Enya(エンヤ)の徹底解説まとめ
Enya(エンヤ)とはアイルランド出身の歌手。日本ではテレビ、映画、CMなどで楽曲が使用されていることから知名度が高く、多くの人の間で親しまれている。「世界を癒す奇跡の歌声」として長年世界で愛されているアーティスト。全世界で7500万枚以上売上げ、グラミー賞4回、ワールド・ミュージック・アワードを7回受賞している。
Enyaの概要
Enyaとは1986年にデビューしたアイルランド出身のアーティストである。海外ではアルバム『ENYA』でCDデビュー。日本では『アイルランドの風』としてリリースされた。
幾重にも重ねたボーカルとリバーブの効いたサウンドが特徴的。ボーカル、弦楽器、民族楽器、シンセサイザーを駆使し、デビュー当初から100以上のボーカルの多重録音を使ったサウンドが独自の世界を作っている。幾つもの楽器を演奏できるマルチプレイヤーで、レコーディング時は自分で演奏することが多い。
ケルト(アイルランド)音楽とクラシック音楽の要素が取り入れられており印象的なサウンドが映画やテレビ番組、CMなどで使用され、Enyaの音楽が映像を演出する。
日本では2001年、辻仁成と江國香織による恋愛小説が原作の映画、『冷静と情熱の間』のサウンドトラックになり、主題歌「Wild Child」が有名になった。
第59回(2008年)紅白歌合戦に出場し、第1部の最後に出演した。衛星生中継で、アイルランドから「Orinoco Flow」と「ありふれた奇跡(Dreams are more precious)」を披露した。
積極的な環境活動をしていたEnyaはエコをテーマにしたコーナーで登場だった。
2015年12月「Dark Sky Island」の発売の際、日本テレビ系情報番組『Zip!』『スッキリ!!』に出演し話題となった。2008年の前作『雪と氷の旋律』(『And Winter Came…』)から7年ぶりのオリジナルアルバムを携えた出演となった。
京都や日本が好きである事をインタビューで答えており、来日を楽しみにしている様子がうかがえる。
2015年以降のリリースはないが、YouTubeチャンネルがあり、リリックビデオの配信などを行っている。また、ドキュメンタリー番組やCM、情報番組などで楽曲が使われ、時代に左右されないEnyaの唯一無二のサウンドは日本のメディアで必要とされることも多い。
2021年には「Watermark」のオフィシャルビデオを配信し、美しいアイルランドの風景が映され、アイルランドと自然を愛するEnyaらしいビデオに仕上がっている。
Enyaの活動経歴
兄のバンドClannad(クラナド)加入
Enyaは大学在学中の1980年、18歳の時に3人の兄姉と叔父2人のアイルランド音楽のバンドClannad(クラナド)に加入し、CDデビューを果たしている。Clannadは伝統的なアイルランド音楽のバンドで、ボーカルとアコースティックギターが軸になり、伝統楽器、鍵盤楽器、コーラスが重なりトラディショナルなフォークサウンドが美しい。Enyaはコーラスと鍵盤楽器を担当していた。
電子楽器と伝統音楽の融合
3大エレクトロピアノと言われるWurlitzer(ウーリッツァー)やアナログシンセサイザーを用い、バンドにエモーショナルなサウンドを添え普通のトラディショナルバンドとは違った魅力をみせている。Wurlitzerはカーペンターズやレイ・チャールズの楽曲で使われていることで有名で、当時の音楽シーンでも聞き馴染みのある楽器であった。
Clannadの経験から電子楽器と伝統音楽の融合を見出し、後のEnyaサウンドに繋がる音楽スタイルが誕生した。
多重録音を駆使したEnyaサウンドの誕生
1982年Clannad脱退後、Clannadのマネージャーでプロデューサーのニッキー・ライアンと作詞家のローマ・ライアン夫婦とパートナーシップを結び音楽制作を開始した。
Enyaとニッキーはボーカルを100回以上多重録音し、重ねた音で効果音を作る彼のアイディアについて試行錯誤をしたそうだ。
2年間ライアン夫婦と一緒に暮らしアイルランド、ダブリン北部のアルテインに住み日々レコーディングを重ねた。
1983年9月、Enyaとライアン夫婦はホームレコーディング施設「Aigle Studio」を建設した。
1986年イギリスBBCのドキュメンタリーシリーズ『幻の民・ケルト人(The Celts)』のサウンドトラックを担当したのがソロ活動の始まりだ。
