アンという名の少女(ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ

『アンという名の少女』は、カナダのCBCとNetflix共同製作の、ルーシー・モード・モンゴメリの小説『赤毛のアン』を基としたドラマシリーズである。シーズン1から3までの全27話。2017年~2018年にシーズン1、2が、シーズン3が2019年~2020年にかけてカナダCBC放映・Netflix配信された。NHKでも2020年9月からシーズン1が全8話構成で地上波放送され話題を呼ぶ。小説『赤毛のアン』は何度も映像化されて多くのファンを魅了してきたが、ついに「新生・赤毛のアン」が誕生した。

『アンという名の少女』の概要

アメリカ映画『人生はビギナーズ』を制作したノースウッド・エンターテインメントとNetflixの共同製作。製作責任者であるモイラ・ウォリー=ベケットは、『フレッシュ・アンド・ボーン』『ブレイキング・バッド』で知られる脚本家。「アンという名の少女」に現代的な要素を盛り込み、アンの感情を深く掘り下げることで、新しい「アン」に命を吹き込んだ。1890年に設定された今シリーズは、恵まれない境遇を過ごしてきた孤児であるアンが、未婚の年配者の兄妹に誤って引き取られたことで、彼女の高い知性と類いまれない好奇心と行動力で周囲を圧倒し、人々の生き方さえも左右するほどの強い影響力を発揮する物語である。舞台設定・衣装などのリアリティーあふれる映像美は、視聴者に1890年代にタイムスリップしたかのような錯覚を与えた。また、1,800名以上の候補者の中から選ばれた、アイルランド系カナダ人のエイミーベス・マクナルティがアンを演じ、まるでアンがそこにいるかのような素晴らしい演技力は高く評価された。主要キャストである、マシュー・カスバートにカナダ人俳優ロバート・ホームス・トムソン、マリラ・カスバートには、イギリス人女優のジェラルディン・ジェームズが選ばれた。

『アンという名の少女』のあらすじ・ストーリー

カスバート家とアンの出会い

正式な養子となったお祝いの乾杯

プリンスエドワード島・アヴォンリー。グリーンゲイブルズに長年住む独身のカスバート兄妹・マシューとマリラは、ノヴァスコシアの孤児院から農場の手伝いをする男の子を養子に迎えることになっていた。老いからくる衰えに加え、心臓の悪いマシューの負担を軽くするためである。
ブライト・リバー駅に着いたアンは駅のベンチでカスバート家からの迎えを待っていた。ようやくブライト・リバー駅に到着したマシューは、そこに待っているはずの男の子の姿をさがすが見当たらない。
ベンチに座っている女の子が「アン・シャーリーです」と自己紹介を始めた時点で、マシューはなにかとんでもない間違いが起こったことを察したが、何も知らないアンをグリーンゲイブルズに連れて帰った。

アンを見たマリラの厳しい態度で、アンは男の子と間違えて連れてこられたことに気づく。絶望に襲われながらも「女の子である自分にも農場の手伝いはできるからここに置いてください」と懇願する。落胆のあまり、夕食にも手がつけられなかったアンは、2階の自分用の部屋で泣きながら眠りにつく。
マシューはマリラに、アンがここにいたがっていると訴えるが、厳格なマリラはおしゃべりで落ち着きのないアンに不安を隠さず、明日孤児院に返すことを決めた。
養子縁組の手伝いをしてくれたスペンサー夫人に「手違いだったのでアンを孤児院に送り返せるか」と聞きに行くと、他の家の子守りにどうかと提案された。アンの境遇に同情の気持ちが湧いてきたマリラは、試しに1週間アンを家に置いて様子をみることにした。

