ガンダムF91(モビルスーツ)の徹底解説・考察まとめ

ガンダムF91とは、劇場用アニメ『機動戦士ガンダムF91』に登場する、主役メカ(モビルスーツ)である。従来のガンダムシリーズに登場したモビルスーツの平均20m程度の全長よりも一回り小さく、15mとなったが、より高性能であると設定されているのが特徴。
また、この小型化設定により本機を含めて『機動戦士ガンダムF91』のプラモデルシリーズは、従来のガンダムシリーズプラモデル主力スケールだった144分の1から、100分の1へと拡大されて展開された。

ガンダムF91の戦歴・活躍

ロールアウト~コスモ・バビロニア建国戦争勃発

ビギナ・ギナ(右)へ接近するガンダムF91(左)。

宇宙世紀0116年、7月。
ガンダムF91ロールアウト。
本機は「ガンダムF90」の流れを汲む機体として開発された。
ガンダムF90がハードポイントによる部品換装で様々な局面に対応するモビルスーツであったところを、本機は部品換装なしのまま対応できる局面を可能な限り求めた、究極の汎用モビルスーツとされた。

宇宙世紀122年、8月。
軍需企業アナハイム・エレクトロニクスへ、サナリィから横流しされた「F91」の設計データを元に開発された、アナハイム製のガンダムF91である「RXF-91 シルエットガンダム」がロールアウト。
連邦軍によるシルエットガンダムのテスト中、クロスボーン・バンガードと遭遇してしまい交戦に発展。

宇宙世紀0122年、12月。
ガンダムF91が、機体コンピュータ換装のためコロニー、フロンティアIへ搬入される。

宇宙世紀0122年、2月。
宇宙世紀122年8月に始まったシルエットガンダム一連の事件は「ゼブラゾーン事件」と名付けられたが、この事件で連邦軍のシルエットガンダムを運用した部隊は全滅し、アナハイムによって事件は隠蔽される。

宇宙世紀0123年、3月16日。
クロスボーン・バンガードによるフロンティアIV襲撃事件発生。
当時、本機は地球連邦軍練習間スペースアークにて整備を受けていたものの起動方法が判らずクロスボーン・バンガードへの迎撃に出撃できず。
しかし民間人シーブック・アノーによって起動され、連邦軍の戦力として対クロスボーン・バンガードの戦線に投入される。

宇宙世紀0123年、3月30日。
パイロットをシーブック・アノーとして、本機はクロスボーン・バンガードのモビルアーマー、ラフレシアと交戦。
これを撃破し、ラフレシアのパイロットであったクロスボーン・バンガード総司令官カロッゾ・ロナの殺害に成功するも、本機も甚大な被害を受け大破、連邦軍によって回収され、修復作業を受ける。

コスモ・バビロニア建国戦争終結~クロスボーン・バンガード再興

クロスボーン・バンガードへ警告する量産型ガンダムF91。

宇宙世紀0125年、7月。
パイロットをシーブック・アノーとして、本機はクロスボーン・バンガードのドレル大隊と交戦、これを撃破する。
この出来事は記録資料がほとんど存在せず、もっぱら口伝によってシーブック・アノー周囲の人物に伝えられるのみである。

宇宙世紀126年、2月。
パイロットをシーブック・アノーとして、本機はザビーネ・シャル率いるブラックバンガード隊と交戦、これを撃破する。
この出来事もまた記録資料がほとんど存在せず、もっぱら口伝によってシーブック・アノー周囲の人物に伝えられるのみである。
なお、これ以降の本機の行方は不明となっている。

宇宙世紀0128年。
コスモ・バビロニア戦争終結。
ベラ・ロナを中心人物に置き、宇宙海賊としてクロスボーン・バンガードが再興。
宇宙海賊クロスボーン・バンガードは地球連邦政府と表沙汰には無関係に木星帝国との戦闘を始める。

