空色のメロディ(水沢めぐみ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『空色のメロディ』とは水沢めぐみによるファンタジー要素を含む少女漫画。1987年6月から1988年8月まで集英社『りぼん』で連載され、アニメ化企画が出たほどの人気作品。主人公の少女メロディ・ブルーは両親を亡くした後、愛犬ハチと共に祖父のダン・フォレストが暮らすグリーン・フィールドへ移り住む。ある日屋根裏部屋で自分そっくりの肖像画を発見し、運命が変わっていく。王家に伝わるペンダントや、飛行機での救出劇など冒険ファンタジー要素が強く、学園恋愛ものが多かった連載当時の『りぼん』では異色の作品であった。

『空色のメロディ』の概要

『空色のメロディ』とは1987年6月から1988年8月まで集英社『りぼん』で連載された、水沢めぐみによる少女漫画作品。連載当時のキャッチコピーは「夢いっぱいのどきどきロマン」。コミックスは全5巻(絶版)で、2006年に集英社文庫版全3巻が発売されている。1987年にレコード版、1988年にCD版としてイメージアルバムもリリースされている。番外編として「シオンの花の頃」が『りぼんオリジナル』1988年秋の号に、「スノーウィ・パーティー(前後編)」が『りぼん』1989年2月・3月号に、「大好きなグリーンフィールド」が『りぼん』1989年10月号別冊にそれぞれ掲載されている。
両親を亡くした主人公の少女メロディ・ブルーは、愛犬ハチと共に祖父のダン・フォレストが暮らすグリーンフィールドへ移住する。そこでパイロットを夢見る少年アーク・ライトと出会い、たくさんの友人もでき毎日楽しく過ごしていたが、ある日ダンの家の屋根裏部屋で自分そっくりの肖像画を見つけたことをきっかけに、自身がブルーストーン王国の血を引いていることを知り、王位継承問題に巻き込まれていく。
メロディが両親からもらった青いペンダントに隠された秘密や、さらわれたメロディをアークが飛行機で助けに向かうなど冒険ファンタジー要素も多く、学園恋愛作品が多かった連載当時の『りぼん』の中で違う雰囲気を持った本作品は、アニメ化の話も出るほど絶大な人気を誇っていた。ただ作者の水沢の妊娠・出産時期と重複したため、アニメ化は実現しなかった。

『空色のメロディ』のあらすじ・ストーリー

憧れのグリーンフィールド

両親を交通事故で亡くした13歳の少女メロディ・ブルーは愛犬ハチと共に、祖父ダン・フォレストと住むためグリーンフィールドへやって来た。
メロディは両親からもらったお守りのペンダントを肌身離さずつけており、両親の故郷である自然いっぱいのグリーンフィールドにずっと憧れを抱いていたのだ。
青空の下グリーンフィールドが見渡せるブナの木に登り、メロディは両親との思い出の歌を歌っていた。その綺麗な歌声に誘われ、グリーンフィールドに住む少年アーク・ライトがブナの木へ近づくと、ハチが突然吠え出す。驚いたメロディはアークの上に落ちてしまう。これが2人の出会いだった。
翌日メロディはアークと彼の親友グレイ・キートンにグリーンフィールドを案内してもらう。アークはメロディの笑顔に胸の高鳴りを覚える一方、メロディはグレイの包み込むような優しさにときめく。しかしグレイの心はアークの姉セーラ・ライトに向いていることに気付いてしまう。
学校ではリズことエリザベス・ブラウンという親友ができたメロディ。アークが自分で飛行機を作り、その飛行機で自由に空を飛び回るのだという夢を持っていることも知り、メロディはその夢を応援するとアークに言うのだった。

メロディと瓜二つの肖像画

ある日、ハチを探していたメロディは屋根裏部屋に入り込んでしまう。そこでお守りのペンダントを身につけた、自分にそっくりな少女の肖像画を見つける。メロディが驚いていると血相を変えたダンがやってきて「もう2度とここへはいるんじゃない」と叱った。
翌日もメロディは肖像画の事が気になっていたが、ダンには聞けずにいた。その頃、教会の裏庭でダンとグレイの父キートン牧師の2人がメロディが肖像画を見たことについて話しており、盗み聞きをしてしまったアークはメロディの両親に何かあるのではないかと考え、メロディとグレイ、リズも交え話し合う。リズはメロディの母が王家のお姫様だったのではないかと言い出す。しかしメロディはそれを否定した。幼い頃メロディのよそ行きの服を買えなかった母が自分のワンピースを仕立て直してくれた事があり、そのように質素に暮らしていた母が王家の人間であるはずがないと考えたからだ。そして、心配してくれる友人たちに感謝して肖像画のことは忘れることにした。アークはそんなメロディを自分が守ろうと心に決めるのだった。

