うちの息子はたぶんゲイ(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『うちの息子はたぶんゲイ』とは、おくらによる日本の漫画作品である。スクウェア・エニックスとpixivによるWebコミックサイト『ガンガンpixiv』に掲載されている。この作品は、同性愛者であることを隠している青山浩希と、息子の隠し事に感付いている母親の青山知子の視点で物語が進んでいく。ゲイである息子にどう接すればいいのか、知子と浩希、そして家族や友人の葛藤や日常が描かれている。

『うちの息子はたぶんゲイ』の概要

『うちの息子はたぶんゲイ』とは、おくらによる漫画で、主に男性の同性愛について当事者やその家族たちの心情を描いた作品である。2019年8月17日から2022年2月26日まで連載され、単行本5巻で完結した。2人の息子を持つ青山知子(あおやま ともこ)の視点で物語は進んで行き、ゲイかもしれない息子の青山浩希(あおやま ひろき)との接し方について悩む親の気持ちがメインで描かれている。
男子高校生の浩希は、表情豊かで素直な性格をした少年だった。好意がすぐに態度や表情に出てしまうため、知子は浩希の恋愛対象が同性ではないかと気付き始める。自分の息子が同性愛者であることには最初は戸惑いつつも、浩希の気持ちを尊重して変わらず接し続けることを決めた。本作品は一般的に男性の恋愛について描かれているボーイズラブ作品とは異なり、同性愛について悩む親と当事者についてリアルに描かれていると読者からは共感の声が多い作品である。

『うちの息子はたぶんゲイ』のあらすじ・ストーリー

うちの息子はたぶんゲイ

浩希(左)の恋愛相談にのる知子(右)

夫が単身赴任中のため、息子2人と3人で暮らしている青山知子(あおやま ともこ)。高校生の青山浩希(あおやま ひろき)と中学生の青山結理(あおやま ゆうり)はとてもいい子に育ち、特に大きな問題もない幸せな家族だった。しかし、知子にはひとつ気になることがある。それは、息子の浩希がゲイかもしれないということだ。明るく素直な性格の浩希は、感情がすぐに表情に出てしまう。会話の中でしょっちゅう「彼女」を「彼氏」と言い間違えるのだ。間違いに気がつくたびに慌てて言い直すが、全く隠せていなかった。そんな浩希を見た知子は、自分の息子は素直でかわいい奴だと思っている。知子自身は浩希がゲイであっても受け入れることはできるし、大切な息子に変わりはなかったが、当事者である浩希にとっては隠さなければいけない「秘密」だった。浩希の「秘密」は、弟の結理も気が付いてるようだった。浩希とは真逆で、あまり感情を表に出さない結理。しかし、兄のことをとても大切に思い、知子と同じで変わらずに接してくれている。身近で暮らしている結理が温かい目で見てくれているので気が付かなかったが、離れて暮らす夫の青山明義(あおやま あきよし)や職場の人がゲイに対し「気持ち悪い」「もったいない」と言う姿を目の当たりにする知子。自分の知らないところで浩希が苦しんでしまうことを心配する知子は、ゲイに対しての理解を深めようとするのであった。

浩希の好きな人

浩希がスマホを見ながらソワソワしていることに気がついた知子。浩希がお風呂に入っているときに、テーブルに置きっぱなしになっているスマホにメッセージが届いていた。無防備に置かれているスマホには、しっかりとメッセージの内容まで通知されていて、知子はうっかり内容を見てしまう。そこには、浩希の友人である白石醍吾(しらいし だいご)から、まっすぐに浩希を褒める言葉が書いてあった。お風呂から出た浩希がメッセージを見ると、わかりやすく喜んでいて浩希が醍吾に恋をしていることが明白である。メッセージの内容には「浩希の嘘が付けないところが好き」と書いてあり、浩希の良さが醍吾に伝わっていることが知子はとても嬉しかった。浩希自身は必死にゲイであることを隠しているが、醍吾のメッセージでこんなにも喜んでいる息子を見て、知子は浩希の恋が上手くいくことを願わずにはいられなかったのだ。浩希が好きな人と順調に仲良くなっていく様子を温かく見守っていた知子だったが、後に同性同士の恋愛が簡単ではないことを知ることになる。

