わたしの幸せな結婚(小説・漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『わたしの幸せな結婚』とは顎木あくみ原作の小説および、高坂りとによる同小説を原作とした漫画である。特殊な能力「異能」を持つ名家に生まれながらもそれを受け継がなかった主人公、斎森美世。それ故に義母や異能を受け継いだ異母妹から日々厳しい仕打ちを受け、父親からも見放されていた。美世は、冷酷無慈悲と噂の久堂清霞の所へ嫁ぐことになるものの、この結婚が彼女の人生を一変させる。今まで誰からも愛されなかった主人公が幸せになっていく、結婚から始まる和風シンデレラストーリーである。

『わたしの幸せな結婚』の概要

『わたしの幸せな結婚』とは原作者、顎木(あぎとぎ)あくみ、原作イラスト月岡月穂の小説および、高坂りとによる同小説を原作とした漫画である。元々原作者の顎木あくみが株式会社ヒナプロジェクトの提供する小説投稿サイト『小説家になろう』で連載を開始し、2018年12月に漫画家、高坂りとが『ガンガンONLINE』にて同小説を漫画化した。2019年に富士見L文庫(KADOKAWA刊)にて文庫化、スクエア・エニックスにて漫画書籍化され、シリーズ累計発行部数は、デジタル書籍を含め2021年10月に400万部を突破した。また2021年7月に同小説がREADPIAにて朗読劇化され、2022年にはアニメ化と実写映画化することが発表され、大きな話題となった。

物語の舞台は、明治・大正時代。特殊な能力「異能」を持つ名家に生まれながらもそれを受け継がなかった主人公、斎森美世(さいもりみよ)。実母を早くに亡くし義母や異能を受け継いだ異母妹、斎森香耶(さいもりかや)から日々使用人のような扱いを受け、実の父親からも見放されていた。唯一の味方であった幼馴染の辰石幸次(たついしこうじ)は香耶と結婚、美世は冷酷無慈悲と噂の軍人、久堂清霞(くどうきよか)の所へ嫁ぐことになる。「清霞の所へ行った婚約者候補たちは、3日持たずに逃げ出す」という噂を聞いた美世は、自分も過去の婚約者候補と同じようになるだろうと諦めながら、清霞のもとを訪れた。しかしこの清霞との結婚が美世の人生を大きく一変する。また清霞も最初は美世に対し冷たい対応をとっていたが、美世と少しずつ心を通わす内に自分自身の中で美世の存在が変わっていくことに次第に気づいていく。

美世と清霞との結婚から始まる甘酸っぱくピュアな恋愛模様はもちろん、今まで誰からも愛されず幼馴染までも妹に奪われ、人生のどん底だった主人公の美世が清霞やその周辺の人々との関わり合いによって幸せや自信を取り戻していく人生逆転のヒューマン物語でもある。

また、2023年3月には実写映画が上映された。斎森美世役に今田美桜、久堂清霞役はSnow Manの目黒蓮が務めた。監督は塚原あゆ子、脚本は菅野友恵。また同年7月からはテレビアニメの放送も開始される。

『わたしの幸せな結婚』のあらすじ・ストーリー

「異能」を持たない娘

物語の舞台は、明治・大正時代。特殊能力「異能」を持つ名家の1つ、斎森家。斎森美世(さいもりみよ)は斎森家の長女として誕生した。彼女の両親は、異能の血を少しでも濃く受け継ぐように仕組まれた戦略結婚だった。当然生まれた美世には異能が備わっていると思われたが、美世に異能はなかった。やがて美世の母は病に倒れ亡くなり、美世の父・斎森真一(さいもりしんいち)はかつて恋人だった女性と再婚した。美世の義母は、美世の母に対して当時恋人同士だった仲を引き裂いたことに恨みを持っており、その恨みは娘の美世に向けられた。さらに異能を受け継いだ異母妹、斎森香耶(さいもりかや)が生まれたことにより、義母や香耶は異能を持たない美世を見下すようになった。父親も美世よりも香耶を可愛がるようになり、次第に美世は父親から見放されていく。美世はいつしか使用人同然の扱いを受けるようになり、2人からの嫌がらせも次第にエスカレートしていった。