肖像画の少女の正体

秋に行われる芸術祭の日にブルーストーン王国使節団が村に立ち寄ることになった。芸術祭当日、メロディは村一番の金持ちの娘ホリー・ゴールドの代役で「ねむり姫」の主役を演じることになった。そしてアークは裏庭でダンが使節団の男性に「メロディはおまえらのところへはやらん!」と怒鳴りつけたところに遭遇する。アークはそのやり取りが気になり、ブルーストーンとメロディの関係を調べる。すると肖像画の少女はブルーストーン王国のマーガレット王女であり、23年前静養でグリーンフィールドに滞在していたという記録を発見した。こうしてアークはメロディがブルーストーン王国の王位継承者であることを知るのだった。
そしてダンの元に使節団の男性から手紙が届く。ブルーストーン王国女王の反対派がマーガレット王女に娘がいたことを知り、自分たちの側につけようとしている。そのためメロディに危険が及ぶ前に、正式に王位継承者として王国に迎え入れたいとの申し出が書かれていた。ダンは拒否するかのように手紙を燃やしてしまう。
ある日アークの飛行機キティホーク4号が完成し、テスト飛行をすることになった。メロディらいつもの仲間が集まるが、アークとグレイが場を離れた隙に黒服の男たちが現れ、メロディを攫い車で走り去る。知らせを受けたダンが飛行機でメロディを救出し事なきを得るが、その夜、メロディは黒服の男に言われた「俺たちはあんたと青いペンダントがありゃそれでいいのよ」という言葉を思い返していた。このペンダントにはどんな秘密があるのか、なぜダンはそれを隠すのか思い悩むメロディだった。

ブルーストーン王国と王位乗っ取りの陰謀

メロディが帰宅すると使節団の男性クリスことクリストファ・アレンが家の前に立っていた。そしてメロディに「おむかえにあがりました。メロディ・ブルー姫様」と言い、メロディがブルーストーン王家の血を引いていること、両親はメロディの祖母である女王に結婚を反対され王国を出ていたこと、そして女王は結婚に反対したことを後悔しており、現在は王位継承問題で窮地に立たされていることを告げる。女王を助けるために王国へ来てほしいと言われたメロディだが、拒否をするとクリスは「明日の夜8時に駅で待っている」と言い去っていった。
ダンはメロディにペンダントが王位継承者に受け継がれるものだと話し、ブルーストーンへ王国に行かせるため「おまえなんぞいない方がせいせいするわい」と冷たい言葉を浴びせてしまう。
メロディは両親やダンがなぜブルーストーン王国のことを伏せていたのか、またペンダントを託された理由を確かめるため、女王に会うことを決意する。旅立つ前にアークの顔を見に立ち寄り、ダンには置き手紙を残してメロディはクリスと共にブルーストーン王国へ向かった。そしてきっとグリーンフィールドへ戻ってくると心に誓った。
メロディは女王に会う準備の間、クリスの家で生活することになった。外出厳禁とされたメロディだったが「少しでも何かわかるかもしれない」とハチと共に外出してしまう。街で暴走した馬車にはねられそうになったメロディはエドことエドワード・バークレイという少年に助けられる。
傷の手当てのためバークレイ家を訪れたメロディ。しかしこのバークレイ家こそが王国を乗っ取ろうと企む女王反対派だったのだ。メロディはそのままバークレイ家で軟禁状態になり、脱走したハチがクリスに知らせるが、シラをきるバークレイ家からメロディを助け出す手立てはなかった。
数日後、バークレイ家のパーティーに出席を強いられたメロディは、突然エドとの婚約をさせられる。あの馬車の事故はバークレイ家が仕組んだもので、メロディとエドを結婚させ王位を乗っ取る計画だったのだ。メロディが「助けて!アーク!」と叫ぶとエドは笑い飛ばすが、そこへ本当にアークが助けにやって来る。
アークはメロディを助けようとブルーストーン王国にやって来ており、偶然クリスと出会いメロディの現況を聞いたのだ。2人で逃げ出すものの逃げた先は行き止まり。メロディはもう1度会えるおまじないだとペンダントをアークに渡して逃がし、自分は再びバークレイ家に戻っていった。

