カラオケ行こ！（漫画）とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『カラオケ行こ！』の概要

『カラオケ行こ！』とは、和山やまによる漫画作品。本作は2019年8月同人誌即売会にて頒布、即完売され、その後数回再販されるも完売が続き話題になっていた。この同人誌に加筆修正を加えてKADOKAWAより2020年9月単行本化される。「THE BEST MANGA 2021 このマンガを読め!」 にて第4位、「このマンガがすごい! 2021」オンナ編においては第5位を受賞。2024年には実写映画の公開が予定されている。

中学校で合唱部の部長を務める岡 聡美（おか さとみ）は、合唱コンクール後に突然、四代目祭林若頭補佐である成田 狂児（なりた きょうじ）に声を掛けられる。
狂児は組で定期的に開催されるカラオケ大会のため、聡美に歌唱指導を依頼する。該当者が最も嫌がるモチーフを入れ墨にされるからであった。組長の入れ墨の腕は素人同然であることから、かなりの苦痛を伴う。それが故に組員全員が全力でカラオケ大会に挑んでいるのであった。一方、中学時代最後の合唱祭に向け、練習に励む聡美はソリパートに抜擢されるが、変声期がいつ訪れるかわからないことから日々不安に感じており、一旦は狂児の指導を断る。
結局、脅されるように協力するはめになった聡美だが、やがて狂児との間に奇妙な友情が芽生えはじめる。

『カラオケ行こ！』のあらすじ・ストーリー

出会い

岡 聡美（おか さとみ）は合唱コンクールで歌う中、ずっと誰かの視線を感じていた。その視線は四代目祭林組若頭補佐 成田 狂児（なりた きょうじ）のものであった。聡美の所属する森丘中学校は惜しくも銀賞であったが、狂児の中では一番上手かったと感じたらしい。さらにその部長である聡美に目をつけた狂児はコンクール後、聡美に「カラオケ行こ！」と誘ったのであった。狂児は組で定期的に開催されるカラオケ大会のため、聡美に歌がうまくなるコツを教えてほしいと乞う。カラオケ大会で最下位になると該当者が最も嫌がるモチーフを入れ墨にされるからであった。組長の入れ墨の腕は素人同然であることから、かなりの苦痛を伴う。それが故に組員全員が、音楽教室に通うなど必死でカラオケ大会に挑んでいるのであった。それからは、聡美の所属する合唱部が休みとなる火曜と金曜に、狂児に半ば拉致される形で聡美は狂児の歌指導を行うこととなったのであった。

合唱祭前日

聡美は日に日に歌いにくさを感じていた。喉を庇いながら歌うことで変な発声癖がついてしまい、さらに声を出すのが辛いのだ。同時期、狂児も調子を狂わせつつあった。お互いが不調を感じていたところ会話の中で、偶然にも聡美の合唱祭と狂児のカラオケ大会の日にちが8月11日同日であることが判明する。勝負の日の2週間前、2人は本番に向けお互い練習に励むため、カラオケでのレッスンは一旦終了とすることになった。
合唱祭前日、緊張で不安を感じていた聡美は、同じく明日を本番に控えた狂児を心配して、事務所近くまで出かけてしまう。狂児には治安の悪さから来ないよう言い含められていたが案の定、聡美は柄の悪い男に絡まれてしまう。偶然通りかかった狂児に救われるも、柄の悪い男は先日クスリを売って破門された男で、聡美は狂児にあと一歩で危ないところだったと軽く注意されてしまう。明日への不安に加え、励まそうと思った狂児に救われ、自分の未熟さにイライラが募っていた聡美は、狂児の「聡美くんはおほほ～んと歌いや」の発言に激昂する。驚いた狂児をよそに聡美は送ってもらっていた車から飛び出し、その場を走り去ってしまうのであった。