ローマが「Enyaの音楽はとてもビュジュアル的な音楽」と気づき、彼女が映像監督に連絡を取った事が最初のきっかけだそうだ。
ピアノ・インストゥルメンタルにアイルランドのゲール語の歌詞を乗せた楽曲などを制作した。
ワーナーミュージックUK正式契約
『The Celts』を気に入ったワーナーミュージックUKの会長が「売れることを気にせず本当に良いものを作ってほしい」と声をかけ正式契約を結び、1988年1stアルバム『Watermark』でメジャーデビューをした。
『Watermark』は世界で1100万枚以上のセールスを記録している。 アルバムの7曲目に収録され、シングルカットされている「Orinoco Flow」が世界中に衝撃を与え、大ヒットを記録し、各国のチャートトップ10に入り世界的に有名になった。またミュージックビデオも彫刻のような美しい顔立ちをしたEnyaと絵画がコマ送りされているような作品も当時としては珍しく、楽曲と共に大人気となり、グラミー賞最優秀短編ミュージックビデオ賞を受賞した。
この頃にはレコーディングに時間をかける事が有名になり、ボーカルを100回以上重ねる楽曲制作も注目を集めた。Enya自身も思い出深い曲に「Orinoco Flow」を挙げており、自分にとって重要な曲で、いつ聴いてもワクワクすると言っている。
1991年セカンドアルバムの『Shepherd Moons』はイギリスでチャート1位を獲得し、アメリカではビルボードチャートに4年間、計199週チャートインするという超ロングセールスを記録した。幻想的で荘厳なサウンドはそのままに、ラテン音楽やワルツ、ピアノ中心の楽曲など幅広く、後に日本でも聞かれる作品が収録されている。
1995年『The Memory of Trees』を発売。2曲目に収録されている「Anywhere is」は日本でよく聞かれる楽曲の1つだ。1997年にEnya自らが選曲したベスト盤『Paint the With Stars』をリリース。このアルバムのために書き下ろされた「Only if...」「Paint the With Stars」を含めた16曲が収録されている。日本だけでも180万枚を売り上げ、世界では900万枚を記録し、大ヒットとなった。
1997年グラミー賞ニューエイジ・アルバム賞でEnyaの家族のバンド、Clannadもノミネートされていたが『The Momory of Trees』が受賞した。
映画主題歌起用
2000年に発売された『a day without rain』は5年をかけてライアン夫婦と共に磨き上げられたそうだ。最高傑作に値するという評論家もおり、全世界で1300万枚セールス、日本でも100万枚を突破した。3曲目に収録されている「Only Time」はキアヌ・リーブスとシャーリーズ・セリオン主演の映画『Sweet November』の主題歌。
2曲目の「Wild Child」は竹野内豊主演映画『冷静と情熱のあいだ』の主題歌になり、自動車メーカートヨタのCMでも使われるなど、世代を超えて知られる曲となった。
映画『冷静と情熱のあいだ』でEnyaを起用する事は企画段階から決定しており、原作と共に映画の方向性を決定づけたそうだ。フィレンツェ、ミラノ、東京が舞台の都市を跨いで描かれる恋愛映画で、美しい街並みと登場人物の繊細な心情をEnyaの音楽が見事に演出してくれている。
2001年の映画公開に合わせ、期間限定で『フォー・ラヴァーズ「 冷静と情熱のあいだ」テーマ曲集』(Thermes From Calmi Cuori Appassionati)が発売され、CDショップでも大きく取り上げられた。
ワールド・ミュージック・アワードで最優秀ニューエイジアーテイスト、アイルランドベストセラー・アーティストを受賞した。
映画『ロード・オブ・ザ・リング』のために書いた「 May It Be」はアカデミー賞とゴールデングローブ賞にノミネートされ、2003年グラミー賞最優秀楽曲賞映画にもノミネートされた。
また2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件で心を痛めたアメリカの人々の心を癒したのが「Only Time」だった。「Only Time」と現地の悲惨な映像がメディアで流れ、全米チャート10位になった。
