Veil(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ
『Veil』とは、コテリ(漫画家フクダイクミ)によって描かれるオールカラーのコミック&イラスト集。ヨーロッパを舞台とした「彼」と「彼女」の絶妙な距離感を、魅力あるイラストで繊細に、時には大胆に演出している。2人の男女が生活を共にすることで互いが持ち得なかった感性を補い合い、分かち合って距離を縮めていくラブストーリー。美しいイラストに、想像力を掻き立てる言葉選びと間合いの表現で読者を引き込む芸術的作品。
『Veil』の概要
『Veil』とはコテリ(漫画家フクダイクミ)によって描かれるオールカラーのコミック&イラスト集。文化庁メディア芸術祭で第24回漫画部門審査委員会推薦作品を受賞。単行本の1話は2~6ページほどの短編となっており、短編集の間にはシネマのような美しいイラストや小説などの作品も収録されている。昔のヨーロッパを舞台に、綺麗でロマンチックな言葉と間合いで読者の想像力を掻き立てるコミック&イラスト集である。2人のファッションもみどころである。話ごとに異なる彼女のファッションやメイク、ヘアスタイルなどコーディネートに、コテリのこだわりを感じさせる。
『Veil』のはじまりは2017年からコテリのX(旧:Twitter)で気ままに投稿されていたものである。それが2018年のコミティアで同人誌『Veil』として発行された。その後、2019年に名和田耕平デザイン事務所による装丁デザインにより、実業之日本社から単行本として出版された経緯がある。単行本発売時には特装版もあり、過去にジュエリートレーやスカーフなど実用的でおしゃれなグッズとセットになっている。
コテリは彼と彼女の絶妙な距離感を繊細に、言葉とイラストで魅せている。二人の交際をしていることを明記する話はないが、話が進むごとに彼と彼女の距離が近づき、それを読者も感じることができる。
コテリは2巻のあとがきで2人の関係性を述べている。彼女は目が見えない分、その他の感覚が鋭くなっており、独特な世界観を持っている。そのため他者との距離感も異なり、ピュアで遠慮知らずな彼女のことを、彼は放っておくことができない。コテリは2人を友愛とも親愛ともはまらない関係性だと考え、その関係を楽しむ2人を描いているとコメントを残している。
『Veil』のあらすじ・ストーリー
オレンジの体温
プロローグ
プロローグとして二人の出会いからはじまる。
彼は子どもたちと鬼ごっこをしており、水路の近くに隠れていた。そこに彼女が通りかかる。
彼女は杖をついて歩いており、誤って座り込んでいる彼をつついてしまった。
「イテッ」
「きゃあ ごめんなさい」
目を閉じて歩いている様子から、彼は彼女が盲目であることに気づく。
彼は彼女の行く先が気になり、話を続ける。身分証などからどうやら彼女は遠方の屋敷のお嬢様であることを知る。屋敷の窮屈な生活に飽き飽きした彼女は家出したようだ。
「一人を満喫しているの!」「平気よ」という彼女を、彼は気になって仕方がない。彼女は新しい地で新しい職を探している様だ。彼には彼女が”お先真っ暗”に見える。
ちょうど彼の署の電話番に空きがあることを紹介すると彼女は不安になりながらも、彼の説得に安心感を見せる。
彼の腕を借りて、彼女は共に署へ向かった。
そこから、警察官として働く彼と、署の電話番として働く彼女の物語がはじまる。
短編内容
彼女がゆっくり昼寝ができるように彼が電話番をする話
彼女の腹に彼の手を置いてランチを催促する話
寝起きは襲わない宣言を彼がする話
彼女のベルトを締めてあげる話
お風呂上がりの彼をお茶に誘いに行く話
ベスに彼女がキスをされて彼が嫉妬する話
カウンター席でお互いを見つめ合いながらお茶をする話
ボスのパーティを抜け出して2人で歩いて帰る話
ブランデーの溶けかけの氷に似ている彼の瞳を予約する話
電話をする彼の時計を奪って彼女の手につける話
硬い時計しか知らない彼女が美術館で柔らかそうな時計(の絵)を見る話
日曜日の早朝に彼女が彼の部屋に訪れ、二度寝をする話
彼女がモデルに誘われる話
凪いだノワール
盲目の彼女が街の音を頼りにカメラのシャッターの切る話。
呼ばれて部屋を訪ねると、彼女が風呂上がりだった話。
彼女の足のホクロで星座を作る話。
車で留守番をしようとする彼女の話。
お互いのハートの中を見たい話。
機嫌を損ねた彼女に花を贈る話。
夜中の真っ暗な廊下で目が覚めてしまった2人が会う話。
ピアスの穴が荒れている彼女に、耳を大切にしてほしい彼の話。
盲目の彼女の夢について聞く話。
お互いの口の恋人を交換し合い、寝落ちる話。
