舟を編む(小説・映画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ
『舟を編む』は三浦しをんによる出版社の辞書編集部を舞台にしたヒューマン小説。女性ファッション雑誌『CLASSY.』に連載され、2011年に光文社から単行本が発行された。2012年には本屋大賞を受賞している。2013年には松田龍平主演で映画化、2016年にテレビアニメ化された。「玄武書房」に勤める馬締光也は、新しく刊行される辞書『大渡海』の編集メンバーとして辞書編集部に異動となる。辞書制作のために集まった個性の強い編纂者たちが奥深い辞書の世界にのめり込み、言葉に向き合う物語。
松本先生「辞書は言葉の海を渡る舟です」
馬締の歓迎会の際に、「辞書とは何か」を松本先生は馬締に「辞書は言葉の海を渡る舟です」と伝えた。この「言葉の海を渡る舟」という辞書の在り方から、言葉の大海原を渡る一艘の舟として『大渡海』の名前は生み出されている。アニメでは辞書編纂で壁にぶつかる度に、馬締が見る夢や演出の一つとして波や海の情景が多く登場する。
香具矢「作りたい。作り続けたい」
馬締が辞書編纂の途中に得た束の間の休みに、香具矢と遊園地で観覧車に乗った際香具矢が馬締に言った言葉。観覧車が料理と似ていると話す香具矢は、完成や終わりのない料理でも「作りたい。作り続けたい」と景色を見ながらゆっくりと語った。辞書編纂にも通じるその言葉に馬締は感動し、共感した。
西岡「人ってのは支え合ったり、補い合ったりしないと海を渡れない。そして、その一助となるべく『大渡海』はある」
『大渡海』完成の夜、退社後に辞書編集部は飲みに出かけることになり、馬締と西岡だけが最後まで部署にいた。松本先生のいたデスクや部署を眺めて思い出に浸る中、西岡は「人ってのは支え合ったり、補い合ったりしないと海を渡れない。そして、その一助となるべく『大渡海』はある」と言った。まだ西岡が辞書編集部にいた頃、松本先生に言われた「君たちは互いに支え合い、補うものどうし」という言葉が今になってわかると2人は語る。一つの仕事や言葉にのめり込み、深くまで考え整えることに長けた馬締と社交的で口が上手く、人と人との潤滑剤としての気配りに秀でた西岡は正反対で最高のコンビだった。その2人の真ん中にあった『大渡海』はより多くの人と人とが支え合い、補い合うための一助として存在するのだと晴れやかな顔で西岡は馬締の肩を叩いた。
松本先生「皆さんの、『大渡海』の末長く幸せな航海を祈ります」
『大渡海』完成の玄武書房主催の祝賀会で、馬締は荒木から「辞書編集部の皆様へ」と書かれた松本先生からの手紙を受け取る。中には、辞書編集部に出会えたこと、辞書作りに携わってこれたことへの感謝が松本先生の言葉で綴られており、結びの言葉として「『大渡海』の末長く、幸せな航海を祈ります」と書かれていた。それを読んだ馬締は、自分たちは旅人であり辞書は旅人の行く末を照らす灯火であると考える。旅人の旅が終わらない限り、辞書は繰り返し書き換えられて旅人の道を照らす。そのために舟を編むのだと微笑んだ。
『舟を編む』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
メディアごとに違う馬締の性格
『舟を編む』に登場する主人公の馬締は、名前の通りの真面目で冗談の通じない不器用な性格。連載時に挿絵を描き、アニメ化ではキャラクターデザインも担当した雲田はるこは作者の三浦しをんにコミカライズ化した際に「雲田さんの馬締くんは変人度が強いよね」と言われている。雲田自身は、アニメの優しく不器用な馬締とも実写映画の淡白に挙動不審な馬締とも異なる馬締になったと語っており、「自分の世界を強くもっている」ところを強調させたかったとも言っている。
アニメ版では”男の友情”を重視
アニメ制作を引き受けたノイタミナは、『はちみつとクローバー』や『Paradise Kiss』といった原作のあるアニメも多数手掛けている。『舟を編む』も大まかな話は原作に忠実に沿った流れで構成されているが、告知PVで「これは、辞書づくりに魅せられた一人の男と、その熱意に魅せられたもう一人の男の物語」としているように馬締と西岡の2人が特に物語のキーパーソンである。実写映画や原作ではヒロインの香具矢と馬締の関係性が強調して描かれるが、アニメでは深夜アニメの視聴過半数を占める女性視聴者をターゲットにBL要素を匂わせている。これは、女性視聴者に人気が高いスポーツ漫画のアニメ化やBLの需要を鑑みてのことである。
三浦しをんにとっては初のアニメ化
三浦しをんにとっては初めてのアニメ化作品となったが、原作に極度に拘ることはなく、映像監督や脚本を担当した三宅隆太に「シナリオを拝読するときに気にするポイントは、『ストーリー展開や描写が原作に忠実か』ってところではまったくないんですよね」と話している。何よりも三浦が気にしたのは、原作を書く際の軸でもあった辞書を作る人たちへのリスペクトが表現されているかという点だった。また、小説の言葉遣いが視聴者にきちんと伝わるのかも注視していたようで、黒柳トシヒサ監督ら制作陣にアドバイスをすることもあったという。
『舟を編む』の主題歌・挿入歌
OP(オープニング):岡崎体育『潮風』
ED(エンディング):Leola『I&I』
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目次 - Contents
- 『舟を編む』の概要
- 『舟を編む』のあらすじ・ストーリー
- 馬締、辞書編集部に異動
- 『大渡海』編纂、本格始動
- 下宿先での一目惚れ
- 『大渡海』制作中止の危機
- 西岡の脱退
- 西岡の手腕
- 香具矢への告白
- 8年後に新メンバー加わる
- 高まる辞書への情熱
- 『大渡海』の紙を決める
- 完成間近に見つかった脱字
- 『大渡海』発売目前
- 『舟を編む』の登場人物・キャラクター
- 辞書編集部
- 馬締光也(まじめ みつや)
- 西岡正志(にしおか まさし)
- 荒木公平(あらき こうへい)
- 佐々木薫(ささき かおる)
- 岸辺みどり(きしべ みどり)
- 松本朋佑(まつもと ともすけ)
- その他の登場人物
- 林香具矢(はやし かぐや)
- 大家さん(タケさん)
- 宮本慎一郎(みやもと しんいちろう)
- 三好麗美(みよし れみ)
- 『舟を編む』の用語
- 『大渡海』
- 用例採集カード
- 『言海』
- 『舟を編む』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 馬締「体を北へ向けた時、東へ当たる方角」
- 松本先生「辞書は言葉の海を渡る舟です」
- 香具矢「作りたい。作り続けたい」
- 西岡「人ってのは支え合ったり、補い合ったりしないと海を渡れない。そして、その一助となるべく『大渡海』はある」
- 松本先生「皆さんの、『大渡海』の末長く幸せな航海を祈ります」
- 『舟を編む』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- メディアごとに違う馬締の性格
- アニメ版では”男の友情”を重視
- 三浦しをんにとっては初のアニメ化
- 『舟を編む』の主題歌・挿入歌
- OP(オープニング):岡崎体育『潮風』
- ED(エンディング):Leola『I&I』