心許せる幼馴染み幸次との別れと久常家の縁談

しかし美世にも唯一の味方がいた。辰石幸次(たついしこうじ)は、斎森家と同じく「異能」をもつ家の次男であり、美世と香耶とは幼馴染でもある。幸次は美世のことを斎森家の娘として認めており、度々美世の置かれている状況を案じていた。ある日、幸次が正装で斎森家を訪れた。なんでも美世の父親に大切な用があると言い、美世は結婚の申し込みではないかとすぐに悟った。もし幸次と結婚できたなら、斎森家の人間として存在を認めてもらえ父親との仲も良くなるかもしれない。そう思った美世は、幸次との結婚に淡い期待を持ってしまう。しかし父親から呼ばれ告げられたのは、実に残酷なものだった。
美世の父親は、幸次を斎森家の婿養子として迎え、幸次の妻として選んだのは妹の香耶だった。そして美世も久常家の当主、久堂清霞(くどうきよか)の所へ嫁ぎ、荷物をまとめ次第すぐに久常家へ行くように父親から言い渡された。
久常家は国のトップに近い名家である。しかし当主の清霞は冷酷無慈悲の軍人で結婚に関しては、数多の女性たちが3日もたずして逃げ帰ると美世は噂で聞いていた。美世は、久常家との結婚は自分を斎森家から追い払うためのものだと悟り愕然とした。

美世は荷造りをするために自室へ戻る際、幸次から呼び止められた。幸次は自分が不甲斐ないばかりで、美世を助けることができなかったと美世に詫びた。美世は幸次にこれ以上迷惑はかけられないと、運が悪かっただけだと気丈にふるまった。幸次は美世に責めてほしかった。しかし美世は幸次のことを恨むどころか、恨む気持ちはもう忘れたと言い、その場を立ち去った。

久常清霞との対面

美世は荷物をまとめ、父の言われた通り久堂家へ向かった。久堂家ほどの名家であれば、さぞ豪華な暮らしをしているかと思いきや、清霞の住まいは郊外の質素な別宅であった。美世には、もう帰る家も頼れる人もいない。久堂家でやっていくしかないと覚悟を決めた美世は久堂家当主、久堂清霞へ挨拶をした。清霞は美世の方を振り返りもせず、しばらく無言で書類をめくっていた。その間美世は、ずっと頭を下げたまま。無視されるのは斎森家で慣れていた。しばらくすると、清霞から「いつまでそうしているつもりだ」と言われ、美世はとっさに清霞に詫びた。すると清霞は「謝れとは言っていない、頭を上げろ」と美世に言った。清霞は美世にこの家では自分の言うことに従えと言い、美世は返事をするだけだった。

翌朝、いつものように早く起きてしまった。普通名家の妻であるならば、嫁入り前に華道や茶道などを嗜んでおくべきなのだが、斎森家では使用人として扱われていた美世にそのような教養はない。美世は、久堂家の妻にふさわしくないと思いつつも朝食を作ることにした。美世が朝食を作っていると、清霞の使用人であるゆり江(ゆりえ)が来た。余計なことをしてしまったと詫びる美世にゆり江は、朝食の支度をしてくれたことに対して感謝の念を伝えた。ゆり江の姿をみた美世は、ほっとした気持ちになった。
ゆり江は、清霞に今朝の朝食は美世が作ってくれたことを伝えた。しかし、清霞は美世に対し「お前から食べろ」と命令した。主人より先に食べてはいけないと教育されてきた美世は、清霞の命令に反応できなかった。清霞は、美世が自分の朝食に毒を盛ったのではないかと疑い、美世の作った朝食に一切口をつけなかった。
清霞の反応に愕然とした美世は再び無表情になる。ゆり江は、清霞に対して美世は今まで来た女性たちとは違うことを説明し、美世を信用してほしいと清霞に言った。清霞は、美世を早々と追い出す予定だったが、ゆり江の言葉や美世の様子、そして美世が斎森家の人間であることを理由に暫く様子を見ることにしたのだった。

