夫の扶養からぬけだしたい(ゆむい)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『夫の扶養からぬけだしたい』とは、ゆむいの作品のエッセイ本である。WEBサイト『ママの求人』に連載されKADOKAWAより初めて単行本が発売された。1巻完結本で、2つのストーリーから構成されている。専業主婦のももこは出産・育児を機にマンガ家になる夢を諦めた。収入がないことに引け目を感じ言いたいことを我慢する日々と、理解しようとしてくれない夫の態度や発言から、すれ違いによって揺れる夫婦の関係が細かく描かれている。夫に対する不満を代弁してくれていると主婦の間で話題となった作品である。

『夫の扶養からぬけだしたい』の概要

『夫の扶養からぬけだしたい』とは、ゆむいの作品のエッセイ本である。WEBサイト『ママの求人』に連載されKADOKAWAより初めて単行本が発売された。ゆむいは、イラストレーターやブロガーであり、育児や日々の出来事を中心とした4コマ漫画で6歳&4歳兄弟の成長の記録を掲載したブログ「ゆむいhPa」を運営する。『レタスクラブニュース』など育児系、主婦向けサイトや雑誌、新聞、書籍に漫画を掲載するなど幅広く活躍しており、代表作には『親になったの私だけ!?』『平凡な主婦 浮気に完全勝利する』などがある。主婦層を中心に、人気が集まり、X(旧Twitter)でも話題となった。
専業主婦である主人公のももこは、出産・育児を機にマンガ家になる夢を諦め、収入がないことに引け目を感じ、言いたいことを我慢する日々を送っていた。夫は「僕と同等に稼いでみなよ」と、心ない言葉や非協力的な態度で育児や家事を全く手伝わない。そんな中、離婚の2文字が頭をよぎるが、収入が無いももこにとって息子を育てながら生活することは難しく、夫のモラハラに耐える日々を送る。徐々に仕事のコツを掴んだももこは、得意なイラストや漫画の依頼を受注し、仕事が軌道にのったことで、ついに旦那の扶養を抜けられるほどの収入を得るようになる。離婚の話合いもしたが、結局夫が家事育児を協力し、2人で家庭を支えていくという結果となった。
『夫の扶養からぬけだしたい』のストーリー2「ママはパパがこわいの?」は、娘もなかの誕生を機に引退し専業主婦になり、夫のてるおに養ってもらっている元美容師のゆうかが主人公である。夫のてるおは、ゆうかに対して高圧的な態度で「俺がいないと本当にダメだな」と言うのが口癖である。てるおから否定され続けたゆうかは、自分を取り戻すため好きだった美容師の仕事を再開させる。自分から離れていくゆうかに不安を感じたてるおは衝突を繰り返すが、最後は「尊敬しあえる家族になろう」ということで円満に物語は終了している。

『夫の扶養からぬけだしたい』のあらすじ・ストーリー

ストーリー1 ももこの場合

家事や育児を手伝わない夫

出産をきっかけに漫画家の夢を諦めた主人公のももこは、家事と育児に毎日追われながら生活していた。息子のたるとが1歳になった頃にパートで働き、仕事と家事と育児が負担なことで夫に協力をお願いしたが、「収入が少ないのに共働きって言えるのか、家事は主婦の仕事だろ」と一蹴されてしまう。結局夫の転勤や子供の熱などで思ったように働けず、専業主婦となる。実家の母に相談すると、「妻は下手に出て夫を持ち上げなきゃダメ」と言われ、夫に「1人で家事育児をこなすのは難しいから助けてほしいです」とお願いする。しかし、「助けてって言ったら助けてもらえるなんて、仕事じゃ通用しないし、社会経験が少ないから考えが甘い」と言われる。収入が減っても、家事育児の人手が欲しいと伝えるが、「僕がお手本を見せてあげるから。次からその通りに動け」「家事ができないって言うなら、僕と同等に稼いでみなよ」と返され、夫婦で分担に対する意見のすれ違いは続く。収入を得たいももこは、「このままでは良くない。金銭的にも社会的にも自立したい」と思うようになる。そんな中で、友人から「本当にしたいことを考えて仕事をしていってはどうか」と提案され、漫画家やイラストレーターとして在宅でできる仕事を受注していけたらと行動に移す。最初は、単価が低いものばかりで、月に3万円ほどの収入が精一杯であったが、自分の絵で得た収入が嬉しいももこであった。

