エルフを狩るモノたち(漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『エルフを狩るモノたち』とは1994年3月~2003年1月まで『月刊電撃コミックガオ!』に連載された、矢上裕によるファンタジーコメディ漫画作品、及びそれを原作としたテレビアニメ作品である。異世界に招喚された日本人3人と召喚魔術士が異世界中に散らばって女性エルフの肌に貼りついた5つの「呪文のかけら」を探し、集めることを目的とした物語。呪文のかけら」を見つけるためには裸を確認する必要がある。彼らがどんなエルフの服も脱がせることから、「エルフを狩るモノ達」と呼ばれ警戒されていく。

『エルフを狩るモノたち』の概要

『エルフを狩るモノたち』とは1994年3月~2003年1月まで『月刊電撃コミックガオ!』に掲載された、矢上裕によるファンタジーコメディ漫画作品、及びそれを原作としたテレビアニメ作品である。
ファンタジーという世界を舞台に、異文化とのギャップやキャラクター同士の掛け合いがコミカルに表現されており、ドラマチックなストーリーも随所に収録されている。基本1話完結の構成だが、第14話から第21話にかけてドーン編という世界を救う長編物語が描かれ、コミックス11巻では特別編・「彗星のごときモノたち」が収録されている。
『エルフを狩るモノ達』はアニメ化されており、1期が1996年10月~12月、2期が1997年10月~1997年12月まで放送された。コミックスは連載開始前の読み切り集である『エルフを狩るモノ達DX』含め全22巻。
なお続編にあたる『エルフを狩るモノたちリターンズ』が2007年11月~2008年3月連載、さらに新キャラを加えた続編となる『エルフを狩るモノたち2』を『COMICメテオ』から2013年1月~2018年10月まで連載した。又小説『エルフを狩るモノ達』が『電撃文庫』より1998年7月に発売されている。

異世界に召喚された3人の日本人、空手の達人である龍造寺淳平(りゅうぞうじじゅんぺい)、オスカー女優の小宮山愛理(こみやまあいり)、軍事マニアの井上律子(いのうえりつこ)は、異世界の招喚魔術師であるセルシア・マリクレールにより、日本へ送り返す送元呪文の儀式の最中、アクシデントにより世界に散った「呪文のかけら」を探す旅に出る。
旅を続ける中で、当初反対していたコモンエルフの長でもあるセルシアが4人目の仲間となる。
彼らはセルシアと同じ波長をもつ女性エルフの素肌に印刷された「呪文のかけら」を点検する必要があり、その多くを同意もなく次々と脱がしていった。次第にエルフ達に警戒され、いつしか4人は「エルフを狩るモノたち」と呼ばれる事になった。
レビュアーからは、初期の画力に粗さが目立つ、先が読めてしまうなどの指摘もあるが、何度見ても安定して面白い、好きな漫画シリーズと評価されておりファンも多い。

『エルフを狩るモノたち』のあらすじ・ストーリー

犬のセルシア編

「呪文のかけら」を求める旅の始まり

物語は招喚された日本人、空手の達人である龍造寺淳平(りゅうぞうじじゅんぺい)、オスカー女優の小宮山愛理(こみやまあいり)、軍事マニアの井上律子(いのうえりつこ)の3人を日本へ送り返す送元呪文のシーンから始まる。
招喚魔術士のセルシア・マリクレールによる送元呪文中、アクシデントにより儀式は失敗し、「呪文のかけら」は5つに分裂し飛び散った。結果から推測するとセルシアと同じ波長をもつ女性エルフの素肌にプリントされてしまった可能性が高く、3人は女性エルフを脱がし裸を点検して「呪文のかけら」を探す旅に出発する。
コモンエルフの長でもあるセルシアはこれに反対するが、妨害するよりも一刻も早く彼らを送り返すほうが賢明と考えを改める。だが長である立場から3人と一緒に居るところを見られたくないセルシアは、商業都市ビレにて指につけていたマジックアイテム「変身指輪」により姿を白い犬に変え占い師として参上するも、すぐに愛理にばれてしまい事情を話して同行する。セルシアの導きにより判明した最初の「呪文のかけら」に向かうはずだった4人だが、情報漏洩からセルシアがエルフを裏切ったと知ったダークエルフのガーベラは部族を束ね、巨人をも引き連れてやってくる。戦闘やむなしと思われたが、策略家の愛理を中心に格闘家で空手を得意とする淳平や、武器マニアで74式戦車を駆使する律子の戦力に加え、セルシアの呪文によるサポートがあり、ガーベラから難なく「呪文のかけら」を手に入れる。
無事セルシアの身体に1つ目で丸形の「呪文のかけら」を回収したと思われたが、呪文が邪魔して「変身指輪」の効力が解けず、セルシアは元に戻れず、左目元が黒縁の犬となった。今後この現象はジンクスとなりセルシアに付きまとう事となる。