翌朝、隣人のレイチェルがやって来てアンの容姿をこき下ろした。その言葉に傷ついたアンはかんしゃくを起こしてレイチェルを罵倒してしまう。その夜マシューに「ここはレイチェルに謝罪して仲直りした方がいい」と言われたアンは、翌日レイチェルに謝罪し許される。
レイチェルの問題も片付き、家の周囲を散策していたアンは、柵を直しているマシューと立ち話をする。そこへ隣人のウィリアム・バリー氏が馬でやってきて、マリラとアンを翌日の午後のお茶に招待してくれた。
お茶会当日。家宝のアメジストのブローチを着けたマリラと、新調してもらった服を着たアンはバリー家でお茶会を楽しんだ。心の優しいダイアナという親友を得たアンは、今まで感じたことのない幸福感に包まれた。そして、ダイアナからのピクニックへの誘いもアンを喜ばせた。

その夜、昼間に付けたブローチが無くなっていることに気づいたマリラはアンが盗んだと責めた。全くの濡れ衣だったが、マリラは「泥棒とは暮らせないから明日の朝一番で出ていくように」と言い渡し、翌朝アンを孤児院に送り返した。

アンの出発後、椅子の背もたれの隙間にブローチを見つけたマリラは、マシューにアンを連れ戻すよう頼む。孤児院に帰りたくないアンは駅に戻り、居合わせた人々に詩の暗唱を聞かせて小銭を稼いでいた。そこに現れたマシューに連れ帰られそうになったアンはマシューを誘拐犯に仕立て上げようとしたが、マシューの「この子は私の娘だ」というひと言で泣き崩れる。
マシューとアンがグリーンゲイブルズに帰ってきた。喜んではいても感情を表に出すのが苦手なマリラは、アンのベッドに新しい服と青いリボンを置いてくれていた。

ダイアナに誘われたピクニックの日。初めてのピクニックに胸をはずませて出かけたマシューとマリラ、アンだったが、バリー夫人が「なぜ孤児院に送り返さなかったのかしら」とテントで話しているのを聞いてしまう。
それに加えて、近くにいた意地悪な少年に自分の悪口を言われたアンは耐えきれなくなり、その場から逃げ去った。
森の中で泣いていたアンを見つけたマリラにアンは「私を欲しくないのになぜ連れ戻したの?」と怒りをぶつけてしまう。
マリラは静かな口調で、アンと一緒にいたいからだとなだめ、ブローチを盗んだ疑いをかけたにもかかわらず、こうして戻ってきてくれたアンに「もう一度やり直しましょう」と優しく応える。
こうして家に戻ったアンは正式に養子縁組の手続きを行い、木いちごジュースで乾杯を交わしたのだった。

学校生活

アンが初めて登校した日。授業が始まる前に、ダイアナがアンにいろいろな女子の決まり事を伝授してくれる。
ダイアナに学校の周囲を案内してもらっていた時に、備品室にいたフィリップス先生とプリシーを見たアンはランチの時間にうっかりこのことを女子に話してしまう。それを聞いたプリシーの妹のジェーンと他の女子たちは、アンを残して教室を出て行ってしまった。

翌日の学校の自習時間に、仲間はずれにされてしまったアンにさらなる不幸が降りかかる。久しぶりに登校してきたギルバートがアンに消しゴムを投げてきたのである。アンが取り合わないでいると、ギルバートはリンゴを持ってアンの机に来るなり「え、なあ、ニンジン!」と言って、アンのおさげを引っ張った。
怒りに震えるアンは自分の石板をギルバートの頭に振り下ろす。罰としてフィリップス先生に黒板の前に立たされたアンは、すぐに無言で教室から出て行った。

ギルバートとのいさかいの後に数日間不登校をしていたアンが学校に戻るきっかけとなったのは、ルビーの家が火事になったことだった。アンが危険を顧みず燃える家の中に飛び込んで、ドアを閉めて回ったのである。アンは孤児院にいた頃に読んだ本で、消火の手順を覚えていたのだ。
翌日から家の修理が済むまでの間の一週間、ルビーはグリーンゲイブルズで過ごす。最初のうちはアンと友達であることを周囲に知られたくないと嫌がっていたルビーだったが、ダイアナがアンの勇気を讃えてとりなす。そしてすっかり打ち解けたルビーの勧めで、アンは再び学校に通うようになったのだった。

