13の理由(ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ

『13の理由』(原題:13 Reasons Why)とは、ジェイ・アッシャーが2007年に発表した同名の小説を元に、ブライアン・ヨーキーが製作したNetflixのオリジナル学園ドラマ。
いじめなどの現代社会が抱える問題をテーマに、リバティ高校の若者たちが様々な葛藤を抱えながらも、必死に生きていく様が描かれる。
物語の大きなテーマは、『愛』であり、人を愛することの大切さが、シーズン全体を通して深く語られていく。

『13の理由』の概要

『13の理由』(原題:13 Reasons Why)とは、ジェイ・アッシャーが2007年に発表した同名の小説を元に、ブライアン・ヨーキーが製作したNetflixのオリジナル学園ドラマ。
第1シーズンでは、ハンナが自殺する前に残した13の死ぬ理由が記録されたテープを通して、ハンナの辿った軌跡を追体験する形で物語は進む。
第2シーズンでは、ハンナの自殺を巡って、ハンナの両親とリバティ高校が裁判で争っていく様子が描かれる。その中で、ハンナの知られざる秘密が明らかになっていく。
第3シーズンでは、ハンナの自殺を巡って起きた性的暴行被害者であるリバティ高校のジェシカ及び性的暴行加害者のブライス、加えて、リバティ高校に転校してきたアニを中心に物語が進む。
物語はブライス殺害の犯人探しに主軸が置かれており、ミステリー色が強いものとなっている。
第4シーズンは、クレイのPTSDや精神疾患が主要なテーマになっており、他のシーズンとは異なり、メタ的な要素がとても強いのが特徴。クレイの崩壊の進行に合わせてメタ的な要素が強くなっていく。

『13の理由』は、シーズン1を見た少女が自殺する事件が起きたことで有名になった。その影響で、3分ほどの長さで描写していたハンナの自殺の場面が、自殺ほうじょになってしまうとのことで削除される。また、オープニングとエンディングのテロップで、心に不安がある人は信頼できる人と一緒に見るよう促す演者からの注意喚起やアメリカの日本でいうところの心の相談ダイヤルの連絡先を表示する試みが行われた。
また、『13の理由』の関連作品として、現代社会が抱える闇について話し合うドキュメンタリー番組が制作されている。

