星の瞳のシルエット（柊あおい）とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

続編

ENGAGE

1年浪人したのちに大学生になった遠野行（とおのゆき）は、大学のキャンパスで見かけた香澄に惹かれる。だが香澄には、遠距離恋愛中の久住という恋人がいた。
それでも行は、お構いなしとばかりに香澄へのアプローチに励み、積極的に話しかけに行く。
そんな中、行は香澄の友達で同じ大学に通う吉祥寺啓子と知り合う。
行は何かと気にかけてくる啓子に少し鬱陶しさを感じながらも、斜に構えた行の本心を見抜くような彼女の言葉1つ1つに心を打たれていた。

周囲を見下すような感情を持っている行だが、高校時代は熱心にバンド活動に打ち込んでいた。
そこでボーカルの女の子から告白され、それがきっかけで人間関係がこじれてしまい思うようにならなくなり、結果として一浪することになった苦い過去を持っている。
そのせいもあって世の中に絶望し、わざと前髪を伸ばして視界を狭くしていたこともすぐに啓子に見透かされてしまう。

ある日、香澄の誕生日に、久住がはるばる仙台から香澄が在学する大学に訪れる。ずっと多忙だと聞いていた久住に、まさか会えるとは思っていなかった香澄は、嬉しくてその場で泣いてしまう。
そのような一途で素直な香澄の姿は、行の心に衝撃を与えた。
自分も、香澄が久住を想う気持ちのように、ひたむきに誰かを好きになりたい気持ちがあったからこそ、香澄に惹かれていたことに気付く。
そして、自分の心を見つめ直すと、そこにはいつも自分の視界を広げてくれる啓子の面影があった。行は啓子となら前を向いて生きていけるのかもしれない、と心が動き始め、行の中で彼女はかけがえのない存在へとなっていく。

青春フィナーレ

長年思い続けた久住と恋人同士になった香澄は、久住とは別々の大学に進学するため、4年間の遠距離恋愛がすでに決まっている中、残された高校生活を謳歌していた。
高校を卒業して晴れて大学生となった香澄は、新しい生活への期待と不安を抱いて、沙樹との同居生活を開始する。久住とは遠距離になってしまったが、時間を見つけては会いに行き、愛を深めていく2人。
また香澄は久住の頑張る姿を見て、より一層勉強に励む日々を送っていた。

大学卒業を控えたある日のこと、久住は香澄に天文部の研究プロジェクトのために海外に行くことを告げる。
香澄は、これ以上離ればなれになることは耐えられないとショックを受けるが、ここで久住を引き留めると後悔すると思い、笑って見送ることを決意する。
そして久住は、用意していたペンダントと一緒にプロポーズの言葉を香澄に贈り、離れていても支え合うことを約束した。香澄はプロポーズを喜んで受け取り、未来に向かって久住と共に歩んでいこうと心に決めた。

星屑セレナーデ

『星の瞳のシルエット』の20年後の物語を描く。
北東大学の新入生の瀬戸川柚希（せとがわゆずき）は、入学式の日に天文学科教授になった久住に出会い、胸をときめかせる。
後日、友人と一緒にとった天文学の授業で久住に再会し、ますます彼に対し憧れを募らせる柚希。しかし、久住の指に光る指輪を見て、既婚者であるという事実を突きつけられてしまう。
バイト先で同級生の白石昴司（しらいしこうじ）と仲良くなった柚希は、彼から久住が名付け親だということを聞かされる。そのため久住のことを親同然だと思っていると言う昴司に、柚希は久住との距離の近さを羨ましく感じていた。
ある日、思いがけず教授室で久住とお茶を飲む機会が訪れた柚希は、ずっと気になっていた奥さんのことを聞こうとするが、慌ててしまい何も言えずに終わってしまった。
思いを巡らせながらバイト先へ急ぐ柚希は、ある女性とぶつかりそうになる。その女性が久住の妻である香澄だと知らない柚希は、「素敵な女性だったな」と好感を抱いた。