農場の危機

学校ではクリスマスのための合唱の練習が始まり、準備に追われながらも華やかな雰囲気に包まれている。アンの横で女子がヒソヒソ話を始めた。ジョーシーが「カスバート家は困窮していて農場を抵当に入れたそうよ」と爆弾発言をする。アンは何も知らなかった。

グリーンゲイブルズではマシューとマリラがお金のことで言い争っており、戸口でこの会話を聞いていたアンは玄関から動けずにいた。すると、マシューが突然苦しみだし倒れてしまう。一命はとりとめたものの心臓発作を起こしてしまい、長期間の休養を余儀なくされた為事態は深刻だった。

翌日マリラとアンは馬車で銀行に行き、融資条件の見直しを願い出る。しかし、銀行側は収穫を見込んだ融資であることを強調する。もしも予定通りに今月末に全額返済が不可能となれば、担保を没収すると言い渡す。馬車に乗る前にマリラは何かを思いついたようで、ひとりで雑貨店に入っていき、新聞広告を申し込んだ。

その夜アンとマリラはお金になりそうなものが無いかどうか探していた。アンはマリラが大切なブローチを売り払うかどうか迷っている姿を見て、自分が貰った青いドレスを売ることを決意する。思いとどまるよう説得するマリラだったが、「家族の助け合いよ」というアンの気丈な言葉に感動してアンを抱きしめた。
質屋へはアンと農場手伝いのジェリーが馬車で行くことに決まった。馬を売ったお金をジェリーの最後の賃金に当てるのだ。カーモディに着いたアンはマシューの幼馴染であるジェニーの店に行き、ドレスの返品を申し出る。ジェニーは事情を知ると多めの代金を渡してくれた。その後、アンとジェリーは待ち合わせ場所を質屋の前と決めてから別れる。アンは質屋に行き、店主と値段の交渉に入る。その頃ジェリーは売った馬の代金を路地裏で2人の悪党に奪われ、ボコボコにされてしまった。

質屋にいるアンを偶然窓の外から見かけたギルバートが、店を出てきたアンに声をかけ、近くの店でお茶を飲むことになった。ギルバートは港で仕事をしていて、船で働きたいと思っていることを打ち明ける。農場はそのままにしておいて、まず世界を見てからアヴォンリーに戻るかどうかを決めるという。

そこへジェリーを襲った2人組が入ってきて、アンとギルバートの近くの席に座り、新聞を読み始める。アンとギルバートが外に出る。2人の悪党は新聞広告を見て、グリーンゲイブルズが下宿人を募集していることを知る。
待ち合わせ場所で傷だらけのジェリーを見たアンとギルバートは驚く。ジェリーは、ルビーの家が火事になった時に懸命に消火活動をしていたギルバートの顔を思い出して、自己紹介をする。2人と別れたギルバートは港に戻っていった。

アンとジェリーはその足でジョセフィンおばさんの家に向かい、彼女に歓待される。夕食の席でアンは馬の代金を悪党に奪われたことを話した。同情したジョセフィンおばさんはカスバート家への援助を申し出てくれるが、アンはきっぱり断る。翌朝別れ際にジョセフィンおばさんはジェリーに包みを渡しながら、アンに「ジェリーを自分が雇ってカスバート家で今まで通りに働けるようにしたい」と言ってくれた。

一方のマシューは「自分が死んだら、保険金を使って二人で仲良く暮らしてくれ」とマリラに行ってしまうほど追い詰められていたのだった。
マリラが牛を見に行った隙にマシューはベッドから降り、部屋の引き出しから拳銃を取り出し弾を込め始めるが、そこにジェニーが入ってきてマシューを止める。胸騒ぎがしたマリラも駆けつけ、2人でマシューを落ちつかせてから、ジェニーが帰っていった。アンが帰宅してマシューに抱きつく。
その夜、マリラとアンは手に入れたお金を数えていた。アンはジョセフィンおばさんからもらった本に挟まれていたお金を取り出す。そこには「愛は施しではない。ジョセフィン・バリー」と書かれていた。
他人に同情されたくはないからこのお金は受け取れないとマリラは言い張る。しかしアンに、「人の愛情は素直に受け取るべきだ」と説得された。色々な人に助けられたもののまだ代金は足りず、マリラは不安に陥る。そこでアンは掃除のアルバイトを始めて家計を支えるのだった。