宇宙海賊クロスボーン・バンガードには、かつてのガンダムF91のパイロット、シーブック・アノーが「キンケドゥ・ナウ」と名を変え所属していたと目されている。
しかし宇宙世紀0128年中に、シーブックとベラは公式記録では宇宙海賊クロスボーン・バンガード発足直後、事故に遭って死亡したとされており、詳細が明らかとなっていない。
連邦軍兵士などの目撃情報では、このキンケドゥ・ナウが、マントを羽織り骨のデザインを額にあしらった「クロスボーンガンダムX1」というモビルスーツで木星帝国と戦闘をしたなどという証言もあるが、裏付けがない状態のままとなっている。

宇宙世紀133年。
連邦軍のハリソン・マディン大尉による、量産型ガンダムF91部隊の運用が確認されている。
オリジナルのガンダムF91ロールアウトよりしばらく時間が経過しているものの、一線級の戦力であるのは変わらずであった。
量産型ガンダムF91のロールアウト時期は不明。
また同時期、ハリソン・マディン大尉の量産型ガンダムF91部隊と、上記のクロスボーンガンダムが交戦したという記録が残っているが、しかし、このクロスボーンガンダムのパイロットが、キンケドゥ・ナウすなわちシーブック・アノーであったとする証拠は残されておらず、シーブック事故死という記録は修正されていない。

ガンダムF91の名シーン・名場面

対デナン・ゲー戦:空中無双

ガンダムF91に撃墜されたデナン・ゲー(火を噴いている二機)。

フロンティアIVを襲撃してきた、クロスボーン・バンガードのモビルスーツ隊と戦闘に入るガンダムF91。
味方は連邦軍パイロット、ビルギット・ピリヨが乗る量産型モビルスーツ「ヘビーガン」1機と、旧式の「ジェガン」が数機のみ。
旧式ゆえ性能の劣るジェガンは、ほとんどが撃破されていってしまう。

そんな折に出撃した本機の威力には、目を見張るものがあった。
多数で迫り来るクロスボーン・バンガードのモビルスーツの1機「デナン・ゲー」を空中ですれ違い様に一刀両断し、その後に放ったビームライフルの一撃が2機のデナン・ゲーをまとめて始末する。

一瞬にして、三機ものデナン・ゲーを屠るガンダムF91であった。
驚くべきはこの時のパイロット、シーブック・アノーはモビルスーツ初搭乗であり、ろくに訓練すら受けていない民間人であったという事である。
未知の物に対するシーブックの順応力もさることながら、本機のバイオコンピュータがパイロットの資質を把握して、その戦況に最適な動作をパイロットへ提案できるシステムが大いに役だったシーンでもあり、その天下無双の姿はまさに「白い悪魔」と恐れられたRX-78-2 ガンダムの再来といえた。

対バグ戦:回転サーベル乱舞

回転して残像の見える状態のビームサーベルで、バグの群れに突っ込むガンダムF91。

対モビルスーツとして脅威でありつつも、その真の目的は生身の人間を直接殺傷し、最終的には全人類の撲滅を目的とする無人兵器、バグ。
これがコロニーに投下されたという事は放っておけば、そのコロニーの人間は皆殺しにされるという事だった。

そうはさせじと迎撃に出るシーブックのガンダムF91、セシリーのビギナ・ギナ、ビルギットのヘビーガンの3機。
しかし、対人兵器であるがためモビルスーツよりも小型で素早く、しかも餌にたかる蟻のごとく大量に存在するバグは、並のモビルスーツ、並のパイロットの腕前では処理しきれる対象ではなかった。
ほどなくして、コロニーの住民を救おうと奮戦するビルギットが戦死。

危機感を増大させたシーブックは、自分とセシリーを守るために本機の両手にビームサーベルを装備。
手首を回転させ、ガンダムF91を空中を縦横無尽に駆けめぐる巨大カッターと化し、バグの群れを突き進むのであった。

対ラフレシア戦:ガンダムF91限界稼働モード発動

限界稼働モードを発動させるガンダムF91。

バビロニア建国戦争の原因であり、人類殺戮兵器バグの発案者であるカロッゾ・ロナ。
そしてそのバグの母機であり、カロッゾ自身と繋がる第二の肉体でもある、巨大モビルアーマー、ラフレシア。
カロッゾの娘、セシリー・フェアチャイルドこと「ベラ・ロナ」は、父に反旗を翻したが、それもむなしく今まさにカロッゾの手によって命を絶たれようとしていた。

