しかし自宅に戻るわけにもいかず、しばらくは玲夜の家で過ごすことになるが、学校の荷物や制服など取りに行かなければならない。どうするか悩んだ柚子は花梨に頼むことにする。花梨から家の近くの橋を指定され、そこに向かいながら、花梨や家族と仲直りできるかもと少し期待していた。しかし現れた花梨は未だ怒りが収まらず、柚子に暴言を浴びせ、荷物を川に投げ捨ててしまう。柚子は川の中に荷物を拾いながら、花梨や家族に期待してしまった自分を責めていた。玲夜の家に帰ると、玲夜はもちろん使用人も柚子のことを心配していた。優しく迎えてくれたその姿に柚子はここが自分の居場所なのかもしれないと思い始める。そして祖父母との養子縁組の話を受け入れることにする。養子縁組をするために玲夜と共に自宅に戻る柚子。そこには祖父母がすでに到着していて、柚子を蔑ろにしてきたことに対して両親に怒鳴っていた。養子縁組について玲夜から説明を受けた両親は反対するが、柚子は自分の気持ちを打ち明ける。そして養子縁組にサインを済ませる祖父母と両親。そのまま荷物をまとめ、両親に今まで育ててくれたことへの感謝を伝えて出ていく。それから祖父は玲夜に「どうか柚子のことをよろしくお願いします」と頼み、玲夜は「柚子のことは俺に任せてください」と返す。ここから柚子の新しい生活が始まった。

花嫁のお披露目

両親や花梨と縁を切り、玲夜と平穏な生活を送れるようになった柚子。そんなある日、あやかしの会合が開かれることになった。あやかしの会合は年に一度、数日に渡って開かれるもので、近況報告を兼ねた酒宴が行われている。そこで玲夜の両親と顔合わせとあやかしへのお披露目を行うという。あやかし会合の最終日、両親に気に入られるか不安になりながら準備を整える柚子を連れて会場に向かう玲夜。会場に到着すると、すぐに玲夜の両親と顔合わせになった柚子。とても厳格な威厳ある両親を想像していた柚子の前に現れたのは、とても優しい眼差しをくれる両親だった。玲夜の父である鬼龍院千夜(きりゅういん せんや)と母の鬼龍院沙良(きりゅういん さら)。拍子抜けしたが、どこか人間っぽいその姿に安心する柚子。その後一緒に時間を過ごし、あやかしへのお披露目の時間になると柚子の隣には玲夜ではなく千夜になる。そのままあやかしが勢揃いしている広間の扉を開け、千夜が柚子の紹介を始める。紹介が終わり開放された柚子は、なぜ千夜だったのか玲夜に尋ねると、当主である存在からの紹介の方が柚子の価値も上がると説明される。玲夜や両親が自分のことをしっかり考えてくれたことに感激する柚子。このまま無事に終わるかと思われて会合だったが事件が起きる。妖狐の花嫁である花梨もこの会合に参加していたのである。花梨は柚子が玲夜のそばを離れた隙に柚子に接触する。そして柚子に「お姉ちゃんは騙されてるんだよ」「凡人のお姉ちゃんが花嫁のはずないんだから」と告げる。しかし柚子は玲夜に愛され、必要とされたことでもう揺らぐことはなくなっていた。そのまま立ち去ろうとする柚子に掴みかかる花梨。揉み合いになり最後には花梨が柚子を階段から突き飛ばした。しかし、玲夜が霊力で受け止め怪我をすることはなかった。それでも花梨には厳しい制裁が与えられた。この一件で花梨は妖狐の一族から、花嫁として迎えられることはなくなったのだ。

