エルフを狩るモノたち(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『エルフを狩るモノたち』とは1994年3月~2003年1月まで『月刊電撃コミックガオ!』に連載された、矢上裕によるファンタジーコメディ漫画作品、及びそれを原作としたテレビアニメ作品である。異世界に招喚された日本人3人と召喚魔術士が異世界中に散らばって女性エルフの肌に貼りついた5つの「呪文のかけら」を探し、集めることを目的とした物語。呪文のかけら」を見つけるためには裸を確認する必要がある。彼らがどんなエルフの服も脱がせることから、「エルフを狩るモノ達」と呼ばれ警戒されていく。

バード島という殺風景な孤島に1人で暮らすウインディーというエルフを探し求めてやってきた一行。
1人トイレに行ったセルシアは、飛び立つのに助走を要す不器用なミライというアホウドリに衝突され、海に落とされる。ミライはセルシアに落書きされ逃げだす。一方3人はウインディーに出会うが、彼女は絶滅寸前で世界最後のアホウドリであるミライを返せと言ってくる。
戻ってきて陰でそのやりとり聞いていたセルシアは事の重大さに気付き、「変身指輪」でアホウドリに化けその場を取り繕う。
事情を理解した3人はミライを捜索し、成り行きで島の頂上に登った際にここが火山島であることを認識する。
その頃ミライとして過ごしていたセルシアはうっかりしゃべってしまう。会話が成り立つことで許しを請うウインディーから、ここが羽毛工場で、島内のアホウドリは乱獲された挙句激減した事、自分が密かに隠しておいた卵がミライだった事を聞かされる。正体を明かしたセルシアは、仲間がミライを探していることを告げるが、直後大きな噴火が始まりやむなく一行はウインディーを連れ島を後にする。
辺りには何もない孤島から最後のアホウドリであるミライが噴火に巻き込まれたと推測したセルシアは、自身の軽率さを反省し、「変身指輪」でアホウドリになった体に「呪文のかけら」を回収してジンクスにより自分を戒める事を実行する。
そこに落書きされ飛んでいるミライを発見した一行は追跡した先で別の島を発見し、新たなアホウドリの集落と出会うのだった。

律子が収めた「呪文のかけら」

武器の携帯が許されない王国で、森の泉の近くに住むビルギッタという友好的な女エルフにひとりで会いに来た律子だったが、ハンターである彼女に逆に今までの同族の恨みを晴らすための囮として狙われてしまう。
かろうじて滝から飛び降り追跡から逃げようとする律子だったが、その道中巣から落ちた鳥のヒナを助けたり、イジメられ犬のジョンを貴重な飲料水で洗ってキレイにしてやる。又密猟者の罠にかかりケガをした動物たちを複数手当するなど、その形跡を観察するにつれ追跡のプロであるビルギッタは次第に自身の先入観への疑問を持ち始める。
時間も水も消毒薬も非常食もなくなり、疲労した律子はそこで今度はクマに襲われそうな猫を目撃する。
律子は限界を感じつつ、だからこそ他人事ではないとクマに投石し、注意をひいて走るが転んでしまう。追いついたクマに殴られ律子が意識を失いかける中、すべてを見ていたビルギッタはクマを蹴り倒す。
混濁する意識の中、淳平が助けてくれたと錯覚し、ただ逃げることもできないと弱音を吐く律子だったが、ビルギッタは「呪文のかけら」をもつエルフであることを告白し、律子を抱えて街に向かう。

愛理が収めた「呪文のかけら」

律子がビルギッタに追われていた同じ頃、愛理も魔女に像の化け物の様な姿にされたゲイルと戦っていた。
魔女から、誰かが涙を流してくれたら呪いが解けると聞いたゲイルは、偶然出会った愛理に呪いを解いてもらうように頼んだのだった。
プロの演技力に圧巻されたゲイルだったが、呪いが解けない事から演技だったからかと呟いてしまう。成り行きで親切にし立ち去ろうとした愛理だったが、それを聞いた彼女は様々な変装で役を作り、女優としてのプライドをかけてゲイルの呪いを解こうと奮闘する。
戻らない姿を見て演技に不安を覚えた愛理は取り乱し、ゲイルの優しさに励まされ涙するが、これも愛理の考えていたシナリオだった。これが自身の限界かと愛理はいよいよ行き詰るがそこへ王立治安維持隊が突入し、突如ゲイルは銃撃されてしまう。激昂する愛理も仲間だと疑われ狙われるが、魔女の呪いにより死ぬことすら許されないと立ち上がったゲイルを見て維持隊は逃走する。そんな維持隊の様子を見て呆れるゲイルだったが、撃たれて死なないまでも、そうまでして姿が戻らないゲイルに愛理は涙する。
ひと段落した後、愛理はセルシアの事を話してゲイルを励まそうとするが、話の流れでゲイルがエルフであることを知る。しかもゲイルは女性で、額の模様は呪われた後に付いたことを知り愕然とする。額の模様が「呪文のかけら」であると判明し、回収する為セルシアの元へ向かおうとする愛理はゲイルから「最後の涙も演技か」と問われ、「最初から全部本物」と答えた。

