異世界おもてなしご飯(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『異世界おもてなしご飯』とは、原作忍丸、漫画目玉焼き、キャラクター原案ゆき哉によるグルメファンタジー漫画。主人公の小鳥遊茜は両親が死んだ後、祖父母の家で妹と愛犬と暮らしてたが、ある日突然、異世界へ家ごと召喚されてしまう。聖女として召喚された妹のひよりの巻き添えをくった茜は姉の料理大好きな妹の為、異世界で料理をすることになる。異世界召喚ものと料理のコラボレーションのほっこりほのぼのファンタジー。美味しい料理で交流を広める中で成長していく優しい気持ちになれる漫画である。

『異世界おもてなしご飯』の概要

『異世界おもてなしご飯』とは、原作忍丸、漫画目玉焼き、キャラクター原案ゆき哉によるグルメファンタジー漫画。『小説家になろう』サイトにより連載されていた小説のコミカライズである。『ヤングエースUP』にて連載されていた。異世界召喚ものと料理のコラボレーションのほっこりほのぼのファンタジーである。物語の主人公小鳥遊茜は妹ひよりの聖女召喚に巻き込まれて家ごと異世界に召喚されてしまう。ひよりとは違いやることもなく日々を過ごし、暇を持て余していた。つまらない日々を送っていた茜はひよりの「お姉ちゃんのご飯が食べたい」というわがままによってやりがいを見つけ異世界で料理を作ることになる。茜の下には、王子様から姫様、エルフに精霊などの異世界住人が次から次へと、トラブルを抱えてやってくる。美味しいごはんで周りをお腹一杯笑顔にしていく中で笑いながら成長していく物語である。

『異世界おもてなしご飯』のあらすじ・ストーリー

異世界召喚

今晩のご飯はオムライスとコーンスープ。

ある年のクリスマスイブの夜、24歳のOL小鳥遊茜(たかなしあかね)と高校生の妹ひより、そして愛犬のレオンは夕食を終えてくつろいでいたところ、突然家ごと異世界に召喚されてしまった。
家を取り囲む見知らぬ人々に連れられて王城にやって来た茜とひよりは、そこで衝撃の事実を告げられる。彼らは人類を滅ぼす程大量の邪気を封じる力を持つ「聖女」ひよりを召喚したが、何かの手違いで家ごと連れてこられてしまったのだった。
天真爛漫なひよりは「聖女」と呼ばれて舞い上がり、第二王子カインの手をとって家から飛び出していく。一方巻き込まれた茜はひよりが使命を果たせば元の世界に戻れると聞いてほっとするが、「客」として暇を持て余すこととなってしまった。

ひよりは聖女の訓練のため忙しく過ごしていたが、ひと月が経ったころ突然泣きながら部屋に飛び込んでくる。驚く茜が事情を聞くと、「大好きなお姉ちゃんのご飯が食べられなくて辛い」という事だった。茜はその理由に唖然としながらも、ひよりを励ますためにさっそく得意のプリンをつくる。茜は暇そうにしている護衛騎士のジェイドにも手伝ってもらうことにした。
茜のプリンを食べて元気を取り戻したひよりは「お姉ちゃんのご飯があれば頑張れる」と宣言し、茜もひよりを支える為に食事作りをすることを決意する。

夕食をつくるためさっそく市場にやって来た茜とジェイドは「鑑定魔法」を使って様々な食材を集めていった。「鑑定魔法」は異世界からやって来たものにしか使えない魔法だったが、魔力が少ない茜はジェイドと手を繋いで魔力を融通してもらわなければならず、その場面が幾度も繰り返されるため茜はジェイドを意識するようになってしまうのだった。

その日の訓練が終わって家に飛び込んできたひよりは、王子であるカインにも容赦なく食事作りを手伝わせていた。美味しそうにオムライスなどを食べているひよりを見て、茜とジェイドも嬉しく思う。カインも茜の料理が気に入ったようだった。
食後のお茶を飲んでいると、カインは「自分たちの都合で茜とひよりを巻き込み、申し訳ない」と真摯に謝罪する。両親や祖父母を亡くし、一人でひよりを護ってきた茜は「私が食事でひよりをサポートします。だからひよりの事を護ってあげてください」と強い瞳で訴えた。カインはお互いを想い合う姉妹の愛情を眩しく思いながら、ひよりを護ることを誓ったのだった。