天文学の授業の一環で、久住と一緒に天文ドームで天体観測をすることになった柚希。宇宙についての夢を懸命に語る久住の姿を見て、より一層久住への想いを募らせていく。
だが、昴司から「あそこの夫婦は2人で1つって感じだからな」と言われて奥さんと久住との絆の強さを思い知らされてしまい、柚希は肩を落とす。
それでも久住への気持ちは断ち切ることができず悩んでいた柚希は、ある日道で苦しそうにうずくまっている女性を助ける。その女性は、いつか大学ですれ違った香澄だった。
妊娠していた彼女をタクシーで無事に家まで送り届けた柚希だが、スマホを忘れていたことに気付く。
後日、柚希は再び彼女の家へ訪れたが、表札には「Kuzumi」の文字があり、久住と同じ名字に柚希はとても動揺する。どうか久住の家ではありませんように、と強く願っていると、中から香澄が現れた。
柚希を快く招き入れ、「昨日の御礼も兼ねて」と香澄からお茶をご馳走された柚希。
しばらくすると久住が帰宅するが、久住は身重の妻を心配するあまり、柚希には目もくれず真っ先に香澄を抱きしめる。香澄は焦りながら、柚希を紹介し、昨日助けてくれた女の子は柚希だと説明する。久住は照れながら感謝の言葉を述べ、香澄には流産の過去があると話す。
柚希は、久住と香澄との時間の積み重ねを痛感し、2人が育んできた愛の力には到底かなわないと悟った。そして入学式から温めてきた久住への想いに、ようやく決着を着けることができた。
久住への想いは叶わなかったが、昴司といつものように口喧嘩したり、友人に慰めてもらいながら少しずつ失恋の傷は癒えていき、前向きに頑張る姿を見せる。
あふれる未来への期待を胸に、柚希はゆっくりと歩き出していく。

『星の瞳のシルエット』の登場人物・キャラクター

主人公

沢渡香澄（さわたりかすみ）

本作の主人公。
真面目で優等生。性格は優しいが、相手を思いやるあまり自己主張が弱く、いつも本当の気持ちをおさえこんでしまう。
その性格が仇となり、沙樹には「あんたのはっきりしないところが大嫌い」と叱られた事もある。
中学校に通う間、親友の森下真理子と泉沙樹といつも3人で行動し、同好会のクッキングクラブを設立。
小学校低学年の頃に、すすき野原で出会った男の子からもらった「星のかけら」と呼んでいる石を大切にしており、肌身離さず持ち歩いている。
久住に惹かれていく自分を自覚しているが、先に好意があることを打ち明けていた森下真理子を応援する立場を選んでしまう。
高校は久住と一緒の青陵高校へ進学し、天文部へ入部する。

久住智史（くずみさとし）

沢渡香澄の初恋相手。
中学では弓道部に所属。
運動も勉強もでき、容姿も美形なので女生徒たちからの人気も高い。
母親を早くに亡くし、大学教授の父親とふたり暮らしのため、家事全般が得意。
連載初期の段階で、香澄が「星のかけらの女の子」である事にいち早く気付き、特別な絆を感じている。
高校は名門校である青陵高校へ進学し、昔から天文学に興味を抱いていたため、天文部に入部する。

主人公の友達

森下真理子（もりしたまりこ）

沢渡香澄の親友。
髪の毛は天然パーマでふわふわしている。
ケーキが好き。
久住に好意を抱いており、調理室から弓道場が見えるからという理由で、クッキングクラブ設立を提案した。
卒業式をきっかけに、香澄と絶縁状態に陥り香澄を避けるようになる。
一度は久住と付き合うが、香澄に「星のかけら」をあげた男の子が久住だという事を知ってしまい、別れを決意する。

泉沙樹（いずみさき）

沢渡香澄の親友。
丸いメガネをかけたショートカットの女の子。
おおらかで思いやりもあるが、はっきりとした果断に富んだ一面もある。
白石司とは、家族ぐるみの付き合いがある昔からの幼なじみで、互いを名前で呼び合う。
友達思いで、香澄と真理子をどちらも同じ位大切に思っている。そのため、二人の間で板挟みにあって苦しむが、香澄や真理子の間に立って関係を修復したいと考えている。

白石司（しらいしつかさ）