『13の理由』のあらすじ・ストーリー

シーズン1

物語は、リバティ高校のクレイが、リバティ高校のハンナが残した13の死ぬ理由が記録されたテープを聞き、ハンナの辿った軌跡を追体験する形で進んでいく。

一つ目のテープA面に出てくるのはリバティ高校のジャスティン。ジャスティンの友人であるブライスが、ジャスティンが撮ったハンナの性的な写真を拡散したことでハンナが傷つくことになった。ただ、ハンナは、この真実を知らず、ジャスティンが拡散したと思っているため、一つ目のテープにはジャスティンが挙げられている。
一つ目のテープB面に出てくるのはジェシカ。リバティ高校のアレックスとジェシカとハンナは、親を通して知り合い、仲を深めていった。そして、モネで友情を誓い合う。ある日、ジェシカがハンナに怒りをぶつける出来事が起きた。ハンナはその原因がわからなかったが、ジェシカがハンナに怒りを感じているのは明白で、ジェシカとハンナの友情は終わりを迎える。そして同時に、三人の友情も終わりを迎えた。
二つ目のテープA面に出てくるのはアレックス。このテープで、ジェシカが怒っている理由が明らかになる。
運動部が作成したリバティ高校の女子生徒を卑猥に扱ったリストに、アレックスがジェシカへの腹いせでジェシカのことを書いた。だが、それをジェシカが、ハンナがアレックスとのことで自分を貶めるために書いたと勘違いし、ジェシカとハンナが分かれる原因につながる。アレックスは、自身の衝動的な行いがハンナを深く傷つけたこと対して自責の念に駆られ、自殺未遂を起こした。
二つ目のテープのB面に出てくるのはタイラー。タイラーは、コートニーとハンナがキスをしている場面を盗撮し、コートニーとハンナの友情を終わらせる原因をつくる。
三つ目のテープA面に出てくるのはコートニー。コートニーは自身を守るためにハンナを利用し、自殺の原因を作る。
三つ目のテープB面に登場するのはマーカス。マーカスは、ハンナの恋心を利用してデートに誘い、性的暴行を加えた。
四つ目のテープA面に登場するのはザックス。ハンナが自分の想いを書いた手紙を、ザックスが捨てたとハンナが勘違いしたことから、傷つき、自殺の原因となる。
四つ目のテープB面に登場するのはライアン。ライアンとハンナは詩のサークルを通して知り合い、交友を深めていく。だが、ライアンが、ハンナのためをと思ってハンナの詩を公開したことが予想と違う結果になり、ハンナが傷つくことになった。
五つ目のテープA面に登場するのは再びジャスティン。ブライスがジェシカをレイプすることをジャスティンが止めなかったことで、ジャスティンに対して、強い怒りを感じたことをこのテープに記録している。
六つ目のテープB面に登場するのはシェリ。シェリが起こした事故がきっかけで、シェフが亡くなり、さらに、飲酒運転で事故を起こしたという不名誉まで受けてしまう。そのことを、訂正しようと真実をシェリに話すように要求するが、シェリは聞かず、ハンナもまた話す勇気がなく、自身とシェリ、両方に対して強い怒りを感じたことをこのテープに記録されている。
七つ目のテープA面に登場するのはクレイ。このテープで、ハンナはクレイに対する怒りというより、なぜ、クレイに助けを求めなかったのかという自身の怒りと後悔をテープに残した。
クレイは、ハンナの考えがわかってはいるものの、自身にも何かできたのではないかという深い後悔をこのテープを聞いた後に抱く。
7つ目のテープB面に登場するのはブライス。ブライスがハンナをレイプしたことで、ハンナの心は完全に壊れ、自殺へと向かった。
最後のテープである8つ目のA面に登場するのはスクールカウンセラーのポーター。ブライスにレイプされた後、最後の望みを抱いてポーターに会いに行くが、結果として、ポーターがハンナの期待を裏切る形になり、ただ、ハンナの自殺の決意を後押しするだけになってしまう。そして、ハンナは、ベイカー家の浴室の中で、手首をゆっくりとナイフで開き、苦痛に耐えながら孤独の中で死を迎えた。
ハンナの自殺後、ベイカー夫妻は裁判のために、ハンナの両親、ハンナの弁護士、弁護士であるクレイの母親が、証言聴取を行い、ハンナの自殺に関わった生徒たちの証言を取り、裁判の準備をすすめる。最終的に、示談になるところだったが、ハンナの母親であるオリビアが、示談を取り下げ、裁判が行われることになる。
そして、シーズンの最後は、クレイとトニーが車を走らせ、ラストを迎えた。

シーズン2

シーズン2は、ハンナの裁判を通して、今まで知られていなかったハンナの秘密が明かされていく。そして、ハンナの自殺について、一応の決着がついた。最終的には、リバティ高校側が勝つが、ハンナの自殺に対する責任が追及されなかったわけではなく、この件を境にリバティは変わってゆく。、また、ブライスについては、ジャスティンの証言やジェシカの勇気ある告発により、ハンナを含む複数の女性に対する性的暴行の容疑で逮捕、起訴される。ただ、この中で、ジャスティンの証言により、ブライスのジェシカに対する性的暴行に対して、ブライスを止めなかった責任を問われ一緒に逮捕されてしまう。ジャスティンは、このリスクを弁護士であるクレイの母親から聞かされていたものの、ジェシカへの罪の意識、友であるブライスを止めることのできなかった責任感から、このリスクを承諾したうえで、証言、結果、逮捕されることとなった。ただ、ジャスティンの家庭環境や今回の件でのジャスティンの活躍から、クレイの両親は、クレイの承諾を得て、ジャスティンを養子にすることを決断する。ブライスについては保護観察になった。こうして、ハンナの自殺を巡る一連の出来事に決着がつく。
裁判中に、クレイは知られなかったハンナの秘密を知りひどく混乱してしまい、ブライスを殺害しかけるが、ジャスティンの制止により未遂に終わる。だが、この件で、シーズン3で逮捕されることになってしまう。また、タイラーは、サイラスとともに裁判中に起きた間違いを正すために様々な行動を起こすが、その中で、グラウンドを焼いてメッセージを込めたことがモンゴメリーの怒りに火をつけることになる。そして、タイラーは、モンゴメリーから酷い性的暴行を受けたことがきっかけで、ハンナを悼むパーティーで銃撃事件を起こす決意をする。
シーズン2は裁判で決着がつき、ハンナの葬儀、ハンナを悼むパーティーへと物語が進む。そして、前述したタイラーの銃撃事件がパーティー内で行われる寸前、クレイがタイラーを逃がしたところでラストを迎えた。