清霞が仕事から帰宅すると、美世が朝食の件を詫び、夕食はゆり江が作ったものを用意しているので毒などは入っていないと清霞に説明をした。清霞も今朝の自分の言動は言い過ぎたと美世に謝罪し、改めて美世の姿を見た。美世は名家の令嬢とは程遠い程の身なりとやせ細った身体とあかぎれだらけの指先をしている。清霞は美世に夕食は済ませたのかと聞くと、美世は口をつぐんだ。美世は、食欲がないからゆり江に自分の夕食は必要ないと頼んだそうだ。
美世の言動に不審を感じつつも、清霞1人で夕食を取った。既に冷めてしまった夕食に対し、美世はすかさず清霞に詫びを言った。すると清霞は、なぜすぐに謝るのかと美世に尋ねた。義母や妹の香耶の前では、謝罪の言葉しか口にすることが許されていなかったとは、口が裂けても言えず美世は無言を貫いた。清霞が自分のことを少しは気にしてくれていると感じた美世は、すぐには追い出すつもりはないのかもしれないと思い、冷たいだけの人ではないのかもしれないと清霞に対して感じた。
風呂を沸かすと美世が言うと、風呂は清霞の異能の力で沸かしているから必要ないと断った。異能は美世にはない素質であり、清霞は恐らく自分に異能がないことにまだ気づいていないだろう。異能がない自分は清霞の妻にふさわしくないと美世は1人落ち込むのであった。

斎森美世の調査と初めてのデート

美世は毎晩悪夢をみる。幼い頃、香耶に「見鬼の才(けんきのさい)」があると判明した時、父親の興味は一気に香耶の方へ向かれ、美世はぞんざいに扱われた。幼い美世は、家族に愛される普通の家に生まれたかったと何度も思い涙を流した。そんな美世を、使用人の花(はな)だけが優しく抱きしめてくれた。花は、その後義母に解雇され斎森家を追い出されてしまう。目を覚ました美世は、斎森家を出ても自分は価値のない人間であると思い続けていた。

炊事場に行くと、既にゆり江が朝食の準備を始めていた。昨日の件のことで、ゆり江は美世を気遣い早めに来てくれたのだ。しかし昨晩、清霞から朝食を作ってくれと頼まれていた美世は、ゆり江に自分で用意すると伝えた。それを聞いたゆり江はにこっと笑い、二人で朝食の準備を始めるのであった。美世は自分の着物が破れてしまい、直すためだとは言わず、ゆり江に裁縫道具を貸してほしいとだけ頼んだ。ゆり江は美世の申し出に快く快諾をしてくれた。朝食の準備が終わり、清霞と共に朝食を食べる。美世は、自分の作った料理を名家の清霞が気に入ってくれるはずがないと思っていた。しかし、清霞は美世の作った朝食に対して「美味い、ゆり江の味付けとは違うが悪くない」と言った。その言葉を聞いた美世は、突然泣き出してしまう。清霞は誉め言葉として言ったつもりだったのに、美世がどうして泣き出したのか分からなかった。美世は、清霞に突然取り乱したこと詫びた上で、自分の作った料理を誉められたのが嬉しくて泣いてしまったのだと清霞に伝えた。そんな美世の姿を見て、清霞は美世のいた斎森家に何か原因があるのではないかと疑い、ゆり江に美世の行動を見張るよう伝えた。ゆり江は、清霞が自分から女性に興味を示すことに心境の変化を感じ、清霞をからかう。そして美世は清霞の妻としてふさわしい女性だと断言した。清霞はゆり江がそんなこと言うのは珍しいと感じつつも、自分も美世について調べることにするのだった。
清霞を送り出した後、ゆり江は美世のもとに裁縫道具を持って行った。ゆり江は自分の使い古したものではなく、新品を用意すると言ったが、美世はその提案を断る。令嬢であれば、自分の裁縫道具を持っているのが当然。無一文で久堂家に来てしまったことに美世は自分自身を責めた。美世は、ゆり江に今朝自分が突然泣き出したことに対し、清霞は怒ってはいなかったかと聞く。ゆり江は、清霞はそんな些細なことでは怒らないこと、泣くことは悪い事ではないと美世の手を優しく握りながら答えた。ゆり江の言葉に安堵をした美世だったが、自分が異能を持っていないと清霞に知られればきっと出ていかねばならない。この幸せは一時的なものだと美世は自分自身に言い聞かせるのであった。美世はゆり江に昼食の準備をお願いし、自分の破れた着物を直し始めた。美世が着物を直している様子をゆり江は、ふすまの隙間から覗いていた。夕食時、清霞は美世に家事の時間以外は何をして過ごしているのかと尋ねた。美世は破れた着物を直していたとは清霞には言えず、ゆり江から借りた雑誌を読んだりして過ごしていると嘘をついた。