ある日郵便局に行ったマリラは1通の手紙を受け取る。新聞広告に載せていた「下宿人募集」に応募があったのだ。マリラから報告を受けていると玄関に聖歌隊が来て讃美歌を歌ってくれる。その中にはダイアナもいた。
年が明けると、二人の下宿人がグリーンゲイブルズにやって来た。

詐欺師

2人の下宿人ネイトとダンロップが来てからもう10ヵ月が経ち、秋の収穫期がやってきた。グリーンゲイブルズに来て2度目の秋を迎えたアンは14歳になり、調査会社から派遣されたという地質学者のネイトと、気のいいダンロップとも良好な関係を築いていた。
ネイトが家の外に出るとダンロップが近づいてくる。2人はよからぬことを計画しているようで、今日行動を起こす予定だった。仕事に出かけたネイトは、馬で通りかかったバリーをつかまえて「この土地から金が発見された」と告げたのである。
バリーを使ってアヴォンリーに金が出たという噂を広めることに成功したネイトとダンロップは、最後の仕上げに取りかかる。公会堂に人を集め、「土の中に金が含有されている事の証明書を調査機関が用意している」「バリー氏もそのことを承知している」とまくし立てたのだ。策に乗せられたバリーは土地の検査費用150ドルを肩代わりし、見返り金として利益の一部を貰うという話をつける。

数日後別の町に住むジョセフィンおばさんの所に出かけていったアンとバリー一家は、「この街でも10数年前に金の詐欺事件があった」と聞かされ、アンとダイアナは二人の下宿人が怪しいとにらむのだった。
翌日家に戻ってきたアンは、ネイトがバリー氏から多額のお金が入った財布を受けとっているのを目撃する。マリラにそっと近づき、シャーロットタウンで金の詐欺事件を聞いたと耳打ちした。そして、ネイトとダンロップは詐欺師でグルだと告げる。正体がバレたことを悟ったネイトとダンロップはマリラとアンを縛り上げ、財布をもって大急ぎで逃げ出した。

マリラとアンは、縛られながらもなんとか鐘を鳴らしてマシューを呼ぶ。マシューは馬で応援を呼びに行く。仕事帰りのジェリーが逃亡中のネイトとダンロップに遭遇し、彼らがあの強盗犯だと気づき殴りかかるが、ネイトの一撃で倒されてしまった。ここに至ってダンロップはネイトに銃を向け「もう嫌だ。ここにいたかったのにお前のせいでみんなに嫌われてしまった」と怒り出す。そしてネイトに「金を出せ」と脅すが、銃には弾が入っていなかった。不意をついたネイトはダンロップを採掘場の穴に投げ込んだ。
馬で詐欺師2人を追いかけるマシューと、応援に駆け付けた男たちが見つけたのは、倒れているジェリーと穴に落とされたダンロップであった。助け起こされたジェリーはマシューに「僕は立ち向かった」と決然とした表情で言った。あの強盗事件の時に抵抗できずにいた自分をこれほどまでに恥じていたのだろう。穴から引き揚げられたダンロップは、ネイトが主犯で自分も被害者だと訴えるが誰も信じない。すべてのお金をネイトに奪われたバリー氏は、無念の思いを噛みしめていた。

一方蒸気船で働いていたギルバートは、10年以上ボイラー室で働く黒人青年のバッシュと友人関係となる。しかし様々なことを学びつつも将来のことが気にかかっていた。そこでギルバートは船を降りる決心を固め、同じく将来の事を考えていたバッシュと共に、アヴォンリーへと足を踏み入れた。
新生活を楽しむ中、バッシュは自己流の抜歯で炎症を起こし、シャーロットタウンのワード医師の治療を受ける。その後黒人街「ボグ地区」に入ってみたバッシュは洗濯屋で働くメアリーと出会い、バッシュはまもなく結婚して、ブライス家で同居生活を始めた。