合唱祭当日

合唱祭当日、寝不足と緊張で吐きそうな聡美は会場へ向かう途中で、昨日狂児に送ってもらった車と同車種が交通事故にあっている現場に居合わせる。聡美は現場検証を行う警察官から車の持ち主が狂児であること、重体であることを漏れ聞いてしまい、慌てて狂児に電話をかける。電話は繋がらず、聡美は発信音が鳴り響く携帯に昨日の暴言を詫びるのだった。狂児から事前にカラオケ大会の場所を教えてもらっていた聡美は開催場所である「スナック カツ子」へ向かった。そこで聡美が目にしたのは通常開催されていたカラオケ大会であった。狂児はどこに行ったのか、と問う聡美に組長は「さっき病院から電話があった…あいつは地獄に行った」と答える。涙する聡美は「お前らも狂児と一緒に地獄に落ちてしまえ」と言い捨てその場を去ろうとするが、組長から狂児に向け一曲歌えと命令される。同時刻、聡美がソリを歌うはずの合唱祭が始まろうとしていたが、聡美は合唱祭の不参加を決め、狂児への鎮魂歌として彼が愛唱していた「紅」を歌うことにする。狂児との思い出を振り返りながら、力を振り絞って熱唱した聡美の喉は「紅」の高音に耐えきれず、ついに変声期が始まってしまう。その歌声は参加していた組員が息を呑み、絶対音感をもつ組長が涙するほどの声だった。歌い終わり組員たちに絶賛される中、聡美はある人物に肩を抱かれる。それは、事故で死んだと思われた狂児であった。トイレで席を外していた狂児は乗り込んできた聡美を驚かそうと扉の外で息を潜めていたのである。実は聡美が合唱祭に向かう最中に見た事故は、前日聡美に絡んでいたチンピラが起こしたものであり、重体なのは狂児に意識が飛ぶまで殴られたチンピラの方だったのだ。

3年後

一連の出来事を高校の卒業文集にしたためた聡美は、高校卒業を迎えた。あれから3年、聡美と狂児は会うことがなかった。卒業式後、お別れ会をと友人たちが向かった先は、狂児と練習に励んだカラオケ店であった。狂児との思い出に思いを馳せる聡美はカラオケ店のソファーに挟まるゴミを見つける。それは狂児と初めて会った日に渡された名刺を聡美自身が受け取りたくなくてソファーにねじ込んだものだった。
後日、大学進学に伴い上京する聡美は空港にいた。結局、お別れ会で見つけた狂児の名刺を聡美は魔除けとして持ち歩くことにしたのだった。名刺を眺める聡美に「しょっぼい名刺やな」と話しかける男がいた。声をかけてきたのは、合唱祭以降音信不通となっていた狂児だった。久しぶりの再会に緊張する聡美に対し、狂児は「代紋がピカピカだ」と新しい名刺を手渡す。会いたがったが、これ以上おっさんに青春を潰されるのも可哀想だと思い連絡を控えていたと理由を告げられる。そして、面白いものを見せると言って、狂児は「聡美」と彫られた腕を見せるのだった。ついにカラオケ大会で最下位となってしまった狂児は、天邪鬼な組長の性格を利用し、あえて好きなものを嫌いと言い「聡美」の名前を彫らせたのだ。次また最下位になると、今度は聡美の顔を彫られかねないため、「東京に着いたら とりあえずカラオケ行こ！」と誘う狂児なのであった。

『カラオケ行こ！』の登場人物

岡 聡美（おか さとみ）

CV：市川太一、演：齋藤潤
森丘中学校合唱部部長を務める中学3年生男子。2005年4月1日生まれ。血液型O型。兄・正美（まさみ）は実家を出ており、普段は両親と3人暮らしをしている。趣味は音楽鑑賞で、休日はTSUTAYAをウロウロしている。好きなタイプは「髪がキレイな人」。引退を目の前にして、合唱祭のソリパートに任命された。しかしいつ声変わりするかわからないことからソリパートが務まるかという不安に加え、ヤクザのカラオケ指導も行わなければならないという新たな悩みのタネを抱えることとなる。

成田 狂児（なりた きょうじ）

CV：江口拓也、演：綾野剛
四代目祭林組若頭補佐の39歳男性。1980年5月5日生まれ。血液型A型。大阪府八尾市出身。兄・京一、姉・京子に続き、京児と名付けられる予定が、父親が出生届に煙草の吸殻を落としたのを誤魔化すため狂児に変更されてしまった。20歳夏、ヒモをしながらカラオケ屋でアルバイトをしていたところ組長に声をかけられ、暴力団組員となる。カラオケBEST3は1位・「紅」、2位・「青春時代」、3位「勝手にシンドバッド」。

組長

狂児が所属する祭林組・組長。カラオケが趣味で、十八番は「タイガー＆ドラゴン」。定期的に組員を集めてはカラオケ大会を開催している。組員の選曲にも厳しく、女の子が歌うべきと信じる西野カナの曲を選曲した組員は前奏が流れた時点で破門された。また、北島三郎を尊敬しており、彼の曲を軽率に歌う者はどつかれる。

絡んできたチンピラ

コカイン中毒者がゆえ、祭林組から破門された。破門される際にクスリは辞めると泣いていたが、後日聡美に絡んだ時にはさらに症状は悪化していた。絡まれた聡美を救う為、狂児が殴ったことから逆恨みし、カラオケ大会当日、狂児の車に横から突っ込んだ。しかし襲撃を予想していた狂児は軽症で済んだ上、反撃され顔が特定できないくらいボコボコに殴られた。