清霞は今度の休日、街へ一緒に出掛けないかと美世を誘う。美世は用事もない自分が清霞の側にいては迷惑になるだけだと言って清霞の提案を断った。しかし、清霞は迷惑だと思わないし、自分の付き添いでついてくればいいと言った。美世は清霞に恥をかかせないよう、準備を始めるのであった。街へ出かける当日、美世はゆり江に化粧を施してもらい、清霞と一緒に街へ出掛けた。清霞は美世にどこか行きたいところはないかと尋ねた。美世は清霞の付き添いで来ただけだから、特にはないと答えた。斎森家にいた時は家から出たことがなかった美世。街の様子を見て楽しんでいる様子の美世に清霞は、自分に気を遣わず好きなだけ楽しむがいいと言って美世の頭に手を置いた。美世は清霞の優しい気遣いに次第と清霞の側にいたいと思い始める。
清霞は昔から贔屓にしている呉服店に美世を連れて行く。何か気に入ったものがあれば、遠慮なく言えと美世に言った。呉服店に来た目的は、美世が古い着物を自分で直していたとゆり江から聞いたからであった。美世が普段着ている着物はつぎはぎだらけの使い古したもの。清霞はそんな姿をみて心が痛み、美世に新しい着物を買ってあげようと思ったのだ。清霞は桜色の反物に目が留まる。淡い色だが、美世にきっと似合うだろうと清霞は桜色の着物を着た美世の姿を想像した。なぜ自分がそんな想像をしたのか自分らしくないと思いつつ、桜色の反物と他数点を呉服屋の女主人に仕立ててもらうよう頼んだ。そして女主人は、清霞に以前頼まれていたものを渡し、清霞に美世を絶対に手放してはいけないと言い出した。買い物が終わると、美世は先ほど清霞が目を留めた桜色の反物を眺めていた。美世は、母の形見に似た反物で懐かしい気持ちになっただけだと清霞に言った。
呉服店を後にした清霞と美世は、甘味処に立ち寄った。清霞は美世の笑っている姿が見てみたいと照れながら言うと、美世は清霞に変わり者だと思ったことを口にした。美世はその言葉がすぐに失言だったと気づき、清霞に謝罪する。清霞は、いずれ結婚をする仲なのだから思ったことを素直に言ってくれた方が嬉しいと美世に言う。美世は清霞と1日でも長く、幸せな時間が続けばいいのにと願った。

帰宅後、清霞は美世の部屋に呉服店で受け取った箱を置いた。箱の中には、櫛が入っている。男性が女性に櫛を送ることは求婚を意味する。箱を見つけた美世は、一目散に清霞のもとに訪れる。清霞は「大人しくもらっておけ」とだけ言い、お茶をすする。美世は「こんな高価なもの受け取れない」と最初は遠慮していたが、清霞に気にすることはないと言われると嬉しそうに受け取り笑ったのだ。美世の笑った姿をみた清霞は、美世に対して愛しさを感じたのだった。

美世のいた斎森家の実情は、清霞の想像よりかなり酷いものだった。美世は異能がない故に義母や異母妹から下僕のように扱われ、父親や使用人は美世ことを見て見ぬふりをしていた。美世のやせ細った身体あかぎれだらけの手先だったのは、食事が満足に与えられず炊事洗濯掃除を毎日していたからであろう。悪くないのにすぐ謝罪をし、思ったことも言えず笑わなかったことも含め、全て斎森家に原因があったのだ。
美世は異能がないことを理由に結婚が破談になることを思っており、今まで遠慮していたのではないかと清霞は悟る。
清霞は、以前から女性に対して苦手意識を持っている。美男子が故に数多の女性が自分に言い寄られることが多く、辟易としていた。しかし美世は、今まで清霞が出会ってきた女性達とは違う。最近の清霞は、美世と一緒に夕食がとれるように帰ってくる。自分の変化に清霞は戸惑いを覚える。

旦那様への贈り物

異能を継ぐ家は、普通の人には見えない異形を倒すため、国の平穏を保つために古くから帝の臣下として仕えてきた。
その中でも薄刃家の異能は、他の家と比べ物にならないくらい強力で危険とされている。何故なら薄刃家の異能は「人の心に干渉する」ものだからだ。人の心や記憶に潜り込み、操作、錯乱させることができる能力は、時に人の自我を崩壊させる危険性がある。
その為、薄刃家の人間は表舞台に立つことはなくひっそりと暮らしていた。
清霞が美世について調べていくと、彼女の母である薄刃澄美(うすばすみ)は薄刃家の人間であることが判明した。