薬草売りと梅仕事

ある日茜は大好きなお酒や食料の在庫チェックをしていた。ひょんなことから飲み友達になった騎士団長のダージルと、ダージルの幼馴染で国の宰相ルヴァンが大量に食料や酒を消費するため、在庫が不足していたのである。茜は毎年漬けていた梅酒と梅干しをつくろうと思ったが、市場では梅は見つからなかった。
買い出しの日、茜とジェイドが市場の奥の方まで足をのばしてみると、怪しげな露天で梅にそっくりな「チコの実」を見つける。生の実だと毒があるが燻製にして薬にするとさまざまな効果があるというものだった。
茜は出来上がった酒を味見させるという約束で、怪しげな露天商から大量のチコの実を手に入れる。ジェイドに手伝ってもらって梅酒と梅シロップを漬け込むと、茜はジェイドと共に十年物の梅酒を味わった。
後日小さめの瓶に漬けておいた完成前の梅酒を携えて、茜とジェイドは市場の薬草売りを訪ねる。嬉しそうにする薬草売りに茜はもう少しの間漬けておかないと飲めないことを伝えると、薬草売りは魔法をかけ、一瞬にして熟成した梅酒に仕上げていた。薬草売りはお礼として、チコの花模様を彫った杯を贈ったのだった。

秘密の晩酌相手

ある日久しぶりに部屋で一人の晩酌を楽しんでいた茜は、ふと誰かの視線を感じて振り返る。そこには神秘的な雰囲気を持つ美少女が座っており、自分にも梅酒を分けてほしいと言ってきた。
茜はその得体の知れない美少女が逆らってはいけないなにかだと本能的に悟り、薬草売りからもらったグラスに梅酒を注いで渡す。彼女は梅酒が気に入ったようで、茜にも飲むよう気さくに話しかけてきた。
茜が少女に素性を訪ねると、妖精女王だということがわかる。彼女は「名前は無いから好きに呼べ」と言ってきたので、茜は「ティターニア」と呼ぶことにした。
ティターニアは「酒の礼に一つ願いを叶えてやろう」と言うが、突然言われた茜には願い事など考えつかない。そして夜も更けてくると、ティターニアは茜に「願い事も決まらないようだしまた来た時に願いを聞く」と言い、「今度友達を連れてくるから、またおいしい酒とつまみを用意しておくように」と言葉を残して消え去った。

ふたご姫とのドーナツ作り

ある日、カインの妹で通称「ふたご姫」のセルフィとシルフィが茜の家を訪れる。彼女たちは明日行われる「フェルファイトスの生誕祭」で、特別な贈り物をカインに渡したいようだった。
茜の家には目ぼしい者が無かったが、茜は「異世界のお菓子なら十分特別な贈り物になる」として、ドーナツを作ることを提案する。

さっそくセルフィとシルフィにエプロンを付けて作業していると、茜はひよりの小さいころを思い出して懐かしそうにふたご姫を見守っていた。
出来上がったドーナツを試食していた時、茜は「なぜ大切な人に特別な贈り物をするのか」と聞いてみる。するとふたご姫の答えは「聖人のように旅の途中で死なないように特別な贈り物をする」というものだった。
彼女たちから「昔聖女と共に浄化の旅に出た聖人が、途中で亡くなった。だから聖女への贈り物は特別なものでなければいけない」と聞かされ、茜は途端に不安に陥る。
その夜ティターニアが茜の元を訪れ「願いは決まったか」と聞くので、茜は迷わず「ひよりを護って欲しい」と伝えた。ティターニアは「護るかどうかは茜のもてなし次第」と言い、茜は精一杯もてなしたのだった。
そしていよいよひよりが旅立ちの日を迎えた夜、茜は思わずジェイドに抱き着き涙を流す。ジェイドは内心どぎまぎしながらも優しく茜を抱きしめた。

それから少し経ったころ茜の家にふたご姫がお菓子をもってやって来る。彼女たちは茜に生誕祭の話をしてしまったことを悔やんでいたが、茜はそんな彼女たちの気遣いを嬉しく思う。そしてひよりが出発してから二週間後、ひよりは無事に旅から帰還した。

