ひらやすみ(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ひらやすみ』とは2021年より真造圭伍が『ウィークリービッグコミックスピリッツ』にて連載している、29歳のフリーターを主人公にしたハートフルホームドラマ漫画である。29歳にも関わらず定職についておらず、恋人もいないフリーター・生田ヒロトがひょんなことから1軒の平屋を譲り受け、その平屋でヒロトのいとこであり東京の大学に通っている小林なつみと一緒に住み始める。前向きかつ自由人であるヒロトを中心としたの生活風景をメインに心暖かく描いているのが本作の特徴である。

『ひらやすみ』の概要

『ひらやすみ』とは2021年より真造圭伍が『ウィークリービッグコミックスピリッツ』にて連載しているハートフルホームドラマ漫画である。
真造圭伍は2008年に『ビックコミックスピリッツ』にて、読み切り作品『なんきん』が掲載されデビューする。そして『月刊!スピリッツ』にて『山中教習所』の連載を行う。また2012年には、『ぼくらのフンカ祭』で「第16回文化メディア芸術祭」マンガ新人賞を獲得する。
その後、2021年から『ウィークリービッグコミックスピリッツ』にて『ひらやすみ』の連載を開始し、2022年「第15回マンガ大賞」3位を受賞している。
29歳のフリーター・生田ヒロト(いくたひろと)は釣り堀のバイトなどで生計を立てていた。そんな生活を送る中、知り合いの和田はなえ(わだはなえ)から一軒の平屋を譲り受けそこで生活を始める。平屋で生活を初めてしばらくたってから、いとこの小林なつみ(こばやしなつみ)が美術大学に通うために山形県から東京に上京してくる。彼女の家族に頼まれ、保護者としてなつみを預かることになったヒロトは、譲り受けた平屋にて共同生活を開始する。
定職も恋人もなし、あるのは譲り受けた平屋だけという、自由人のヒロトが何事にも前向きに明るく接していく。そのような様子を暖かく描いていることが本作の魅力の一つである。また環境の変化や将来の夢への不安を抱えているなつみを、暖かく見守るヒロトの姿勢は人にやさしく接することの素晴らしさを素朴に描いている。その接し方を通して、時間に追われて生活する現代社会において、本当に大切なものは何なのかを改めて考えさせてくれる作品である。

『ひらやすみ』のあらすじ・ストーリー

平屋で共同生活開始

29歳である生田ヒロト(いくたひろと)はフリーターとして釣り堀でアルバイトをする生活を送っている。フリーターとして生活を送っているヒロトだが明るく気の良い性格から、多くの人に好かれていた。そんなある日、ヒロトはアルバイト終えた帰り道でとある平屋に偶然目が留まる。夕焼け空をバックに昔ながらの平屋があるという、何気ない風景がヒロトの心の琴線に触れ、スマホで写真を撮ろうとする。その瞬間、家の中から家主である和田はなえ(わだはなえ)がヒロトに話しかける。はなえはヒロトのことを不審に思っていたが、お腹を空かしていたヒロトを見て、家に上げご飯を一緒に食べることを提案する。その出来事をきっかけ、ヒロトは週に数回ほどはなえの平屋によるご飯を食べに行くのが習慣になる。一方はなえも、ヒロトの将来を案ずるようになるほど心を許すようになる。だがある日突然、はなえが心筋梗塞で亡くなり、はなえの遺言からヒロトが平屋を引き受けることになる。
平屋を引き受けてからしばらく経ったある時、いとこである小林なつみ(こばやしなつみ)が東京の美術大学に合格し、上京することになる。そこでヒロトは彼女の保護者として平屋で預かることになる。かくして譲り受けた平屋にてヒロトとなつみの共同生活が始まるのであった。

なつみの大学生活と将来の夢

なつみは東京の美術大学に通い始めたが、環境の変化と人付き合いの距離感に悩みを抱える。さらに大学の飲み会に参加したなつみは、自分の体調が悪くなったにも関わらず一人駅に置いてけぼりにして、そのまま次の飲み会へと行ってしまった大学の同級生たちに嫌気がさす。その出来事がきっかけで大学に行くことが嫌になったなつみは、大学に行かず平屋に引きこもり始めてしまう。ヒロトの高校時代からの友人で、今でも遊ぶ間柄である野口ヒデキ(のぐちひでき)はそんななつみの様子を見て心配するが、ヒロトは優しく見守ることを選択する。
そんなある日、ヒロトはなつみが部屋にこもって漫画を描いていることを知る。なつみは自分の実力に自信がなかったため漫画家になりたいという夢を隠していたが、ヒロトはなつみの夢を応援する。一方ヒロトのくよくよしない前向きな姿勢を見たなつみは、ヒロトの生き方から勇気をもらい、大学に再び行く決心を固める。そして同時に、漫画家になる夢に挑戦する決意を固めるのであった。

