もののべ古書店怪奇譚(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ
『もののべ古書店怪奇譚』とは、2015年1月から「webコミックBeat's」にて連載が始まった紺吉によるホラー漫画である。2015年12月からは『月刊コミックガーデン』に連載の場を移した。ストーリーは寡黙な古書店の店主・物部正太郎(もののべしょうたろう)とその手伝いをしている少年・シロが、読んだものを鬼へと変える鬼書を探すものとなっている。人を食らう鬼と戦いながら、鬼書を回収する中で鬼を取り巻く謎と陰謀に巻き込まれていく。鬼となってしまった人たちの恐ろしく、ときに切ない物語が特徴となっている。
探偵をしている男性。人に擬態していた鬼の如月(きさらぎ)からの依頼で正太郎を調べていた。しかし、依頼人の如月が消えてしまったことから、正太郎がなにかしたのではないかと疑い近づく。金になる話が好きで、正太郎についても謎が多い人物であるために、その秘密を明かして記者に売って金にしてやろうと考えていた。そして、正太郎について調べている最中に鬼書がらみの事件に巻き込まれて鬼に襲われたことをきっかけに、正太郎が鬼であることを知る。どこにも正太郎の正体をバラさないということを条件に生かされる。金は他人の命より重いが、自分の命は金より重いを信条としている。そのため、非情ともとれる考えを平気でする。
正太郎がマユを拾ってきた際には、マユの身元特定の調査を依頼される。できれば正太郎とは関わり合いたくないが、金のためと依頼を受けた。マユという名前、「コウジロ」「クイトムライ」という少ない情報から、マユの出身の村、そこで起きた惨劇の一端を掴むなど探偵としての力量は高い。
羽田桜子(はたさくらこ)
羽田家のご令嬢。通り道にある家に住む男性に恋をして、その男性が読んでいた本と同じものを求めていた。そして、夜木に紹介されて物部古書店を訪れる。良く言えばおおらか、悪く言えば能天気な性格をしており、危機管理能力も低い。しかし、マユの服に困っていた正太郎の相談を受けた際には快く用意するなど優しい。意中の男性が鬼であったために襲われてしまう。そこで、鬼書になにか男性を元に戻す方法はないかと目を通す。しかし、活字を読むと眠たくなってしまうために、鬼になることはなかった。後に、志波に恋心を抱き、志波の事務所で助手を務めるようになる。
物部の友人
清(きよし)
正太郎の唯一の友人。元は貿易商の息子である正太郎の話し相手になるようにと父親に言われて物部邸にやってきた。正太郎への第一印象は嫌な奴であったが、少し話すうちに打ち解けていきひねくれつつもいい奴であると思うようになる。清自身も本が好きで、良いと思った本を広めたいという話を正太郎にすると、書店を開いてみたらどうだと言われて書店を開くことを決める。その時、正太郎も一緒にやろうと誘うが、断られてしまう。そのため、書店の屋号に正太郎の名字を貸してほしいと頼んだ。
正太郎の家に通ううちに、彼の取り巻く環境を気にしていた。しかし、正太郎のために叔父から借りた沢山の本を彼に届けて以降、正太郎が行方不明になったことを40年も気にかけていた。後に、若い頃と姿の変わらない正太郎が突然訪ねてきたが、恐れることもせず受け入れて店を任せた。
鬼
夜木(よぎ)
作家をしている鬼の男性。鬼書の収集をして研究、保管をしている。その過程で、鬼書の内容の書き写しもおこなっている。常に嫌な笑みを浮かべていて、掴みどころのない性格をしている。桜子が正太郎のもとへ訪れるように手を回したり、人間だった頃の正太郎の家に出入りしていたりとなにかと言動に謎が多い。普段は自宅に籠っているため人に化けることはないが、時折用事がある時だけ人に化ける。
目にも止まらない速さで人の首を刈り取ったりと鬼としての強さは相当なものと思われる。作中で鬼としての名前は明かされていないが、人間の頭部を食事と呼んでいたのでそれに関する名がある可能性が高い。
高遠小夜(たかとおさよ)
鬼の少女。体が弱く家に引きこもっているため本を読むことが多い。親戚の宗一郎(そういちろう)に恋心を抱いて、大切な人であると公言している。使用人が腰を痛めた際には着物のまま炊事をしようとするなど病弱な体に反して行動力があり、また優しい性格をしている。
腸吸いという鬼についての鬼書を読んだため、その名を冠する鬼となっている。人目を避けて近隣で人を襲っては腸を食っていた。本来は人を食う真似などしたくはないが、宗一郎や家族などの大切な人を手にかけないようにと他者を手にかけ続けた。正太郎との戦いで深手を負い、宗一郎と共に姿をくらました。元が病弱であったことから、長くはもたないだろうとシロに言われている。
如月(きさらぎ)
