名探偵コナン 警察学校編（Wild Police Story）のネタバレ解説・考察まとめ

『名探偵コナン 警察学校編（Wild Police Story）』の概要

『名探偵コナン 警察学校編（Wild Police Story）』とは、週刊少年サンデー（小学館）にて連載している『名探偵コナン』のスピンオフ作品である。2019年第44号から2020年第51号にかけて不定期で連載された。原作は青山剛昌、作画は新井隆広。コミックス全2巻（上下巻)、話数全13話。『名探偵コナン』コミックス100巻プロジェクトの一環としてテレビアニメ制作が決定し、2021年12月4日から2023年3月11日にかけてアニメ『名探偵コナン』の枠にて不定期で放送された。監督を務めたのは山本 泰一郎・鎌仲 史陽。メインキャストは古谷 徹、神奈 延年、東地 宏樹、緑川 光、三木 眞一郎が演じた。
物語の舞台は、『名探偵コナン』本編の7年前。警視庁警察学校の同期である降谷 零（ふるや れい）・松田 陣平（まつだ じんぺい）・伊達 航（だて わたる）・萩原 研二（はぎわら けんじ）・諸伏 景光（もろふし ひろみつ）。ずば抜けて優秀でありながら問題視されている5人に、次々と事件が襲いかかる。正義を胸に駆け抜けた5人の学校生活が描かれている青春教場物語である。

『名探偵コナン 警察学校編（Wild Police Story）』のあらすじ・ストーリー

松田編

警視庁警察学校に入校した降谷 零（ふるや れい）・松田 陣平（まつだ じんぺい）・伊達 航（だて わたる）・萩原 研二（はぎわら けんじ）・諸伏 景光（もろふし ひろみつ）。強烈な個性を持つ5人は鬼塚教場に配属され、そんな彼らに教官である鬼塚 八蔵（おにづか はちぞう）は日々手を焼いていた。

降谷は、松田が警察官を嫌う理由が気になり調べる事にする。資料室で過去の事件を調べていると、松田の父親が殺人事件で誤認逮捕された資料を見つけた。諸伏が荻原から聞いた話によると、当時プロボクサーだった松田の父親は、ジムの帰り道に小競り合いをしている男2人を目撃する。タイトル戦を控えていたため、関わる事を避けてその場を離れたが、翌日男2人の内1人が死体となって発見される。警察は犯行時刻に現場周辺で松田の父親を見たという証言と、被害者は元プロボクサーで松田の父親と因縁があり、殴殺だった事を踏まえて彼を逮捕したのだ。後に真犯人が捕まり容疑は晴れたが、予定していたタイトル戦は流れてしまった上に何をやっても上手くいかなくなった松田の父親は、ボクシングを辞めて酒に溺れるようになってしまった。松田が警察を嫌う理由は分かったが、そんな彼が何故警察官を目指しているのか不思議に思う降谷だった。この後控えている拳銃訓練の準備の為に降谷は移動しようとするが、諸伏は調べ物があると言って資料室に残る。「長野夫婦惨殺事件」についてパソコンの画面を睨み付けながら調べている諸伏を、降谷は出入口の影から静かに見つめていた。

拳銃訓練を終えた後、実弾が1発返却されていない事が発覚する。鬼塚は日頃の行いから松田を真っ先に疑うが、伊達が間に入った事によりその場は収められる。弾をくすねた犯人を捜している最中、屋根の補修工事の作業確認を頼まれた鬼塚は、突如落下してきた作業員を助けようとした際に命綱が首に巻き付いてしまう。降谷達5人は各々のやるべき事を瞬時に認識し、行動に移した事で鬼塚は助かった。

その夜、降谷は松田に警察官を目指している理由を聞く。父親の夢を潰した警察を許せず、警視庁のトップである警視総監を殴るためだと知った降谷は思わず笑ってしまう。松田から同じ質問を返され、急に姿を消してしまった大切な女性を探すためだと答えた降谷に「意外にチャレーな」と松田は言った。ぶつかってばかりいた2人が仲良くなるきっかけとなった事件だった。

伊達編

逮捕術の授業で、圧倒的な強さを見せる伊達と試合をする事になった降谷。伊達が松田と試合をした時に痛めた膝を狙うが、寸前で攻撃を止めた降谷に容赦なく一撃を食らわせる。伊達は何故膝を狙わなかったのかと降谷を非難し、「誰よりも強くなければ…正義は遂行できねぇんだよ！！」と言い放った。

