もののべ古書店怪奇譚(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『もののべ古書店怪奇譚』とは、2015年1月から「webコミックBeat's」にて連載が始まった紺吉によるホラー漫画である。2015年12月からは『月刊コミックガーデン』に連載の場を移した。ストーリーは寡黙な古書店の店主・物部正太郎(もののべしょうたろう)とその手伝いをしている少年・シロが、読んだものを鬼へと変える鬼書を探すものとなっている。人を食らう鬼と戦いながら、鬼書を回収する中で鬼を取り巻く謎と陰謀に巻き込まれていく。鬼となってしまった人たちの恐ろしく、ときに切ない物語が特徴となっている。

湶(いずみ)

医者をしている男性。表では人間の医者をしているが、裏では犯罪者や訳ありの人間を捕まえて仲間の鬼たちに売っている。鬼の集会などに顔を出しているため、それなりに顔が広く夜木やキョウカとも親交がある。特に、キョウカとはよく話をしており、マユが偽神であることもキョウカから聞いて知っている。そのため、マユの様子を見に来ていた。昔、リョウエノカミが山に移り住む前に、一緒に行動していたことがある。現在は狐面をつけた鬼と一緒にいる。

キョウカ

着物を着た上品な女性。近藤に奇妙な事件のネタを提供する代わりに、正太郎に事件について話すように指示している。また、マユが偽神であること、神代村での実験、神虫、さらには正太郎についてなど詳しく知っている様子であり、裏で色々動いている。掴みどころのない性格をしているため、目的などは不明。鬼の集会の長である最古の鬼・始嗣様が死んだのちに、その跡目を継いで集会の長となった。鬼としての期間は長いらしく、多勢から襲われてもものともせずに皆殺しにするなど実力がある。鬼が隠れもせずに堂々と生を許され、また人を鬼の家畜として飼う世界を作ることを掲げており、それに賛同する鬼からの支持は厚い。しかし、一部の鬼からは胡散臭いと言われて嫌われている。

時常(ときつね)

京都訛りで喋る男性。始嗣の葬式に参加して、夜木に神虫を懐柔するという自身の計画への参加を提案する。キョウカを敵視しているようで、キョウカの言う鬼の世界のつくり方に不満がある。友隣会を作るなど、水面下でなにやら動いている様子。常ににんまりとした笑顔をたたえている胡散臭い性格をしている。キョウカや夜木が正太郎にこだわる様子を見せるのを不思議に思っている。

偽神

マユ

正太郎に保護された少女。山中を彷徨っている時に楓と月子に捕まり、屋敷の離れにある牢屋に閉じ込められていた。正太郎とシロによって月子たちがいなくなった後は、こっそり正太郎たちについていき、古書店にやって来たことで保護される。言葉はたどたどしく、山中を彷徨う以前の記憶は欠落してしまっている。覚えていたことは自身の名前と、「コウジロ」「クイトムライ」という言葉だけであった。性格は見た目通りに幼く、正太郎と離れたがらないなど寂しがり。最初の頃は何かに怯えたりしていたが、正太郎や桜子と接するうちに年相応の明るさを手にいれていった。桜子から家族という概念を教えられてからは、それに固執して正太郎により懐くようになる。
右目の下にガラスがひび割れたような傷がついている。この傷からは、まるで、神虫のようななにか黒い物があふれ出すことがある。

正体は、神代村にて行われた神を作る儀式の末に生まれた偽神。村で起きる鬼宿りによって鬼となったものを殺すために、母親の腹の中にいる頃から神の器として仕立て上げられ一定年齢から年をとらなくなった。妹である八重を母と思い込み慕っていたが、神となるための儀式のために八重を食らった。その後、八重の残った死体を持っていかれそうになったことで、村の住人を惨殺して八重の一部を持って村から逃走。その最中に川に落ちたことで記憶を失い、持っていた八重の一部を手放してしまった。
死を理解できず、八重がいなくなったことをわかっていなかった。しかし、正太郎と過ごしているときに死を知って記憶を取り戻したことと、鬼を食らっても良いという八重の言葉を思い出したことで正太郎を瀕死の状態になるまで食ってしまう。正太郎を食らった後に逃亡するが、シロに見つかった際にもう一度正太郎と家族がしたいと願う。しかし、神の所有物である正太郎に手を出したという理由で、シロと戦う。戦いの最中に八重が母ではなく、妹であることを思い出したことに動揺した隙に、シロによって致命傷を負わされる。消える寸前に回復した正太郎と再会。正太郎を八重と思い込み、「どこにもいかないで」という言葉を残して消滅した。

友隣会

理孤(りこ)

宗教団体友隣会の教祖をしている女性。信者を「おともだち」と呼ぶ。狐憑きによって悪いことが起こると語り、それを自身が解決すると言うことで信者を増やしている。千里眼の持ち主と言われており、入信希望者が悩みを言う前にすべて当てて見せる。しかし、面談の日は決められていたことから、事前に信者の誰かに調べさせたのだろうと正太郎にトリックを見破られている。
時常から友隣会を貰ったらしく、正太郎とリョウエノカミに教団を破壊された際に時常に責められている。幹部や信者は皆鬼であるが、理孤自身は人間である。

その他の人物

楓(かえで)

とある町にある屋敷の令嬢。生まれた時から顔の皮膚が突っ張り、片目が歪んでいるために周囲から気持ち悪がられていた。また、その容姿のせいでなにか都合の悪いことが起こると自身のせいにされていたため性格も歪んでしまった。妹からは町や屋敷で起きる若い女性の惨殺に関わっていると疑われている。容姿のコンプレックスから屋敷の外に滅多に出ることはなく、知らない人間が屋敷を出入りすることを嫌ってヒステリーを起こすこともある。普段は顔に包帯を巻いて隠している。

裏では月子が人を食らう手伝いをしている。化け物だけど美しい容姿の月子、人だけど化け物のように醜い自身とどちらも化け物ならば協力し合えばいいと考えて、包帯をつけている自身の姿を利用して、月子に自身に変装するように提案している。月子がシロの攻撃で死にそうになった際に、月子を助けるために自身を食べてよいと迫る。しかし、月子から醜い容姿の楓は口に入れたくないという趣旨の言葉を吐かれ、目の前でシロに月子を食われたことで精神崩壊を起こした。その後、突如苦しみだし舌を噛み切って死亡。その死体は、額から小さな角が生えており、半ば鬼化したものとなっていた。

八重(やえ)

マユの妹で養母の女性。神の器として選ばれた姉のマユの世話役として選ばれて、妹であることを隠して母として接していた。マユの養母となることは、彼女に食われることであると知っていたが、村や家族、そして姉を守るためならばと覚悟を決めているなど意思の強い性格であった。マユとの生活は楽しかったと語っており、純真無垢なマユをいつくしみ愛していた。マユが神の器であるためだけに生きたわけではなく、確かに人間であったことを誰かに知っていて欲しいと願い、読み書きのできない自身に代わりに旅の女性に頼み手記を残した。そして、マユを神として完成させるために、鬼となり食われた。

八重が死ぬ間際まで言っていた「食べてもいい」という言葉はマユを縛り続けた。

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