かくりよ学園へ進学

あやかしの会合が終わり、いつも通りの日常を過ごす柚子に新たな悩みが浮かび上がる。それは進学先だった。柚子が以前に提出した進路希望には遠方の進学先ばかり記入していた。理由は家から出たかったからだ。しかし縁を切った今ではその理由もない。玲夜の家から通える範囲の大学を一から考え直さなければならなくなった。しかし柚子は大学を決める決定打が見つけられずにいた。そんなとき、玲夜からかくりよ学園を勧められる。かくりよ学園とは、あやかしやその花嫁が多く通う大学で、玲夜も卒業生だ。そこではあやかしが人間の中で暮らせるように教えているが、最近は人間の生徒も増えてきている。そして、かくりよ学園には花嫁だけが通える花嫁学部という学部がある。そこでは花嫁があやかし社会について学ぶことができ、マナーや言葉遣いも教えられる。一般家庭で育った花嫁が、あやかしの社会で恥をかかないように学ぶことができるのだ。今まで玲夜に相応しくなろうとしてきた柚子にとって一番必要なことが学べる学部だった。柚子はかくりよ学園に進学することを決める。かくりよ学園の試験はあやかしや花嫁ならば願書を提出し、簡単な面接をすれば全員が合格するという。柚子の場合は玲夜が同席し、学内の警備についての会議が始まるという前代未聞の面接だった。その一週間後、合格通知が届き、卒業後の柚子の進路が無事に決まった。

『鬼の花嫁』の登場人物・キャラクター

柚子(ゆず)

声 (直田姫奈、石見舞菜香)
『鬼の花嫁』の主人公。平凡な女子高生。幼い頃から両親と妹から冷遇されてきた。花嫁に選ばれた妹の花梨と比較され、両親から蔑ろにされており、唯一の味方である幼馴染の透子、猫田東吉、父方の祖父母が心の拠り所だった。家に居場所がないため、普段は放課後にバイトをし、週末は祖父母の家で過ごす生活を送っている。優しくて真面目だが、人に頼る事は苦手である。玲夜の花嫁となったことで生活が一変し、最初は戸惑い混乱することもあったが、次第に心を開いていくようになる。玲夜への愛を自覚してからは、今まで遠慮していた両親や妹に対しても、彼らの横暴な言動に対して、はっきりと自分の意見を言えるようになった。

鬼龍院 玲夜(きりゅういん れいや)

声 (水中 雅章 増田俊樹)
あやかしの中で最上位に位置する。鬼龍院家の次期当主。
漆黒の髪に紅い瞳を持ち、あやかしの中で最も美しいと言われるほど整った容姿の美青年。興味の無い事には果てしなく冷酷だが、花嫁である柚子を溺愛している。花嫁を見つけたあやかしは花嫁を守ろうと過剰な攻撃行動を取りがちだが、自身の立場を理解し、花嫁に異常な執着を持つあやかしの歪んだ実情を俯瞰して見られる理性を持っている。あやかしは花嫁を見つけると性格が花嫁中心主義に変わりやすいが、玲夜は花嫁を見つけたことで愛情や慈悲の感情を知ることができ、一族や会社の部下に優しくなれた。これはとても珍しいことである。家族に冷遇されている境遇から柚子を助けるべく祖父母との養子縁組を薦めるなど便宜を図る。柚子もそんな玲夜の愛情に戸惑いながらも心を開いていき、やがて相思相愛となる。

花梨(かりん)

声(影山灯,千本木彩花)
柚子の一つ下の妹である。社交的で愛想がよく、容姿端麗であるが傲慢で我儘な性格。親の期待され、学費の高いあやかしの学園に入学する。そこで妖狐のあやかし・狐月瑶太に見初められ、花嫁に選ばれる。花嫁になったことで狐月家から多額の援助も受けており、両親はさらに花梨を優先するようになる。自分は特別な存在だと信じ、柚子を下に見ており、優越感に浸っている。その柚子が自分よりも地位の高い鬼の花嫁となり、自身を甘やかしていた両親が今までの柚子への態度を一変したことが気に入らない。あやかしの会合の最終日に再度柚子に危害を加えたことで花嫁の地位を剥奪され、両親共々遠い土地へ追放される。

狐月瑶太(こげつ ようた)

声(鈴木裕斗,小林千晃)
花梨を花嫁に選んだ妖狐のあやかしで、上位分家・狐月家の子息。ハニーブロンドの髪に金色の瞳で、人間離れした美しい容姿を持つ美青年。花梨を溺愛しているが、花梨を甘やかすばかりで花梨に強く言えずにいる。作中では、理性を失った愚かなあやかしと表現されている。あやかしの会合の最終日に、花梨と婚約破棄になる。

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