明日、私は誰かのカノジョ(漫画・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ
『明日、私は誰かのカノジョ』とは、Webコミック配信サイト「サイコミ」より2019年5月から連載を開始した漫画、およびこれを原作としたドラマ作品。レンタル彼女、パパ活、整形など、女性が抱えやすい問題や悩みなどに焦点を当てたビター・ラブストーリーとなっている。章ごとに主人公が変わるオムニバス形式で描かれ、様々な視点や環境から問題を捉えている。登場キャラクターの内面を繊細に描き出しており、多くの女性読者から共感を得ている。2022年4月より放映されたドラマも多くの支持を受けている。
『明日、私は誰かのカノジョ』の概要
『明日、私は誰かのカノジョ』とは、2019年5月からwebコミック配信サイト「サイコミ」にて連載を開始した漫画、およびドラマである。原作者は、をのひなお。略称は「明日カノ」。単行本は小学館の裏少年サンデーコミックスより発売されている。単行本の累計発行部数はドラマが放映された2022年4月時点で300万部越えを達成している。章ごとに主人公が変わる、いわゆるオムニバス形式の演出がなされ、1章はレンタル彼女で生計を立てる雪、2章はその大学の友人でパパ活をしているリナ、3章は雪と同じレンタル彼女事務所で働く彩、と、各ストーリー上で関わった脇役が次の物語の主人公となっていく。ゆえにストーリーとして一貫性を保持しつつも連続した物語として楽しめる。
ドラマは毎日放送のドラマイムズ枠より、監督は酒井麻衣が担当している。主演は吉川愛、横田真悠、齋藤なぎさ、箭内夢菜、宇垣美里など、オムニバス形式らしく多くの女優を起用している。主にSNSを中心として普及していたが、長濱ねる、佐藤ノア、森川ジョージなど多数の著名人からも紹介され、爆発的な人気に至った。
『明日、私は誰かのカノジョ』のあらすじ・ストーリー
週に1回誰かのカノジョになる白井雪
レンタル彼女を派遣する事務所に所属する大学生、白井雪(しらいゆき)。顔に大きな火傷の痕があり、隠すためのメイクをして仕事場に立つ。鏡に映る傷が隠された自分のことを、雪は「私じゃないカノジョ」と呼んでいる。レンタル彼女として働くのは週に1回のみであり、「一週間に一度、私は誰かのカノジョになる」と独白するところがタイトルのオマージュとなっている。ある仕事で雪はダブルデートの依頼を受ける。依頼主の辻壮太(つじそうた)は、周囲に彼女ができたと嘯いたところから引っ込みがつかなくなり、友人とダブルデートをする約束をしてしまいレンタル彼女を利用したとのことだった。申し訳ないと謝罪する壮太に、気にしないで、と言う雪の心は反面、お金をもらっているもの、と割り切っていた。デート中、相手の彼女の嫉妬を買って嫌味を言われたり、壮太が語る映画の感想に不快感を抱えつつも笑顔でいなす雪。しかし、デートの終わりに「一回も素で話してないよね?」と内心を見抜かれ動揺する。その後予約していたCDを取りに行ったショップで偶然出会い、顔に醜く広がる大きな火傷の痕を見られてしまう。憐みの視線に「私はあなたの知ってる子じゃない」と拒絶するも、態度の変わらない壮太に心が揺れ動く。一方、壮太も雪に恋をした。レンタル彼女を辞めて欲しいと頼むが、虐待によって親元から離れ自活を営む雪には到底受け入れられない要求だった。後日、2人は事務所を通さずに1泊2日の群馬旅行に出かける。雪は複雑な心境を抱きながらも旅行を楽しみ、その夜は壮太と幸せな家庭を築く夢を見る。帰り際、壮太は雪に2日分のレンタル料と帰りのチケットを渡して、1時間席を外すから気持ちを受け入れてくれるなら一緒に帰ろう、と部屋を出ていく。雪は淡々とした態度で先に帰宅し、事務所に壮太をNGリストに入れるよう頼んだ。