シーズン3

ハンナの裁判が終わり、しばらくたったリバティ高校。そこに、転校生が現れる。名前をアニと言う。アニがクレイたちを助けるためとした決断が、やむを得なかったとはいえ、クレイたちを苦しめることになった。事の発端は、ブライスが転校したヒルクレストとリバティ高校との交流試合で起きた様々な出来事が、事態を複雑にしていく。きっかけはクロエのブライスに対する態度にある。試合前に、ブライスに『ザックスがいたから生きてこれた、もう私にかまわないで」と突き放した。そのことで、ザックスがクロエを奪ったと勘違いし、ブライスの中でザックスに対しての怒りに火が付く。加えて、タイミングが悪いことに、ジェシカがブライスから受けた性被害の経験から、もう被害者を作らないという強い想いを胸に『ハンズオフ』を立ち上げ、交流試合中に運動部の女性蔑視をなくしていこうと抗議デモを計画する。そして、がザックスに対する怒りに燃え何が起きてもおかしくない状況で、ジェシカ達『ハンズオフ』の面々が試合に乱入した。そして、ヒルクレストの男子がジェシカにセクハラをしたことをきっかけにリバティの男子たちとヒルクレストの男子たちがぶつかって試合会場が混沌を極める。その混乱のさなか、ザックスの脚をブライスが折ってしまう。ザックスは、ブライスに復讐しようとブライスを追い埠頭に行った。そして、ブライスを酷く痛めつけ、携帯を捨て、その場を去った。その後、ブライスが自身が作ったテープを渡すために呼んだジェシカがアレックスを連れてやってくる。その時、憎しみで満たされたブライスの目を見たアレックスが、友のため、もうこれ以上、ブライスが人を傷つけないように全てを終わらせることを決意した。アレックスは、まだ完全に治っていない体を必死に使い、ブライスを抱え上げ、海に突き落とす。そして、全てを終わらせた。だが、人殺しは人殺し。アレックスはこのことをずっと後悔していくことになる。
ただ、事態は思わぬ方向に向かい、埠頭に残されていたクレイの指紋と、過去にブライスを殺害しようとしたことで、クレイが逮捕されてしまう。アニはクレイのために奮闘した。そして真相を知ると、同じく、ブライスを殺す動機があったモンゴメリーにすべての罪を被せる決断をする。結果的に、タイラーの件で収監されたモンゴメリーが刑務所内で殺害されれため、犯人死亡のため事件はクローズとなり、アニの思惑通りに事が運んだ。だが、モンゴメリーの恋人であるウィストンが、アニに対して『彼もまた人間だった」と強い怒りをあらわにする。シーズンの最後は、クレイ達が、タイラーが撮った仲間たちの写真を見ながら絆を深めていき、暖かい雰囲気に包まれ終わりを迎えた。

シーズン4(最終シーズン)