淳平が収めた「呪文のかけら」

「呪文のかけら」を持つパワードナイト役のエクシー・メサに会いに来た淳平は、子供の頃憧れたヒーローの正体が普通の人間だった事を思い出す。
そんな経緯から淳平はヒーロー役者のエクシーに対して好感が持てず、即座にスーツを脱がそうとする。そこへパワードナイトのファンの子供たちが乱入し、慌ててエクシーはパワードナイトのヘルメットを被り、悪役に見立てられた淳平は空気を読んで必殺パワードチョップに悶絶する。
エクシーは子供達を連れて街へ移動するが、そこにはパワードナイトを待ち伏せる外国から来た傭兵達が待っていた。彼らは仕事がない腹いせに問題ばかり起こしているという噂があり、今回はパワードナイトの正体を晒して子供の夢を奪うという目的で待機していた。
パワードナイトが子供に大人気の絵本シリーズであることを知った淳平は、自分がなりすまし、エクシーを偽物に仕立て上げ服を脱がせる作戦を思いつく。地下室から予備の着ぐるみを着てマントで装い街へ出た淳平だったが、通りの住人からパワードナイトが袋叩きにあってるという話を聞く。
傭兵に蹴り飛ばされたエクシーは家屋の扉の向こうに飛ばされ、倒されそうなパワードナイトを見て子供たちは泣きはじめる。しかし傭兵が扉の向こうに進むとパワードナイトに扮した淳平が現れ、子供たちを泣かしたことは無視できないと逆に本気で蹴り飛ばされる。
一瞬にして残りの傭兵達も倒され、エクシーは感謝し協力する事を決めるが、その後予備の着ぐるみや地下倉庫の話を聞いた彼女は淳平に絵本の解説を始める。それを聞いた淳平は子供のころに抱いた憧れを思い出した。

ルファード編

前編 ルファード登場

謎の復讐宣告の送り主に悩まされる一行は、長い旅の末再び商業都市ビレに戻ってきた。
かつてセルシアが犬の占い師で参上した橋の上で、別の犬の占い師に声をかけられる。「呪文のかけら」について、知っているそぶりを見せるその犬に招かれ近づいたセルシアは、4つの「呪文のかけら」を奪われてしまう。白い犬は復讐者として宣言しその実体を明かそうとするも「呪文のかけら」が障害となり元に戻れずあっさりと順平に捕まる。正体を明かさず黙秘する犬に対し、4人は会話の流れからアフロとあだ名を付けるが、目を離した隙に逃げられてしまう。
「呪文のかけら」をアフロに奪われたが妙に落ち着く自分を不思議に思った律子は、追想する中で愛理が描きだした多くの人物の数々を見て、異世界から離れたくないと気付く。
「呪文のかけら」が無くなり姿を戻したセルシアに、律子はいつか「呪文のかけら」が揃い日本に戻る際、異世界と日本が繋がった瞬間に何か細工を施しそのままに出来ないか、と提案を持ちかける。セルシアが善処すると応える中、愛理は既にアフロの正体を思い出しており3人の記憶を導く。
それはセルシアが彼らを招喚した際戦っていた、ルファードという敵だった。

中編 セルシアが捕えた「呪文のかけら」

今後何が起きても平和が維持できるように、この異世界中の国々が共同で開発する平和の守護神クイダ・オーレ。
その給仕班として開発チームに潜入したアフロことルファードは、自らをセルシアと名乗り企みを実行に移す。しかし間もなく本物のセルシア一行が、世界征服を目的とするルファードが関わってないか、クイダ・オーレに探しにやってくる。
潜伏している事がバレると開き直ったルファードは、完成間近のクイダ・オーレを操縦し4人を踏み潰そうとするも、自分が細工した大量のバナナを踏んで大転倒する。
クイダ・オーレは大破、ルファードは世界的犯罪者となる。