恋愛依存体質のリナ
雪と同じ大学に通い親友であるリナ。彼女の物語は「Episode,1」の中で失恋を雪に相談する場面から始まる。リナはマッチングアプリで出会った男と付き合っていたものの、既婚者である事を隠されていた挙句に先日振られたという。本気で恋だったのに、とカフェの一席で失意にむせび泣くリナ。そこに声をかけてきた2人組の男たちにリナは自暴自棄の風体でついて行き、そのうちのひとり、雄大(ゆうだい)と友人以上恋人未満の関係になる。一方でパパ活も続けていて、ある日リナは雪を「パパ」との食事に誘う。雪はリナの恋愛依存体質を心配していて、「パパ」とはどういう人物なのか一目見ておこうと食事に参加する。そこで「パパ」こと飯田に「リナの誕生日プレゼントを一緒に選んで欲しい」と言われ個人的なやりとりをするようになった。そうとは知らないリナは雄大との関係を深めていくも、ある時自分がパパ活をやっていることを雄大に告白してしまう。軽蔑されると覚悟していたものの、雄大の変わらない態度にリナは安堵する。後日、飯田から贈られた誕生日プレゼントは奇しくも雪がリナに似合うと言ってくれた柄物の時計だった。飯田と雪が内緒で会っていることを知ったリナは飯田に詰め寄るが、飯田からパパ活の断交を宣言されてしまう。同時にサークル仲間の飲み会で雪がデリヘルをしているという噂が立つ。疑惑が深まり疎遠になっていくリナと雪だったが、雄大のアドバイスによって関係を修復する。飯田と切れたリナは躊躇いながらもパパ活を卒業して普通の大学生活を送るようになる。
美容整形に依存する中谷彩
中谷彩(なかたにあや)は、雪と同じ事務所でレンタル彼女に就く女性。35歳でありながら歳らしからぬ美貌をもつが、それを保つために美容整形に依存している。レンタル彼女としての働きぶりはあまり良いとは言えず、不誠実な態度がクレームとなり事務所から厳重注意を受ける。恋人の光晴(こうせい)とは結婚を考えているものの、現在の仕事をコールセンターの仕事と偽っていたり、正しい年齢を伝えていなかったりと、彩自身に隠し事が多すぎて結婚に踏み切れていない。しかし「仕事も整形も辞めて、年齢の事も打ち明けて、この人と結婚したらあたし幸せになれるのかな……」と強く悩んでもいた彩は、光晴にカミングアウトするタイミングを計っている。そんな中、彩は化粧がしてみたいという小森翼(こもりつばさ)という青年にレンタルされる。彩の指導によって化粧の仕方を学んだ翼が美しくなった自分を純粋に喜ぶ姿を見て、彩は整形に依存する前はただ純粋にきれいになったことが嬉しかった自分を思い出す。しかし、彩には恋人と偽り個人的な金銭の貸借を繰り返すリピート客が複数人いた。騙されている事に気がつき始めたリピート客たちは次第に彩に執着し始め、事務所に通告。これにより彩は解雇宣言を受けてしまう。光晴にも客とのやりとりをしていたスマホを見られてしまい、話し合いの場で嘘偽りなくすべてをさらけ出すことになった。年齢、仕事、そして容姿の件を光晴に話すと「整形は努力じゃないだろ」と彩の半生を否定され、彩は怒りのままに別れを告げる。仕事、恋人、何もかも失った彩に傘を傾けたのは雪だった。彼女を誘い、美容のためにと控えていた酒を飲み、タバコを吸い、海を眺める彩は、「今さら生き方変えられないよね」と呟く。1か月後、美容クリニックに通う費用を稼ぐために新たな仕事を探す彩の姿があった。その表情は、自分の人生に納得した面持ちであった。
真矢萌とホストクラブ
