flat(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『flat』とは、青桐ナツによる日本の漫画作品である。『月刊コミックアヴァルス』にて2007年12月号から2014年1月号まで連載され、マッグガーデンから全8巻が刊行されている。
甘いものに関することしかやる気が出ない超マイペースな高校生・平介(へいすけ)が、従兄弟でとても我慢強い保育園児・秋(あき)の面倒をみることになる。秋との出会いで何事にも無頓着だった平介が少しずつ変化していく姿を描いた物語である。人間関係の難しさや温かさ、また人を想う心が描かれているのがこの作品の魅力のひとつである。

『flat』の概要

『flat』とは、青桐ナツによる日本の漫画作品である。『月刊コミックアヴァルス』にて2007年12月号から2014年1月号まで連載されていた。単行本は『マッグガーデン』から全8巻が刊行されている。
青桐ナツは、『flat』の連載を終えた後、『マッグガーデン』が運営するWEBコミックサイト「マグコミ」にて『あめつちだれかれそこかしこ』という漫画を連載している。

甘いものに関することしかやる気が出ない超マイペースな高校生・平介(へいすけ)が、従兄弟でとても我慢強い保育園児・秋(あき)の面倒をみることになる。秋と出会い、共に過ごしていくうちに、何事にも無頓着だった平介が少しずつ変化していく姿を描いた物語である。

劇的な展開はなく、秋の健気で可愛らしい姿や平介と友達との関係が、ゆるくまったりと描かれており、読むと癒される作品となっている。
癒しとともに、人と関わることの難しさや温かさ、人を想う心が描かれているのがこの作品の魅力のひとつである。

『flat』のあらすじ・ストーリー

平介と秋の出会い

平介(上)と一緒にお菓子作りをできることに喜ぶ秋(下)

甘いものが大好きで、お菓子作りと甘いものを食べることが生きがいの高校生・平介(へいすけ)は、ある日突然、従兄弟の保育園児・秋(あき)の面倒をみることになる。
秋の親は仕事で忙しいため、保育園が終わってから親が迎えにくるまで平介の家で預かることになったのだった。平介は母がいるから関係ないと思っていたが、母に予定がある時には自分が面倒を見なければならないことを知り、困惑し焦る。

赤ちゃんの頃以来、久しぶりに会った秋は寡黙であまり感情を出さず、子どもらしくないほどのしっかり者だった。
初めて秋と2人で過ごすことになった土曜日、一人遊びをして全く手のかからない秋を見て、平介は少しくらい出かけても大丈夫だと考えた。そしてお絵描きをしている秋に色鉛筆を与え、出かけた。秋は平介が出かけることに無言で頷いていた。
買い物の途中、平介は友達の鈴木(すずき)と遭遇する。家に従兄弟を置いてきていると話すと、世話を頼まれたならちゃんとしろと説教され、早く帰れと蹴飛ばされた。
家に帰ると、秋は平介が母から言いつけられていた風呂掃除をしていたのである。しっかりしすぎている秋を見て、平介はやはり放っておいても大丈夫だったと思うのだった。

ある日平介は秋の母・素子(もとこ)から、秋は家で1人でいることが多いと聞く。そして秋がしっかりしている理由が分かったと、昼休みに鈴木ともう1人の友達・佐藤(さとう)に話していた。
1人だから世話を頼むのだという鈴木の言葉で、平介はようやく秋を預かる意味を理解した様子だった。そして鈴木に「お前は何のためにいるんだよ。いっつもお前は自分の都合でしか動かねえんだよ、わがまま」とこっぴどく言われてしまう。
そんなに自分が悪いのかと納得しない様子で家に帰ると、親と電話中の秋がいた。電話を切った秋に、平介は我慢はしていないのかと問いかける。すると秋はただ「こまるから」と答えたのだった。
普段の自分ならそんなことは気にしないのに、何となく考えていると、秋が平介の買い物の袋をじっと見ていることに気づく。翌日お菓子を作る予定だと教えると、興味を持った様子だったので、一緒に作ることを約束した。
翌日、いざお菓子を作り始めようとした時、平介に佐藤から電話がかかってきた。遊びの誘いで、平介は誘いに乗り出かけることにする。秋にお菓子作りはまた今度だと告げると秋は無言で頷いた。平介を見送る秋の表情は暗く、悲しみに溢れていた。
そんな秋の顔を見た平介は、佐藤たちの元へ向かう途中、我慢はしていないのかという質問に、秋は我慢していないとは答えていなかったと考えていた。そして何のために一緒にいるのかと鈴木に言われたことも思い出して自分の非に気づき、家へ戻ることにする。