その頃美世は、清霞に何か贈り物がしたいと考えゆり江に相談した。ゆり江は、普段使いできて手作りのものがよいのではないかとアドバイスをする。美世は、普段良いものを使っている清霞が自分の手作りの品で喜んでくれるのか不安であったが、ゆり江の後押しで作る事を決めた。幼い頃から清霞に仕えてきたゆり江が言う事であれば間違いないと、美世はゆり江から渡された雑誌から自分に作れそうな物を探し始めた。その中で、美世は髪留めとして使うことのできる組紐を選んだ。
その夜、美世は清霞に欲しいものがあるからゆり江と一緒に外出したいと言った。清霞は心配であったが、ゆり江と一緒ならと許可をした。
買い物に出る朝、清霞は美世にお守りを渡す。美世は清霞が自分の身を案じてくれているのだと嬉しくなる。
美世は、ゆり江と一緒に町の雑貨屋さんへ出かける。清霞の事を考えながら組紐の材料を選ぶことに密かに幸せを感じていた。斎森家では、命じられた事を淡々とこなし理不尽な事に耐えるだけの日々だった自分が誰かの為に何かをすることができるなんて、美世にとっては夢のようだった。美世はこの幸せが長く続かなくても、今の幸せな時間を与えてくれた清霞に感謝の念を抱いていた。
買い物の後、ゆり江が塩を買いに行ってしまった。待っている間、美世は妹の香耶とばったり出会う。香耶は、美世がとっくに久常家から追い出されてしまったのだと蔑む。香耶に何か言い返したいと思う美世だったが、今までの恐怖から言い返すことができなかった。
清霞やゆり江の優しさに触れ、自分自身少し変わったと思っていた美世は、酷く落ち込んだ。そんな中、ゆり江が買い物から帰ってきた。香耶はゆり江を新しい職場の同僚と勘違いしたが、ゆり江は美世の事を久常家の未来の奥方だと紹介した。とうに久常家から追い出されていると思っていた香耶は、驚きが隠せなかった。
その頃清霞は、美世の実家である斎森家を訪れていた。清霞は、ゆくゆくは美世と婚約・結婚するために両家の関係をハッキリさせる必要があると美世の父・真一に言った。そしてこれまで美世を虐げていたことに対して謝罪をするのであれば、結納金を多く支払うと提案したのだ。真一や香乃子はその提案を受け入れがたいと思ったが、今の家の実情を考えれば受け入れるしかないと思っていた。真一は、少し考えさせて欲しいと清霞に言った。
買い物から帰っていた香耶は、出先での幸次の煮え切らない態度に怒りを覚えていた。怒りながら屋敷に入っていくと、清霞とすれ違った。清霞の整った美貌に香耶は、目を奪われた。

本当の気持ち

斎森家から帰宅した清霞は、玄関で出迎えた美世の様子がおかしいと感じた。ゆり江に聞いてみると、買い物から帰宅してから自室に籠っていたらしい。清霞は、どうにか美世を励ましてあげたいと思うが言葉が見つからない。美世は、長年斎森家での虐待のせいで自尊心を失っており、どうすれば自信を取り戻してくれるのか清霞は考えていた。その様子をみたゆり江は「女は愛されて自信を付ける」とアドバイスをする。
清霞は、美世の自室に行ったが美世は暫く一人にしてほしいと言った。清霞は、扉越しの美世に今美世が抱えているものは次第に良くなる、だから深刻に考えるなとだけ言った。
しかしその後1週間、状況は変わらなかった。悩んでいる清霞の姿を見た部下は、清霞が女性のことで悩むとは珍しいと面白がっていた。
その頃美世は、自室に籠って組紐を編んでいた。清霞に渡す組紐は既に出来上がっているが、先日自分の事もあり出てこれなかった。本当の自分の事を知れば、清霞はきっと愛想を尽かしてしまうに違いないと美世は思い込んでいた。
そんな美世にお客様が来ているとゆり江が言った。もしかして先日会った香耶ではないかと美世は恐れおののいた。しかし、扉越しの声を聞いて美世はハッとした。
なんと、美世が子どもの頃唯一味方をしてくれた花がいたのだ。美世は、斎森家をクビになった後の花の動向がずっと気になっていた。花は、結婚をし子どもたちと幸せに暮らしていると言い、美世は安心した。花は、美世が一番辛い時期に一緒に居られなかった事を詫び、幸せになった美世の姿が見たいと言った。美世は、今の状況は幸せだが、異能を持っていない自分を知られると今の幸せはなくなってしまうと泣き出す。そんな美世を花はそっと抱きしめ、自分を呼び寄せたのは清霞であると言った。清霞は美世の事を大切に思っている素敵な人で、もっと自信を持っても良いのだと優しく言った。美世は、清霞が自分が異能持ちではないことを既に知っていると初めて知った。そして知った上で、自分の事を心配してくれているのだと。花は、清霞は全て受け止めてくれるはずだから、勇気を出して欲しいと美世に言った。美世は全てを打ち明けようと決心した。
その夜、美世は清霞に自分は異能持ちではないただの女である、そして斎森家でも使用人同然の扱いを受けていたせいで、学も教養もないと打ち明けた。そして清霞のために編んだ組紐を渡した。清霞は土下座をし続けている美世をそっと引き寄せ、抱きしめた。そして出ていかれては困る、もう少しで正式に婚約するつもりであると言った。美世は嬉しくて顔を赤らめた。そして今までの苦労が報われたと感じ、幸せな気持ちになった。