メロディの帰る場所

バークレイ家に戻ったメロディは書庫でペンダントの秘密を知る。それは太陽にかざしたペンダントの光を浴びながら誓いの言葉をかわした2人は永遠に夫婦となり、離れる事があってはならないというものだった。その後バークレイ家に侵入したアークが護衛に捕まってしまう。アークを人質に取り、ペンダントを奪ったエドと両親は結婚式を強行するが、ペンダントの儀式でメロディは「エドとは結婚しない、アークに手を出したら自分も死ぬ」と言い、教会の塔の上に逃げ込む。追いかけてきたエドにメロディは「こんなふうに結婚して王座を手に入れて、あなたは本当に満足できるの?」と問いかけるが、その言葉を振り払うようにエドがメロディに迫ると古びた壁が崩れ2人は塔から落ちてしまう。間一髪でアークが飛行機で2人を助け、飛行機が降り立った場所にはすでにエドの両親を逮捕した警察が待っていた。
メロディは自分が王位を継ぐつもりはなく、グリーンフィールドに帰りたいと伝えるため女王に会いに行く。しかし女王はメロディを抱きしめ、マーガレットの結婚を許さなかったことを悔やみ、メロディの存在を知っても会いたいとはとても言い出せずにいたことを話す。そしてメロディが王国に来てくれたと、とても喜んでいた。そんな女王の様子を見たメロディは女王を1人残してグリーンフィールドに帰りたいとは言えず、王国に残ると決める。
宮殿で女王と生活を始めたメロディ。女王はとても優しかったが、メロディはグリーンフィールドの事を思い出さない日はなかった。数日後、女王とメロディはブルーストーン王国建国記念日の式典に出席する。そこで女王が突然自分の後継者を発表し始めたためメロディは慌てるが、指名されたのはクリスだった。そして女王はメロディに「グリーンフィールドへお帰りなさい。こうして私のところへ来てくれた。それだけで十分」と言う。女王はメロディが自分とグリーンフィールド、どちらも大切で選べず悩んでいたことを見抜いていたのだ。
そしてメロディはアークやダン、自分をいつも見ていてくれる優しい人たちが待つグリーンフィールドに戻るのだった。

番外編

「シオンの花の頃」

幼いメロディがホワイトタウンに住んでいた頃の物語。両親からペンダントをもらったメロディは毎日大切に身につけていた。ある日メロディは公園で大きな犬にペンダントを取られ、周囲にシオンの花が咲き誇る小屋に入っていく犬を追いかける。そこで犬が空腹であることに気づいたメロディはパンをあげ、犬と仲良くなった。メロディは犬を「モグ」と名づけ、両親に内緒で飼う事にした。
家からこっそり食べ物を持ち出していたメロディは、マーガレットに見つかり食べ物を取り上げられてしまう。更に意地悪な友人ロビンにモグといるところを見られてしまう。両親に告げ口されてしまうのではと心配するメロディだったが、メロディの事が好きなロビンは告げ口はせず、モグにこっそりとご飯を持ってきてくれるようになった。
ある日メロディはロビンや友人らと湖でボートに乗っていた。子供だけで乗っているのを心配したのか、モグも湖畔にやって来ていた。するとロビンがメロディのペンダントをからかって取り上げ、ボートが揺れた拍子に湖の中に落としてしまう。ロビンはペンダントを拾おうと湖に飛び込み、メロディも弾みで落ち2人とも溺れてしまう。遠のく意識の中、メロディにはモグの鳴く声が聞こえていた。
メロディが目を覚ますとそこは自宅で両親の心配する顔があった。そこへロビンが駆け込んできて「モグが死んじゃう!」と叫ぶ。モグの大好きなキャンディを持って急いでモグの元に駆けつけるメロディ。するとモグはメロディを待っていたかのように事切れた。獣医に促されたメロディがモグのお腹を見ると、そこには1匹だけ生まれた赤ちゃん犬がいた。メロディとロビンを助けるため、モグは身重の体で湖に飛び込んだのだった。
メロディは自分がその赤ちゃん犬のママになると決め、両親も同意してくれた。そして「ハチ」と名づけられた犬はメロディと一緒に暮らしていく事になった。メロディはシオンの花が咲くたび「今年もまたモグの花が咲いたね」とモグの事を思い出すのだった。

