ママ友がこわい(子どもが同学年という小さな絶望)のネタバレ解説・考察まとめ

『ママ友がこわい』とは、野原広子により2015年8月に『KADOKAWA』より出版された、二人目不妊、姑問題、夫の無理解など、ママたちを取り巻くぬるくて淀んだ感情を描くコミックエッセイである。親友だと思っていたママ友がある日突然に口を聞いてくれなくなった。穏やかで緩やかな幼稚園ママの幸せだった日々が、ある心境の変化で崩れ去っていく。仲間だとおもっていたママ友から、気が付かないうちにハブられてしまった主人公のサキを中心に、「ママ友」の稀薄さと子育ての孤独を描いている。

仲の良かったママ友に無視されたり、意地悪されているサキであったが、心の中で決意することがあった。それが、「私はきちんと挨拶する」である。毎日幼稚園の送迎で嫌でも顔を合わせることになる。無視されると分かっていながらも、大人の対応として挨拶だけはしっかりしていこうというサキの決意の表れでもある。サキはママ友と仲良く話をしていた時も、挨拶をされたら絶対に返事していた。その習慣もあって、後に1人のママ友から「田中サキさんだけ挨拶を毎回返してくれてたので好印象」と言われる。

田中サキ「幸せなはずなのにどうして孤独を感じてしまうのだろう」

可愛い子供との時間は尊くて幸せであるということを想像していたサキであったが、実際子育てを通して感じていたのが「幸せなはずなのにどうして孤独を感じてしまうのだろう」である。夫は仕事で、話をすることができない赤ちゃんと2人きりの時間が長いとどうしても孤独に感じてしまう。時折、夫と話をしていてもなかなか理解をしてくれない。そうしたことが「幸せ」の気持ちが消されて「孤独」となっていく。子育てをしている人を見ると、かわいい子供と幸せな時間であると感じられてしまうことが多い。しかし、目には見えなく決して口には出さないが、孤独を感じている人も多い。そんなママ達の気持ちを代弁しているかのようなセリフが印象的である。

田中サキ「こんなことで自分を無くすのはもったいない」

ママ友に裏切られ、無視され続ける日々を送って気力も体力も無くなっていったサキは、自分の顔を鏡で見ると酷い顔であることに気づく。同じマンションに住む隣の大学生のキラキラしているネイルを見て思ったことが「こんなことで自分を無くすのはもったいない」である。自分もまだ捨てたものじゃないと大学生と同じようにネイルをして気分を上げるサキは、そこから気持ちが切り替わる。ママ友のことを気にしながら、自分自身を失っていくのは嫌だというサキがこれから自分がどうやって生きていくかを振り返った瞬間である。そこから、パートを始めたサキは、ママ友のことを気にすることなく活き活きと生活していくのである。

久保田リエ「あなた幸せなんだから少しくらいぶつけてもいいでしょ」

見た目は可愛くて若々しく、夫との仲が良いサキと比べるリエは、仲良しのママ友であったが徐々に嫉妬や憎しみへと変わっていった。「自分より幸せであることが許せない」という気持ちが表れたのである。その時にリエが言ったセリフが「あなた幸せなんだから少しくらいぶつけてもいいでしょ」である。イライラした気持ちの矢先が幸せそうなサキに向けられた。そうして、子供の言い間違えや不妊治療に対しての価値観の違いから、サキを無視して困らせるという行動を取ったのだ。リエのこの行動は、何でも比べたがる人間の心理をママ友間の問題として分かりやすく表現しているのが印象に残る。

「私たちママ友だもんね」に秘められた心境

サキに対して、散々いじめや無視を繰り返してきたリエは、2人目を妊娠する。そして、自分が幸せになったことから「サキに勝った」と嫉妬心が薄れていく。そんなときに、リエの娘であるののちゃんが幼稚園に行きたくないと騒いで対応に困っていた。その時に、サキとミイちゃんが「ののちゃん一緒に行こう」と誘って助けたのである。このことで、リエはサキに今まで意地悪したことを謝る。「全然気にしていないよ」と言うサキであったが、その言葉は建前であり、決して許すことはできないと思っている。そして、サキにも2人目が出来た。産婦人科に行った時にリエと鉢合わせになり、その時にリエに言われた言葉が「私たちママ友だもんね」である。サキにとってのママ友は嫌な思い出しかなく、適度な距離感でいたいと感じていた。今までサキに意地悪してきたことを無かったかのように、同学年になるであろう子供の誕生に喜ぶリエであったが、サキは複雑な心境である。この言葉で終わる最後は、ホラーであると話題を呼んでいる場面である。

サキの夫の祖母「子どもが1人ということは苦労も1人分ということでそれも幸せだよ。人それぞれ幸せは違うんだから」

サキは、2人目がなかなかできないことと、義母からの「2人目まだ?」の重圧にストレスを感じていた。そんなときに、夫の祖母に言われたセリフが「子どもが1人ということは苦労も1人分ということでそれも幸せだよ。人それぞれ幸せは違うんだから」である。何も相談していないサキであったが、サキの重圧を感じてか夫の祖母は気をきかせて言ってくれた言葉である。そこから、サキは2人目にこだわることなく「今のこの幸せな時間を大事にしよう」と吹っ切れたサキの心境の変化が分かるセリフである。

『ママ友がこわい』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

ママ達の気持ちを代弁

ママ友あるあるが詳細に描かれており、ママ達の普段何となく感じているけど言えないモヤモヤ感を上手く代弁して、「発言小町」で大反響を呼んでいた。例えば子どもが2人いる方がなんとなく上であることや、気の強い子の親と仲良くしておいた方が何かと得すること。自分の子は悪いことしないと信じ切ってる母親や、「私たち仲良しグループです」と見せつけるように騒ぐなどが上げられる。人は少なからず誰かと比べたりしながら生きていることが多く、「自分より幸せなことが許せない」と感じている部分がある。今回の準主人公である久保田リエは、嫉妬心などからいじめをするが、きっと誰の心の中にもリエはいるのではないかと読者に考えさせられる内容となっている。

作者が実際に体験した「ママ友」の世界

若くして、子供を産み世の中を上手にわたることを知らない作者が、ママ友の中でもボス的存在の人の機嫌を損ねた経験があった。そこから、無視されたり、意地悪されたりとつらい体験をしたとブログで綴っている。しかし、そのママさんの中でも1人だけ挨拶を返してくれた人がいて、嬉しかったと思い出を語る。意地悪されたことより、挨拶を返してくれた印象が強く残っており、感謝を述べている。

tsayay12171
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@tsayay12171

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