猫と紳士のティールーム(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ
『猫と紳士のティールーム』とは、2022年10月より『月刊コミックゼノン』にて連載を開始したモリコロスのグルメ系漫画作品。紅茶専門店「CAMELLIA TEA ROOM」を舞台に、紅茶と愛猫キームンをこよなく愛する店主・瀧(たき)が、客に合わせた「本日の紅茶」でひと時の喜びを提供する。極度の人見知りながらも客の心情を察することに長けた瀧が淹れる紅茶は、訪れた客達の悩みや疲れにそっと寄り添い、優しく癒す。
『猫と紳士のティールーム』の概要
『猫と紳士のティールーム』とは、2022年10月より『月刊コミックゼノン』にて連載を開始したグルメ系漫画作品である。『月刊コミックゼノン』の他に『まんがホットWEB版』でも本作を読むことができる。作者は『のぼさんとカノジョ?』のモリコロス。作中には作者が独学で得た紅茶の知識が数多く登場する他、2巻からは紅茶教室「スシーラティー」の吉田直子が監修を担当している。
今作は寂れた商店街でひっそりと営業する紅茶専門店「CAMELLIA TEA ROOM」を舞台に、紅茶と愛猫キームンをこよなく愛する店主・瀧(たき)が、客達に紅茶とセットの菓子でひと時の喜びを提供するハートフルストーリーである。1話完結型のストーリーでは、毎回様々な客が訪れる。それぞれに日常の忙しさや悩みを抱えて来店する客達は、瀧が用意した紅茶と菓子によって、魔法にかけられたかのような幸せな瞬間を味わう。貴重で豊かな時間を過ごした客達は「CAMELLIA TEA ROOM」を気に入り、常連客も増えていく。
店としては喜ばしいことだが、極度の人見知りである瀧は、そんな自分の性格に悩むこともしばしば。人見知りでありながらも、人の気分や雰囲気を感じ取ることに長けている瀧の心の温かさは、訪れる客達の心を解きほぐしていく。
作中に登場する紅茶と菓子は毎回変わり、読者もストーリーを追いながら、様々な種類の茶葉や菓子に触れることができる。
『猫と紳士のティールーム』のあらすじ・ストーリー
人見知り店主と個性豊かな客達
通りすがりから常連に
社会人1年目の片出(かたいで)は、仕事で大きなミスをした翌日、散歩の途中で「CAMELLIA TEA ROOM」という名の店を発見する。スマートフォンでも情報が見当たらない新しい店の出窓からは、黒猫が誘うように片出を見つめた。大きな黒猫のキームンに惹かれて店に入った彼女を出迎えたのは、オールバックの黒髪に髭をたくわえ、丸眼鏡をかけた店主・瀧(たき)だった。
長身に端正な顔立ちで美しい佇まいの店主は、注文を受けた「本日の紅茶」の準備を黙々と始める。仕事のミスを思い出して大きなため息をついた片出に提供されたのは、温かい紅茶とアップルパイだった。紅茶をひと口飲んだ片出は、その美味しさに驚く。
「本日の紅茶」は、瀧が訪れた客の様子やリクエストによってどの紅茶を出し、どの菓子を合わせるかを決める。そのチョイスは完璧なもので、口にした者の疲れや落ち込んだ心を魔法のように癒す。美味しさに感動した片出が瀧に紅茶の名前を聞くと、それまで物静かで伏し目がちだった瀧の表情が一変。提供したダージリンとアップルパイについて、嬉しそうに長々と話し始めた。紅茶について話し出すと止まらない瀧の肩にキームンが乗ると、瀧は我に返って話し過ぎたことを謝罪する。そんな瀧は、本人も悩むほどの極度の人見知りなのだ。
カジュアルな服で店に入った片出は、場違いだったかもしれないと緊張していた。しかし、用意された「本日の紅茶」も茶器も、瀧が片出の服装や雰囲気から決めたものだと聞かされた。瀧の紅茶愛と客の心に寄り添う優しさを感じた片出は、この日以後すっかり常連客となり、時折店を訪れては紅茶を楽しむようになった。