美世を狙う者と貫いた思い

その頃、辰石家の当主である辰石実(たついしみのる)は、異能を使い清霞の周辺を探っていた。密かに美世に薄刃家の血が流れている事を知っていた実は、美世が久堂家を追い出された瞬間に彼女を保護し、辰石家の嫁として迎えようと画策していた。
そして美世の妹である香耶をそそのかし異能を使わせた。香耶が見た美世は、美しく幸せそうな顔をしていた。昔から美世よりも上で居なければいけないと教育を受けてきた香耶は、父である真一に自分と美世の婚約者を入れ替えるよう提案する。しかし香耶の提案は受け入れられず、美世の事は忘れろと言われた。幸次にも姉の美世と結婚したくないかとそそのかしたが、家の決まりだと言って取り合ってもらえなかった。
諦められなかった香耶は、実に協力を仰いだ。
その頃美世は、泊まり込みの清霞のために差し入れを仕事場へ持っていった。清霞は恥ずかしそうに受け取り、お守りを持っているかと美世に聞いてそのまま自分の仕事場へ戻った。美世はお守りを持っていると思っていたが、実は家に忘れてきてしまったことに気付く。すぐに帰ろうとゆり江と話し合ったその時、美世は見知らぬ男たちに誘拐されてしまった。美世がさらわれたとゆり江から聞いた清霞は、犯人は式を常日頃使う辰石実の仕業だろうと断定した。そして清霞のもとに幸次が訪れた。自分の婚約者である香耶と自分の父親が共謀して美世をさらったという。自分だけでは止められず清霞に助けを求めてきた。斎森家に向かう道中、清霞が妙に落ち着いていることに幸次は不信感を覚える。もし清霞が美世を見捨てることがあれば、美世と心中しようと決心していた。
しかし、齊森家に着いた清霞は異能の力を使い門を吹き飛ばした。その様子を見た幸次は清霞は怒っていると思った。
その頃、美世は斎森家の蔵の中で目を覚ました。そこで妹の香耶と継母である香乃子から暴行を受け、清霞との婚約を破棄するよう何度も迫っていた。自分が婚約破棄すれば、全てが収まると思った美世だが、脳裏に浮かんだのは久常家での幸せな日々だった。美世は自分が清霞の婚約者だと断言した。
一方、清霞は幸次とともに真一と実のもとに向かい、美世の居場所と父親としての情があるのかを尋ねた。父としての情がないと確信した清霞は、真一と実の攻撃をかわし美世のもとへ向かう。そして蔵で香乃子から暴行を受けている美世を見つけ助け出す。美世は、一番来てほしかった清霞が助けに来てくれたことで嬉しさが溢れ、気を失ってしまう。
久堂家に戻ってきた美世は、すぐに手当を受け数日後に目を覚ましたのだった。

『わたしの幸せな結婚』の登場人物・キャラクター

主要人物

斎森美世(さいもり みよ)

CV:上田麗奈
演:今田美桜

斎森家の長女。「異能」を持つ両親の間に生まれたにも関わらず、異能の力を受け継がなかった。
幼い頃に実母を病で亡くし、父親が再婚した義母と異母妹の香耶から使用人同然の扱いを受けていた。
義母と香耶から嫌がらせを受けている時には口答えすることは許されず、いつしか「申し訳ございません」と謝ることが口ぐせに。
父親から久堂家当主、久堂清霞の所へ嫁ぐよう言われ久常家に行くことになる。

久堂清霞(くどう きよか)

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