木の精霊との交流

そっぽを向いてしまったティターニアの手を取り、また来て欲しいと伝えた茜。

その晩ひよりが寝た後、茜はティターニアのおもてなしの準備をしながら市場に並び始めていた夏野菜に思いをはせていた。夏とビールといえば定番の枝豆が外せないと考える茜は市場で枝豆を探したが残念ながら見つけられなかった。茜は枝豆を諦め、他のつまみを作っていると何かの気配を感じた。ティターニアかと思い振り向くと、木でできた小柄な少女が立っていた。
突然のことに固まる茜をよそに、少女は茜に向かって「まめ!」と繰り返す。
茜はとりあえず枝豆の代わりに市場で見つけた大豆をさし出すと、少女は大豆の袋ごと大きく口を開けて飲み込んでしまった。やがて人外の少女は体を震わせ「まめ!」と叫ぶと一斉に体中に枝豆を実らせる。茜は恐怖を覚えながらも枝豆とビールの誘惑には勝てず、枝豆を収穫させてもらいさっそく塩ゆでにした。
茜は枝豆を少女に食べさせてみると少女の頭に花が咲き、上機嫌に体を揺らす。そのかわいらしさにすっかり緊張が解けた茜なのだった。

一通り準備した茜が休憩しようとすると、突然食器棚の扉が開き、中からシルクハットをかぶりお面をつけた男が現れ引きずり込まれてしまう。連れ去られた先の不思議な空間では、ティターニアがソファーで寛いで茜を待っていた。ティターニアは茜の腰にくっついて震えている少女を「ドライアドという木の精霊だ」と教える。シルクハットの男が茜の作ったつまみとお酒を運んできたので、ティターニアとシルクハットの男、ドライアドと茜はそれぞれ適当に座って晩酌をすることになったのだった。
シルクハットの男・テオは、思い出したように「茜の願いはかない、今日のおもてなしでお礼も終わりだ」と告げる。ティターニアは悲しそうに「人との交わりは願いが果たされたのでおしまいだ」と言ったのだった。
茜はティターニアにひよりを守ってくれたお礼を言うとティターニアは何かをこらえるように顔をしかめ、そっぽを向いてしまう。
そっぽを向いてしまったティターニアの手を取り、茜はまた来て欲しいと伝えた。
願いが叶えば交流が無くなることが悲しかったティターニアは嬉しそうな表情を見せ、「気まぐれにひよりを護ってやってもいい」という。こうしてティターニアとの交流は続けられることとなった。

巣立ちの淋しさと今後の不安

ひよりが命がけで浄化をしている中、茜は晩酌をするのをやめていた。自分だけがのんびり飲んだくれているわけにはいかないと思ったからだった。だが、茜は晩酌もせずにストレスが溜まっていたことでかえってひよりに心配をかけてしまっていた。ひよりはそんな茜に、いつも通りの茜がいる家に帰ってきたいと言って茜を気遣った。ひよりに心配をかけていると気づいた茜は、ひよりに心配をかけないようにするためにもいつも通りに日常を送ろうとするのであった。早速茜はダージルに声をかけ、晩酌をする。
ダージルは酒とつまみと共に、何と国王も連れてきていた。国王は豪快に酒を楽しむ茜を物珍しそうに眺める。
晩酌も終わり、国王は帰り際に茜の料理を褒め、浄化の旅が終わった後も元の世界に帰らずに残らないかと提案してきた。生活の保障もするので料理屋でもやってはどうかと誘う国王に茜は元の世界の手に入らない材料を理由にごまかそうとする。茜は「自分がひよりを護らなければ」と張りつめていたが、国王は「自分の幸せも考えてはどうか」と言い残して城へ帰っていった。
一人になった茜は国王の言葉を思い出し、ひよりが独り立ちした後何をしたらいいのか不安になる。今まで考えないようにしていた不安が茜を襲うのだった。