また別の日には、店の前で食材を詰めたエコバッグが破けてしまった主婦が、瀧から代わりのエコバッグを差し出されたのをきっかけに店内に入った。エコバッグをタダで受け取るわけにもいかず、そのままでは帰りづらく感じた主婦は、やむを得ず店の席についた。高そうな店に入ってしまったことを後悔した主婦は、メニューの中で一番安いという理由から「本日の紅茶」を注文する。毎日忙しく家事をこなし、店内でも帰宅後にやることで頭がいっぱいになっている主婦の前に出されたのは、たっぷりと用意されたアールグレイと艶やかなチョコレートでコーティングされたザッハトルテだった。メニューに載っていた価格が紅茶1杯分だと思っていた主婦は、値段以上の豪華さに感動し、お腹と心をしっかり満たして笑顔で帰っていった。アールグレイとザッハトルテを気に入った主婦はその後も店を訪れ、同じセットを楽しむようになる。
大切な人と過ごす尊い時間
ひっそり静かに営業を続ける「CAMELLIA TEA ROOM」には、学生の客も訪れるようになっていた。ある時は女子高生3人組が、美味しいミルクティーを求めて店を訪れた。それぞれに異なる雰囲気を持ちながらも、3人とも苗字が「山田」という共通点から仲良くなった彼女達は、同級生達から「山田三姉妹」と呼ばれている。3人は瀧の解説を興味深そうに聞き、ミルクティーを用意する瀧の様子をカウンターに並んで見学した。程なくして運ばれてきたミルクティーと共に提供されたカヌレに大喜びした3人は、ミルクティーとカヌレのマリアージュに感動し「ふたつでひとつ」だと絶賛した。この日はいつも静かな店内に、女子高生3人組の明るく弾んだ声が響き渡った。喜んでもらえた嬉しさもある反面、一度に3人を相手にした瀧は、彼女達が店を出た後に気疲れした様子を見せるのだった。
また別の日には、初デートであることが想像できる初々しい大学生の石尾(いしお)と富田(とみた)が来店した。明らかに緊張して会話に悩んでいる男子大学生の石尾を見た瀧は、2人が仲良くなれるようにと、茶葉の形で占いをする「紅茶占い」を提案した。瀧が用意したのは、占いに合わせた細かい茶葉のキャンディと苺のカスタードタルト。紅茶の味やタルトの苺のおかげで2人の会話が進む様子を見て、瀧は密かに安堵した。
肝心の占い結果は、石尾のカップに残った茶葉がはっきりとしたハート型になっていた。これがきっかけで、石尾は瀧がいる前で富田に想いを打ち明けた。その大胆さに顔を真っ赤にした富田は石尾の想いに応え、手を繋いで幸せそうに帰って行った。2人の幸せそうな様子を見送った瀧は自身も紅茶占いをし、傍にいるキームンへの信頼と友情を再確認するのだった。
紅茶とスイーツのマリアージュ
魔法のような組み合わせ
瀧が提供する「本日の紅茶」は、毎話ごとに新しい組み合わせで登場する。客の様子や雰囲気から提供する紅茶を決め、その紅茶に合う菓子がセットとなっている。その組み合わせは紅茶と菓子双方の美味しさを存分に引き出すもので、口にした客達を喜ばせる。
第1話で店を訪れた片出に用意されたのは、ダージリンとアップルパイ。バターが香る焼き菓子では、紅茶によって菓子の後味を軽く感じさせることで甘い菓子が進む。先輩に仕事のことを聞く勇気が出ずにミスを招いてしまった片出だったが、紅茶名を知りたいという気持ちによって「勇気を出して聞く」という行動を起こすことができた。第3話ではディンブラとマドレーヌの組み合わせが女性客に提供され、その美味しさによって女性は紅茶を楽しむ間、悩みを忘れた様子を見せる。ディンブラのサッと引いていく後味と共に我に返るが、その時には少しだけ悲しみが落ち着いた様子を見せた。
紅茶と菓子のマリアージュによって心を解すのは、落ち込んでいた片出達だけではない。第2話で登場する買い物帰りの主婦には、アールグレイとザッハトルテが用意された。ミカン科のベルガモットで香り付けされたアールグレイの爽やかな香りと渋みは、濃厚なチョコレートの甘さを程よく溶かす。鼻に抜ける柑橘系の香りは、日々の家事に追われて疲れていた主婦に癒しの時間を与えた。
第4話では元気のよい女子高生3人にロイヤルミルクティーとカヌレが提供される。ザッハトルテと同じく濃厚な甘さを持つカヌレだが、ここで合わせたロイヤルミルクティーはアールグレイとは対照的で、甘みや香りの余韻を長く楽しめるような組み合わせだ。この時の店内には、仲良く笑い合う3人の関係がずっと続いていくような温かい空気が流れた。