新たな仲間たち

愛理をリーダーとして旅を続けてきた4人は、長距離移動に不向きな74式戦車を放置するか検討中、ある町で物体に憑依して被害を出す猫の霊体に遭遇した。
町民は駆除しようと憑依された巨大なクマのぬいぐるみに火を放つが、燃やされてしまった霊体は今度は子犬のぬいぐるみに憑依する。それを拾った律子は、戦車の代わりにミケと名付けたぬいぐるみを連れていくことを提案。しかし霊を駆除しようとした町民がミケを奪い、戦車ごと川に沈めてしまう。町民を敵にしたくない律子は黙っていたが諦めきれず、川に飛び込み命がけで救出する。そうした経緯を経て町民からは許されたが、淳平は初対面で巨大なクマのぬいぐるみに殴られた恨みから、水で濡れていたミケを思い切り絞る。そのはずみで霊体が抜け、最終的に川に沈められた74式戦車に憑依した。
こうして戦車はミケと命名され、乗り物として共に旅をすることになる。

トイレットペーパーが切れた一行は通りすがりの老婆に紙の山伝説を聞き、山へと向かう。淳平は先に登るが、3人は白く小さいクマの生物に出会う。セルシア曰くピチカートという幻の異次元生物であり、律子はピチちゃんと名付け連れていく。一方山の上で大量の埋められたトイレットペーパーを発見した淳平だったが、実はそれはここに住むピチカート達が排出したフンだった。
トイレットペーパーの在庫不足問題は解決し、ピチカートは新たなペットとして同行する。

ドーン編

前編 「モールド」

「呪文のかけら」収集の進捗が思わしくない一行は占い師が集まる占術街に到着する。4人は別行動中、律子は健康が維持できると噂のモールドクリニックに入会する。だがそれは健康術ではなく、「モールド」なる遺伝子情報を使い世界征服をしようとしているドーン・バクストンの企みだった。
星座盤という「モールド」が反応する装置を使い異世界中の生命を操ることが出来るドーンは、敵対するであろう国家級軍事団体を次々に全滅・降伏させていく。
生命の本体と魂をつなぐ「モールド」からは何者も逆らえずその脅威が広がる一方、愛理は自分たち異世界の住人にも「モールド」があるのか、セルシアに問う。確証が得られない愛理とセルシアは調査を始める。
その頃髪の毛によって「モールド」を人質に取られた律子と淳平は、星座盤操作に必要なエネルギーとなるエルフを捜査するドーンの手下の襲撃を受ける。
律子の「モールド」を人質に取られてしまった淳平は劣勢に追い込まれ、さらに「モールド」から宇宙を解析したドーンは、その証明となる印を敵味方の額に記す。だが淳平達の額には印は刻印されず、この異世界以外の住人にはドーンの力が及ばないことが証明され淳平は反撃し敵を一掃する。
ドーンは「モールド」操作不可能な敵を確認するため、近くに居た精鋭部隊を向かわせる。その部隊のキリカというエルフが淳平と律子に接触するが律子の罠により気絶して、エルフ達が入った不思議な本を落とす。
合流した4人は日常を取り戻せたと安心したが、セルシアの額には印があり同時に星座盤にも反応が現れた事からドーンは招喚魔術師の存在を推測し、星座盤を操作してその存在を爆破しようと試みる。だが愛理が本の中のエルフ達にマークがなくその力が及んでないことに気付き、淳平はセルシアを本に閉じ込め既の所でその難を回避する。

