Veil(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ
『Veil』とは、コテリ(漫画家フクダイクミ)によって描かれるオールカラーのコミック&イラスト集。ヨーロッパを舞台とした「彼」と「彼女」の絶妙な距離感を、魅力あるイラストで繊細に、時には大胆に演出している。2人の男女が生活を共にすることで互いが持ち得なかった感性を補い合い、分かち合って距離を縮めていくラブストーリー。美しいイラストに、想像力を掻き立てる言葉選びと間合いの表現で読者を引き込む芸術的作品。
車や生活音で騒がしいヨーロッパの街並みを彼と彼女はキョロキョロしながら散歩していた。
ケチャップみたいな色の車、空の美味しそうな雲を彼が見て、彼女に言葉で伝える。
「右手と左手のあいだとか?」
盲目の彼女は、雲が手の間ぐらい近くにあると想像しているようだ。
その姿を見た彼は、彼女の様子がいつもと違うことに気づく。
「どうもシャッキリしていない顔があるんだな」「何かあったのかな」
その言葉に彼女ははにかむ。
「君にはかなわないわ」「本当にやさしい声よ」
そう言って彼女は想いを話し始める。
「時々思うのよ」「…素敵なものを「あっ」て見つけたいって」
「見つけたら教えたいの君がいつもそうしてくれるようにね」
「わたしったら前より欲張りになっちゃって やあね」
ブォン、ビィー、ブオオンと車や街の音に彼女は押しつぶされそうになる。
「いつも だいじょうぶなのよ でも今日は息が詰まりそうなの」
彼は彼女の手を握り、抱き寄せる。
「おれは 色んなものをおれは あなたのおかげで見るようになったんだよ」
「これは素敵なことだ 本当に」
彼は彼女を抱き込み、街中を走り出した。
そして人気のない場所で「ドライブしようよ」ともう一度彼女を抱きしめる。
もっと素敵なものを見つけるために街の外れにドライブに行くことを決めたようだ。
2人で生活する中で、少しずつ変化していく自分に気づき、不安を感じた彼女が発した言葉である。
2人でいることで欲を持ってしまった彼女が、彼に共感を求めるように軽く自虐して恥じらうような様子がある。同時に彼に助けを求めるような発言に、自立して生きていく最初の彼女から、2人で生きていく成長した彼女が読み取れる。
『Veil』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
『Veli』の始まりはXから
『Veil』の始まりは2017年にX(旧:Twitter)でコテリが気ままに発信したイラストや漫画から始まる。この物語を楽しみにするファンも増えてきたため、2018年にコミティアにて『Veil』や『her』という作品として発行。その後2019年に単行本として第1巻が発売し、数々の賞を受賞している。
文化庁メディア芸術祭で評価
2022年の第24回文化庁メディア芸術祭では、マンガ部門審査委員会推薦作品として選出される。日本の誇るアートとエンターテイメントカルチャーの代表の一つとなった。
ジャパンエキスポでW受賞
『Veil』はフランス語に翻訳され、出版されている。そして2023年にフランス・パリで開催されたジャパンエキスポではDaruma賞の最優秀作画賞・最優秀装丁賞をW受賞。その後、魅力が世界へ届き、スペイン語などの各国に合わせて翻訳版が刊行されている。
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目次 - Contents
- 『Veil』の概要
- 『Veil』のあらすじ・ストーリー
- オレンジの体温
- プロローグ
- 短編内容
- 凪いだノワール
- たおやぐビェルイ
- 透明な火傷
- 黄金の時間
- ほぐれたルージュ
- 『Veil』の登場人物・キャラクター
- エマ
- アレクサンダー
- ベス
- 『Veil』の用語
- サーシェニカ警察署
- ファイーナ
- チェスターフィールド
- 『Veil』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- エマ「君 素敵よ」
- アレクサンダー「おれの場合『ひとりで』っていうのが難しいんだ」
- エマ「いっしょに階段を降りてくれる?これからもよ」
- エマ「わたしったら前より欲張りになっちゃって やあね」
- 『Veil』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 『Veli』の始まりはXから
- 文化庁メディア芸術祭で評価
- ジャパンエキスポでW受賞