すれ違う父と息子

単身赴任中の父・明義が久しぶりに帰ってきた。久しぶりの家族との食事に、上機嫌の明義。会話の中で、明義は職場で流行っているドラマ『恋メン』を知っているかと知子に尋ねる。そのドラマは男性同士の恋愛を描いたもので、明義は同性愛の存在は認めているものの「男同士のキスシーンとか気持ち悪いよね」と悪気なく言ってしまう。その言葉に動揺する浩希。思わず浩希も「ありえないよね」とまるで自分自身を否定するように賛同したのだ。その様子を見た知子は明義に対し、そのドラマを観たのか聞いてみた。「見たくないよ」という明義に、知子は「共通の話題にもなるし、男性同士の恋愛に対する考え方が変わるかもしれないから観てみればいいのに」と伝えたのだ。人それぞれの価値観があるのもわかっているが、嘘の苦手な浩希が必死に隠している様子を見て、もっと素直に話せる機会が増えればいいのにと思う知子。浩希のことについて明義とも話し合いたいと考えていたのだが、知子はもう少し様子を見てから話そうと決めた。身近に同性愛者がいないと思っている明義に対して、ゲイの存在は決しておかしいものではないと伝えるにはどうしたらいいのかを考えなければならないと知子は思ったのだった。

「普通」って何?

浩希と結理は正反対の性格をしていて、結理自身も兄を「わかりやすい」性格だと思っている。明るく素直な浩希は昔から友人に囲まれていたが、結理は人付き合いが苦手だった。小学生時代、結理は女子のような見た目から女の子と一緒にいることが多かった。外遊びが好きなわけでもなく、結理自身も女の子と一緒にいても特に苦痛はなかった。ある日結理は、クラスメイトのてつやから、よく話に出るれいらのことをどう思っているのか聞かれた。恋愛感情など全くなく「別に好きじゃない」と伝えた。その言葉に満足そうなてつやを見て、結理は彼はれいらと仲が悪いから聞いてきたのだと思った。後日、れいらから告白された結理。れいらの気持ちに全く気付かず、告白を断ってしまう。仲良くしているのになんで、と聞かれ、なぜ仲良くしていたら好きにならないといけないのかがわからない結理。女の子たちは怒って帰ってしまったため一人で帰宅していると、後ろからサッカーボールをぶつけられた。振り返るとそこには、れいらについて聞いてきたクラスメイトのてつやが立っていた。「れいら泣かせてんじゃねーよ!」と怒るてつや。結理は、普段仲が悪いのに、てつやがれいらに好意を持っている意味が分からず困っていた。
ある日結理は、浩希に誘われて浩希の友人・シュウの家で一緒にゲームをすることになる。シュウの家に集まると、友人の1人であるユウタが来れなくなったという。あからさまに落ち込む浩希。落ち込んだまま遊んでいると、用事を終わらせたユウタがやってきた。ユウタの登場にテンションが上がり、浩希は一気に元気を取り戻したのだ。その様子を見た結理は、浩希を見ていると「好き」ってこういうことなのかなって何となくわかるような気がした。素直な浩希を見て安心感を得ている結理は、これが自分にとっての「好き」なのかもしれないと思うのだった。恋愛感情がまだわからない結理も、浩希と同じように「普通はこうする」といった固定観念に悩まされている。しかし、素直に「好き」を表現する浩希を見て、結理は無理して「普通」にならなくてもいいんだと思うのだった。

『うちの息子はたぶんゲイ』の登場人物・キャラクター

青山家

青山知子(あおやま ともこ)

高校生と中学生の息子を持つ40歳の普通の主婦。長男・浩希がゲイかもしれないということに気づき、日々接し方に悩みつつも素直な浩希を可愛いと思っている。本当は夫・明義にも相談したいのだが、ゲイに対しての偏見を持っている為、慎重になっている。ゲイであっても浩希が大切な息子であることに変わりはなく、彼のことを温かく見守っている。弁当屋でパートをしていて、社員の遠野がゲイであることを知り、よく相談するようになった。明るく穏やかな性格で、家庭でも仕事でも楽しく過ごしている。

青山浩希(あおやま ひろき)

高校生で合唱部に所属している。幼い頃から女子よりも男子に好意を抱いており、自身がゲイであることを自覚している。明るく素直な性格をしていて、友人も多い。感情が表に出やすく、家族には好きな人がすぐにバレてしまう。高校で知り合った醍吾に好意を抱いていて、会話やメールのやり取りで一喜一憂している。がっしりとした男らしい見た目の男性がタイプだが、女性アイドルグループが好きだったりと、女性が苦手というわけではない。少し気が弱いところもあるが、他人を悪く言うことはなく優しい性格をしている。

青山結理(あおやま ゆうり)

浩希の弟で中学生。幼い頃は女の子のような見た目で、同級生からよくからかわれていた。浩希とは正反対の性格で、いつもクールで無表情であることが多いため、何を考えているのか分からないと言われることもある。男子よりも女子といることが多いが、仲良くなる女子から告白されてしまうことも多い。表情に出さないだけで色々と考えており、兄のことは慕っている。浩希がゲイであることは昔から気づいているが、素直に好きという感情を出せることをスゴイと思っているようで、陰ながら醍吾とのことも応援していた。

青山明義(あおやま あきよし)

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