桃組プラス戦記(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『桃組プラス戦記』とは、左近堂絵里により2005年から『月刊Asuka』で連載を開始した学園アクション漫画。2017年からは『コミックNewtype』へ移籍した。謎の超マンモス学校に転校してきた桃園祐喜は、転校早々に自身が「桃太郎」の生まれ変わりであると告げられる。長年苦しんできたトラブル吸引体質の原因が鬼からの呪いであり、このままでは18歳までに死んでしまうという。体質のせいでずっと孤独だった主人公が、やっとできた友人たちと共に己の運命を覆すために奮闘する物語である。

近頃学園では生徒が襲われる事件が頻繁に起こっていた。
犯人らしき人影に角のようなものがあったという証言から、鬼が関わっている可能性を感じた祐喜たちは犯人の捜索を開始する。
難なく犯人である吸血鬼の家系の男を取り押さえた祐喜たちは、彼からこの学園が鬼が守り鬼が治める「鬼が島」であるという驚愕の事実を教えられる。
そして、その鬼ヶ島の総てを取り仕切る日本最大の鬼の一族の頭領が生徒会長である白峰涅人(はくほうくりひと)なのだという。
吸血鬼から鬼の新年会への招待状を奪って潜入をすることに成功した祐喜はそこで涅人と対面し、彼が「白鬼」であると教えられる。
所用で離席する涅人に代わり「黄鬼」だと紹介された男と対面する祐喜だったが、いつのまにか彼の能力によって精神世界に干渉をされてしまう。
すると突然子供の姿の祐喜が現れ男を撃退し、自分は祐喜の心を守る存在だと告げる。
一方そのころ、潜入した祐喜の様子がおかしいことに気づき駆けつけようとした獣基たちは、こうじの案内の元魑魅魍魎たちの道を使って潜入しようとしていた。
獣基たちとはぐれて1人祐喜のもとへたどり着いたこうじは、そのまま男がはじかれた祐喜の精神世界に入り謎の子供の正体を突き止める。
そしてこうじとはぐれた獣基の3人は、男が操る祐喜を人質に取られて涅人の案内の元学園の地下に中枢に足を踏み入れる。そこには本来の「白鬼」である白峰白霓(はくほうしろにじ)が眠っており、涅人が本当は「黒鬼」であると明かされる。
そこで過去にあった全てが語られるのだった。

白鬼と黒鬼編

白鬼と黒鬼は一対であり、白鬼は全ての鬼を掌握し統率する鬼の守りである。
双子として生まれた白霓と涅人だが、白鬼はその役目のために成人するまで精神と身体が通常の鬼や人間の倍以上の速さで成長するため、子供の鬼たちの兄のような存在であった。
白鬼として役目を全うしていた白霓だったが、全ての鬼を生み出した存在である白鬼にしか聞こえない「声」が、自分がかわいがっている子鬼たちをコマとしか見ていないことに激怒し謀反を起こす。
そして声が依り代にしていた仮面を割ることには成功したが、反撃にあいその命を落とすのだった。そして、依り代が割れる直前に白霓が死んでしまったため、声は白を引き継いだ涅人の中に逃げ込んでしまうのだった。
唯一の片割れを声に殺された涅人だが、白霓の最後の言葉である「役目を頼む」という言葉に従い、声の望むままに子鬼から白霓の記憶を消して彼らを学園に放りこむのだった。
声に殺された白霓は、身体から魂が飛ばされて数時間もすれば消えてしまう状態でどこかを彷徨っていた。そこで偶然幼き日の祐喜に出会い、彼が桃太郎であると確信する。
トラブル吸引体質のせいで周りを不幸に巻き込んでしまうこと、母親が祐喜を守ってずっと病院で生死を彷徨っているのにそのことを褒めたたえられていること。
その全てが幼い祐喜の心を壊しかけており、小鬼たちと変わらない年のこんな状態の子供1人に全てを背負わせることを良しとしなかった白霓は、「小鬼たちを殺さない代わりに自分が祐喜を守る」という未来の約束をして祐喜の中に匿われることになるのだった。