「スノーウィ・パーティー」

メロディがブルーストーン王国から戻って2週間後のこと。まもなく学校の創立祭が開催されるとリズから聞かされたメロディ。夜はダンスパーティーが開かれ男子が女子をエスコートする事になっており、毎年創立祭の日は雪になるため皆は「スノーウィ・パーティー」と呼んでいた。
創立祭が近づくにつれ、校内では男子が気になる女子にダンスを申し込む姿が見られるようになった。一方アークはキティホーク5号の製作に力を入れ、グレイに創立祭のダンスをセーラに申し込むよう焚きつける。どこか焦りさえ見せるアークをグレイは不審に思う。そしてアークはメロディに申し込めないまま、パーティー当日を迎える。
パーティー当日は雪景色。ダンス会場でアークはホリーに無理矢理つれていかれてしまい、メロディとグレイはパーティーを抜け出して2人で話していたが、メロディが足を滑らせグレイが抱きとめる。そこへ偶然セーラがやってきて2人を誤解し外へ飛び出してしまう。グレイがセーラを引き止めると「いつも私には敬語で話すじゃない。それが私いつも寂しかった」と言い、グレイの手を振り払う。メロディは誤解を解こうと雪の中を追いかける。気づいたアークはメロディを部屋へ戻そうとするが、グレイのために必死で誤解を解こうとするメロディを見て、思わずキスをする。しかしメロディは「私たち友達よね?」と言ってしまうのだった。
パーティーの翌日、学校の生徒たちは雪合戦に勤しんでいた。アークは焦ってメロディにキスした事を「バカなことをしたな」とグレイに打ち明ける。メロディはアークと友達でいようと心に決め、いつも通りに振る舞おうとする。
翌日メロディは学校でアークの妹キャシー・ライトから、アークが飛行機の勉強のため、来月から1年間村を出ると聞かされる。それを聞いたメロディは、自分がいつも安心していられたのはアークがそばにいてくれたからだと、改めて思い知らされる。そしてグレイとセーラが自分の思いに素直に向き合い、お互いの思いを伝え合う様子を見たメロディは、自分も素直になってみようと考えるのだった。
ついにキティホーク5号が完成し、試運転の日がやってきた。メロディは自分も一緒に乗りたいと言い、空の上で「会えなくなるのは寂しいけど、夢を追いかけてる時のアークの顔がいちばん好きだから、ずっと待ってるね」と自分の思いを伝える。3月になりアークは皆に見送られ、村を旅立つのだった。

「大好きなグリーンフィールド」

アークが村を出て1年後、メロディはいつもと変わらない毎日を送っていた。ある日、メロディは教会に出かけた際、ブルーストーン王国の女王が視察にやって来るという話を耳にする。そしてグレイから彼の父とメロディの父が幼馴染で、静養に来たマーガレットと3人でよく遊んでいたと教えてもらう。嬉しく思うメロディだったが、ダンはブルーストーンの話を避けるような様子を見せていた。
グリーンフィールドに到着した女王はダンとメロディの家を訪れるが、ダンは女王を避けるように出かけてしまう。女王は「どうしてもダンに会って、私を許してもらわなくては」と言い、クリスからダンの居場所を聞き後を追う。そしてクリスはメロディに「あなたとダンの間に血の繋がりはないのです」と言い、過去のことを語り始めた。
航空学校を優秀な成績で卒業したダンだったが、仕事がなく飢えで倒れていたところを当時王女だった女王に助けられ、王室専属のパイロットに任命される。やがてマーガレットが生まれ教育係となったダンは、実の娘のようにマーガレットを愛した。体の弱いマーガレットを案じる女王に、ダンは静養先として自身の故郷であるグリーンフィールドを推薦する。そこでマーガレットはメロディの父となるアンディと出会う。マーガレットとアンディは愛し合うようになり、結婚の許可をもらおうとするが女王は許さなかった。その時すでにマーガレットはメロディを身籠っており、書き置きを残してマーガレットはアンディと共に王国を出て行った。またマーガレットとアンディが出会ったきっかけを作ったダンは責任を感じ、王国を出てグリーンフィールドに戻って来ていた。ダンはメロディをマーガレット同様愛していたが、マーガレットと同じような道を辿ることを恐れ、またどうやってメロディに対する愛情を伝えれば良いかわからずにいたのだった。
ダンと女王はマーガレットの墓の前で再会。土下座して詫びるダンに女王も謝り、メロディはダンが自分の大事なおじいちゃんであると伝え、わだかまりは解けた。そして王国へ戻った女王はクリスを後継者として選んだ理由を語る。マーガレットとアンディの駆け落ちの手助けをしていたこと、メロディが生まれた後の3人の生活を見守っていたこと、目立たないところで人の気持ちを思いやるクリスに女王は国を任せてみようと思ったのだ。
メロディは女王への手紙に「ママは最初からおばあさまのこと恨んでなんかいなかった。ママはグリーンフィールドが故郷だって言ってたのに、ブルーストーンのペンダントをくれた。それはきっと私がいつかおばあさまに会えるようにと願いを込めたんだと思う」としたため、ポストに投函した。すると後ろからメロディを呼ぶ声が聞こえた。振り向くとアークが駆け寄って来て2人は抱擁を交わすのだった。

『空色のメロディ』の登場人物・キャラクター

主要人物

メロディ・ブルー

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