透明人間から彼にプレゼントが届く話。
たおやぐビェルイ
会って間もない2人がお互いの顔を触り合って分かり合おうとする話。
風邪をひいた彼の悪い顔色を彼女のリップで真っ赤にする話。
左の脇腹が痒い彼女のご要望で彼が傷をチェックする話。
風の強い街中でライターをつけるため2人が協力する話。
警察署の満員のエレベーターで彼女が押しつぶされないようにする話。
指輪を無くした彼女が盲目だった故に昔のネガティブな過去を思い出す話。
人生で始めて風船を手にした彼女に、風船が飛ばないよう彼の指輪をつけて結びつける話。
しおりを無くした彼に試香紙を貸してあげる話。
彼女にもらったスーツを着てパーティに行く話。
前の車に乗る子どもとジャンケンをする話。
髪の伸びた彼女に三つ編みの仕方を教えてもらう話。
満点の夜空の下で、一等光る星を探す話。
透明な火傷
彼女の扱うカップが花が咲くように美しく見えた話。
彼とその後ろに彼女が乗り、初めてツーリングする話。
彼の手を借りず、彼をもっと知りたかった彼女の話。
気まずいながら彼は出勤し、彼女と仲直りする話。
ビリヤード台に寝転がる彼女が、カラフルなボールも相まってクリスマスツリーのように見える話。
彼女の部屋の合鍵を作る話。
彼の入浴中に、彼女が石鹸を借りに来る話。
彼と彼女がお互いの顔の形を確かめ合う話。
黄金の時間
寝ぼけけて寝てしまった彼が、ベットに手錠で括り付けられる話。
夜空の綺麗な夜を見に、彼が彼女を誘いに行く話。
彼が酒屋で酔っ払いながらノロケる話。
彼女が彼にベルトをつけてあげる話。
誰もいない美術館で、自由に走り回る話。
寒い彼女が彼の布団に潜り込む話。
彼が彼女の頭を洗ってあげる話。
眠った彼女を連れて帰る彼に同僚が頼み事をする話。
ケガをした彼女の指の血を舐める彼に、羨ましさを感じる彼女の話。
螺旋階段をどこまでも登っていく話。
ほぐれたルージュ
出会ってあまり時間を重ねていない頃、互いの似顔絵を書く話。
眠る前に彼の小さい頃の成長痛をする話。
寝起きの彼女を雪降る街に連れていく準備のお話。
どこにでも入れる鍵を使って、彼のコートの中へ入っていくお話。
旅行帰りのベスに、今度は耳を舐められる彼女の話、それに発狂する彼の話。
美術館で走り回る彼と彼女を、彫刻作品たちが見守る話。
パーティ中の机の下から音が聞こえてくる話。
寝ている彼女に、彼が夕飯の希望を聞きにいく話。
ベスと彼女が買い物に行って花を買ってくるお話。
2人で1つのベットで眠る前のお喋りの話。
音に押しつぶされそうな彼女を連れ去る話。
『Veil』の登場人物・キャラクター
作中では名前が登場することはなく、互いを「あなた」「きみ」と呼び合っている。
「彼」「彼女」という愛称はVeilがX(旧:Twitter)で投稿されいる際に名前がなかったキャラクターをファンが呼んだところが原点である。
エマ
好奇心旺盛な盲目の21歳の女性。盲目のため、いつも目を閉じており、髪は金髪で彼と出会ったときはショート、その後ロングである。
屋敷の令嬢であり、その生活を窮屈に感じて家出した先でアレクサンダーと出会う。彼の紹介でサーシェニカ警察署の電話番の職につく。
彼女は盲目のため「今日のキミの声はチクチクしてる気がする」など視覚以外の感覚が鋭くなっている。
彼と出会った時は杖を操り1人で歩いていたが、彼と歩くようになってからは杖ではなく彼の腕を頼りにしている。
3人の姉と2人の妹、1匹の犬がいる。服は彼が選んでおり、彼女はそれを気に入って着ている。
タグ - Tags
目次 - Contents
- 『Veil』の概要
- 『Veil』のあらすじ・ストーリー
- オレンジの体温
- プロローグ
- 短編内容
- 凪いだノワール
- たおやぐビェルイ
- 透明な火傷
- 黄金の時間
- ほぐれたルージュ
- 『Veil』の登場人物・キャラクター
- エマ
- アレクサンダー
- ベス
- 『Veil』の用語
- サーシェニカ警察署
- ファイーナ
- チェスターフィールド
- 『Veil』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- エマ「君 素敵よ」
- アレクサンダー「おれの場合『ひとりで』っていうのが難しいんだ」
- エマ「いっしょに階段を降りてくれる?これからもよ」
- エマ「わたしったら前より欲張りになっちゃって やあね」
- 『Veil』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 『Veli』の始まりはXから
- 文化庁メディア芸術祭で評価
- ジャパンエキスポでW受賞