ママ友がこわい(子どもが同学年という小さな絶望)のネタバレ解説・考察まとめ
『ママ友がこわい』とは、野原広子により2015年8月に『KADOKAWA』より出版された、二人目不妊、姑問題、夫の無理解など、ママたちを取り巻くぬるくて淀んだ感情を描くコミックエッセイである。親友だと思っていたママ友がある日突然に口を聞いてくれなくなった。穏やかで緩やかな幼稚園ママの幸せだった日々が、ある心境の変化で崩れ去っていく。仲間だとおもっていたママ友から、気が付かないうちにハブられてしまった主人公のサキを中心に、「ママ友」の稀薄さと子育ての孤独を描いている。
『ママ友がこわい』の概要
『ママ友がこわい』とは、イラストレーターでもある野原広子により2015年8月に『KADOKAWA』より出版された、二人目不妊、姑問題、夫の無理解など、ママたちを取り巻くぬるくて淀んだ感情を描くコミックエッセイである。電子版もリリースされている。
野原広子は、40歳を過ぎてから、『娘が学校に行きません - 親子で迷った198日間 』でデビューする。『離婚してもいいですか?』で第20回コミックエッセイプチ大賞B賞受賞後、2021年には、第25回手塚治虫文化賞において短編賞を受賞する。
夫と子供の3人で郊外に暮らす主人公の田中サキ(たなかさき)は、 穏やかで緩やかな幼稚園ママの幸せだった日々が、親友だと思っていたママ友のある心境の変化で崩れ去っていく。それは、サキがママ友の久保田リエ(くぼたりえ)に対して「不妊外来に行くのって、そこまで必死になりたくない」と発したことがきっかけであった。サキはリエが不妊外来に通っていることを知らずにいたが、悩んでいる自分が馬鹿にされたように感じたリエが、サキを無視し始める。きっかけは不妊についての発言であったが、リエは日頃からサキが「自分より幸せなのが許せない」という気持ちがあった。
こうした誰もが感じる可能性のあるママ達の気持ちを代弁している漫画であり、人気が集まった。ママである日常は幸せで楽しいはずが、毎日幼稚園で顔を合わせるママ友に会うのが嫌になり憂鬱な日々と変わっていった。ママ友の世界のいいところ、悪いところ、あるあるネタ、全てがギュッと濃縮されたストーリーで、現役の子育て世代に多くの共感と支持をされている。
『ママ友がこわい』のあらすじ・ストーリー
幼稚園に行くのが憂鬱
主人公の田中サキは、娘のミイちゃんを幼稚園に連れていくことを憂鬱に思っていた。なぜなら、幼稚園のママ友の久保田リエに無視されているからである。以前は「サキちゃん」「リエちゃん」と呼び合うほどに仲の良い2人であり、最初の出会いは幼稚園の送迎であった。サキの子供のミイちゃんが、幼稚園に行くことを嫌がり泣きわめいており、その横でリエの子供のののちゃんも泣いていた。「一緒に行こうか」と子供は手をつなぎ、先生の所まで泣かずに行くことができた。それから仲が良くなった2人は、お茶をしたり、バーベキューをしたりとママ友付き合いを楽しんでいた。しかし、突然理由も分からず無視されたことでひどく落ち込む日々を送っていたサキであった。保護者会でリエの横に座ろうとしたサキであったが、サキを避けるように別の席に移動するリエの姿があった。挙句に「まだ係をやっていない人がやった方が良い」とサキがまだ何も係をやったことが無いことをいいことに、幼稚園の夏祭りの買い出し係を押し付けてきた。幼稚園は楽しいと言っている娘のミイちゃんの姿を見ると、転園するにもできなかった。
ある日、リエと仲の良いママ友に、「自分が何か悪い事をしたのか」とサキは聞いてみることにした。そこで、リエの娘であるののちゃんのことを「みんなで仲良くできないいじわるな子だねってママが言ってた」とミイちゃんがお友達に伝えていたことを聞いて、リエが怒っていたと話す。必死に言ってないことを伝えるサキは、間違った伝わり方をしていることをリエに謝ろうと思ったが、電話も取ってくれず話も聞いてもらえずで無視され続けていた。勝手すぎる行動に仲良くすることを諦めたサキは、リエに対して無視されていても幼稚園で会ったら笑顔で挨拶だけはすることを決意するのである。
幼稚園の夏まつりと夫婦喧嘩
買い出し係になったサキは、コップの色は何色が良いかで迷っていた。夏祭りの委員長に聞くが、記録が残ってないので「白で良いのではないか?」と言われる。こんな些細なことで、迷う自分が嫌になるサキであった。結局白の紙コップを買ったが当日、「中身が何か分からない」とリエに言われて買い直しをする。どうでもいいことではあるが意地悪で言ってくるリエに苛立ちを感じていた。ハイテンションで他のママ達とはしゃぐリエの姿は、「私たちは楽しいですよ」と独りぼっちのサキにアピールしているかのようであった。委員長は、夏祭り後に「久保田さんは苦手で」と言い、付き合いをしなかった。それは、委員長の子供がリエの子供とは遊ぶ子では無いから、ママ友付き合いをする必要が無かったのである。苦痛な時間を終えて、家に帰ると夏まつりの疲れが出てしまってミイちゃんと一緒に寝てしまう。そこに疲れて帰ってきた旦那に「ご飯まだ?勘弁してよ」と言われた挙句に、義母から電話で「2人目まだ?」と聞かれるのが嫌で取り扱わなかった。「お前って冷たいな」と言う旦那に対して涙が溢れてきたサキであった。そして、とっさに家を飛び出して行った。