そんなある日、「タコ焼きが食べたい」と飛び込んできたひよりに対して、茜は準備を済ませるとひよりとジェイドに焼く作業を任せた。
タコ焼きを食べ終わり、茜は少し言いづらそうに「浄化の旅が終わった後どうするつもりか」と聞くと、ひよりは「元の世界に戻るのも異世界に残るのもまだ決めていなけど、せっかく異世界で出会った人との関係を簡単に捨てるのはもったいない気がする」と言って笑った。普通ではできない体験をしている自分たちには普通の人よりたくさんの選択肢があると言って茜を元気づける。そして「自分の事を気にせず好きなことをしてほしい」と続けた。茜はひよりの自立心に戸惑いつつも、「ありがとう」と伝えたのだった。

大地の精霊と茜の覚悟

ある日茜はジェイドとお昼のおやつの時間を過ごしていた。すると寝ていたはずのレオンは何かに気づいたように勢いよく庭に飛び出していき、ルヴァンを連れて帰ってくる。
ルヴァンは真剣そのもので、「茜に助けてもらいたいことがある」と言ってきた。
茜はルヴァンに連れてこられた城の大食堂で、ずんぐりとした体に髭を生やした男たちが昼間から浴びるように酒を飲んでいるのを目撃する。ルヴァンによると彼らは物造りに長けたドワーフという一族で、浄化の旅に欠かせないものを作ってもらうために城に招いたが、ドワーフ一族の長老ゴルディルが「美味い酒を振る舞われてからでないと仕事をしない」と言い張っているという事であった。
他のドワーフ達は酒を飲んで楽しんでいるようだったが、ゴルディルだけは気難しい顔をして酒を飲んでいなかった。長老に従うのが掟のドワーフ達はゴルディルが動かなければこのまま動くことはないらしい。ルヴァンはたくさんの酒とつまみを用意しもてなしたが10日経ってもゴルディルは動いていない。城の酒も尽きかけており、ルヴァンは藁にも縋る気持ちで異世界の酒とつまみなら長老も納得するかもしれないと茜の元へやってきたのだった。ルヴァンの苦虫を噛み潰したような顔を見た茜は、5日欲しいと言ってルヴァンの頼みを引き受けたのだった。

3日経ってもなかなか納得しないゴルディルに対して、茜が「今日こそ浄化の道具を作ってもらおう」と意気込んでいると、ゴルディルから「どうしてそんなに妹を死地に送りたいのか」と質問を投げかけられる。ゴルディルは浄化の最終地点である穢れの島に行くための氷上船を作るために城に呼ばれていた。その島はフェルファイトスが死んだ島であり、そんな危険なところへ異世界の住人の為に妹を送り出そうとする茜の気持ちを知りたいと思っていた。ゴルディルは自分たちの身勝手で異世界から召喚された聖女を死地に向かわせる船を作ることをずっと迷っていたのだ。
茜は「ひよりが危ない旅に出ていることは承知している。でもあの子自身で決めた事だから、私は応援したい」とまっすぐな目を向けると、ゴルディルも心を動かされる。しばらく考え込むと「5日目、最高においしい酒を用意すれば造る」と約束した。

翌日茜はゴルディルが好みそうなイカの塩辛を持って行くと、いつもとは違い飲んだくれるドワーフ達は鳴りを潜め、きちんと座って茜とゴルディルのやり取りを見ていた。ルヴァンや文官達も見守る中茜とゴルディルは乾杯した。飲み進めていき、ついにイカの塩辛に手を伸ばしたゴルディル。固唾をのんで見守る茜にゴルディフは大声で笑いだし美味いと言ったのだった。ゴルディフは周りのドワーフに声をかけ景気づけの飲み会を始める。
飲み会が終われば道具作りに入ってもらえることになりルヴァンや文官は準備をするため大急ぎで出ていった。
残されたゴルディルは茜に「ひどいことを言った」と謝罪する。ゴルディルは昔死地に向かわせた聖女と死んでしまったフェルファイトスの事をひよりとカインに重ねていた。ゴルディフは今回こそ王子も、聖女も笑って終われるように全てを掛けて、完璧な船を造る事を誓ったのだった。