民間伝承などの研究をしている鬼の男性。正太郎が神虫のシロと一緒に同族狩りをしていることを知って近づいてくる。人を襲いたくないから、正太郎に飢えを抑える方法を聞きにきたが、実は嘘であり数多の人間を手にかけている。鬼としての名は「食心鬼(しょくじんき)」。人の心臓を好んで食べる鬼であるが、人1人から取れる心臓が1個しかないことに不満を感じており、別の楽しみとして拷問をおこなう。
鬼の研究もしていたことから鬼に詳しく、また神虫に関しても詳しい。また、好奇心旺盛な性格をしているために、人だけではなく鬼も食べたことがある。鬼書を読んだ直後からすぐに人を襲って腹を満たしていたため鬼としての空腹というものを感じたことがない。他者を拷問することに性的興奮を感じる異常性欲者で、正太郎を拷問している最中も勃起していた。
男性であるが、性自認が女性であるため女性の恰好をしている。そのため、父親から男としての振る舞いを求められたことに苦しみ、恨んでいた。鬼となってすぐに手にかけたのは家族であり、こちらも恨みを晴らすがごとく拷問にかけている。男にも女にもなれないこと、通常鬼は鬼を襲わないことなど、すべてがどっちつかずの中途半端であることにコンプレックスを抱いており、より上位の存在になりたいと考えていた。そのため、正太郎からそれを指摘された際には怒りを露わにした。最期は神虫に食われて死亡した。
月子(つきこ)
見目麗しい女性の鬼。楓のいる屋敷で使用人として働いている。見目麗しく愛想が良いため家人からの評判は良い。しかし、裏では楓と結託して、顔の良い女性を誘拐監禁している。鬼としての名前は面喰い。人間の顔の皮膚を好んで食べる鬼である。正太郎との戦いの最中にシロから不意打ちを食らい、重傷を負う。シロに食われてしまう寸前に楓から自身を食べて回復してと頼まれるが、汚いつまり不細工は食べたくないと拒否してシロにそのまま食われて死亡した。
リョウエノカミ
皆城山(みなしろやま)にある神社に居を構える鬼の男性。皆城山に存在する村である実羽馬村(みはまむら)の村民からは守り神として敬われている。鬼としての期間が長いことから、正太郎からは非常に強い鬼であると認識されている。正太郎との初対面時には上位の存在であるかのごとく振舞ったが、実はとてもフランクな性格をしており、すぐに砕けた態度になった。正太郎のことは鬼の間で噂になっていたために、最初から知っていた。正太郎に鬼にも徒党、勢力があることを知らせた。リョウエノカミ自身はそういった勢力に加わるのを好まないため、御法度である同族狩りをしている正太郎を見ても危害を加えなかった。村で行われてる山巡りという儀式にてやってきた老人の血を啜っているため、血を好む鬼である可能性が高い。その村人の命を頂く代わりに1年間、村を厄災から守っている。
実は鬼書を読んで鬼になったわけではなく、奇妙な女に会ったことで鬼と化したという。150~160年前、まだ人であった頃は虎徹(こてつ)という名前で港町にある鍛冶屋の見習いをしていた。鬼と化した時に鍛冶屋の親方や兄弟子を殺してしまっていたため、町を転々としてたのちに山に住み着いた。友隣会に正太郎が潜入して窮地に陥っていたところに助けに来た。刃こぼれしたボロボロの刀を持って無双ともいえるほどの強さを見せつけた。
コミックのおまけによると寝る時に頭部に生えた角が邪魔なので、その時だけ人間の姿に化けている。
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目次 - Contents
- 『もののべ古書店怪奇譚』の概要
- 『もののべ古書店怪奇譚』のあらすじ・ストーリー
- 鬼を狩る鬼
- 神と偽神
- おともだちと鬼
- 『もののべ古書店怪奇譚』の登場人物・キャラクター
- 主人公
- 物部正太郎(もののべしょうたろう)
- 物部の主
- シロ
- 物部の知人
- 近藤(こんどう)
- 志波(しば)
- 羽田桜子(はたさくらこ)
- 物部の友人
- 清(きよし)
- 鬼
- 夜木(よぎ)
- 高遠小夜(たかとおさよ)
- 如月(きさらぎ)
- 月子(つきこ)
- リョウエノカミ
- 湶(いずみ)
- キョウカ
- 時常(ときつね)
- 偽神
- マユ
- 友隣会
- 理孤(りこ)
- その他の人物
- 楓(かえで)
- 八重(やえ)
- 『もののべ古書店怪奇譚』の用語
- 鬼(おに)
- 鬼書(きしょ)
- 神虫(しんちゅう)
- 神代村(こうじろむら)
- 友隣会(ゆうりんかい)
- 『もののべ古書店怪奇譚』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- シロ「さぁこの神虫の贄となれ」
- 正太郎「もう独りは嫌だ」
- 桜子「あった事は変わらないんですもの」
- 『もののべ古書店怪奇譚』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 表紙に描かれた花は登場人物をイメージしたもの
- 神虫の元ネタは辟邪絵に登場する善神
- 紺吉とマッグガーデン編集部との関係悪化