平介が帰ると、秋はお菓子作りのために出していた道具の片付けをしようとしていた。椅子に登り高い場所へ片付けようとしていたが、バランスを崩して落ちてしまう。何とか平介がクッションになって怪我はしなかった。
そしてようやく平介は、秋がどれだけしっかりしていても、1人ではままならないような小さい子どもなのだと理解する。秋にお菓子作りを楽しみにしていたのか尋ねると、秋は平介を困らせてしまうかと思い、返事できずにいた。平介はそれぐらいで困らないと伝え、1人にして悪かったと謝罪する。そして改めて一緒にお菓子を作った。秋の表情は満面の笑みに変わっていた。

「無神経」に悩む平介

秋は家に遊びにくる鈴木や佐藤たちとも仲良くなり、一緒にお泊まり会もして、秋はすっかり平介の家に馴染んできた。
ある日、平介は何日も前にもらっていたラブレターをスルーしてしまっていたことに気づく。平介がラブレターをもらったと知ったクラスメイトは僻み、無神経だと責め立てるのだった。故意にやったわけではないのにどうしてこんな目に合うのかと理不尽に感じるのだった。
お泊まり会の後から平介は風邪を引いており、学校から帰る頃には咳がひどくなっていた。
秋と一緒に寝た時、秋に布団を全部取られていたのが原因ではないかと母に説明すると、それを聞いていた秋は必要以上に責任を感じ落ち込んでしまう。
そんな秋の姿を見て、平介は「無神経」という言葉が頭をよぎり悩むのだった。自分はそんなに悪い人間なのかと考えながら学校に通っていたが、考えすぎのせいか、風邪をこじらせて熱が出てしまう。

平介にラブレターを書いたのは、1年生の長谷(はせ)という女子だった。以前平介とすれ違った時、甘いにおいがすると思い好きになったという。話を聞いていた長谷の友達・谷村(たにむら)は全く理解できなかったが、雰囲気や外見などとにかく長谷に琴線に触れたようだった。
長谷は、平介が秋と遊んでいるところも見かけたことがあり、いろんな姿を見ているうちに近づきたいと思い、呼び出しの手紙を書いて平介の机に入れておいたのである。
しかし平介はその手紙を読まず、そのまま存在も忘れていたので呼び出した場所にはこなかったが、長谷は急だったし仕方ない、とあまり気にしていなかった。

熱で寝込んでいる間、平介は、自分が風邪をひいたことについて、秋が気に病む必要はないと感じているが、それが秋にはなかなか伝わらず報われないと感じていた。そうしてスルーしてしまった手紙の相手もこんな気持ちだったのかと考えるのだった。
平介の熱が下がり元気になると、秋もようやく元気を取り戻した。熱の間に色々考えた平介は、手紙をくれた長谷と話をする。
長谷と話をして、この手紙がラブレターなら応えられないと返事をしたのだった。

初めての友達

ある日、平介はふと、秋は自分といて楽しいのかと疑問に思い、鈴木と佐藤に相談した。一緒にお菓子を作ったり、公園に連れて行ったりしたことはあるが、小さい子が特別喜ぶようなことはしたことがない。
家にいる時も特に構っているわけではないのに、なぜ自分に懐いているのか不思議に思ったのである。
前日に秋の父が、秋に同い年くらいの友達がいたらいいのにと話していたことを話すと、放課後、佐藤が平介と秋の元へ弟の虎太郎(こたろう)を連れてきた。
虎太郎は、秋と比べると元気で活発な男の子で、秋は最初は戸惑っていたが、虎太郎に引っ張られて遊ぶうちに、すっかり打ち解けた。秋に初めて友達ができたのである。
公園で楽しそうに遊ぶ秋の姿を見て、平介は外で遊ぶのも好きだったのかと秋の新たな一面を知るのだった。