目標は夫の扶養を抜けれる年収201万円

扶養から抜けることが出来るには、いくらの収入が目標になるかを試算するももこは、ややこしいお金の計算に頭を悩ませていた。今まで、面倒臭い仕組みを理解せずに生きてきたことを悔やみ、目標は手取り収入201万円以上とする。それから、毎日作品をアップし、実績を増やし取引企業を増やしていった。その分、家事と育児が疎かになり、いくら待っても保育園には空きが出ない状態でやっていけるか不安になる。同級生のひとみに自分がキャパオーバーであることを相談したところ、食洗機やお掃除ロボットなどのAI家電を使ってみたり、宅配に頼ったりしながらお金で時間を買うのはどうかと提案される。また、生活に余裕ができるとして、考えることを少なくするために物を減らす、家事の外注を頼んでみることなどを勧められたももこは、実際に家事代行サービスを利用するようになり、そのおかげで部屋の清潔をキープできる状態になった。ももこは精神的にも落ちついていき、「家事と子育て」という閉鎖的だった生活が変わっていった。そしてついに目標であった201万円を達成することとなる。

交通事故にあったつとむ

ももこは、収入を得ることによって精神的にも落ち着いて過ごしていたが、夫のつとむは会社に行くのが憂鬱であった。面倒臭い取り巻き相手にプレゼンをすることと、連日終電ギリギリまで仕事していることにストレスを感じているつとむは、「休めるもんなら休みたい。全て投げ出して逃げたい」と感じる。しかし、ももことたるとがいるので逃げ出すことはできず「行きたくない」気持ちを抱えながら職場に向かっていた矢先に、車と衝突する事故にあった。連絡を受けたももこは、急いでつとむのいる病院へ向かうが、ボロボロで横になっているつとむを見て、動揺を隠せない。そこに、つとむの会社の部下である山田(やまだ)から、仕事の比重がずっとおかしい状況で、1人で責任を背負い続けてきたという話を聞く。つとむの会社での状況を知らなかったことを反省するももこだが、つとむは幸い大怪我ではなく自宅療養となった。そこで、つとむが初めて「仕事辞めていい?」と弱音を吐いた。動揺しながらも、ももこは「辞めたいなら辞めてもいいよ」と答える。

つとむとももこの和解

交通事故の後、自宅療養の間仕事を「休職扱い」となっていたつとむは、子育て、家事、仕事を頑張るももこを見ながら唖然としていた。「こうなったら生活を私が支えないと」と考えるももこは必死で動いた。この状況ではつとむも、ももこに対して強気に出る事はできずに、突然洗い物をはじめた。今までにそんなことをしてくれたことが無かった姿に、ももこは「ご機嫌取りをしている。私の気持ちを逆撫でするだけ」と苛立ちを感じる。そして、扶養から抜けることをつとむに伝えると同時に今後の話し合いをすることとなる。ももこは離婚届を出し、つとむの考えを聞くと「離婚したい訳ではない。家族のために頑張ってきたが、それを家族に理解されないのは辛い」と告げられた。ももこは反論し「家事や育児を手伝わずに、家族を蔑ろにされたみたいで辛かった。私の尊厳を踏みにじるような発言は取り消せない」と怒りをぶちまける。その後に、「私が働くということは同時にあなたの人生を自由にすることが出来るから、家族を負担だと思わないで」と伝えた。お互いのことを知らなさすぎたと分かり、もっと話合う時間を作るということで和解し、離婚には至らなかった。

これからの3人

つとむは、今まで全て任せてきた家事や育児に協力するようになった。同時に比較的忙しくない部署へ回され、怪我の状態も良くなり落ち着いて過ごしていた。実家が洋食屋ということもあり、つとむが料理上手だということを結婚6年目で知ったももこは、夫が台所に立つことが増えたことを喜んでいた。以前言われた数々の言葉が思い浮かび、優しさは一時的なものかも知れないと警戒しながら過ごしているが、ももことつとむの関係はほんのちょっとだけマシになった。これからは3人で協力し合って、行けるところまで行こうと考えるももこであった。

ストーリー2 ママはパパが怖いの?