他にも、瀧が朝食に食べる目玉焼きやベーコンなどが盛られたイングリッシュ・ブレックファーストでは、塩味や脂が味わえるよう渋みの薄いジャワを合わせている。兄が来訪した際に兄弟で食べたサンドイッチには、松の燻煙香が特徴的な正山小種(ラプサンスーチョン)を用い、スモークサーモンの燻煙香で奥深い風味を演出した。紅茶との美味しい組み合わせは、店外のプライベートな時間にもしっかり活かされている。
紅茶が起こすミラクル
「本日の紅茶」は時々、瀧も想像しないようなサプライズを客の元に運んでくることがある。第3話で好きなアーティストのライブチケットが手に入らず、沈んだ様子で来店した女性の様子を見た瀧は「幸せが訪れそうなモチーフ」としてクローバー柄のティーセットを選んだ。「本日の紅茶」が運ばれてくると、女性は可愛らしい柄のカップに少し表情を和らげつつ、紅茶と菓子の美味しさで少しだけ悲しみから解放された。少し落ち着いてひと息ついた後、彼女の元に妹から連絡が入った。なんと、諦めていたライブチケットを彼女の分も入手できたのだという。驚きと喜びのあまり大声を上げて立ち上がった女性客は、店を出る頃には別人のように華やかな笑顔を見せて帰っていった。
第7話では初めてのデートで会話が弾まず悩む男子大学生の石尾と、デート相手の富田に、瀧が「紅茶占い」を提案する。紅茶と共に出された苺がたっぷり乗ったカスタードタルトも2人の会話をアシストし、徐々に2人の間に流れていた緊張感が解けていく。そして紅茶占いでは、ハート型になって現れた茶葉が石尾の告白をサポートする流れに。真っ赤になりながらも富田にまっすぐな想いを伝えた石尾の告白は大成功。石尾と富田は手を繋いで楽しそうに店を出たのだった。
人見知り店主のプライベート
嵐のような兄の来訪
すっかり常連客となった片出を見送り、店じまいをしようとしたある日、瀧の実兄が店を電撃訪問した。人見知りで繊細な瀧と正反対な性格の兄は、豪快で声も大きい。瀧を見るなり笑顔を見せたが、席につくなり2年も帰省しない弟を叱りつけた。大きな声で瀧を叱った兄だが、人と目を合わせることができない程の人見知りである弟を心配しての来店だった。そして、兄がもうひとつ気にかけていたのは、瀧が紅茶の話になるとまくし立てるように話し始めることだ。兄にその点を突かれた瀧は、思わず視線を反らした。
メニューを見た兄は「本日の紅茶」の価格設定が安すぎるのではと瀧に伝える。紅茶1杯で700円と思っての発言だったが、瀧はうっかり「紅茶2杯にお菓子が付く」と返答してしまい、安売りし過ぎだと兄に怒鳴られてしまった。紅茶オタクの瀧が選ぶものには間違いがないことを兄もきちんと理解しているからこその怒りだ。それでも瀧は、美味しい紅茶はもう一度飲みたくなるものと信じているため、価格を変えるつもりはない。
兄から「甘くないもの」をリクエストされた瀧は、自分の食事も兼ねてサンドイッチを振舞った。一緒に出した松の燻煙香が漂う正山小種(ラプサンスーチョン)と共に、兄弟2人で穏やかな時間を過ごす。身内だからとお金を取らないつもりでいた瀧だったが、適正価格を言うようにと再び兄に叱られてしまった。タクシーで帰って行った兄を見送った瀧は、豪快な兄が去った後の静かな店内でキームンを撫でるのだった。
店の外でも紅茶は欠かさず
瀧の日常には常に紅茶があり、それは店の外でも変わらない。朝はキームンと共に起きてキッチンへ向かい、朝食も自分で丁寧に準備する。意外にも朝食を作る時は髪や髭のセット前で、髪と髭のセットが済むと紅茶を淹れ始める。瀧の朝食は、焼いたベーコンとソーセージに目玉焼きと野菜が添えられたイングリッシュ・ブレックファースト。自分の朝食のために瀧が用意する紅茶はジャワで、髭受けのあるムスタッシュカップを使ってストレートで飲んだ後、砂糖とミルクを加えてティーウィズミルクで楽しんでいる。
長身ですらりとした体形の瀧だが、2巻第9話では少しだけ下腹が出てきたことに悩み、ダイエットを決意する。しかし、来店した片出がトフィーナッツを食べる様子を見た後、無意識にトフィーナッツに手を出しそうになる。キームンにしっかり止められて食べずに済んだものの、これまで自分が仕事終わりに必ずお菓子を食べていたことを思い出すのだった。