後編 「呪文のかけら」とセルシアの気持ち

精鋭部隊であるバーツとキリカを改心させドーンの所在を突き止めた愛理達は、その居城に潜入する。
エネルギー不足で停止していた星座盤はドーンに同化し、思考を読み取るテレパシーと星座盤なくして「モールド」操作が出来る能力を得ていた。
世界中に異世界人の指名手配をしようとしたところ、背後に現れた淳平にエルフであるドーンは服をはぎ取られる。そこに4つ目の「呪文のかけら」を見た淳平は歓喜するが、状況を把握したドーンは愛理達を日本へ送り返す策を発案する。
能力を使い「呪文のかけら」を一瞬で集め、ページの中のセルシアを強制排出したドーンは、3人を日本へ送り返す呪文を行使せよと命令を出す。
ドーンごと送元呪文を消せば3人は日本に戻れなくなり、それを諦めれば世界の平和は取り戻せるとセルシアは葛藤するが、ドーンはそんな思考を読み取り、彼女に3人を帰すことを薦める。しかし3人と一緒に居たいという本心に気付いたセルシアは、ドーンの支配から自力で脱し、撃破する。
ドーンの身体にあったすべての「呪文のかけら」は、セルシアが呪文で攻撃したにも関わらず無傷で、またも彼らの目の前で上空へ飛び上がり分裂した。

パンダのセルシア編

満月の呪い

セルシアは、満月の夜に動物の足跡に溜まった水を飲むと呪われる、という紙芝居を始める。ちょうどその日は満月で、愛理はたまたま動物の足跡に溜まった水を発見する。セルシアはその水が魔法の研究に役立つ可能性があると採集しようとするが、うっかり足を滑らせその水を飲んでしまい、パンダの姿に変わってしまう。
満月の夜を除くと元に戻るが、今までのストレスが溜まっていたセルシアはそれを淳平にぶつけるのだった。
そんな時獣人治療専門医の女性エルフの情報を手に入れた4人は休業中の家を訪問するが、家の周りには何かしらの障壁があり入れなくなっていた。そうこうしてる間にパンダが侵入していくのを捉えた愛理は、満月の夜パンダになったセルシアを送り込む作戦を思い付く。
再び満月の夜、パンダになったセルシアは障壁を通り抜け専門医のナンシーに会うが、彼女の顔は3つの「呪文のかけら」によりパンダそのものとなっていた。エルフを狩るモノ達の事を把握していた彼女は、かけらを回収するようセルシアに嘆願してくる。「呪文のかけら」を回収して常にパンダのまま旅を続けたくないセルシアはひどく抵抗し帰ろうとするが、穴を掘って侵入してきた淳平に捕まりやむなく「呪文のかけら」を回収させられ、今度はパンダの姿で元に戻れない体になる。

「呪文のかけら」と3人の気持ち

ある町で「呪文のかけら」を持ったエルフ、マリーの情報を得る。しかし一行は同時に100年に1度だけ開かれる空間突破ゲートを見つける。このゲートは開けた者の生まれ故郷に通じ、試しに開けた律子はそこに日本を見る。帰れると確信した3人だったが、一方通行な上に1度通過すると扉は100年消えてしまうという条件から、心の準備が出来ない律子やセルシアは躊躇う。すぐに帰りたいと言い出す淳平だったが、そこにたまたま通りかかったエルフから4つ目の「呪文のかけら」を入手する。
別れる前にセルシアを元の姿に戻したいという律子の発言から心情を察した愛理の賛成もあり、3人はゲートをキープしておくセルシアを残して町で最後の「呪文のかけら」を持つマリーを探すことになる。
心の準備が出来ない律子は早速マリーと遭遇する。律子は親切丁寧に逃がしてしまうが、次にマリーは淳平に遭遇する。彼女が律子から逃がしてもらえたことを知り、躊躇いながらマリーを逃がす淳平だったが、内心安堵している自分に気付く。さらに愛理もマリーに遭遇するが、律子の気持ちを優先していたつもりが自分も同じだと悟る。結局マリーは船で町を離れ、律子はそれを確認する。
そうして3人がセルシアの元へ戻ると、覚悟を決めた彼女は「変身指輪」の障害となる4つの「呪文のかけら」を解き放ち元の姿に戻る。お互いを分かり合えた一同は別れを惜しむがその瞬間彼らの前で扉が開く。捨てたはずの4つの「呪文のかけら」にゲートが反応しそれを通過させ消えていく。
満月の夜、一行は船で逃げるマリーを探し出し、改めて1つ目の「呪文のかけら」がパンダとなったセルシアの背中に回収された。