掴みきれない距離感

学祭がせまり、平介のクラスではカフェをすることになった。平介はパフェなどのレシピを考案する班になるが、人手不足のため焼き菓子作りも手伝うことになり、忙しい日々が始まる。
一方秋は、おやつにもらったキャラメルを平介にあげたいと思っていた。しかし忙しい平介とタイミングが合わず、何度も渡すチャンスを逃してへこんでいた。それを察した平介の母が構ってあげるよう平介に伝え、平介が秋の様子を見てみると、秋はいつにも増して悲壮感漂う背中をしていたのである。

学祭準備で遅くなり、夜家に帰ると秋は素子と家に帰るところだった。気まずく感じながらも、秋に久しぶりに声をかける。すると秋は嬉しそうにキャラメルをくれ、すごく照れながらも満足そうに笑っていた。
平介は、小さなことに一喜一憂する秋との距離感にずっと悩んでいたが、ちょっと声をかければ解決することもあるのだと学んだのだった。

学祭当日、平介は秋と一緒に遊びにきた母に秋を預かるよう頼まれる。そして母の用事が済むまで秋と校内を回ることにした。出発する前に迷子に気をつけろと鈴木に釘を刺されたが、案の定クラスメイトと話し込んでいるうちに、秋は迷子になってしまう。
探し回ってようやく見つけて謝るが、秋は自分が離れたのだと自分を責めていた。秋の自責の念を解消しようと、平介は声をかけるが、あまり納得はしていない様子であった。
平介は、人間に失敗はつきものだとして、正直自分も秋も悪くないと考えていた。しかし今回は怖かっただろうと秋の気持ちを感じ取ることができたのである。
秋は、みんなのもとへ帰ってきて、「もうまいごしない」と固く誓うのだった

重たい男たちに悩まされる平介

平介はひょんなことから海藤(かいどう)という1つ下の後輩に絡まれることになってしまう。
平介と関わるうちに、非常に真面目な性格の海藤は、自分とは正反対で何事にも無関心でてきとうな平介に嫌悪感を抱くようになる。鈴木や佐藤、秋など平介の周りには、人が集まり、みんなが平介を肯定している様子であることが納得できないのであった。
実は海藤は、真面目な性格ゆえに友達がいなかった。こんなに頑張っている自分にはいないのに、いつもてきとうそうに見える平介には良い友達がいることが羨ましくて、嫉妬して絡んできていたのである。

ある時海藤は、平介の何がいいのか、平介がもっと人格者なら自分も認められるのにと感情を吐露する。その言葉に鈴木がキレて、「お前は何様なんだ、自分の方が上等な人間だと思っているのか」と指摘した。その指摘に海藤は何も言い返せなかった。
海藤は鈴木の話を聞いて、自分は無意識のうちに人間に優劣をつけて考えていたのかとさらに絶望してしまうのだった。
平介は自分のことを言われているのに、相変わらず関心がなさそうな様子である。そんな平介を見て海藤は、平介と誰かの関係は一方通行に見えると言い、平介には「愛」が足りないのだと告げた。この海藤の重たい感情と「愛」という言葉が、平介を悩ませるのだった。

海藤との攻防も一旦落ち着き、12月になると平介は、ケーキの季節だと浮かれていた。しかし今度は秋という重たい男に悩まされることになる。
秋は虎太郎からクリスマスパーティーの話を聞き、自分も平介とパーティーがしたいと思っていた。しかし平介には鈴木や佐藤とする予定だと言われてしまい、落ち込んでしまった。
そんな秋を見て、平介はまた重たい感情に悩むことになるのだった。
追い討ちをかけるように、母からも「もっと優しくしてやればいいのに」と言われ、そんなに自分は普段からダメなのかといじけモードに入ってしまうのだった。そうして平介は試験期間中もずっと考え込んでいた。
しかし悩み続けていた平介をよそに、秋はサンタさんが本当にいることが分かり、パーティーのことなど忘れたようにあっさり元気になる。