精霊の恋とひよりの成長

ドワーフ達による氷上船の作成が始まり、ひよりは氷上船の完成に必要な魔石を精霊から授かるための儀式に参加していた。
儀式は水の精霊であるウンディーネに神官と歌唄い鳥が共に歌を捧げ、魔石を授けて貰いそれを聖女が受け取ると言うものだった。茜も儀式の内容を聞いて危険がなさそうなのでほっとして見ていたところ、1体の精霊が帰りたくないと叫び出す。思わず手を伸ばしたひよりを巻き込み、ウンディーネは周辺を凍らせ氷の檻に閉じこもってしまった。
神官のスヴェンは、ウンディーネの行動の理由はスヴェンの相棒の歌唄い鳥アンディーと恋に落ちたからだと話す。スヴェンは普通の精霊が人間の世界に留まれないとわかっていながら、愛し合う2人に何もできなかったことを悔やんでいた。そしてスヴェンはウンディーネが精霊界に返るために魔力を補充できる供物を作って欲しいと頼んだ。

茜はスヴェンから教えてもらった「精霊は甘い物好き」という情報からジェイドに手伝ってもらいお汁粉を作ることにした。
お汁粉が出来上がり、ひよりたちの元へ向かった茜とジェイド。ひよりはお汁粉を大喜びで食べ始める。だか、力を回復させてしまうお汁粉をウンディーネは食べようとしなかった。ひよりはかたくななウンディーネに「大切な人を悲しませるよりできることがある」と食べることを勧めた。ウンディーネは帰らなければいけないと頭ではわかっていたが、「好きな人と離れることが辛くて、会えなくなるくらいならこのまま消えてしまいたい」と思っていた。悲しそうに見つめるアンディとひよりの言葉に、ウンディーネはお汁粉を食べ始める。
ウンディーネは涙を流しながら、「あなたの歌を目印にまたこの世界にやってくるから唄って」とアンディに言った。アンディはウンディーネに愛の歌を捧げ、ウンディーネは「離れていても愛している」と言って精霊界へ帰って行った。ウンディーネの思いにジェイドへの恋心を重ねた茜はジェイドを見て胸が苦しくなったのだった。

茜とジェイドの恋の行方

わがままを言ったことがないジェイドはそのせいで茜を悲しませてしまうかもと迷っていたが、明るく笑って受け入れようとする茜にジェイドは初めてわがままを言ったのだった。

ある日の朝、茜とひよりは残り少なくなった日本の食材に端を発して喧嘩をしてしまった。ひよりが日本のご飯が食べたいと我儘を言うのはいつものことだったが、いつもはなだめるはずの茜も今回は異世界でのストレスが溜まっていたのか怒鳴ってしまったのだ。茜はひよりを支えてあげられる立派な姉じゃなく、妹にあたってしまうような情けない姉になってしまったことを後悔した。俯いていると茜はいつの間にかジェイドと共に精霊界に来てしまっていた。茜はスヴェンが言っていた精霊界から人間界に戻るときはどの時代に戻るかわからないという話を思い出し、ひよりにもう会えないかもしれないと思いぞっとした。
そこへ草をかき分けまめこがやってくる。大豆を上げると枝豆を出してくれるドライアドを茜はまめこと呼んで可愛がっていた。まめこの存在を知らされていなかったジェイドは人の常識が通じない人外との交流を護衛騎士である自分に秘密にしていたことを怒る。ジェイドはまめこが茜の知り合いなら精霊界に連れてきたのはまめこかもしれないとなぜ連れてきたのか質問するが、まだ幼いせいか言葉が通じなかった。すると突然豆子が猛烈な勢いで走り出す。まめこを追いかけた先にはどこまで伸びているかわからないほど大きな樹があった。まめこは根元まで行くと大樹の根に吸い込まれるように消えてしまった。根元まで近づこうとした茜とジェイドだったが、樹上から落ちてきた黒いジェル状のものに飲み込まれてしまう。
気が付くと茜は死んだはずの母親とキッチンに立っていた。死んだはずの父もいて今まで何をしていたか思い出せなかった。両親と囲む食卓はいつもと変わらず居心地がよくて懐かしく、茜はずっとここにいたいと思った。両親はジェイドが待っているから行くように茜の背中を押すが、茜はひよりが心配な気持ちもジェイドが好きな気持ちも出会った良い人たちのことも何も考えずにここにいたいと訴えた。父親は茜を抱きしめ今まで異世界で頑張ってきたことを褒め、母親は茜を思いやり、いつだって傍で見守っていると言った。茜はやるべきことをやるために、この優しい夢から覚めなければいけないと両親に別れを告げたのだった。