夜に降谷は外出をしようと外に出ると、偶然伊達と会った。昼間の事を謝られ、警察官だった伊達の父親の話を聞く。交番勤務の巡査長を務め、ヒョロっとして見た目は弱そうだったが、伊達は父親を尊敬していた。父親が非番の日、伊達と行った先のコンビニで強盗が飛び込んできた。相手が1人だけなら父親が何とかしてくれると期待していたが、犯人に土下座して懇願する情けない姿を見せただけだった。父親に本気を出させるために、伊達が「父ちゃんはお巡りさんなんだぞ！！お前なんかやっつけちゃうんだからな！！」と犯人を挑発し、警察官だと知った男は父親の体に何度も木刀を振り下ろした。やがてパトカーのサイレンの音が聞こえてきて犯人は逃げたが、父親は1年間入院する羽目になり、その怪我が元で警察官を辞める事になった。その事件は、縄張り抗争に負けた暴力団員が逃亡資金欲しさに起こした犯行で、その後も違う店で傷害事件を起こしていた事を後に知る。伊達は父親が強くてあの犯人を捕まえていたら、被害者を1人も出す事なく正義は遂行されたのではないかと考えるようになった。

降谷と伊達がコンビニで買い物をしていると、強盗がライフルを片手に店内へと押し入ってきた。店にいる2人の犯人を見て、伊達は降谷と共に男達を制圧しようと考える。しかし、店員も共犯だった上に店の奥から仲間が何人も出てきて、2人は手出し出来なくなる。降谷と伊達を含む客達は奥の部屋に閉じ込められるが、降谷はコンビニの看板をモールス信号のように点滅させて「助けて」とメッセージを送る。同じく外出していた松田・萩原・諸伏はそれに気付き、警察学校の学生を大人数連れて数で犯人達を制圧した。伊達の父親と同じ事をしたのだと説明する萩原は、事件当時彼もその現場にいた。近くの車に犯人の仲間が大勢潜んでいる事に気付いていた伊達の父親は、自分1人では勝ち目がない事、万が一立て籠もられたら客達に危害が及ぶ事を考えた。警察に通報し、仲間が駆けつけるまで店先で足止めしたかったのだと話す。「誰も傷付けてたまるかっていう…警察官のハートがそうさせたんじゃねーの？」という萩原の言葉に、伊達の中にいる父親の姿が変わった。

その後、父親に電話をした伊達は「いい警察官になれそうか？」と聞かれる。いつも爪楊枝を咥えている父親と同じように、伊達も爪楊枝を咥えながら「ああ…親父には負けるがな」と答えた。

萩原編

降谷・松田・伊達・諸伏は、別の教場の女子との合コンに参加していた。女子達と盛り上がっていると、萩原が遅れて姿を現した。来る途中の長い階段で立ち往生していたお婆さんをおぶって階段を上がったが、神社で引いた大吉のおみくじを落としてしまったらしく、捜したが見つからなかったという。神社に戻って大吉が出るまでおみくじを引いていたら遅くなってしまった、と話す萩原の優しさに女子全員が黄色い声を上げた。その後カラオケに移動する途中、諸伏は通りかかった女の子を見て表情を固くした。女の子が気になったものの、降谷達に呼ばれてその場を離れたのだった。

松田と萩原は、機械を直す手際の良さから爆発物処理班にスカウトされる。松田は乗り気で承諾するが、萩原はどうするか迷っていた。萩原の実家は車の修理工場を経営していたが、店舗を増やした途端に景気が悪くなり潰れてしまった。それを見ていた萩原は、順調に事が運んでいると慎重になり、自身にブレーキをかけるようになっていた。

伊達と諸伏が外出していると、トラックが車を引き摺って暴走している現場に遭遇した。車に乗っている老夫婦が、ブレーキとアクセルを踏み間違えてしまいトラックに追突し、バンパーが挟まってしまったままトラックは発進してしまった。諸伏がその事をトラックの運転手に伝えようとしたが、アクセルを踏んだまま突然気絶してしまう。連絡をもらった降谷・松田・萩原は、松田がメンテナンスしていた鬼塚の車に乗って応援に駆け付ける。萩原のドライブテクで降谷と松田は老夫婦の車へと乗り移り、松田がバンパーを外してトラックから車を引き離す事に成功した。しかしトラックが走る先は、工事中の高速道路で道が途切れている。トラックの運転席に移動した降谷は、「アクセルを踏めェ零（ゼロ）！！！」という萩原の言葉を聞いてアクセルを踏む。トラックのフロント部分がぶつかり、ひっくり返って道路に打ち上げられるが、降谷とトラックの運転手は無事だった。松田ならアクセルを踏むと思いアドバイスをした萩原は、たまにはアクセルを踏み込むのも悪くないと思ったのだった。