呪いの解除

羽根つきに夢中になる淳平とセルシアだったが、罰ゲームとして塗りたくっていた墨は、あろうことか洗浄不可能なミケの補修用に購入した黒ペンキだった。
一行はペンキを落とすべく、浄化の女神に守護された洗剤発祥の聖地、どんな汚れも洗い流す奇跡の洗浄都市シャボンに到着する。2人はありとあらゆる洗剤を試すがペンキは落ちない。
そこに汚れ落としの女神が現れ、住人から月に1度街で1番汚れている者の汚れを落とすと聞き、2人は選ばれるため更に体を汚す。選考の末パンダからクマに見えるまでペンキで黒く塗られたセルシアが選ばれ、女神はそのペンキではなく「呪文のかけら」とパンダの呪いを飛ばしてしまった。
呪いが解けてペンキで黒くなったセルシアが誕生するが、豚の尿でペンキは洗い流され事なきを得るも、「呪文のかけら」探しは振出しに戻る。

猿のセルシア編

「呪文のかけら」を持つ猿の女エルフなるもの、の予知夢を見たセルシアを頼りに、一行は温泉宿に向かう。
男湯に間違えて入ってしまったセルシアは、そこへたまたま入ってきた淳平に見つからない様に必死で猿に隠れやりすごす。
淳平が出た後セルシアはそこで、空に浮いていた女神に飛ばされた4つの「呪文のかけら」を発見し、回収のため呼び寄せる。
だが猿の女エルフではなく、エルフのような雌猿かもしれないと、戻ってきた淳平は雌猿の捜索を開始した。
思わず声を荒げて見つかりそうになり、そうこうしてる内に足をつかまれて逃げ場を失ったセルシアは「変身指輪」で自分を猿に姿を変えると、その姿で淳平に確認されたと同時に4つの「呪文のかけら」を回収した。

大会都市にて打ち上げ花火大会が催される。優勝者には、剥ぎ取り自由のエルフが100人贈呈されることから、一行はこの大会に出場する事を決める。
スポンサーのいない花火師のデイジーと出会った一行は、花火制作の金銭面を援助する代わりに優勝賞品を譲ってもらう条件で彼女と契約する。
淳平とセルシアは工事現場で律子と愛理はウエイトレスとして働き、なんとか試作品完成までこぎつけるが、花火制作で疲労困憊のデイジーは試作打ち上げ後倒れてしまう。
1年前デイジーは恋人だった傭兵のベルトーレから花火師としての金銭援助を得ていたが、環境に満足していたデイジーは慢心しベルトーレは愛想を尽かせて出て行ってしまった。そんな名誉を挽回すべく今回の大会に臨むデイジーの決意を聞き、4人は優勝するためでなく純粋にデイジーを応援するため張り切って働きはじめる。
そうして開催された第13回世界花火大会の20分前、デイジーは控室でエルフの女性スタッフを見つける。4人の役に立とうとエルフに裸の点検を懇願するが彼女は拒み、逃げ惑う際にエルフが持っていたランプが花火に引火してしまい事故を引き起こす。
デイジーの花火は暴発するも大会はなんとか再開された。そして先程のエルフのスタッフは5つ目の「呪文のかけら」を持っていた。
落胆するデイジーを見たセルシアは「呪文のかけら」を花火の代わりに打ち上げる事を強行、淳平は止めようとするがセルシアの想いに共感しそれを黙認する。リタイヤしたはずのデイジーだったが、セルシアから開放呪文の言葉を聞き「呪文のかけら」を心を込めて打ち上げる。夜空に打ちあがったデイジーの心は美しく飛び散って一発だが無数の花火として夜空を彩り、観客は大いに沸くのだった。
魔法を使ったデイジーは失格となり「呪文のかけら」も無くなった。しかし人々の心に結果を残したデイジーを見ていたベルトーレは彼女の元に帰ってくる。
今までさんざん一行を振り回してきた「呪文のかけら」が、初めて人の役に立った瞬間であった。

アホウドリのセルシア編

困ったときの「変身指輪」

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