私は幸せなのか

『夫の扶養から抜け出したい』の2つ目のストーリー。専業主婦のゆうかは、「俺が守ってあげる」と言ってくれる優しく頼もしいてるおと結婚する。水道管が壊れたときや訪問販売にしつこく勧誘された時もてるおが助けてくれた。その度に「ゆうかは本当に俺がいないとダメだね」と言われることに傷ついていた。てるおの行きつけの焼き鳥屋に行った時に、おまけで串を1本大将に追加されたが、今までおまけをしてもらったことが無かったてるおは良く思わなかった。「ゆうかがいたからだ。女はずるい」と言い、これからは買い物は全部ゆうかがした方が良いと言う。「本当にそれで良いのだろうか」と感じながらゆうかは生活をしていた。
美容師をしながら育児をすることは難しいと先輩に言われ、そのことをてるおに相談すると「俺はゆうかのことサポートするし、子育てだって手伝うから子供は早めに欲しい」と言われた。しかし、現実は甘くはなく、ゆうかは初めての育児と何もかも知らないことばかりで体力もメンタルも削られた。「家が片付いてなくても怒らないし、無理に復職する必要もない」と言うてるおに「私...幸せ?だよね...」と疑問に思うゆうかなのである。

ゆうかの復職

実家の洋食店で兄のつとむの妻のももこと遭遇する。そこで、ももこに「美容師には復職しないのか?」と尋ねられた。ゆうかは、「夫からは、両立なんて器用なことできないから子育てに専念してほしい」と言われていることを話す。ももこが好きなことのために頑張っている姿を見て、キラキラした印象を受けたゆうかであった。後日、サロンの先輩と会ってそのことを話すと「仕事復帰しないか」と誘いを受けた。髪を整えているのが嬉しいと良い表情で話をするゆうかに、独身の頃と全く同じような働き方はできないけど、子育てに理解のあるオーナーのサロンなら復帰しやすいことを提案される。「動かなきゃ何も始まらない」と先輩がどんどん話を進めていき、ゆうかの家からも通勤しやすいサロンの紹介を受け、復職することを決意する。一方夫のてるおの反応はいまいちであり「勝手にしたら良いけど、俺は無理だと思う」「家事はやれたらやる」と言われたことで引っかかりを感じるのである。娘のもなかのために、保育園の定期利用の申し込みをした。子育ての生活リズムと務め人のリズムがあり、何もかもが新しく変わり1日が一瞬で過ぎる感覚を感じるゆうかなのである。

家事と育児と仕事の両立

仕事復帰して半年が経ち、ゆうかは業務には慣れてきた。しかし、保育園の送迎や家事など自分以外のことで時間を確保しないといけない。毎日何かしらありながら気を休められない日々を送っているのである。家のことを全部やるのはしんどいとてるおに伝えたところ、「俺だってしんどいよ。仕事を理由に家事を疎かにしないで」と言われる。言い返せないゆうかは、家事と仕事と育児を両立させようと必死になり頑張るが、ついに体調を壊して寝込んでしまう。てるおはゆうかを看病しながら「本当にゆうかって俺がいないとダメ人間だよね」と言う。「仕事をやめた方がいいのかも」と落ち込むゆうかのところに娘のもなかが来て、一言「ママ、パパがこわいの?」と聞いた。もなかにそんな風に見えていたことなど全然知らなかったが、子供の目は誤魔化せないことが分かり、「こんな状態ではダメだ!仕事は辞めない」と決意するのである。
一方ももこは、ウェブにアップした漫画が、有名俳優の目に止まり、そのことから出版や講演などの仕事が舞い降りてきた。それから見たこともない数字が通帳に刻まれ、夫以上の収入を稼ぐようになった。ももこ自身は何も変わらないが、周りの人の様子が変ってしまい、ももこの父親は「稼いだ分は親に感謝して返すべきだ。恩返ししろ」と言ってきた。しかしももこは、「私の収入は誰かのオマケなんかじゃない」父親に反論した。ももこはゆうかに対し、働き始めてからの変化は、「おかしいと思うことにちゃんと抗えるようになったことだ」と伝える。

異なる価値観

年末に家族でファミレスに来たてるおは、ゆうかに「女は華やかで楽な仕事をして、男は重労働や責任ある仕事を押し付けられる」と自論していた。遠回しにてるおは「家族のためにやるべきことをやってきた。この家族の中で誰が間違っているかわかるよな」とゆうかに伝えている。ファミレスの帰りにお店のお客さんの若い男性と楽しそうに話をしているゆうかを見て不機嫌になったてるおは、あからさまにゆうかに対する態度を変える。理由が分からないゆうかは、思い切って怒っている理由を尋ねた。「女使って仕事していたんだな」とてるおに言われたことで怒ったゆうかは、「世の中のみんなが女を使って仕事をしているとは思わない」と話す。夫婦で意見が異なり、口論となる。ゆうかは、「優しくされる度に傷つき、味方のフリして私のことを見下している」と伝える。このままじゃ家族が壊れてしまうと感じるてるおに、ゆうかは「家族を壊すつもりはない」と伝えるが、てるおは怒って部屋から出ていってしまう。

尊敬しあえる家族

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