アヴォンリーの学校に、新任のステイシー先生がやってきた。アンたちはステイシー先生の新しい考えに刺激され、アヴォンリー新聞作りにさらに情熱を傾けていく。
アヴォンリー近隣の住民が心待ちにしていた「カウンティフェア」のダンス会場の外でビリーにキスを迫られたジョーシーが断ったことが周囲に知れ渡る。みんなから白い目で見られたジョーシーは会場を飛び出す。それを見ていたアンはその夜、独断でジョーシーを擁護する記事をアヴォンリー新聞に載せ、明け方に教会の玄関先に新聞を置いた。
その記事が問題となり、レイチェルを始めとした学校評議会で、アヴォンリー新聞の廃止についての議論が始まった。新聞廃止の危機に直面したアンと友だちが「言論の自由」というプラカードを掲げ、評議会が開かれている公会堂に乗り込む。抗議が認められ、アヴォンリー新聞の存続が許された。

この事件に触発された母親たちの間に学校への疑念が深まる。斬新な教育を目指すステイシー先生は、古い慣習に凝り固まった母親たちから「教師失格」とされ、教師の職をはく奪されそうになるが、アンたちの機転でステイシー先生の続投が受け入れられた。

ギルバートとの関係

医師を目指すことを決意したギルバートは、シャーロットタウンのワード先生の医院で見習いをスタートさせる。そこには若く美しいウィニフレッドという女性が働いていた。快活な彼女に興味を抱いたギルバートはお茶に誘う。自分でも以外だったが、彼にとってはこれが大人の階段への第1歩となったようだ。

心待ちにしていた「カウンティフェア」でアンが見たものは、ウィニフレッドを連れたギルバートだった。仲良く歩く2人の姿はアンを深く傷つけた。ウィニフレッドの両親も来ており、彼女の父親にギルバートは、ソルボンヌ大学で免疫に関する大発見があったことを話す。彼はギルバートに「医学部が希望なら有力な友人に紹介する」と持ち掛けてきた。クイーン学院とパリのソルボンヌ大学との間で揺れ動くギルバート。

クイーン学院の受験が終わり解放感に包まれたギルバートはアンに「ウィニフレッドと結婚すれば、ソルボンヌ大学への進学と学費も家もお膳立てしてもらえる」と告白し、アンの表情を読み取ろうとする。ギルバートは自分へのアンの気持ちを知りたかったのだ。
それに気づかないアンは「全てが手に入るのに何をためらうことがあるの?」とそっけない返答をしてしまう。アンにプロポーズを断られたと思い込んだギルバートは、ウィニフレッドにプロポーズする決意をする。「これでアンのことはハッキリした。アンは過去でウィニフレッドが未来だ」と。

同じ頃、自分がギルバートを愛していることに気づいたアンは、先日の彼からの問いかけが自分との結婚への可能性だったことをはっきり自覚する。翌朝階下に降りてきたアンは、マリラにギルバートへの正直な気持ちを告白した。マリラはその気持ちを伝えるべきだとアンの背中を押す。慌てて家を飛び出していったアンはギルバートの家に馬で向かったが、彼が留守だったため、「愛している」との手紙を残して立ち去った。

その頃ギルバートはダイアナの父バリー氏を訪ねていた。農園のリンゴを輸出する書類についての説明をした後、バリー氏に母の指輪を見せ、ウィニフレッドとの結婚予定の報告をする。アンの留守中にグリーンゲイブルズを訪れたダイアナがマリラに、ギルバートがウィニフレッドにプロポーズをすることを知らせた。