セルシアの助手のアネットは日本の物を招喚し、たびたびカレーを持ってきてくれることもあった。律子はアネットの偶然招喚シリーズの中のパズルを制作中、最後の1ピースが無くなっていることに気付く。
そんな中、淳平は買い出しついでにエルフ探しをしていた。声をかけられたアンジェは、悪名高く広がったエルフを狩るモノたちを知っており、偏見から彼らを軽蔑し警戒していた。アンジェは人間の血が混じり耳の短いエルフだったため、その容姿のおかげで淳平にバレず、やりすごすのだった。
パズルのかけらを拾ったアンジェはそれを捨てるゴミ箱を探していた最中、再度エルフを狩るモノたちに探されていることを知る。エルフとバレてしまった焦る彼女に、4人は捜索の手を緩めず追い込まれるが、彼らが探していたのは部屋から無くなったパズルのピースだった。一安心したアンジェだったが、エルフを脱がすことよりパズルを優先する彼らの行動に、彼女は失言を吐く。
そんなアンジェに淳平は未完成のパズルを見せ、奪った最後のピースを埋める。それが彼らの故郷の風景である事を理解したアンジェは、自らをエルフと告白し背中の「呪文のかけら」を提示した。

元に戻れないルファードは、「呪文のかけら」が全部揃えば剥がれ落ちるかもしれないと閃く。
一方アンジェの背中の「呪文のかけら」を回収するのを渋るセルシア。形が悪く顔に記されたら嫌と、トイレの窓から脱走する。
淳平と律子はそんなセルシアを捜索中に、パンダに変装した犬のルファードとすれ違う。ルファードは2人の会話から彼らが最後の「呪文のかけら」を見つけたことを知り、さらにセルシアが何故か逃げていることを悟る。そこでルファードは「変身指輪」で姿を変えたセルシアだと名乗り出た上で、アンジェの「呪文のかけら」を回収し、剥がれ落ちるのを期待する。
しかし「呪文のかけら」で背中に「犬」と記されたせいで変装は見破られ淳平達に追われる。うまく部屋を飛び出すが、世界的犯罪者となっていたため街中から追いかけまわされ、ルファードは逃げ場を探して生ごみ置き場に飛び込んだ。だがそこにはセルシアが潜んでおり、世界的犯罪者も全ての「呪文のかけら」も、この瞬間回収されるのだった。

後編 終幕へ

超古代文字で書かれた謎の2冊の書物は、呪文を行使するために解読する必要がある。それには変換中の文字を1度安定させるため、術者の素肌を経由させる必要があった。セルシアは洞窟にてひとり、1冊目の呪文書の解読に成功したが、そこにルファードが現れ呪文書を横取りしようと戦いが始まった。
魔杖を持って戦うルファードに素手で苦戦するセルシアは、一か八か解読した「最強なる呪文の書」と命名されていた呪文を行使し、異世界から3人の人間と戦車を招喚したのだった。招喚された格闘技を繰り出す龍造寺淳平と近代兵器を駆使する井上律子にルファードは敗北し、崖から転落した。
残るもう1冊の書物が送元呪文の書で、彼らを日本に戻すため儀式が行われた。かくして彼らの旅はこのようにして始まったのだった。
捕まえたルファードの「呪文のかけら」を用い送元呪文の書の解読に成功したセルシアは、先日律子が提案してきたアイデアが無理そうなことを彼女に明かし、送元呪文の儀式を1週間後に実施する旨を伝え、その前日の夜にお別れパーティを開くことを決める。律子はもちろんセルシアも落ち込むが、彼女はその時密かに淳平への恋心に気が付く。
ルファードを捕まえたことでセルシアは国際連盟から招喚マスターの称号を授与されることとなる。コモンエルフの長であるセルシアは、街を挙げてパレードが行われたりグッズが販売されたりと賛美され、1週間後には彼女の像が建築される。
その夜お別れパーティが催されるが、高級そうなドレスで終始落ち込む、らしくない態度のセルシアは、パーティ途中にも関わらず会場を後にする。そんなセルシアに淳平はしびれを切らし彼女を追う。ひとり部屋で日記を書くセルシアは「ルファードを捉えた功績から招喚マスターの称号を与えられ」という下りを書き綴る。そしてもう会えなくなる淳平への想いに涙した。そこへ突如淳平が現れたのでセルシアは慌てて日記を破り、ポケットに隠す。淳平は場違いな言動を発し2人は喧嘩となり、らしさを取り戻したセルシアは翌日そのままの姿で儀式を始める。
律子の提案したアイデアは検討の末、魔法を幾重にもかけられた丈夫な太いワイヤーの様なロープとなり、一方を地面に固定され、一方は淳平が託される。
出発直前、律子は牢屋に赴き魔法を制限される鎖に繋がれた状態のルファードにまだ復讐したいかと尋ねる。するとルファードはこの世界に留まって考え直せと嘆願してくる。
「自分が何故世界征服なのかわからない」など意味不明な事を言われ律子は困惑するが、話を切り上げその場を後にする。
世界が繋がった状態なら或いはと、念のためセルシアは招喚呪文の書を抱えて儀式が開始される。
呪文が実行され無事3人は東京タワー展望台の屋根に着地し、景色を確認した淳平は歓喜するが、同時に異世界と繋がったままの空間の歪の存在に驚く。淳平はロープの端についてあったフックを東京タワーの鉄骨に固定し様子を見る。だがロープはあっという間に引きちぎれ、諦めきれないセルシアは切れた異世界側の端を持って歪に飛び込む。日本側で淳平は手を伸ばし受け止めようとするも届かず、セルシアは空間の歪に落ちていった。