2002年グラミー賞最優秀ニューエイジ・アルバム賞受賞、ワールド・ミュージック・アワードで最優秀ニューエイジアーティスト、アイルランドベストセラー・アーティスト、最優秀女性アーティストを受賞した。
2003年も最優秀アイリッシュアーティストを受賞している。
松尾芭蕉からインスピレーションを受ける
2005年『Amarantine』は日本では60万枚のセールスを記録。5年ぶりのオリジナルアルバム。Enyaとライアン夫婦は2年をかけてこのアルバムを制作した。タイトルの『Amarantine』は、詩人が「永遠の花」を語る時に使う言葉。
多くの言語で歌うEnyaだが、このアルバムで初めて日本語歌詞の楽曲が制作された。
7曲目の「Sumiregusa」(Wild Violet)は日本の歌人、松尾芭蕉が詠んだ俳句「山路来て なにやらゆかし すみれ草」にインスパイアされ作られた。
多くのインタビューで印象に残っている都市が京都であることや、着物や日本の食文化に影響を受けたと答えているEnya。日本の文化が好きなEnyaらしい楽曲に仕上がっている。
更にはローマが特別に作りあげた全く新しい言語「ROXIAN」の楽曲3曲「Less Than a Pearl」「 The River Sings」「Water Shows The Hidden Heart」が収録され、Enyaクルー全開の不朽の名盤である。そして2006年ワールド・ミュージック・アワードではアイルランドベストセラー・アーティストを受賞し、2007年にはグラミー賞最優秀ニューエイジ・アルバム賞、最優秀ポップ・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞を受賞した。
世界初のドラマ主題歌への起用
2008年 『And Winter Come…』(雪と氷の旋律)発売。
6曲目の「Dreams are more precious」(ありふれた奇跡)がフジテレビ開局50周年記念『ありふれた奇跡』の主題歌となった。Enyaの曲がテレビドラマの主題歌になるのは世界初だった。日本のドラマの主題歌になった感想を聞かれ、「ありふれた奇跡も“物欲よりも愛が大切”ということを歌っているので、ドラマの内容にあっていると思ったの。」と答えている。
鍵盤楽器以外に演奏している楽器は何か聞かれた際は、小さいドラムを買って「One toy soldier」(おもちゃの兵隊)で叩いていると答え、リズムを強調した事をあげている。
またギターソロを取り入れたことにも触れており、8曲目の「My! My! Time Flies!」ではアメリカのカントリーロックを思わせるエレキギターソロが取り入れられているのがかなり印象的であり、これまでのEnyaサウンドを考えると衝撃的である。
アルバムのタイトルでもある「And Winter Come…」は一度完成させてからそのままにしておき、2ヶ月経ってから聞き直し、冷静に判断して調整したそうだ。
アルバム自体も2年をかけて制作された。
同年の第59回紅白歌合戦にアイルランド衛星生中継で出演を果たし、「Orinoco Flow」と「ありふれた奇跡(Dreams are more precious)」を披露した。
アイルランドのダブリン空港から約2時間ほどの場所にある300年以上の歴史を誇る「Castle Leslie」という古城から中継が行われた。湖と緑に取り囲まれ、城内には近代的な設備が一切無く、Enyaがパフォーマンスした部屋の暖炉はイタリアから取り寄せた物だったりと、美術館のような場所から歌声が届けられた。
積極的な環境活動をしており、エコをテーマにした特別企画「SAVE THE FUTURE」で出演したEnyaはパフォーマンスの前にコメントを求められ、「私は曲を書いている時にこの豊かな自然から多くのインスピレーションを受けます。このような自然が多く残っているアイルランドに生まれてとてもラッキーだと思います。私のメッセージはこの大切な自然を守り、次の世代に受け継いで行かないといけない、ということです。」と答えていた。
13人のストリングスと聖歌隊をバックに、荘厳で美しい空間でのパフォーマンスとなった。
エコ活動としてアルバム5曲目の「Trains and Winter Rains」は、ダウンロードすると植樹に寄付するシステムになっている。