普段の食事は控えめな瀧は、お菓子に使われているバターや生クリームの脅威を感じつつ、気を引き締めて筋トレやランニングに励む。その結果、見事目標であった「ウエストー3cm」を達成した。しかし、達成のご褒美に選んだのは、バナナと生クリームに加えてトフィークリームをふんだんに使った「バノフィーパイ」を丸ごと1ホール。合わせる紅茶もアッサムのティーウィズミルクと、ストレートよりもカロリーは高め。涙を流すほどの美味しさを噛み締めた瀧だったが、数週間後には再び下腹が出てきてしまった。
『猫と紳士のティールーム』の登場人物・キャラクター
「CAMELLIA TEA ROOM」のスタッフ
瀧 静(たき しずか)
出典: cdn.mangahot.jp
紅茶専門店「CAMELLIA TEA ROOM」の店主。オールバックの髪にひげを蓄え、丸眼鏡をかけている。伏し目がちの物静かな雰囲気で、渋い外見の「イケオジ」。52歳。仕事終わりの癒しはキームンを「猫吸い」すること。
極度の人見知りで、人と目を合わせるのが苦手。自分の人見知りに日々悩みながらも、丁寧な接客に努める。客から紅茶について質問されると目を輝かせ、ウキウキしながら紅茶の知識を話し始める。喋り過ぎるとキームンに止められて我に返る。紅茶の話に対する客の反応は、瀧の勢いに圧倒される客、興味津々で聞く客に分かれる。
訪れた客の様子を静かに観察し、「本日の紅茶」を注文された時には茶器と紅茶を客の雰囲気に合わせて提供する。また、落ち込む様子を見せる客には共感しながら心の底で励ます。
性格が正反対の兄がおり、店の開店準備を理由に丸2年実家に帰省しなかったことを叱られた。また、兄が店を訪問した際には「本日の紅茶」の価格設定が安すぎることについても怒られている。「本日の紅茶」の価格の安さについては瀧本人も自覚があるものの、リピーターや学生が来ることを考えて現状維持を決め込んでいる。
密かにお腹が出てきたことを気にしてダイエットを試みるが、成功後にバノフィーパイを一気食いし、数週間後にリバウンドした。
人見知りゆえに赤面する様子や、いきいきと紅茶について語る様子にギャップを感じる女性客も多い。常連客の片出は紅茶だけでなく、瀧とキームンが一緒にいる姿にも癒されている。
休みの日は髪をおろしており、店にいるときとは別人のような雰囲気になる。髭受けのあるムスタッシュカップを使いたいという理由から、口ひげを生やしている。朝食時の紅茶はジャワと決めている。
キームン
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目次 - Contents
- 『猫と紳士のティールーム』の概要
- 『猫と紳士のティールーム』のあらすじ・ストーリー
- 人見知り店主と個性豊かな客達
- 通りすがりから常連に
- 大切な人と過ごす尊い時間
- 紅茶とスイーツのマリアージュ
- 魔法のような組み合わせ
- 紅茶が起こすミラクル
- 人見知り店主のプライベート
- 嵐のような兄の来訪
- 店の外でも紅茶は欠かさず
- 『猫と紳士のティールーム』の登場人物・キャラクター
- 「CAMELLIA TEA ROOM」のスタッフ
- 瀧 静(たき しずか)
- キームン
- 「CAMELLIA TEA ROOM」の客
- 片出(かたいで)
- 買い物帰りの主婦
- 会社員風の女性
- 山田 甘菜(やまだ かんな)
- 山田 みちか
- 山田 結愛(やまだ ゆあ)
- 石尾(いしお)
- 富田(とみた)
- 蔓実 大房(つるみ おおふさ)
- 主人公の家族
- 瀧 静の兄
- 『猫と紳士のティールーム』の用語
- 本日の紅茶
- 紅茶占い
- 『猫と紳士のティールーム』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 瀧 静「申し訳ございません…!喋り過ぎました」
- 瀧 静「わたくし極度の人見知りでして…人と目を合わせるのが苦手なんです…」
- 紅茶の話で表情が一変
- 「本日の紅茶」に癒される客達
- 紅茶を入れる瀧と見守るキームン
- 『猫と紳士のティールーム』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- オフの瀧は少しだけラフ
- 監修を迎える前は作者の独学