リエとの思い出と決意
夫婦喧嘩で家を飛び出したサキは、昔仲が良かった時にリエと話をしたことを思い出した。夫には伝わらない育児の孤独を共有して、全てわかってくれたリエに対して心を開いて何でも話をしてしまっていた。2人目不妊の悩みもお互いに話合い、サキは不妊治療に関しては消極的であった。しかし、この時のサキは、リエが不妊治療外来に通って本気で悩んでいるということは知らなかった。雨が降ってきてずぶ濡れになっている所に、同じ幼稚園に通うママ友の井上さんと出会い、傘を貸してもらう。精神的につらい日々を送っていたサキは、さりげない優しさに「傘を借りたことは一生忘れない」と思うのである。後日、サキは幼稚園でリエが2人目を妊娠していることを聞いた。こんなに苦しんでいる自分とは対照的に、幸せに包まれているリエのことを憎く感じ、思い出の写真を全てちぎり燃やし火災報知器まで鳴らしてしまった。なんとか警報を止めるものの椅子から落下して身動きが取れなくなってしまうサキであったが、隣人の女子大生・小山田(こやまだ)さんが、心配して駆けつけてくれた。小山田さんのキラキラしたネイルと比べて自分の酷い顔や姿を恥ずかしく思うサキは、「こんなことで自分を失くしちゃダメだ」とそう決意するのである。
リエの想いと嫉妬
2人目を妊娠したことを喜ぶリエは、「2人目はまだか?」というプレッシャーと、何より「サキに勝った」と喜んでいた。以前夫が何気なく言った「サキちゃんの方が若いから(2人目の)先を越されるかもな」の言葉が、リエの心に突き刺さっていた。そして、サキが言った「お義母さんに不妊外来に行ったらって言われるんだけど、まだ若いからそこまで必死になりたくないんだ」と言われたことも思い出す。夫やサキには言えないほど、不妊治療で悩んでいたリエは、サキがいつも笑顔で余裕がある姿を見ると嫉妬心が抑えられなかった。そして、お遊戯会でも自分の子供よりも、サキの子供のミイちゃんがセンターで踊っていることにも苛立っていた。色々な要素が重なり「私より上だなんてありえない」と感じたリエは、サキに自分のイライラをぶつけるかのように意地悪するようになる。しかし、どんなに意地悪しても毎回笑顔で挨拶をしてくるサキに対して、更に「私は余裕ですよ」と言っているようで腹立たしく思うリエなのである。
サキの心のスイッチの切り替え
以前家を飛び出したことや、火災報知器で大騒ぎになったことから心配するサキの夫は「何か悩みがあるなら言って」と話す。サキは夫に、幼稚園のママ友付き合いが辛いことや、義母に「2人目まだ?」と言われるプレッシャーがあることを伝える。ただ黙って聞いていた夫は、気分転換の為に、サキを自分の実家までドライブに誘う。そして、夫は自分の親に2人目のことは話をしないように伝えると言ってくれた。そして、夫の祖母から「子どもがあれば幸せもあるけど苦労もある。子供が1人ということは苦労も1人分ということでそれも幸せだよ。人それぞれ幸せは違うんだから」と言ってくれたことをきっかけに、心のもやが晴れた。「ママ友の世界が小さい世界」であることに気づいたサキは気持ちを切り替え、無視されると分かっていても笑顔でママ友に挨拶を続けるのであった。そして、お惣菜屋の仕事を始め生き生きした表情で過ごす日々を送り、子供と過ごす時間を愛おしく思うのである。
リエの孤立
サキが働いている場所に、リエの取り巻きだったマリアちゃんのママがやってきた。どうやらリエの娘の、ののちゃんが他の子に意地悪をしているようだったが、「絶対ののは意地悪なんかしない」と認めないリエにマリアちゃんのママは愚痴をこぼしていた。何でも1番でないといけないリエに対して、「小さい人間だ」と言う。それを聞いたサキは、「私のことを一緒に笑っていたのに。手のひら返しとはこのことか」と感じる。そしてここぞとばかりに、ののちゃんが意地悪なことばかりしていることを、サキだけではなく他のママ友にも話す。これを見たサキは「ママ友怖い。関わりたくない」と思い、その場から逃げ出した。サキは「もうすぐミイちゃんは小学生になるので、もうあの人たちと会わなくて済む」ということと、「幼稚園でのママ友関係をまたやるなんて大変」との思いから、子どもは1人で充分だと考えるようになる。そして、いつも通りに笑顔でリエに挨拶するサキに対して挨拶が少し返ってきた。サキは「やはり1人だと無視しにくいのか。ザマアミロ」と感じている自分も怖いんだろうかと不安になる。