日本版アルバムには日本語字幕付きの楽曲解説が収録されており、かなり貴重なEnyaクルーの話を聞くことができる。
そして2009年『THE VERY BEST OF enya』をリリース。
ワーナーミュージックジャパンのページでは「世界を癒す、奇跡の歌声。〜エンヤ自身が選曲した珠玉のベスト・アルバム」と紹介されている。
環境保護活動
2015年に7年ぶりのアルバム『Dark Sky Island』を全世界同時リリース。7年ぶりとあって全世界待望のアルバムだった。
イギリス領チャンネル諸島にあるサーク島から大きなインスピレーションを受けており、車の使用が禁止されている独自の法律や自治権を持っていて、「世界一美しい星空を眺める事が出来る島」として知られている。
自然豊かなアイルランドに生まれた事をとても大切にしている事や、「Trains and Winter Rains」がリリースされた際、植樹に寄付するシステムにしたことなどから、自然豊かなサーク島にインスピレーションを受け制作された『Dark Sky Island』はEnyaらしさの詰まったアルバムになった。
7年ぶり日本メディア出演
日本のファンの期待も高まる中、プロモーションのため来日を果たし、テレビに出演した。Enyaの国内メディア出演はとても貴重な出来事である。
出演決定時点で多くのメディアに取り上げられ、注目度の大きさが伺えた。
同年12月8日、日本テレビ系『スッキリ!!』、12月11日には『ZIP!』に出演した。
12月22日には日本テレビ系『NEWS ZERO』にてピックアップされ、京都を訪れたEnyaのプライベート密着の様子が放送された。
来日を記念してLINE LIVEにてスペシャル番組「エンヤ生出演!来日スペシャル〜地上に舞い降りた天使」が配信された。
12月25日NHK BSプレミアム「“ケルトの風”が運ぶ癒しの歌声 〜松下奈緒 アイルランド音楽紀行〜」に出演した。
また「Echoes In Rain」が2016年1月より、読売テレビ・日本テレビ系『情報ライブ ミヤネ屋』のエンディングテーマになった。
ワーナーミュージックジャパン公式ページでも「7年ぶりの新作とあって、世界のミュージック・シーンを揺るがす大きなニュースとなっています。」と紹介されている。
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目次 - Contents
- Enyaの概要
- Enyaの活動経歴
- 兄のバンドClannad(クラナド)加入
- 電子楽器と伝統音楽の融合
- 多重録音を駆使したEnyaサウンドの誕生
- ワーナーミュージックUK正式契約
- 映画主題歌起用
- 松尾芭蕉からインスピレーションを受ける
- 世界初のドラマ主題歌への起用
- 環境保護活動
- 7年ぶり日本メディア出演
- 東日本大震災被災児童自立支援に参加
- Enyaのプロフィール・人物像
- 音楽一家に生まれたEnya
- ライアン夫婦との出会い
- 日本文化からインスピレーションを受ける親日家
- Enyaのディスコグラフィー
- アルバム
- The Celts
- Watermark
- Shepherd Moon
- The Memory of Trees
- Paint the With Stars THE BEST OF ENYA
- a day without rain
- Thermes From Calmi Cuori Appassionati
- Amarantine
- AND WINTER CAME…
- THE VERY BEST OF enya
- Dark Sky Island
- Enyaの代表曲とミュージックビデオ(MV/PV)
- Orinoco Flow
- The Celts
- Only Time
- Wild Child
- So I Could Find My Way
- Enyaの名言・発言
- 「気持ちの切り替えが大切」
- 「私の音楽が日記」
- 「自分では売れると思っていなかった。」
- Enyaの裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 着物のコレクション
- 9世紀に建てられた古城に住んでいる
- アイルランドを愛している
- サックスを吹いていた
- Enyaとライアン夫婦