Veil(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『Veil』とは、コテリ(漫画家フクダイクミ)によって描かれるオールカラーのコミック&イラスト集。ヨーロッパを舞台とした「彼」と「彼女」の絶妙な距離感を、魅力あるイラストで繊細に、時には大胆に演出している。2人の男女が生活を共にすることで互いが持ち得なかった感性を補い合い、分かち合って距離を縮めていくラブストーリー。美しいイラストに、想像力を掻き立てる言葉選びと間合いの表現で読者を引き込む芸術的作品。

アレクサンダー

アレクサンダー / 彼

オレンジの髪の23歳の男性。体が大きく目つきが鋭いが優しい。
サーシェニカ警察署保安課所属。
読書が好きで、愛煙家。チェスターフィールドを好んでいる。
彼女がよくヒールを履いて杖なしで歩くようになって目が離せない。
ベスは異父姉である。

ベス

ベス

アレクサンダーの姉。
キャバレーで働いているボブヘアの派手な女性。旅行が好き。
ベスは彼女を「お目々ちゃん」と呼び、一緒に買い物に行くなど距離は近い。彼はベスに対し敬語を使って話をしており、苦手意識がある様子。
一方、姉はそれにお構いなしである。「あんな怖いやつだけど、弟と仲良くしてやってね」と彼女に声をかけるなど、弟思いである。

『Veil』の用語

『Veil』の作中では固有名詞の使用を極端に避けている。

サーシェニカ警察署

彼が所属する警察署。彼女が電話番として働く。
黒の丸いサングラスをかけた警察や、紅茶に詳しいメンバー、セリフだけのキャラクターなどが時折作中に登場する。

ファイーナ

サーシェニカ警察署の近くにあるキャバレー。
ベスが働いている。彼女は「はたらかない?」と誘われる。
彼は仕事でしか訪問しない。

チェスターフィールド

愛煙家の彼が好んでいるタバコの銘柄。

『Veil』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

エマ「君 素敵よ」

スーツを着た彼に彼女が声をかける

彼女が朝早くに彼の部屋を訪れ、彼は起こされてしまう。
ドアを開けると彼女はリボンのかかった大きな箱を持っていた。
「君の部屋の前にね これが落っこちてたのよ」「思うに 気まぐれな透明人間からだわ」
彼はそれが誰からのプレゼントか察する。
そう言う彼女が履いているオレンジ色のヒールは、彼曰く透明人間が彼女に送ったため、彼が代わりに彼女に履かせたプレゼントだった。
彼女に言われるがまま、彼はその箱を開ける。
「うわ スーツだ… なあスーツだよ」
早速、彼は自分にぴったりのサイズのスーツを着る。
「君 素敵よ」
彼は喜びのあまり、彼女を抱き上げる。
「きゃ〜あ〜っ ハグする相手が違う」
「まさか!!おれは透明人間が見えるんだよ」

目の見えない彼女が彼女が、彼を想って、あえてサイズの厳しいスーツのプレゼントを準備した。盲目の彼女がいかにも見えているかのような言葉で、彼女が彼をどのようにイメージしているかがわかる。

アレクサンダー「おれの場合『ひとりで』っていうのが難しいんだ」

ジッポを探しにきた彼を部屋へ入れる彼女

彼女の部屋をあとにした彼は、ジッポを忘れたことに気づく。
再度、彼女の部屋を訪れ、事情を話すと「…どうぞ」と部屋の中へ通される。なんだか彼女の様子がおかしい。
彼が彼女の部屋を探すがジッポは見つからない。
「火だからさ、この部屋に落っこちてたら危ないし…」
何気なく、盲目の彼女を配慮した言葉を彼が口にする。
「ね 危なくないわ 気をつけていれば 危なくなんて…」
と、彼女ははっきりと否定する。その姿に彼は確信を持った。
「おれはね あなたが持っているんじゃないかなあって…」
彼女は思い悩んだ表情をする。
「聞いて 君の使うものが気になっていただけよ」「本当よ」
「火は危ないよ」
「それじゃダメなの ダメよ…」「わたしひとりで触りたかった」「誰の目も 君の目もない部屋で」
「君はそんな時ない? 気になるものを ひとりになって触りたい時って…」
彼女は彼に頼ることなく、盲目なりに自立して彼を知りたいと思っていたようだ。
彼女は思い悩んだ顔のまま、ジッポを彼に返す。それで用は終わったが、このまま彼女を置いていくわけにはいかなかった。
「どうかそんな顔しないでくれ」
「俺にもあるよ 触れたり撫でたりしたくなるものが」「おれの場合『ひとりで』っていうのが難しいんだ」
と、彼女をそっと抱きしめる。
彼女は彼の想いを知ることができたものの、表情は晴れない。
彼は「おやすみ」と電気を消し、彼女の部屋を後にする。
うまく彼女を説得できなかった彼は「バカヤロ」と呟き暗闇の廊下を歩いていく。

盲目の彼女が不安であることは感じ取れる彼だが、不安を取り除く方法が見つからず困惑したシーンで発せられた言葉である。
遠回しな言葉で、彼は彼女を気になっており、もっと知りたいと伝えている。

エマ「いっしょに階段を降りてくれる?これからもよ」

ホテルの豪華な螺旋階段をどんどん登っていく二人。
ずっと続く階段に、彼女は「君とわたしみたい」と微笑みながら登る。
そう言っているうちに頂上の行き止まりについてしまった。
「もっとね…続くと思ったのよ」と残念そうな彼女。
彼は「おれにはもっと続いてるように見える。だって下へ降りるんだから」
「行ったり戻ったりして ほんとおれたちみたいに」
そう言って身を寄せる二人。
満足して立ち上がった彼女は言う。
「いっしょに階段を降りてくれる?これからもよ」
彼は「いいよ」と答えた。

階段は2人の未来を表しており、それを行ったり来たりすることで2人で歩んでいくシーンである。
彼女のこの言葉は階段だけではない、2人の人生を表現した言葉である。

エマ「わたしったら前より欲張りになっちゃって やあね」

SasakiY521
SasakiY521
@SasakiY521

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