モンテッソーリ 子どもの家(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『モンテッソーリ 子どもの家』とは、世界中の多くの人々から支持されている教育メソッド「モンテッソーリ教育」の魅力と子どもたちの成長をつづったフランスのドキュメンタリー映画。北フランス・ルーベにある同国最古のモンテッソーリ幼稚園を2年3カ月にわたって取材し、2歳半~6歳の28人の子どもたちがユニークな教具で自由に学ぶ姿、そして彼らが成長していく中でふと訪れる感動的な瞬間を捉えることに成功している。日本語吹き替え版ではマリア・モンテッソーリの声を本上まなみ、監督の声を向井理が担当している。

『モンテッソーリ 子どもの家』の概要

『モンテッソーリ 子どもの家』とは、世界中の多くの人々から支持されている教育メソッド「モンテッソーリ教育」の魅力と子どもたちの成長をつづったフランスのドキュメンタリー映画である。原題は『Le maître est l’enfant』で、フランスで2017年に制作された。北フランス・ルーベにある同国最古のモンテッソーリ幼稚園を2015年3月~2017年6月(2年3カ月)にわたって取材し、2歳半~6歳の28人の子どもたちがユニークな教具で自由に学ぶ姿、そして彼らが成長していく中でふと訪れる感動的な瞬間を捉えることに成功している。劇中では育児のヒントや教育の重要性のみならず、未来をつくる子どもたちが単なる「ちいさな大人」ではなく、平和の担い手であることを教えてくれる。本作のガイド役は、著作から引用されたモンテッソーリ自身の言葉の数々と、カメラを回すアレクサンドル・ムロ監督。日本語吹き替え版ではマリア・モンテッソーリの声を本上まなみ、アレクサンドル・ムロ監督の声を向井理が担当している。

『モンテッソーリ 子どもの家』のあらすじ・ストーリー

本作は、モンテッソーリ教育の実践をアレクサンドル・ムロ監督が観察映画として撮影したものである。
映画の冒頭で、ムロ監督は誕生したばかりの愛娘アナの生育の記録を撮影しながら、「この子が求めることにどう答えてあげるか」について考えた。監督が親になってまず最初に得た教訓は「娘の好きにさせること」であった。しかしある時、「娘の好きにさせる」という方針に疑問が生じる。それはブランコに乗っているアナの様子を見た母親が「降りたがっている」と言うものの、父親であるムロ監督にはそうは見えない。「降りたがっている」というのは、母親がアナの様子を見て考えたことであり、まだ言葉による意思疎通ができない娘が、本当に降りたがっているかどうかはわからない。「娘の好きにさせる」のと、「親が娘の代わりに考えてあげる」のと、どちらが正しいか。その迷いに1世紀も前に答えていたのが、マリア・モンテッソーリであり、監督はモンテッソーリ教育へと導かれていく。
自身の子育てに疑問を持った監督がその答えを「子どもの家」に求め、子どもたちの活動を妨げないよう教室に小型カメラを設置し、静かに注意深く子どもたちを「観察」するところから本編は始まる。教室では花を生けたり、水差しの中身を測ったり、絨毯の巻き伸ばしをしたりする子どもたちの様子が映し出される。これが彼らの学校での「お仕事」であり、撮影を始めた監督が最初に感じたことは、子どもたちが自由に活動しているにも関わらず、教室がとても静かだということだった。彼らは監督の目の前で飽きることなく、同じ「お仕事」を繰り返す。この「お仕事」への自然な欲求こそが人間の本質であるとマリア・モンテッソーリは語る。

子どもは「お仕事」が好き

シャルロット(右)に教えるセラフィーヌ(左)

大人の仕事は経済的な収入が大きな目的であるが、子どもには自分自身を育てるという大切な「お仕事」がある。「子どもの家」では、子どもがする活動をすべて「お仕事」と呼ぶ。
異年齢という多様性の中でこそ学びの効果は発揮され、競争のない助け合いが自然に生じる。朝からひとりで静かに本を読みたい子ども、2~3人で協力しておやつの準備をする子どもたち、また全員で踊ったり、雨や風の音に耳を澄ます時もある。「子どもの家」では多くの自由と、それに見合う責任が子どもたちに与えられている。例えば好きな活動を、好きな場所で、好きなだけ繰り返せる自由はあるが、同時にその活動が終わったらイスを入れ、次の人のために元の場所に戻すという責任がある。また喉が渇いたら、水を自分で注ぎ飲む自由はあるが、もし床が濡れたら自分でモップを取りに行き拭くという責任である。これらはお互いに気持ちよく暮らすための小さな取り決めで、毎年、新しい園児が入園すると小さな先輩たちは待ってましたとばかりにクラスの当たり前の「お仕事」を丁寧に紹介する様子が映し出されている。