茜は大樹の洞の中で目を覚まし、傍にジェイドが倒れているのに気が付き慌てて駆け寄った。ジェイドは目を覚まし護衛騎士なのに守れなかったことを謝った。どこかに出口がないか探しているとうっすらと茜の家の台所が見えた。元の世界に戻るヒントになればと台所に足を踏み入れたが外の景色は見えず元の世界に戻れたわけではないようだった。とりあえず腹ごしらえをしようと料理をすることにした2人。茜は夢の中で両親と食べたとんかつを作ってジェイドと食べたのだった。食べ終わって茜が両親の思い出に浸っていると、まめこが現れて両親に会えたかと幼い口調で聞いてくる。この世界に連れてきて両親に会わせてくれたのはまめこだったのだ。茜は両親と会えたことをまめこに感謝した。
まめこは茜とジェイドの腕をつかみ洞の出口まで走り出し、そのまま空に向かって飛び出す。気が付くとそこは茜の家の居間だった。怪我がないことを確認し合った茜とジェイドはあまりの寒さに窓の外を見た。窓の外には日本の景色が広がっていて茜は混乱した。玄関からひよりが呼ぶ声が聞こえて慌てて玄関に走った茜は外に出ようとして透明な壁にぶつかってしまう。家の外にはカインやダージル、ルヴァンも心配して駆けつけていた。茜が言うには喧嘩をした日から透明な壁に阻まれて家に入れなくなり、その日から1週間経っているという事だった。二人はお互い喧嘩した日のことを謝り仲直りする。

するとそこにティターニアが現れた。彼女は外に見えたのは紛れもなく茜のいた元の世界だと言い、家を取り囲んでいる透明な壁もしばらくすれば消えると話した。事も無げに言うティターニアに驚いた茜はどうしてそんなことを知っているのか聞くと、まめこを焚きつけて精霊界に茜達を連れて行かせたのはティターニアだったことがわかる。ティターニアはテオが精霊界から茜の世界に行ったことがあるのを聞いて、元の世界の食材が無くなりそうだと嘆く茜の為に計画したのだった。

茜はさっそくジェイドに洋服を着せて買い物に行くことにした。大量の食材を買い込み、茜はジェイドをよく行く居酒屋に案内した。懐かしい味と思い出を楽しむ茜を見たジェイドは、茜が楽しそうで嬉しい反面少し寂しく思う。居酒屋を出て外を歩くとクリスマスのイルミネーションが飾ってある広場があった。茜が異世界に召喚されてから1年経っていたが、元の世界では1日しか経っていなかったのだ。
ジェイドは自分の世界との差を見て衝撃を受けたが、茜が元の世界にいる時の方が楽しそうなのを見て、茜を自分のわがままで異世界に引き留めたくはないと思いながらも「好きだ」と気持ちを告白する。茜は突然の告白にドキッとしたが、ジェイドは何事もなかったように帰り道へと歩き出したのだった。
異世界に無事戻ってきた茜とジェイドは、ティターニアの号令で様々な種族が入り混じる帰還祝いに参加していた。
茜は一緒に帰ってきたジェイドの姿を探すと、ひとりで寂しく飲んでいるジェイドを見つける。クリスマスツリーの前でジェイドの気持ちを聞いてから2人はその話をしていなかった。ジェイドの気持ちを嬉しく思いながら、ちゃんと話したいと思ってた茜だったがなかなか切り出せずにいた。黙ってしまった茜にジェイドは「茜の世界に行って驚いた」、「ジェイドの世界は茜の世界に比べて気軽に楽しく過ごせる世界ではないと実感した」と話を切り出す。ジェイドは茜のことが好きで一緒にいたいと思うが、安全で楽しく暮らせる元の世界に戻る方が幸せになれると思った。
ジェイドは、元の世界に戻るか迷っている茜に本当は気持ちを伝えるつもりはなかった。「茜を困らせたいわけではないので忘れてくれて構わない」と言うジェイドに、茜は思わず怒鳴ってしまう。元の世界と比べれば異世界での暮らしは不便だが、それはジェイドと恋人になれない理由にはならないと茜は思うからだった。
二人は想いを通わせ、微笑みあう。茜はこれまで様々な人をもてなしてきたが、この異世界の存在こそ自分にとって最高のおもてなしだと実感するのだった。

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