結局平介は2人の重たい男に振り回される形になってしまった。海藤には、平介と誰かの関係は一方通行で空しいものだと言われたが、今回の秋の様子を見た平介は、改めて自分の交流はそんなに空しいものじゃないと考えるようになるのだった。

友情に気づく平介

海藤は自分の愚かさに嘆いていたが、未だ平介を認めてはいなかった。平介がちゃんと友達のことを思っているのかを見たいのである。
いたずら好きの教師・矢野(やの)の入れ知恵であらゆる仕掛けをして、鈴木の命が狙われていることを平介に伝える。
しかし平介は真剣に取り合おうとせず、海藤は友達を心配することもできないのかとさらに憤るのだった。

ある日、海藤は何度目かの一方的な言い合いを平介としていた。そして「一度全てなくしてみればいい」と言い放つ。その直後平介は、通りすがりの生徒にぶつかられ、階段から落ちて足を怪我してしまった。
海藤は、自分があんなことを言ってしまったせいだと、強い罪悪感に見舞われる。悩んだ末に平介の家にお見舞いに行くことにした。その日は鈴木と佐藤もおしるこを食べるために平介の家に来ることになっていた。
謝罪とお見舞いに来たのに、海藤はつい平介に厳しい言葉を言ってしまう。言い合いになる2人に佐藤は紙相撲を提案し、適当な土俵を探しに平介と佐藤が2階の部屋に行った。1階に戻ろうとした時、佐藤が階段でつまずき落ちそうになる。平介が佐藤の腕を掴んで落ちずに済んだが、平介は怪我している方の足で踏ん張ったため、さらに痛めてしまった。
平介が友達を必死で助ける姿を見て、海藤は平介にも人並みに友を思う心があるのだと認め、帰って行った。
その後、平介は階段から落ちて保健室にいる時に鈴木と佐藤が血相を変えて来たことを思い出していた。そして改めて2人がいい人たちであることを感じていた。そうして海藤がずっと自分に分かってほしいと思っていた、友情についてようやく理解したのである。

秋との別れ

春休みのある日、まだいつからかなど詳しいことは決まっていないが、秋は別の家に預かられることになった。秋の父方の祖父母の家である。
平介はあまり寂しがる様子ではなかったが、秋はひどく落ち込んでいた。平介の考えでは、一生の別れでもないためそこまで重く捉えていなかったのである。
秋が嫌ならいいんだと両親にも言われたが、秋と暮らすことを楽しみにしている祖父母をむげにすることができず、秋は行きたくないとは言えなかった。

秋が平介の家で過ごす最後の日、鈴木や佐藤、虎太郎もきて公園で遊んでいた。あっさりした様子の平介に、何気なく佐藤は、秋がひとりだけ落ち込んでいるのは孤独で寂しいだろうと言う。その言葉に平介は最初ひとりで我慢していた頃の秋を思い出し、考えさせられる。

平介は、家で秋と2人で荷物をまとめている時、何かはなむけに言えることはないかと秋に話しかける。そして祖父母の家でも楽しく過ごし、秋がひとりぼっちで我慢することが少なくなればいいと伝えた。

そろそろお別れの頃、平介の言葉を思い出した秋は、これまで我慢していた寂しい気持ちや平介と別れるのが嫌だという気持ちを泣きながら伝えた。
そんな秋を見て、平介の母は「さよなら」ではなく「またね」と思っていること、いつでも来たらいいと声をかける。
「さよなら」ではなく、平介とまたおやつができると分かった秋は、笑顔で別れることができたのだった。

『flat』の登場人物・キャラクター

主要人物

平介(へいすけ)

物語の主人公で高校2年生。何事にも無気力で無頓着な性格、とにかくマイペースである。日々を穏やかに過ごしたいと思っている。怒ることはほとんどない。
いろんなことに無関心だが、秋や後輩の海藤と関わる中で悩むことも多く、意外と繊細な一面もある。
甘いものが大好きで、食べるのも作るのも好きであり、和菓子から洋菓子まで色々なものを作ることができる。

秋(あき)

ogasyo_gabulicious
ogasyo_gabulicious
@ogasyo_gabulicious

目次 - Contents