悪人伝(韓国映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『悪人伝』とは、2019年に公開された韓国のヴァイオレンス・アクション映画。カンヌ国際映画祭ミッドナイト・スクリーニング部⾨の正式上映作品に選ばれ、興⾏収⼊ランキング初登場NO.1を記録。観客動員数300万⼈を超え、⼤ヒットした。映画のキャッチコピーは、「極悪組長×暴力刑事VS無差別殺人鬼」。迫力あるアクションシーンが話題となり、シルヴェスター・スタローン制作でハリウッド・リメイクも決定。主演は2021年『エターナルズ』に出演した韓国を代表する俳優マ・ドンソク。監督は、イ・ウォンテ。

衝撃の人間サンドバッグ

縄張り争いで、対立する組の組長サンドの手下をサンドバッグの中に入れていたドンス。サンドバッグを力任せに殴り続けるシーンはドンスの力強さを感じさせるが、サンドバッグを手下に降ろさせて中を開けさせると、中から血だらけになった男が出てくる。ドンスの凶悪な面が、印象づけられる最初のシーン。

ビンタの威力が迫力満点のマ・ドンソク

敵対する組長のサンドの葬式の後に食事会に集まった際、香典をはずんだと嫌味を言われた時に「黙って、食え」とビンタを何度もするドンス。食事の席は一瞬で緊迫した状況になるがおかまいなしで、ビンタをされた男はテーブルに倒れ込んでしまう。実力行使で、ヤクザの組長としての脅威を知らしめる姿はまさに凶悪という表現がぴったりだ。

ドンス「一般人なら死んでいた」

法廷でギョンホの犯行を証言するドンス

ドンスは、描かせた殺人犯の似顔絵を法廷で証拠として提出したが、「ただの絵で、法的根拠はなく科学的な証拠能力もない」とギョンホの弁護士に言われてしまう。裁判官に、証拠を提示できるかと問われたドンスは、立ち上がり上着を脱ぐと、ギョンホに刺された脇腹や胸の傷を見せ、さらに手の平に負った傷も見せて証言を続けた際に言ったのが「一般人なら死んでいた」というセリフ。屈強なドンスならではのセリフ。

『悪人伝』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

実話がベースの『悪人伝』

追突事故を装い犯行に及ぼうとするギョンホ(画面奥)と車から降りて来たドンス(画面右)

『悪人伝』は、韓国で実際に起きた天安連続殺人事件がモデルになっている。天安連続殺人事件は、2005年2月〜12月に起きた4人組による連続殺人事件。事件により9名が殺害され、他にも身代金目的の誘拐、強盗致傷、強盗未遂、窃盗など計18件もの事件を起こしている。警察は事件の捜査において犯人を逮捕することはできず、天安地区の人々を恐怖に怯えさせた。
映画と天安連続殺人事件の類似点は、ふたつ。天安連続殺人事件では、犬の飼育場のオーナーが犠牲者になるが映画でも飼育場で男性が殺害された点がひとつ。もうひとつは、天安連続殺人事件の別の犠牲者は車の接触事故を装い殺害されたが、本作でも殺人犯のギョンホは、追突事故を装って犯行を重ねていた点。このほかは、フィクションとなっている。

“悪と悪”の対決という矛盾した設定をしたイ・ウォンテ監督

監督のイ・ウォンテは映画の製作にあたり、「平凡な“善と悪”ではなく、“悪と悪”の対決という矛盾した設定です」と語る。映画では極悪な組長と、暴力刑事、そして無差別殺人鬼という強烈な印象の登場人物を迫力あるシーンで描いている。アクションシーンではヤクザの組長のドンスは、勝つためにはなんでもする屈強な男として描いた。刑事のテソクは、体を張って攻撃より守りが多い男として、また殺人鬼のギョンホは、奇襲が多く素早く動く男としてそれぞれの魅力を引き出している。

カンヌ国際映画祭ミッドナイト・スクリーニング部門の招待作品『悪人伝』

2019年カンヌ国際映画祭でミッドナイト・スクリーニング部門の招待作品として『悪人伝』の公式上映会が行われた。ミッドナイト・スクリーニング部門はカンヌ国際映画祭で商業ジャンル映画を扱う部門。2016年『新感染 ファイナル・エクスプレス』が招待された実績がある。『悪人伝』は『新感染 ファイナル・エクスプレス』にも出演していたマ・ドンソクが主演とあり注目を集めていた。約1時間50分の上映が終わると、会場の観客からおよそ4分間ものスタンディングオベーションが起こり、会場は熱気に包まれた。

ハリウッドでリメイクが決定

マ・ドンソクは、役作りにおいて「他の作品よりセリフのスピードを倍以上遅らせ、力を抜いて演技した。しかし、激しく攻撃するシーンは激しいエネルギーでねじ伏せた」と撮影を振り返る。もともとコメディ映画が好きなマ・ドンソクは、本作では笑わせたい欲があったが我慢し、凶悪なヤクザの組長を演じ切った。ドンソクの米製作会社ゴリラ8・プロダクションズと、シルベスター・スタローンの製作会社バルボア・プロダクションズがプロデュース。マ・ドンソクはプロデューサーとしても参加し、韓国バージョンと同じヤクザのボス役を英語で演じる予定。シルベスター・スタローンの『ロッキー』(1976年)をきっかけに俳優を目指したマ・ドンソクは、プロデュースがシルベスター・スタローンであることを喜んでいる。

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