子どもは嫉妬しない

先生から空け移しの「お仕事」を教わるジェロ

絵を描いたり、リンゴを切ったり、積み木で建物を作ったり、計算を学んだりしている子もいれば、4歳のジェロがのように教室を歩き回って他の子の「お仕事」を観察している子もいる。小さな子どもは嫉妬することはなく、大きくなれば自分もできるようになることを理解しており、彼らは年長の子どもたちに憧れや称賛の気持ちを持っている。さまざまな教具が並べられた棚の前で迷っていたジェロは、ハサミと紙のセットを選ぶ。紙に引かれた線に沿って切ろうとするジェロの眼差しは真剣そのものであり、またクリスティアン・マレシャル先生が水差しの中身を移す“お仕事”を見せてくれた時、彼の瞳は一層の輝きを増す。
動くことで学び、成長する子どもたちは、クラスのメンテナンスや美化、植物や自分自身の世話などを満足するまで繰り返す。置かれている道具はすべて子どもサイズの本物(包丁やアイロン、水差しなど)であり、繰り返し使う間に、子どもの手や身体の動きに変化が見られるようになる。丁寧で素材や他人に配慮した動きに変わり、子どもの内面には集中力や自立心が育まれていく。ここでは幼い時期から、誰かが夢中になっている時はそっと見守るエチケットを学ぶ。劇中では「見てもいい?」「手伝ってもいい?」「ありがとう」などの声がけや挨拶は、異年齢間での自然な学び合いを通して紹介されている。

「敏感期」

モンテッソーリは、生物の幼児期に見られるある現象が、人間の子どもにも見られることを発見した。それを「敏感期」といい、6歳以下の子どもが環境のある要素だけに強烈な関心を示す時期のことである。そこで知識や技術を獲得した後は、興味は徐々に消えていき再び次の対象にとりつかれるようになっていく。制御しようのないこの自然な衝動は、子どもにとってまるでそれだけしか目に入らないような感覚である。敏感期は普遍的で、どの時代、どんな社会的、経済的背景にいる子どもたちにも現れ、一度現れると二度と戻って来ない一過性のものである。大きく分けると、感覚、言語、小さな物、運動、秩序、社会性の敏感期などがある。劇中では様々な「お仕事」に取り組む子どもたちの様子が映し出されているが、とりわけ感覚と言語の敏感期の様子が紹介されている。

感覚の敏感期

ピンクタワーに取り組むピエール

感覚教具は、色や形、長さ、重さ、温度、音の高低、味やにおいなど、子どもの中に蓄積された多種多様な五感による印象を整理し、感覚的な気づきを高め、暮らしを豊かにしてくれるものである。子どもは、基本的な色や形などが美しく緻密にデザインされた感覚教具を適時に体験することで、より広い感覚の世界を探求し、自分自身で知性の基盤を作っていく。
映画に出てくる「お仕事」では、視覚に働きかけるピンクタワーや聴覚に働きかける音感ベルなどが紹介されている。

言語の敏感期

ギャランス(右)から砂文字版を教わるシャルリ(左)

すべての人間が持つコミュニケーション手段である聞く、話す、書く、読むという言語の持つすべての機能が体験できるコーナーが「子どもの家」にはたくさん用意されている。本作に出てくるのは、ある時期になると子どもはこれまで話していた音が記号化できることに気づき、俄然と文字に興味を持ち始める様子である。映画に出てくる「お仕事」では、砂文字板を使って文字をなぞったり、物と名前を一致させる教具を使用したりしている。

「集中現象」

絵を描くことに集中するセラフィーヌ

子どもは本当に自分の成長に必要な「お仕事」に出合ったときに「集中現象」という姿を見せる。細かい正確な作業を求められると興味を示し、時間を忘れて取り組む。難しければ難しいほど、夢中になる。これを「集中現象」と呼んでいる。この現象は教師が作るものではなく、子ども自身が生み出すものである。天才と呼ばれる人々と同じ高い集中力を3~4歳の子どもは持っており、この「集中現象」に着目したことが、モンテッソーリの教育法の原点となっている。

モンテッソーリ教育が目指すもの

本作は観察映画であり、観客は作品のほとんどの時間で繰り広げられる子どもたちの試行錯誤を見守る観察者となる。子どもたちの主体性によってのびのびと成長する姿を追体験するため、セリフはほとんどない。時折入るナレーションによって、モンテッソーリが子どもたちの観察によって獲得した信念が観客に伝えられている。
1936年、モンテッソーリはヨーロッパ平和会議で「紛争回避は政治の仕事だが、平和構築は教育の仕事だ」と述べている。生涯で3つの戦争を経験したモンテッソーリは、心から恒久的な平和を願い、人格が形成される子ども時代にこそ平和は始まると説いた。劇中では育児のヒントや教育の重要性のみならず、未来をつくる子どもたちが単なる「ちいさな大人」ではなく、平和の担い手であることを伝えている。

『モンテッソーリ 子どもの家』の登場人物・キャラクター

carrotsalad
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