数か月後、彼らは日本でセルシアを捜索していた。八方ふさがりの3人は検討の末、ロープを飲み込もうと塞がらずに存在していた空間の歪に飛び込む。そこに見えてきたのはすべての場所であり、すべての時間という不可思議な空間の連続だった。彼らはセルシアの時間を遡り、歪から異世界に現れ落ちた直後のセルシアを目撃する。

取り決め通り国際司法裁判所に引き渡されたルファードの前に淳平達3人が現れ、元の姿に戻れとルファードの鎖を外す。困惑しながらも復讐しようと姿を戻すルファードは、セルシアへと変わった。
淳平達が見てきたセルシアは、歪から脱した後、この異世界のどこかに落ちて記憶を失っていた。自身を確認するため所持品を漁ったところ、ポケットから破られた日記の切れ端に「世界征服を目論む邪悪な魔導士ルファード」の名前があり、記憶を探るうち「変身指輪」でルファードの姿になったのだった。
淳平は姿が戻ってもなお記憶が戻らないセルシアを、ドレスを剥ぎ取り蹴り飛ばす。その衝撃でセルシアは記憶を取り戻し、これにて最後のエルフ狩りが完了したのであった。

後日、日本の庭園に招かれたセルシアは、空間の歪から淳平達が異世界に戻れた理由について不思議に思い、3人に問う。「ロープは切れたがそれでも切れずに残っていた、心の絆がある」と律子が解説するも、それを言い出した淳平は自分の魔法だったとはぐらかす。日本に戻っても何故か食べなかった好物を、4人分準備してきた淳平。花見カレーの準備を始める最中、愛理はふとセルシアと共に歪に落ちた招喚呪文の書を思い出す。
「いただきます」の号令と共に、異世界のどこかで招喚呪文が響くのだった。

『エルフを狩るモノたち』の登場人物・キャラクター

エルフを狩るモノたち

龍造寺淳平(りゅうぞうじじゅんぺい)

CV :関智一
19歳のおとめ座の日本人男性。黒髪で短髪の長身。かかと落としなど蹴り技中心の格闘能力が高く、空手の達人。猪突猛進な単細胞的なキャラクターだが、情に厚く仲間想いである。大好物はカレーで、何度かカレーにまつわるエピソードが作中登場するが異世界に至っては何故か食せない。律子やセルシアの気持ちに鈍感で、逆に愛理に対しては熱烈なファンで慕っているが弟程度にしか思われていない。女性エルフの服を一瞬で脱がす特技を持っており、これがエルフを狩るモノたちの悪名の要因となっている。

小宮山愛理(こみやまあいり)

CV: 富沢美智恵
24歳のふたご座の日本人女性。オスカー女優でエルフを狩るモノたちではリーダー的存在。策略家で観察力や洞察力が高く、エルフ狩りでは特殊メイクの変装やその演技力を特技として活躍する。冷静沈着、頭脳明晰で普段は温厚だが怒ると執念深い。招喚されたときの映画の衣装で異世界を過ごしており、腰に帯びた長剣は柄だけの飾り。しかし、その立ち振る舞いから、本物の刃があるかのように思わせるほどの演技力を持つ。

井上律子(いのうえりつこ)

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