シーズン4は、クレイが罪の意識からPTSDや精神疾患を発症し、崩壊していく様子が描かれる。また、メタ的な要素が強くなっていくのも特徴の一つ。
クレイの崩壊が、物語の主軸に置かれつつ、シーズン3でのブライスの殺害の結末も描かれる。そして、プロムの回を通して、アレックスとリバティ高校の一学年下のチャーリー、ジャスティンとジェシカの恋愛模様も一定の結末を迎えた。何より、今シーズンで一番大きいのは、ジャスティンの死である。ジャスティンの死を通して、これまでに起きた様々な出来事が、ブライスがハンナやジェシカをレイプしたことがきっかけで連鎖的に起きたことであることが強調されていく。そして、そこにブライスの魂が現れ、ジェシカに『俺の勝ちだ』と宣言したことに対して、ジェシカが『それは違う』と否定したことが、『13の理由』の中で起きたバタフライ現象の答えになっている。
シーズンを通して、様々な出来事を経験し、クレイの崩壊は進んでいくが、家族やジャスティン、友人やカウンセラーの言葉に支えられ、完全に回復したまではいかないが、どうにかリバティ高校を卒業し、大学に進学できるまでにはなった。最終シーズン最終話「卒業」で、クレイは見事にスピーチを行い、『13の理由』のテーマの一つである「人を愛することの大切さ」を深く語る。
そして、クレイと仲間たちは、町はずれの丘でハンナのテープを埋めることでハンナの魂と別れを告げ、ハンナから始まったすべてに一つの区切りをつけ、それぞれの道を進んでいった。

『13の理由』の登場人物・キャラクター

リバティ高校の学生

クレイ・ジェンセン/ディラン・ミネット

吹き替え:杉山紀彰
リバティ高校の高校生、ハンナの友人。ハンナの死をきっかけに起きた様々な出来事を通して、強くたくましく成長する。
クレイは、何よりも仲間のことを一番に考える心優しい少年。優先順位はあくまで仲間であり、仲間のためであれば、どんなことでもできる強さを持っている。ジャスティンをはじめ、多くの仲間がクレイのその優しさに救われた。そして、クレイは仲間とともに無事リバティ高校を卒業する。

ハンナ・ベーカー/キャサリン・ラングフォード

吹き替え:山根舞
リバティ高校の高校生。ハンナは心優しい少女であり、仲間の痛みを自分のことのように受け止める優しさを持っている。物語を通して、様々な掛け違いから次第に孤立していくようになり、最後にブライスがハンナをレイプしたことにより心が壊れ、ポーター先生の説得もむなしく、自宅のバスタブで孤独の内に自身の命を終わらせた。この出来事をきっかけに、クレイたちは大きく変わっていくことになる。ハンナの死は仲間たちに大きな影響を与え、最後のシーズンで、仲間たちがハンナのテープを眠らせることで、ハンナの魂もこの世から解放され、真の意味で自由になった。

ブライス・ウォーカー/ジャスティン・プレンティス

吹き替え:小田柿悠太
幼少期:ローナン・キャロル
リバティ高校の高校生。後に、ヒルクレストへ転校する。ジャスティンの親友でありクロエの恋人。ジャスティンとは幼少期からの付き合いであり、その関係は支配的ではあったものの、ジャスティンの心を確実に救っていく。だが、ウォーカ家は、暴力的な家計であり、ブライス自身も、遺伝子がそうさせるとそのことについて語った。シーズン1で、ハンナやジェシカの心を壊し、また、ジャスティンに消えない傷を残した。シーズン2で逮捕されてからは自身の心と向き合うようになり、アニーとの交流を通して、少しずつ変わっていく。また、ハンナのテープを聞いたことで、自身の罪の重さを自覚するようになった。だが、クロエの件でザックスともめ、ザックスへの憎しみで心がいっぱいになってしまう。そこにアレックスが登場し、その目を見たアレックスに殺害されてしまった。だが、ジェシカの中で生き続け、ジャスティンが亡くなると、『俺の勝ち』だとジェシカに告げる。だが、ジェシカはそれを否定し、仲間たちとともにハンナのテープを埋める際に再度現れたブライスの魂と向き合い、ブライスを否定した。そして、ブライスの魂は何かを悟りこの世から自由になる。その様子を、自身も魂に縛られた経験からクレイは理解し、静かに見守る。ブライスは、確かに悪人ではあったが、一番変わろうとした人物であり、加害者へのケアの必要性を問われるきっかけづくりになった人物である。

アレックス・スタンダール/マイルズ・ハイザ

一番左がアレックス

umazukin
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@umazukin

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