猫と紳士のティールーム（漫画）のネタバレ解説・考察まとめ

「イケオジ」で佇まいの美しさが描かれる瀧だが、紅茶の話になると途端に可愛らしい雰囲気に変貌する。楽しげな表情もコメディタッチに描かれ、嬉しそうに紅茶の産地や名前の由来、一緒に提供した菓子との相性の良さを語り始める。普段は物静かな瀧の見せる笑顔は、整った顔立ちなこともあり、自覚なしに女性客の心を掴むことがある。また、コメディタッチで描かれる瀧には普段とは違う可愛らしさが感じられる。いきいきした様子で紅茶について語る瀧のギャップには、買い物帰りの主婦も思わず「恋しちゃう！」と慌てた。なお、この笑顔と紅茶の話の後には、キームンのストップがかかるのがお決まり。

「本日の紅茶」に癒される客達

「CAMELLIA TEA ROOM」を訪れた客達が「本日の紅茶」によって癒されたり、元気になる描写は本作の見どころの1つだ。客達は皆はじめのひと口で安らぎ、菓子を楽しんだ後にもう一度紅茶を口にする。その瞬間、菓子と紅茶のマリアージュに衝撃を受ける。しみじみと味わう客もいれば、声を上げて感動する客もおり、その反応は様々。
更に紅茶を味わった後に、客に嬉しいことが起こることもある。1巻第3話「ディンブラとマドレーヌ」では、ライブのチケットが手に入らず落ち込んでいた女性のもとにチケット入手の連絡が入った。他にも2巻第7話「苺のカスタードタルトと紅茶占い」では、紅茶占いの結果がきっかけとなり、初々しい大学生の恋愛が成就した。
爽やかな風が吹くような描写や、客が目を輝かせて紅茶と菓子を味わう様子には、思わず紅茶が飲みたくなること請け合いだ。

紅茶を入れる瀧と見守るキームン

作中では、瀧が紅茶を準備するシーンが数コマにかけて丁寧に描かれている。湯を注ぐ音など、日常では聞き流してしまうさりげない物音が耳触りの良いBGM代わりに店内に響き渡り、店内に流れる豊かな時間を感じさせる。瀧が紅茶を選び始めると同時に、キームンはカウンターへ移動して瀧の様子を見守る。ポットに湯を注いだ後には、紅茶の香りチェックも欠かさない。
1巻第1話では、実に6ページにわたって紅茶を淹れ終えるまでの様子が描かれており、読者にも豊かな時間の経過を感じさせる表現になっている。
紅茶を待つ間の客の姿も描かれ、大抵は席で静かに紅茶を待っているが、中には「紅茶を淹れる瀧」を眺めて密かに楽しむ客も存在する。買い物帰りの主婦や、2巻第8話で来店した小説家の蔓実は、座席から密かに瀧を観察していた。
ほとんどのストーリーでは静けさが際立つシーンだが、1巻第4話では瀧が女子高生3人組にミルクティーの淹れ方を解説し、それを女子高生達が興味津々で見学するという珍しく賑やかな回も存在する。

『猫と紳士のティールーム』の裏話・トリビア・小ネタ／エピソード・逸話

オフの瀧は少しだけラフ

仕事以外の時間の瀧は意外とラフな雰囲気である。2巻第9話「アッサムとバノフィーパイ」で、私服姿の瀧は髪を下ろしており、バナナ柄のシャツに細いパンツを着用している。また、眼鏡もかけていない。店頭に出ている時とは別人のような印象で、いつもと違うレアな瀧を見ることができる。
なお、この回でダイエットに成功した瀧が自分のために用意したバノフィーパイにはバナナが使われており、瀧が着ていたバナナ柄のシャツとリンクしている。服装や髪型はいつもよりラフだが、いつも通りの丁寧な敬語でキームンに語りかけながらアッサムティーとバノフィーパイを楽しむ様子は、いつも通り紅茶好きの瀧と変わらない。

監修を迎える前は作者の独学

2巻からは監修として「スシーラティー」の吉田直子を迎えている本作は、1巻の時点では監修がおらず、作者が独学によって紅茶の知識を得ていた。
紅茶を学び始めたのは、作者が過去にうつを経験した際に、仕事以外の趣味として紅茶を飲み始めたことがきっかけであることを2巻のあとがきにて明かしている。また、このあとがきでは監修の吉田が主宰している紅茶教室の体験記も掲載。その中で、本作が紅茶の教科書というよりも、紅茶を楽しむきっかけになればという作者本人の想いも伝えている。