雪、リナと同じ大学に通う真矢萌(まやもえ)。萌は女性らしい格好をせず、媚びを売らないことをモットーにしている、いわゆる「自分を持っている女性」。同級生の男性と関係を持つ萌だったが、相手の本命はリナであることを知っていて、その関係を割り切っている。そんな時、萌は自身が行きつけのミックスバーで働いている小森翼が連れてきた優愛(ゆあ)と出会う。優愛に半ば無理やり誘われる形でホストクラブに足を踏み入れる萌。しかし、どうしても馴染めず辟易としていたところで、ホストの楓(かえで)の接客を受ける。汚い手書きの名刺に垢抜けない態度とホストらしからぬ接客に、萌は初めて肩の力を抜いて会話を楽しんだ。ある時、ミックスバーにリナがやって来る。萌は女性らしさという劣等感を刺激するリナが苦手だった。「リナには何人も彼氏がいるもんね」と、リナに対する妬みがそのまま口から洩れたような言葉を吐いてしまい、その時初めて萌は自分が女性らしく扱われたかったのだと自覚する。そんな自分に絶望して泣きながら楓に連絡すると、楓は萌のために汗だくになって駆けつけてくれた。そして、そのままもう一度ホストクラブに行くことにする。可愛くない自分を女性として可愛がってくれる楓に没入していく萌。しかし、ホストの世界では、より高いシャンパンを入れた客の席につくのが常識。萌も次第に高いシャンパンを頼むようになり、ついに金銭面で首が回らなくなってしまう。雪のいるレンタル彼女の事務所に面接を予約し、リナに謝罪し手伝ってもらって女性らしく変身した萌だったが、面接で仕事を始めるのは早くても1カ月先だと聞かされて断念。ついに即金でもらえる風俗の世界へ足を踏み入れる。大学を辞め、慣れない男性相手の仕事を続けるも、いくら努力をしても楓は手に入らない。身心をすり減らしながら楓のバースデーイベントのために300万を貯めた萌だったが、両親のいたわりと心配のメッセージ、そして久しぶりに来たミックスバー店主の悪ふざけのラインに泣きながら笑い、ホストから足を洗うことを決意する。実家に帰った萌は再び美容師になる夢を抱いて都会へ戻ってくる。NO1ホストとして楓の写真が載る宣伝トラックに背を向けて、萌は自分の道を歩き出したのだった。
優愛の都会生活
東京で身体を売りながら売れっ子ホストであるハルヒに貢いでいた優愛。彼女の生まれ故郷はいわゆる典型的な田舎で、よく言えば誰とでも顔見知りでフレンドリー、悪く言えば近所の悪口や陰口が平気で横行する旧態依然の環境だった。それらに嫌気がさしていた優愛は、中学時代の同級生と時折、東京へと遊びに出ていた。2人は将来、必ず都会へ出ていくことを約束する。同級生は東京でナンパしてきた男と未だに連絡を取り合っている優愛を心配していたが、認知症を発症しかけている祖母のサポート、帰ってこない無理解な父親という家庭環境で疲弊していた優愛は、東京への名残惜しさから男と縁を切れないでいた。そんなある日、祖母が倒れそのまま死去してしまう。慕っていた祖母を失い失意にくれる優愛。その心情に気がつかない父親は遺産の話ばかり。優愛は父親を怒鳴りつけ、故郷の何もかもを捨ててひとり東京へと出向く。当面の宿のアテとしてナンパ男と連絡を取るが、数回やりとりすると音信不通になってしまう。途方に暮れた優愛に待っていたのは、風俗の勧誘だった。それが、優愛の都会生活の始まりとなった。
『明日、私は誰かのカノジョ』の登場人物・キャラクター
白井雪(しらいゆき/演:吉川愛)
週に1回、レンタル彼女として働いている大学生。過去に親から虐待を受けており、将来の自立に向けて奨学金を受け取りながら大学に通っている。勤務態度は勤勉で誠実。メールで確認した顧客の好みを、できうる限り忠実に再現して接客に臨む。SNSは掲載していないが、一度会った顧客の情報は事細かにノートに書き留めておくことで高いリピート率に繋げている。しかし一方で、レンタル彼女と言う仕事を仕事として割り切っており個人的なやりとりには一切応じない。「幸福は麻薬と同じ、おなじものじゃ満足できなくなる」と、客の要求に対して独白するシーンもある。現在でも母親に対して恐怖を抱いており、親からの電話番号でスマホが鳴ると身を固くする。顔の傷は小学生に頃に受けたもの。治療のために美容クリニックを巡っていると彩と鉢合わせしてアドバイスを受けたりもした。友人と呼べる人は少なく、唯一腹を割って話せるのは親友のリナのみ。そのリナにも顔の傷を同情されて一時期疎遠になるも、よりを戻す。他に萌、留奈が同じ大学に通っている。