そんなセシリーの危機を、ガンダムF91のバイオコンピュータが、シーブック自身のニュータイプ能力(宇宙に進出した人類が獲得した、超感知能力)を経由して彼へ伝える。

ラフレシアは近づくものすべてを、まるで海のクラゲがごとき無数の触手「テンタクラーロッド」でからめとる異形のモビルアーマーだ。
捕まれば一巻の終わりである。
だが、シーブックの「セシリー!」という叫びと共に、ガンダムF91が超高機動をはじめた。
セシリーの救助。そのためのラフレシアの無力化。シーブックの感情の高まりに応じるかのごとくその性能を発揮するバイオコンピュータは、彼が成さんとすることを実行するにはガンダムF91限界稼働モードの発動が必要であると判断したのだ。

機体より放熱のため、型からフィンが、頭部はフェイスカバーが解放され、まるで人間のような「顔」がガンダムF91に現れる。
それと共に、本機は迫り来るラフレシアの触手を次々にビームサーベルで切り裂く。

本機の限界稼働により機体表面から剥離した金属が、ラフレシアのセンサーを惑わし、本機が複数機いると誤認させる。
つい先ほど、娘に手をかけようとした時「怖かろう」と言ったカロッゾ。
だが、今度は自身が恐怖に駆られる番であった。

そしてついにガンダムF91はラフレシアのコクピット目前に迫る。シーブックはトドメを刺したい。
しかしその背後には、自動操縦で敵機を追い続けるラフレシアの触手が迫りつつあった。
刹那、ガンダムF91は攻撃を中止し、“残像”こと剥離した金属片をその場に残したまま高速で離脱。
直後に触手はビームを放つが、その照準はガンダムF91ではなく“残像”に合わさったままだった。当然本機を捉える事はできず、そのビームはラフレシア本体を滅したのであった。

ガンダムF91の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

口のあるガンダム

最終決戦の対ラフレシア戦にて、本機は限界稼働モードを発動する。
その際、放熱のためにフェイスカバーが外れて「いつものガンダム顔」から「鼻と口が付いた人間のような顔」が本機の頭部に現れる。

これは演出的には「メカでありながら、仮面を外し、人間のような顔を露わにするガンダムF91」に対して、敵対するカロッゾ・ロナの「人間でありながら、強化手術を受け、素顔を常に鉄仮面で隠す機械のような男」が対比されるというものである。

このガンダムF91の「顔」は当時の視聴者には特に強い印象を与えており、本機は「ガンダムF91といえば、顔に口があるガンダム」として人々の記憶に残る事となった。

100分の1スケールガンプラの標準化

同じ100分の1サイズの、νガンダム(左)とガンダムF91(右)。

本機は、従来のガンダムシリーズのモビルスーツサイズが平均して20m程度であった所に、一回り小型化した15mというサイズ設定となった。
これはガンダムシリーズとは切っても切り離せない関連商品である、ガンプラ(ガンダムのプラモデル)の製造販売元である、バンダイの要求に端を発する。

というのも『機動戦士ガンダム』放映以降、ガンダムシリーズが続くたびに「続編のモビルスーツが強力である事を示すために、新型機は前作のものより強く大きく」という事を繰り返した結果、初代ガンダムこと「RX-78-2 ガンダム」の18mから『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の「νガンダム」は全長22mまで拡大しており、当時は非映像化で模型化に恵まれない作品まで含めれば『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』のΞ(クスィー)ガンダムが全長28mと、巨大化に拍車がかかっていたのだ。

このまま行くと、ガンプラが基本的にスケールモデルを標榜している以上、機体設定の大型化によって商品価格の高騰が避けられなくなる恐れがあった。
これを避けるためバンダイは、ガンダムシリーズのアニメ制作を担当する創通エージェンシー・日本サンライズ(当時)に、登場モビルスーツの小型設定化を要求したのである。

その結果として本機は15mの設定となった。
そして至る『∀ガンダム』が20mと設定されるまで、ガンダムシリーズの登場モビルスーツがおおよそ10m台中盤と設定される事の、嚆矢になったのである。

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