猿と羊の裏鬼門編

黒鬼である涅人の望みは「桃太郎に殺される」ことであり、それは桃太郎に執着している声への復讐でもあった。
こうじの心を操る糸で精神世界に閉じ込められているせいで意識のない祐喜を、身体を操る糸で操作して自身を殺させようとする涅人だったが、ぎりぎり戻ることができた祐喜によってそれは叶わなかった。
しかし黄鬼の戦いを先にしようというこうじの提案で始まっただるまさんが転んだの最中、黄鬼だと言われていた男がこうじの操り人形であると見抜いた祐喜はその糸を断ち切ることに成功する。
糸を切ったことで勝ちを確信した祐喜だったが、突然その背を咲羽の攻撃が貫くのであった。
本来黄鬼とは裏鬼門にあたる猿と羊が該当者であり、2つの家の者が鬼の誘いに乗らなければ他の鬼だけで戦いが進むことになる。祐喜の自分の命を軽んじるところを危惧していた咲羽はその提案に乗り、他の者にバレないようにこうじに記憶を封じてもらっていたのだった。
そしてその封じた糸が男を操っていた糸とともに切られたため、本来の狙い通りに祐喜が鬼を殺せない原因である白霓との約束を壊すのだった。
咲羽とこうじの行動にショックで理性と本能が切り離されてしまった祐喜は、本来の猿と退鬼師の本能により鬼美を元の刀の状態に戻して涅人に切りかかるが、白霓の必死の叫びになんとか理性を戻したことで肩を貫くだけでおわった。
しかしそこで声が騒動に気づき現れたことで状況は一変する。仕切りなおすと告げた声によって空間は閉ざされ、祐喜たちはこうじと咲羽を残して離脱することになるのだった。

祐喜の出生の秘密編

声が表に出たことで鬼たちは白霓のことを思い出し、みんなが過去に向かい合っているのだから自分もそうすべきだと祐喜は母からの手紙を開ける決意をする。
手紙には祐喜の父親は前代の桃太郎の生まれ変わりであり、見つけた時にはすでに17歳であったことが綴られていた。唯一生まれていた猿の獣基の中から祐喜の母である高猿寺狸花(こうえんじしょうか)が選ばれて護衛についたが、猿の家は今代の桃太郎を諦めていた。
残りの時間を穏やかに過ごしていく中恋仲になった2人だったが、不幸体質のせいで桃太郎は事故で亡くなってしまう。悲しみに暮れる中で狸花は自身にも不幸体質が起きていることに気が付き、桃太郎との子供を身ごもっていることが判明する。
猿の獣基の中には一族から離反して桃太郎を真に救うにはその命を解き放つことだとして行動する輩どもが存在し、彼らから祐喜を守るために囮となって敵対した狸花は以降ずっと眠りについている。
手紙の最後にはただただ祐喜の幸せを願う言葉綴られており、祐喜は涙を流すのだった。
そして手紙をともに読んでいた白霓は、16年前に声が学園を用意した理由が祐喜の父である前代桃太郎が戦いでもないただの事故で死んだことが気に食わなかったからだと察するのだった。

鬼ヶ島編

自身の出生を受け入れた祐喜は、特殊な術などを使う学園の専門知識修得科の力を借りて白霓を依代に移すことに成功する。
そして涅人の場所へ赴こうと話し出す祐喜たちを前に、生徒会棟の方向から光溢れその姿が現代版の鬼ヶ島への変貌するのだった。
光による影響は生徒会棟の変化だけでなく、光を浴びた生徒がみんな鬼へと転じてしまう現象が起きていた。一般人だけでなく別の生まれ変わりであっても例外なく鬼へと変化していたのだ。
桃太郎の戦いが見たいという理由だけで全てをコマとして扱う声に激怒した祐喜は、白霓も涅人も互いに会いたいと願っていたのだからこれは新しいクリア条件になるはずだと鬼ヶ島に向かうことを決意する。
白霓から声が神であると明かされながらも、十二支や他の生まれ変わり組たちの力を借りて進む祐喜たちだが、鬼に転じた者たちが襲い掛かってくるのを退けながらの戦いは困窮を極めていた。
自分では途中でガス欠になってしまうと、覚悟決めた鴇羽は全ての力を使って祐喜たちに守りの言霊を使い見送るが、その後血を吹き出しながら倒れてしまう。
鴇羽の覚悟を無駄にしないためにも前に進む一行は、元生徒会棟の敷地に入った途端別世界のような光景に迷い込むのだった。