リナ(演:横田真悠)
パパ活をしている雪の同級生。社交的で明るく、美人で素直。同時に愛に飢えており、恋愛に依存気味。パパ活や出会い系サイトで知り合った男性をすぐに好きになってしまうことも多く、騙されて捨てられることも多い。雪の事を「私とは違う」と感じていて、雪の直向きさや堅実さを心から慕っている。お互い親友という認識はあったが、顔の傷や家庭事情についてはカミングアウトを受けていなかった。飯田と個人的なやりとりがあると知れて拗れた際に、顔の傷について告白されるが、雪がもっとも厭う対応をしてしまい一時期疎遠になる。雄大とはその後別れて、再びパパ活を始めている。萌、留奈とはサークルの飲み会で会う程度の距離感で、留奈についてはたまに一緒に飲む仲。
中谷彩(なかたにあや/演:宇垣美里)
雪と同じレンタル彼女の事務所に所属する女性。整形に依存しており、他人を美醜で判断する傾向がある。整形前の顔はお世辞にすら良いとは言えず、公然とブス、などといった暴言を投げかけられた事もある。いくら化粧をしても美しくなったと実感できずに美容整形に嵌る。ブス、不細工といった類の言葉を極端に嫌う。その半面、美容に関して高い知識を持ち、的確なアドバイスができる。後に小森翼のメイクをアドバイスして感謝されたり、火傷の痕を治すための整形外科を探している雪にアドバイスをする。光晴とはナンパで知り合った。整形代を捻出するために常に金欠だが、作中で無職になる。
タグ - Tags
目次 - Contents
- 『明日、私は誰かのカノジョ』の概要
- 『明日、私は誰かのカノジョ』のあらすじ・ストーリー
- 週に1回誰かのカノジョになる白井雪
- 恋愛依存体質のリナ
- 美容整形に依存する中谷彩
- 真矢萌とホストクラブ
- 優愛の都会生活
- 『明日、私は誰かのカノジョ』の登場人物・キャラクター
- 白井雪(しらいゆき/演:吉川愛)
- リナ(演:横田真悠)
- 中谷彩(なかたにあや/演:宇垣美里)
- 高橋優愛(たかはしゆあ/演:齊藤なぎさ)
- 真矢萌(まやもえ/演:箭内夢菜)
- 伊織(いおり)/相馬留奈(そうまるな)
- 辻壮太(つじそうた/演:楽駆)
- 小森翼(こもりつばさ/演:ゆうたろう)
- 楓(かえで/演:高野洸)
- 真鍋隼人(まなべはやと)
- 『明日、私は誰かのカノジョ』の用語
- レンタル彼女
- ダブルデート
- パパ活
- 美容整形
- リピート客/リピ
- ミックスバー
- 『明日、私は誰かのカノジョ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 優愛 「被りは伝票で殺すんだよ♡」
- 彩 「猫に小判、馬の耳に念仏、豚にデパコスなんだよ」
- 留奈「信じられるのは自分だけ!」
- 『明日、私は誰かのカノジョ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 明日カノが出版に至ったのは「人違い」がきっかけ
- 「やさしく歌って」との訳がある「killing me softly」
- 「こういう事をされたらホストにハマるだろうな」という想像で生み出された楓
- コロナ禍に影響を受けたキャラクター達のマスク
- 『明日、私は誰かのカノジョ』の主題歌・挿入歌
- OP(オープニング):Amber's「Desire -欲情本能-」
- ED(エンディング):DUSTCELL「足りない」