ママ友は怖い
リエは孤立していることと、娘のののちゃんが機嫌が悪いことに苛立ちを覚えていた。ののちゃんが、大人の目の届かないところでマリアちゃんたちにいじわるしているとか、先生に告げ口しているのが気に食わなかった。マリアちゃんのママは、すでに自分が子どもが2人いることを自慢に思っていた。そしてリエが何より許せなかったのが、お腹の子が男の子だと分かった時に、「男の子には男の子の良さがある」と慰めのように言ってきたのが一番腹が立っていた。そして、その苛立ちがののちゃんにも伝わって「ののはいらないんでしょ。幼稚園に行きたくない」と叫び、対応にあたふたしている姿をママ友達はクスクス笑っている。そこにサキがやってきて、「ミイと一緒に行こう」とののちゃんに声をかけたのである。いじわるされたことや仲間外れにされたことは絶対に忘れないが、もう少しで小学生になり顔も合わせなくて良くなるので、我慢して少し優しくしてあげようと思ったのである。「ごめんね」と謝るリエに対して、サキは「気にしてない」と笑顔で嘘をつく。その後、サキは自分の顔が少し赤っぽくなっているのを感じる。そこで、産婦人科に行き、妊娠が判明した。嬉しい反面、子供は1人でも良いという気持ちを切り替えた途端にできたので驚きが隠せない。ただ、予定日を考えたらリエの2人目の子と同じ学年になることが明らかである。そのことが頭によぎった時に産婦人科でリエに会う。「2人目おめでとう!同級生だね。男の子かな。女の子かな」と心弾ますリエに対して、恐怖を感じる。手を握って「私たちママ友だもんね」と言ってくるリエに、「またはじめからやり直し?」と絶望するサキなのであった。
『ママ友がこわい』の登場人物・キャラクター
サキの家族
田中サキ(たなかさき)
32歳で、漫画の主人公。小さな町で生まれ育ち、専門学校で事務経理を学ぶ。卒業後は建設会社の経理として就職し、出入りの営業マンと結婚して退職する。結婚3年目に長女のミイを出産する。独身の頃はスキーやスノボなどウインタースポーツを楽しんでいたが、子供が生まれてからは行く暇もなくなり、スキー板もリサイクルショップに売ってしまう。明るい性格で周囲のママ友と交流をしていたが、ある日突然にママ友から無視されるようになってからは、表情が暗くなり以前のような明るさは無くなっていった。しかし、気持ちが切り替わってからは、ネイルをしたり子供にやさしくしたりと若々しくて明るく可愛いサキへと変わっていく。
サキの夫(名前不明)
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目次 - Contents
- 『ママ友がこわい』の概要
- 『ママ友がこわい』のあらすじ・ストーリー
- 幼稚園に行くのが憂鬱
- 幼稚園の夏まつりと夫婦喧嘩
- リエとの思い出と決意
- リエの想いと嫉妬
- サキの心のスイッチの切り替え
- リエの孤立
- ママ友は怖い
- 『ママ友がこわい』の登場人物・キャラクター
- サキの家族
- 田中サキ(たなかさき)
- サキの夫(名前不明)
- ミイちゃん
- リエの家族
- 久保田リエ(くぼたりえ)
- リエの夫(名前不明)
- ののちゃん
- その他のママ友
- マリアちゃんのママ
- 井上さん(いのうえさん)
- 夏祭りの委員長(佐山さん)
- その他
- サキの夫の祖母
- 大学生の小山田さん
- 『ママ友がこわい』の用語
- ママ友
- 幼稚園の夏祭り
- 不妊治療
- 『ママ友がこわい』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 田中サキ「こんなふうになるのなら仲良しなんかならなければ良かった」
- 「新しいお友達にはやさしくしてあげなきゃね」と伝えたことによるすれ違い
- 田中サキ「私はきちんと挨拶する」
- 田中サキ「幸せなはずなのにどうして孤独を感じてしまうのだろう」
- 田中サキ「こんなことで自分を無くすのはもったいない」
- 久保田リエ「あなた幸せなんだから少しくらいぶつけてもいいでしょ」
- 「私たちママ友だもんね」に秘められた心境
- サキの夫の祖母「子どもが1人ということは苦労も1人分ということでそれも幸せだよ。人それぞれ幸せは違うんだから」
- 『ママ友がこわい』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- ママ達の気持ちを代弁
- 作者が実際に体験した「ママ友」の世界