『桃組プラス戦記』の登場人物・キャラクター

桃太郎

桃園祐喜(ももぞのゆうき)

CV:皆川純子
愛譚学園高等部普通科1年。本作の主人公で、『桃太郎』のモデルになった退鬼師の生まれ変わり。
18歳までにすべての鬼の呪いを解かないと死にいたってしまう。呪いの影響でトラブル吸引体質をもっているため、そのことが原因で学園に転校するまでは友達が1人もいなかった。
いつかの桃太郎から記憶と共に力を託されており2人分の力と一緒に不幸体質も受け継いでしまったが、こうじの福の力のおかげで今までレベルの不幸に抑えられている。
身の内に白鬼の白霓を匿っているため境遇のわりに驚くほど真っ直ぐに育っているが、周りを巻き込む不幸体質のせいで暗い幼少期を過ごしており、友達のためなら自分の身を厭わない側面をもっている。
白霓と「鬼を殺さない代わりに祐喜を守る」という約束をしていたが、涅人やこうじ、咲羽の策略でその約束が破壊されて鬼を殺せるようになってしまった。
咲羽の裏切りについては全員で一発ずつ殴ってから許すと断言しており、単独で動く咲羽のことを信頼している様子を見せている。

雉乃木雪代(きじのきゆきしろ)

CV:後藤沙緒里
愛譚学園高等部国文科1年。『桃太郎』の3匹のお供の1人である雉のモデルとなった人物の子孫。
3人の中で最も獣基としての血が濃く、覚醒も早かった。会えない間もずっと祐喜一筋であり、祐喜関連ではよく鼻血を吹くため少々残念な美少女となっている。
人間の血が混ざることを良しとした猿や戌の家とは違い、雉の家は今も純血を貫いているために獣基の出生率が非常に悪い。
そのため雪代は60年ぶりに生まれた雉の獣基であり、元獣基でありひいおばあ様である当主から厳しくエリート教育をされてきた。

高猿寺咲羽(こうえんじさわ)

CV:寺島拓篤
愛譚学園高等部体育科1年。『桃太郎』の3匹のお供の1人である猿のモデルとなった人物の子孫。
祐喜の母の妹が咲羽の母なので、2人は従兄弟である。
けんかっ早い性格をしているが、祐喜の精神面でのフォローも欠かさないような細かい気配りができる一面もあわせもつ。
実家である猿の家のことはよく思っていない様子で、滅多に帰くことがない。犬猿の仲という言葉の通りに雅彦とはあまり仲が良くない。
祐喜の自身の身を顧みないところを矯正し黒鬼の条件をクリアするために、涅人と手を組んだ裏鬼門である黄鬼の片割れである。

犬飼雅彦(いぬかいまさひこ)

CV:岸尾だいすけ
愛譚学園高等部理数科1年。『桃太郎』の3匹のお供の1人である戌のモデルとなった人物の子孫。
丁寧な物腰だが祐喜のことになると捨て身の行動にも出る面があり、3人の中ではいじられ役である。
普通であることがいつか主の役に立つことがあるだろうという犬飼家の方針により、他の2家に比べてかなり一般家庭に近い生活をしている。
このことは祐喜の心の支えとなっており、その思いを伝えることができたからと急遽当主の座を降りた父親から受け継いで16歳にて犬飼家の当主となった。

鬼美(きび)

kawaharuz3
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