ルーツ探し

遂にアンの16歳の誕生日がやってきた

誕生日の朝。目覚めたアンは窓を開け、大好きな木に大きな声で挨拶する。
アン「おはよう、雪の女王!とうとうこの日が来たわ。私は今日で16歳よ!16年前の今日は私の両親の最良の日だった」
階下から「アン!」と、アンを呼ぶマリラの声が聞こえる。祝いの言葉を期待して降りてきたアンを迎えたのは、本を無表情で読むマシューと、いつもと変わらないマリラの言葉だった。マリラはそっけなく言う。「アン。早くお皿を出して」。心なしかがっかりしながらも朝食の支度を手伝うアンに、マシューから帽子の付いたチャームが贈られた。
感激の涙を流すアンはここでいきなり爆弾発言をする。自分のルーツを見つけるために自分が育った孤児院に行きたいと言い出したのだ。動揺を隠せないマリラは「簡単には決められないよ。よく考えないと。この話はここまで。さあ、お祝いしましょう」と言いながら、震える手で誕生日のケーキを切り分けた。

数日後、マリラからノヴァスコシアの孤児院行きの許可が出た。コールに付き添われたアンがセント・オールバンズ孤児院に着き、寮長に面会を求める。寮長はアンを思い出し、「あのおしゃべりの?」と冷たい態度で迎える。アンは自分の両親の記録を見たいと申し出る。寮長は、数年前にネズミが出て全て処分したので、アンを捨てた両親の情報はここにはないと突き放す。あきらめきれないアンは、コールと一緒に最上階の屋根裏に行く。自分がここに残してきた思い出の品を取り出してコールに見せるが、押さえていた感情をついに爆発させる。
アンを哀れんだコールは、教会にアンの両親の記録があるはずだと気がついた。その言葉に希望を見出したアンは、後日教会に行って記録を調べることを決意する。

帰宅したアンの報告を聞いたマシューとマリラは心なしかホッとする。アンは教会の記録を調べたいので、来週もノヴァスコシアに行かせてほしいと2人に頼む。疲れて自室に行ったアンの様子を見にマリラが2階に上がると、アンの祈る声が聞こえてきた。
アン「お願いです。助けてください。心に空洞があるの。家族の、母のことがわかるまでこのままよ。私も誰かと繋がっていたと感じたい。愛された証拠が欲しいの」
アンの心の叫びを耳にしたマリラはそっと立ち去る。
両親の記録の調査のため、再びジョセフィンおばさんの家に着いたアンは、大人の女性の服装をして教会に出かけて行き、両親の記録を調べる。アンは教会の記録で、両親が亡くなっていたことを知る。心にズシンという、言いようのない衝撃を受けると同時に、自分がスコットランド人であることを発見した喜びにむせび泣く。

その後の騒動

シャーロットタウンのウィニフレッドの家では、彼女とギルバートの話し合いがもたれていた。成り行きでウィニフレッドとの婚約を決めてしまったことに気づいたギルバートが、彼女に自分の本心を伝えることを決心したのである。
ウィニフレッドから「当分はこのことを誰にも話さないと誓って。物事の整理がつくまでね。皆がいい知らせを待っているの。落ち着くまで私は外国に滞在するわ。2週間は黙っていると約束して」と請われたギルバートはそれを承諾した。
自分でも心の整理がつかないギルバートは、ウィニフレッドの家からアヴォンリーに帰り、ステイシー先生の家で受験の結果を待っていたみんなと合流した。アンとギルバートがクイーン学院に1位で合格。ほとんどの生徒も受かっていた。ギルバートはステイシー先生に、ソルボンヌ大学には行かないと明かし、トロント大学への出願にまだ間に合うかと聞く。ステイシー先生は自分の友だちに電報を打つことを約束してくれた。
その後、マリラは待ちかねたスコットランドからアンへの手紙を受け取り、ギルバートはステイシー先生からトロント大学の合格通知を受け取った。
マリラは、スコットランドから届いたアンへの手紙を、皆がいるところで開封したいと思っていた。シャーロットタウンのジョセフィンおばさんの家に集まることをマシューに認めさせる。
始めて足を踏み入れるジョセフィンおばさんのお城のような屋敷に気圧された2人は、家を間違えたかと帰りかけるが、執事のローレンスに迎えられ、コールとも再会する。ジョセフィンおばさんと挨拶を交わしていると、髪を結い上げ、青いドレスをまとった貴婦人のようなアンが階段から降りてくる。
全員が集まった席でアンが手紙を読む。アンの両親には親戚はいないし、2人がカナダに渡ってやり取りは途絶えたという。それでも気丈にふるまうアンを皆が気づかう。1人になったアンにコールがそっと寄り添う。
マリラとマシューに用意された部屋で3人がくつろいでいた。マシューは、グリーンゲイブルズに帰省する時の旅費にしてくれと、牛を売って得たお金をアンに渡す。2人が帰ろうと家を出たのと同時にアンもパラソルをさして街の散歩に出かけていった。
アンの後ろ姿を見送っていたマリラは、アンを最初に引き取って育ててくれたトーマス夫人の家がフェリーですぐだと気がついた。トーマス夫人の家に招き入れられた2人は挨拶もそこそこに、古い戸棚に目を止める。トーマス夫人によると、その中にアンの両親であるシャーリー夫妻が残した物が入っているという。マリラはその中から埃まみれになった1冊の植物の絵が描かれた日記を取り出した。「生徒たちと一緒に自然を楽しんで。愛を込めて。ウォルター」と書かれていた。