諸伏編

鬼塚に呼び出された降谷達5人は、今までの悪行三昧の罰として、1週間の風呂場と脱衣所の掃除を命じられた。風呂場の掃除をしている時、教官室にあった捜索願に載っている女の子の写真を見た時の諸伏の反応が気になった4人は、女の子について聞く。諸伏はその女の子が、子供の頃によく遊んでいた女の子・有里（ゆり）に似ている事を話すが、それ以上は話そうとしない。痺れを切らした松田は、諸伏が自分の両親を殺害した犯人を捜している事、捜索願の女の子が事件と関係ありそうだとモヤモヤしている事を指摘する。誰かを巻き込んで犠牲になってほしくないと言う諸伏に、「死なねぇよ！！！」と力強く宣言する仲間達。頼もしい彼らに覚悟を決めた諸伏は、15年前に起きた事件について話し始めた。

それは、両親と諸伏が夕食を食べていた夜7時頃にやってきた。けたたましい呼び鈴が鳴り、父親と知り合いだったらしい男が来訪してきた。最初は穏やかに会話する声が聞こえていたが、その内男が声を荒げ始め、母親が様子を見に行った途端に父親の呻き声がしたのだ。血相を変えて戻ってきた母親が、「私がもういいって言うまで出てきちゃダメ」と言って諸伏を押し入れの中に入れた。今度は母親と男が言い争う声が聞こえたが、やがて母親の声も聞こえなくなり、鉄の匂いが立ち籠め始めた。その後歌が聴こえてきて、押し入れの隙間から覗くと、血まみれの包丁を手にした男が有里を呼びながら口遊んでいた。男の顔は見えなかったが、肩にゴブレットのような刺青が彫られているのが見えた。

諸伏が両親を殺害した犯人を捜している事に気付いていた4人は、既に疑わしい人物から話を聞いていた。肩にゴブレットの刺青を入れている入江 角夫（いりえ すみお）、二の腕に観音像の刺青を入れている外守 一（ともり はじめ）、首の後ろに蠍の刺青を入れている物部 周三（ものべ しゅうぞう）の3人から聞いた話を整理していたが、降谷と伊達は何かが引っ掛かっていた。諸伏は長野県警で刑事をしている兄・諸伏 高明（もろふし たかあき）に事件の話をした時、あの時隠れていたのは観音開きのクローゼットで、家も洋風だったと言われた事を話す。降谷は、諸伏が東京で預けられた親戚の家が日本家屋である事から、家の記憶が混同しているのではないかと指摘する。それを聞いた伊達が、諸伏はクローゼットのスリットから覗いていたのではないかと言った瞬間、全員何かに気付いたような顔をした。

諸伏がクローゼットのスリット越しに見たゴブレットのような刺青は、上と下が見えない事で、外守の二の腕にある向かい合った観音像の刺青がそう見えていたのだ。また、独り暮らしの彼がコンビニ強盗で監禁された時「娘のオヤツを買いに来た」と言っていた事、長野弁を話す入江と同郷だという事から、犯人は外守だと推理する。諸伏の父親が小学校の教師をしていて、遠足で腹痛を訴えた有里を病院に連れて行ったが、手遅れの盲腸炎でそのまま亡くなってしまう。外守が有里の父親で死を受け入れられず、諸伏の父親が有里を攫ったと思い込んでいたのではないかと考える。

外守に会いに行くが、彼が運営しているクリーニング店の洗濯機に爆弾が仕組まれていた。降谷と松田は爆弾の解体、萩原は周辺の住人の避難、伊達と諸伏は外守を捜しに動く。自宅の2階に行くと、外守と捜索願が出されている女の子を見つける。外守は女の子を有里だと思い込み、心中しようとしていた。隙をついて外守を抑え込んだが、爆弾のスイッチを押されてしまう。しかし爆弾は解体されていて、爆発する事なく事件は終わったと思われたが、外守を連れて行こうとした矢先に2階にも仕組まれていた爆弾が爆発する。火の海に飛び込んでいく外守の後を、諸伏は追いながら「表！！桜！！！」と4人に向かって叫ぶ。諸伏が外守を連れて窓から飛び降りた先には、諸伏がデザインした桜が描かれている体育祭の教場旗が広げられていた。死なせてくれと泣く外守に、「そいつは無理ですよ…ちゃんと罪を償ってもらうまではね」と諸伏は言ったのだった。

