文豪失格(文豪シリーズ)のネタバレ解説・考察まとめ

『文豪失格』とは、AIR AGENCY・フロンティアワークスのドラマCD『文豪シリーズ』のコミカライズ版で、2015年から千船翔子がCOMICリュエルにて連載した。単行本は全3巻が発売されている。
天国で暮らす個性豊かな文豪たちを描くギャグストーリー。夏目漱石、芥川龍之介らがライトノベルを書いてみたり、ラジオのパーソナリティを勤めてみたりと様々なことに挑戦していく。
笑いを通して文豪の代表作や性格、それぞれの人間関係も学べるため、史実満載の「教養ギャグ」として人気だ。

CV:近藤孝行
文豪たちが世話になっている天国出版の編集長。締め切りをよく破る作家らを縛り上げて無理矢理原稿を書かせるなど、スパルタな方針を取って彼らをよく震え上がらせている。

新人編集者

CV:近藤孝行
天国出版の新人。芥川らの原稿を受け取りに行くが、締め切りを破られる上にひどい方法で追い返されている。夏目漱石だけは「新人編集者を困らせるのはかわいそうだ」と原稿を予定通り手渡してくれたが、編集者自身は文豪たちの小説を読んだことがないと知られて、全員の小説を読むまで原稿は渡さないと叱られた。

『文豪失格』の用語

天国・明治地区

天国の中には年代ごとに地区が分けられており、近代文学の文豪たちは明治地区付近に集まっているようである。明治地区の生活様式は明治時代がベースで、生前と変わらない生活を送ることができる。とはいえ、最新機器もある程度存在し、テレビ、パソコン、携帯などは明治地区の人間もある程度使いこなしている。他には平成地区が登場している。

天国出版

文豪たちがお世話になっている出版社。よく締め切りを破られている。

イートハーブ宮沢農園

宮沢賢治が経営する農園。彼の作品が反映される空間で、カニやカエルといったキャラクターが存在するファンシーな場所である。かなり広い土地を有している。火山がいくつかあり、よく地震が起きる。規則正しく生活し、真面目に働くため、大食漢の谷崎潤一郎が食べ過ぎで太った時は志賀直哉らの勧めで無理矢理イートハーブ宮沢農園で就労させられた。地震嫌いの谷崎は地震が起きるたび恐怖で走り回り、最後は爽やかなで真面目な青年に変貌を遂げてしまう。

天国同人マーケット

東西構わず世界中の作家が自費で作った作品を持ち寄る同人誌のマーケット。ドストエフスキーやシェークスピア、ヨハネ、紫式部などもブースを出している。太宰治もチヤホヤされたいという理由で出品したが、隣がシェークスピアだったため全く売れず空気のような存在になってしまった。宮沢賢治も生前とは違う積極的な姿勢を出そうと出品するが、こちらも全く売れず、最後は広告のティッシュ配りのように配布していた。

『文豪失格』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

芥川賞が欲しい太宰治が審査員の川端康成に宛てた手紙

太宰は川端に、自分の生死がかかっているような書き振りで芥川賞をねだる手紙を送りつけた

川端康成が、芥川龍之介に倣ってアキバに取材へ行ってきたと話すと、太宰治は「そうやって先生に取り入ろうとしているんだな」と嫉妬し始める。終いには「これほど芥川のことが好きなのに選考委員だった川端の発言を端緒に芥川賞はもらえなかった」と恨みつらみを言い出した。川端は太宰の手紙を保管していて、その場にいた中原中也や宮沢賢治に見せる。「死なずに生き通してきたことだけでも褒めてください」「私を見殺しにしないでください」などと書かれた手紙は狂気じみていて、少し前まで太宰に同情しかけていた中原らは川端の方が被害者なのではないかと引いていた。
太宰の人間性をよく表したエピソードを、ギャグ混じりの展開でライトに伝えている場面である。

高跳びで大怪我する太宰

運動神経抜群な志賀に嫉妬する太宰

志賀直哉によって運動場へ連れてこられた太宰治、芥川龍之介らは、棒高跳びに挑戦することになった。生前も3メートルほどを飛び越えていた志賀が見本を見せると、悔しさのあまり歯軋りした太宰も竹の棒を持って飛び越えようと走り始める。「芥川先生にかっこいいところを見せなきゃ。今はただその一大事だ!走れ!おさむ!」と自身の作品をオマージュしたセリフを心で叫びながら向かうが、いざ飛ぼうというときに棒が折れて勢いよく地面を滑った。血まみれになる太宰を芥川が心配するが、太宰は「ワザ。ワザ」と照れ笑いしながら顔を上げる。太宰は渾身の道化を演じてみせた。『人間失格』の「すべて、計画的な失敗でした」という言葉を引用して、さも「ワザと転んで見せただけですよ?」を装うのは、太宰の性格をよく見せている。

怪人二十面相と文豪の戦い

怪人二十面相に扮して饒舌に喋る江戸川

骨董品を集めるのが趣味な川端康成のもとへ、怪人二十面相を名乗る人物から予告文が届いた。芥川龍之介らを呼んで事件を解決しようとするのだが、なんとその芥川こそ怪人二十面相こと江戸川乱歩だったのである。月を背景に変装を解いた江戸川に、川端らは「もしかしたらそうじゃないかなって思ってた…」と気まずそうに顔を伏せる。それも、芥川にしては近代ミステリーや江戸川乱歩作品に詳しかったからだ。江戸川にとっては初登場の回であり、一連の戦いは江戸川作品が数多く紹介されている。
ちなみに、狙われた宝は150万年前の化石で、もともとは宮沢賢治が発見したものだった。宮沢宅から川端が勝手に持って帰ったのである。川端は生前もそうして人の収集品を奪うことがあったらしい。

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