夫の扶養からぬけだしたい(ゆむい)のネタバレ解説・考察まとめ

『夫の扶養からぬけだしたい』とは、ゆむいの作品のエッセイ本である。WEBサイト『ママの求人』に連載されKADOKAWAより初めて単行本が発売された。1巻完結本で、2つのストーリーから構成されている。専業主婦のももこは出産・育児を機にマンガ家になる夢を諦めた。収入がないことに引け目を感じ言いたいことを我慢する日々と、理解しようとしてくれない夫の態度や発言から、すれ違いによって揺れる夫婦の関係が細かく描かれている。夫に対する不満を代弁してくれていると主婦の間で話題となった作品である。

ももこはずっとつとむに家事や育児の協力を仰いでいた。しかし、今の会社ではそれが出来ないことを伝えた上でつとむが言ったセリフが「転職して一からやり直そうと思っている」である。ももこは、会社のせいで協力できなかったという、つとむの言い分に苛立ちは覚えるものの、つとむの人生を尊重し、家族に縛られない生き方をしてほしいと願う。夫婦のすれ違いや価値観の違いが大きかったが、改めてももことつとむは自分を見直し、お互いのことを知るきっかけとなった深いセリフである。

ゆうか「これからはさ、心配があったら話し合おうよ」

ゆうかは、自分はいつも頼りなく優柔不断な態度がてるおを不安にさせていたのではないかと謝罪した。その上で、てるおが家族のために考えてくれているのも分かっていると感謝もする。そして、家族となり、もなかに「ママはパパが怖い」ということを見せないようにと誓って提案した言葉が「これからはさ、心配事があったら話し合おうよ」である。私たち夫婦が変わらないと、もなかを不安にさせてしまう。そうならないために、今後歩み寄ろうと決意した、ゆうかの力強いセリフである。

もなか「ママ、パパがこわいの?」

ゆうかは、サロンでの仕事や家事・育児に疲れが出て寝込んでしまった。そんな中で、てるおはゆうかの看病をする。その時に「ほんと、ゆうかって俺がいないとダメな人間だよね」と言われる。「もう仕事を辞めた方がいいのかも」と弱気になったゆうかに対して、娘のもなかが言ったセリフが「ママ、パパがこわいの?」である。この言葉で、子供の目は誤魔化せないと分かったももこは、てるおに何を言われても仕事を続ける決心をし、「変わりたい」と考えるようになった。それからゆうかは、つとむに対して意見を言うようになり変わるきっかけとなった印象に残るセリフである。

『夫の扶養からぬけだしたい』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

本作は作者の鬱憤をねちっこく落とし込んだセミフィクション

『ママの求人』が、作者ゆむいに依頼した内容は「育児や仕事の合間にホッと一息ついてもらえるような4コマ漫画」であったが、実際にゆむいが返答した内容は「読者の息が詰まる1話40コマ以上の泥沼ストーリー漫画」である。ゆむいがストーリー漫画を強く押したことで、受け入れてもらい企画がスタートする。そして完成した『夫の扶養から抜け出したい』は、ゆむいと夫が経験したことや日頃思っていた鬱憤をねちっこく落とし込んだ作品であり、実話とまではいかない、セミフィクションとなった。タイトルは「夫の戸籍から抜け出したい」や「夫の口を封じたい」でもよかったと語っている。

作者は自立したことで離婚願望が消えた

作者ゆむいの夫は「働いていないなら家事を全てやるのが当然」という考え方の持ち主で、切れたトイレットペーパーすらも絶対に変えないという人だった。ゆむいは、働き始める前は、収入のあるなしで物事を判断する夫との価値観の違いから、将来を悲観していた。今回『夫の扶養から抜け出したい』が書籍化したことで、夫の収入を上回って、家事も洗濯は100%やってくれるようになったという。ただ、ゆむいは収入で判断されてしまうと、仕事が減って額が落ちたときに「また主は俺」という競争になってしまうのではないかと不安に思っていた。しかし、収入を得るようになってお互いが冷静に物事を判断できた。夫に対して「辛くなったら会社を辞めても良いよ」と言えるようになり、夫は「家族を支えないと」という少しプレッシャーからは解放された。ゆむいが自立したことで、余裕が出来て強気になれたと言っている。

収入ゼロの期間が1年続いた作者

普通の主婦が育児漫画などを描いて、それが人気を博して本になったという実例がいくつかあったので、ゆむいも育児ブログを始めた。「これで頑張るんだ」という決意などがあったわけではなく、1つ始めてみると、自然と2歩目、3歩目と足が出るようになって、そのままブログを続けることができたとのこと。夫からは「それって趣味だよね?」と言われたが、辞めようと思ったことは1度も無かった。最初の依頼をもらうまで1年間は、収入ゼロの状態であったがひたすら漫画を描き続けていた。2年目に入った頃から月に数万円程度だが、依頼が入るようになった。それを実績として出版社に営業に行くと、新たな依頼をもらえてというのを繰り返しているうちに、気づけば配偶者特別控除の扶養を外れる201万円を超えていたという。

kuni1
kuni1
@kuni1

目次 - Contents