降谷編

警察学校での学びを終え、降谷達5人は卒業式に参列していた。諸伏は、兄へ送る手紙に制帽を被っている自身の写真を同封したが、松田が内緒で写真の中の諸伏に髭を描き足していた事を知る。髭が描き足されている写真を見た諸伏は、「髭面も悪くないな…」と意外にも前向きな発言をする。降谷達は一瞬目を点にしたが、両親の仇を確保した事で一皮むけたのではないかと笑みを浮かべた。警視総監である百田 陸朗（ももた ろくろう）が壇上に現れ、警視総監を殴る為に警察学校に入校した松田の行動に注目する。しかし松田は殴る事はせず、「ガキじゃあるめーし…」と余裕そうな笑みを見せて座る姿に、降谷達は「ガキだな…」と心の中で呟いた。卒業生代表として卒業証書を授与する降谷は、名前を呼ばれて力強く返事をした。

7年後、降谷は「安室 透」という偽名を使い、黒の組織を探る為に潜入捜査をしていた。5人は警察官として、それぞれ配属された部署で誇りと使命感を持って勤しんでいたが、降谷以外の4人は死亡してしまう。降谷は捜査の延長線上で「ポアロ」という喫茶店でアルバイトをしており、趣味や言葉の端々から4人の面影が見られる。黒の組織から連絡を受け、移動する際に今は亡き仲間達の顔を思い浮かべる。降谷は決意に満ちた表情で車を発進させた。

『名探偵コナン 警察学校編（Wild Police Story）』の登場人物・キャラクター

メインキャラクター

降谷 零（ふるや れい）

CV：古谷 徹

本作の主人公。22歳。ハーフで金髪と褐色の肌をしている。あだ名は「零（ゼロ）」。
全科目オールAという、長い警察学校の歴史でも類を見ない抜群の成績で入校し、総代を務める。拳銃訓練で5発を的のほぼど真ん中に命中させる、事故で首吊り状態となった鬼塚の綱に当てて切る等、射撃のセンスも抜群である。家庭環境的にそれなりに英語も出来る。真面目過ぎる性格と頭髪のせいか、他の学生とのいざこざが絶えない。常に冷静沈着で、優れた情報収集・観察・洞察力を持ち合わせている上に、科学的なものから雑学まで幅広い知識を持っている。急に姿を消してしまった大切な女性・宮野 エレーナ（みやの えれーな）を捜すため、警察官を志した。卒業式では卒業生を代表し、卒業証書を授与された。
趣味はボクシング、ギター。ボクシングは、プロボクサーである父親から教わってきた松田と互角に戦える程の腕前を持つ。マツダRX-7 FD3Sに興味を持つ事、諸伏に料理を教えてもらう事、萩原のドライブテクニック、松田に教わった爆弾の解体方法等、本作の7年後である『名探偵コナン』本編で描かれている降谷と繋がる描写も出てくる。
警察学校卒業後は、警察庁警備局警備企画課にある、公安を束ねる「ゼロ」という組織に配属される。黒の組織に潜入し、「バーボン」というコードネームで活動している一方、探偵の安室 透（あむろ とおる）としても周囲を探っている。

松田 陣平（まつだ じんぺい）

CV：神奈 延年

本作の主人公。22歳。小学生からの付き合いである親友・萩原からは「陣平ちゃん」と呼ばれている。
面接の評価は良くなかったようだが、学科や実技、高いレベルの専門知識でカバーして入校に至る。手先が器用で、昔からメカを見ると何でも分解してしまう分解魔。車の修理工場を営んでいた萩原の実家に来ては勝手に車を改造したり分解したりして、萩原の父親に怒られていた過去がある。車だけでは飽き足らず爆弾も研究するようになり、見ただけで大体の構造が分かる程の知識を身に着ける。音を聞けばメカのどこが壊れているか分かるため、鬼塚の車のエンジンを診た事もある。傍若無人で協調性がなく、喧嘩っ早い所がある。
プロボクサーだった父親にボクシングを仕込まれ、喧嘩はかなり強い。しかし父親は殺人事件の容疑者として誤認逮捕され、プロボクサーとしての未来を奪われてしまう。間違えて父親の夢を潰した警察を許せず、警視総監を殴るために警察官を志望した。
警察学校卒業後は、警視庁警備部機動隊爆発物処理班に配属される。その後警視庁捜査一課強行犯係に配属されるが、追っていた連続爆破事件に遭遇し、大勢の命を救うために爆死した。

伊達 航（だて わたる）