新しい人間関係

再び大学に通い始めたなつみは、大学の授業をきっかけに横山あかり(よこやまあかり)と仲良くなる。そしてあかりと同じ飲食店でバイトを始め、さらには応募したマンガが編集者の目に留まるなど、生活に変化が起き始める。それに伴いなつみも人を一面だけで判断するのではなく、もっと人間関係に対して俯瞰的な目で見るようになるなど、内面の変化が起き始める。また自分に担当編集者がつくことによって、漫画に対する熱量が以前よりもより大きなものへとなっていくのであった。
一方ヒロトも平屋の修理依頼をきっかけに、不動産屋で勤務している立花よもぎ(たちばなよもぎ)と知り合う。好きなタイプの女性には緊張してしまいうまく話せなくなってしまう一面があるヒロトだったが、よもぎとは問題なく話せたことにより少し気になる存在になる。後に地域のお祭りの準備で再会した二人であったが、いつまでも気楽でいるヒロトに対し、日々のストレスが積もっていたよもぎは不満をぶつけてしまう。ヒロトはそのことに対して少し悲しい思いをしていたが、お祭りの最中に再びであった二人は無事に仲直りをする。よもぎはお祭りの前まで、自由人であるヒロトに対してあまり好意的な感情を持っていなかった。ただお祭りでの仲直りを通じて、ヒロトの前向きな性格を知ることができ、一人の友人として好意的に考えるようになる。またヒロトもよもぎの日々の仕事に対して頑張っている姿勢やまっすぐな性格を目の当たりにして、少しずつよもぎのことを好きになりつつあるのであった。

あかりの恋心

なつみは学生生活を送るなかで、山田せんきち(やまだせんきち)を始めとした、何人かの新たな友達が出来始める。そして大学の学生祭にあかりと遊びに行っていた時に、なつめがせんきちと仲良く話していることをきっかけに、あかりに「山田君のことが好きなの?」と問われる。その質問に対して、なつめはせんきちのことを好きな異性としてみてなかったため、「好きな人ではない」と答える。答えを聞いたあかりはなつみに勇気を振り絞ってせんきちが好きであることを伝える。そのことを聞いたなつみはあかりのことを応援すると心に決めるのであった。

ヒデキの決意とヒロトの過去

ヒデキは子供が生まれたことにより、家庭と仕事においての責任感が強くなり押しつぶされそうになる。ヒロトはそんな様子を心配しながらも見ていたが、ある日ヒデキの連絡が急につかなくなったことで心配でいてもたってもいられなくなり、ヒデキの仕事場に向かい声をかける。
フリーターになる前に、かつてヒロトは俳優として働いていたが、おおらかな性格のヒロトに芸能界の空気が合わず限界になっていた時があった。その時にヒデキは「俳優とか関係なくお前のことが大事」と声をかけてくれたこともあり、俳優業から身を引く決心がついた過去があった。
それが心に残っていたヒロトはそのことを話し、「お前がいなくなったら辛い」とヒデキに語り掛けた。ヒデキはそのことをきっかけに会社を辞め、再び心に余裕ができるのであった。

ヒロトのやりたいこと

ヒロトは仕事を辞めてから久しぶりにヒデキと飲んでいた。その時にヒデキから「俳優に未練はないのか」と問われる。その質問に対して「ゾンビものには出たかったかも」とヒロトは答えた。その答えを聞いたヒデキは「一緒にゾンビものを撮らないか」と提案し、ヒロトはそれに賛同する。
その後、なつみの美術大学の友達も交えて撮影を開始し始める。初めはなつみも乗り気であったが漫画家としてなかなかデビューできないことにストレスを抱えてしまい、撮影にも消極的になってしまう。しかし撮影に一生懸命なヒロトとヒデキの様子をみて考えを改め、心に余裕を持つためにも漫画から少し離れるとヒロトに告げる。ヒロトはその言葉に笑顔で答え、無事に撮影が終了するのであった。

『ひらやすみ』の登場人物・キャラクター

主要人物

生田ヒロト(いくたヒロト)

主に釣り堀のアルバイトなどで生計を立てているフリーター。年齢は29歳で恋人はいない。黒髪短髪の好青年である。
性格はプラス思考で自由人であり、人懐っこい性格のため多くの人に好かれる。近所のお年寄りからは特に好かれている。またとてもお人好しなため、人が困っているところを見たらほっとけない性格である。ただ好みのタイプの女性の前では緊張してうまくしゃべれない一面もある。
学生時代に演技をしていたこともあり、友達のヒデキと撮った自主作品映画をきっかけに俳優としてデビューする。しかし好きなタイプの女優の前でうまく演技できなかったことや、競争が激しい芸能界の空気が苦手であったため極限状態まで追い詰められてしまう。その後、ヒデキの応援もあり俳優業を引退、フリーターとしての生活を送る。
バイクに乗ることとお風呂に入ることが大好きであり、また料理を作るのも得意である。

小林なつみ(こばやしなつみ)

東京の美術大学に通う女子大生。年齢は18歳で、身長は小さめでストレートなボブヘアーが特徴である。
性格は少し引っ込み思案。大学生活でうまくいかなかったときに少し過剰気味に落ち込んでしまうこともあり、大学に通い始めてからはしばらく友達ができなかった。しかしヒロトと同じく根はやさしい人物で、不器用ながらもヒロトの誕生日を一生懸命祝おうとしたこともあった。
将来の夢は漫画家であり、中学生の時からマンガを描いている。大学生になり、投稿したマンガが担当の目に留まるのだが、なかなか商業誌デビューは出来ていない。
好きなものは漫画とゲーム、実家の飼い猫である「もんちゃん」を溺愛している。家事全般が苦手である。

和田はなえ(わだはなえ)

Ken12
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