街を歩いていたアンはウィニフレッドを見つけ声をかける。ギルバートがアンを想っていることを知ったウィニフレッドは狼狽するが、なんとか言葉を返す。
ウィニフレッド「どうも。また会えるとはね。お元気そうね、アン」
冷ややかにアンを見つめるウィニフレッドだったが、2人の婚約が破談になったことを知らないアンの「ギルバートとの幸せを願っているわ」という言葉に驚き、アンにいきさつを話すことにした。
真相を知ったアンは、慌ててジョセフィンおばさんの家に帰った。とんでもない誤解が生じている。なんとしてもギルバートに会わないといけないという焦る気持ちがアンを急き立てる。

結末

マシューとマリラのアンへの愛がもたらした奇跡

ギルバートはトロント大学に向かう中継地のシャーロットタウンへの汽車の中でバリー氏とダイアナに会った。そして、ウィニフレッドと婚約しなかったことでパリ行きもなくなり、トロント大学の医学部へ進学することになったと話す。
ギルバートの席に押し掛けたダイアナは、彼がアンに何も話さなかったことをなじる。ギルバートはアンに会えずじまいだったと言い訳をするが、ダイアナの怒りは収まらない。「何年もそばにいたのに。黒板で殴られた日からずっとアンが好きだったんじゃなかったの?『カウンティフェア』に謎の女性を連れてきてアンを混乱させたあげく、30秒で人生を決めろと迫り、アンの手紙も無視した」とまくし立てた。

それを聞いたギルバートはようやく事の真相に気づく。カナダに出発する前にアンが滞在しているジョセフィンおばさんの家に行くと、アンがトランクをもって出かけるところだった。長い誤解が解け、見つめ合い抱き合う2人。12時の鐘が鳴る。ギルバートはトロントへ発つ時間が迫っていた。ジョセフィンおばさんの家に馬車で到着したバリー氏とダイアナを見たアンは、彼女がクイーン学院に入学することを知り喜び合う。

バリー氏に借りた馬車で駅に急ぐギルバートを見送っていると、グリーンゲイブルズに帰ったはずのマシューとマリラが戻ってきた。2人を見たアンは歓声を上げる。庭のベンチに座った3人がアンの父が書き残した日記を開くと、そこには「1883年7月13日。アン、初めてのピクニック」という文字が書かれていた。アンの母バーサは教師だった。
アン「筆跡が私と似ている」
最後のページにはアンの母バーサの似顔絵が描かれていた。
アン「赤い髪。これでやっと心の穴が埋まった。神様は願いを叶えてくれたのね。誕生日の願い。本当に夢みたい」
マリラ「私の願いも叶ったわ。あなたは私の夢そのものよ」
マシューとマリラと別れ、学生寮に戻ったアンは、愛するギルバートに手紙を書く。
「私は母にそっくりです」と。

『アンという名の少女』の登場人物・キャラクター

アン・シャーリー(演:エイミーベス・マクナルティ)

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