家政夫のナギサさん(わたナギ)のネタバレ解説・考察まとめ

『家政夫のナギサさん』とは、ソルマーレ編集部少女漫画レーベル『恋するソワレ』で連載の四ツ原フリコによるハートフルラブコメディ。製薬会社の医薬情報担当者(MR)として熱心に働く28才独身キャリアウーマンが、突然現れたおじさん家政夫との関係に振り回されるさまを描く。家政夫として働く男性を登場させることで「家事は女性がやるべき」という固定観念を外し、家事は雑用ではなく、整理能力や、料理は創造性や技術力など、様々な能力を要する仕事であり「女性だけでなく誰がやっても良い仕事」だと家事の認識を変えさせた。

新型コロナの自粛の影響で撮影休止期間ができ、それに合わせて放送延期と放送期間の短縮という状況の中、ドラマ『私の家政夫ナギサさん』の視聴率は、第1話が14.2%で好発進しその後も2桁をキープし続けた。15分拡大で放送された最終回(第9話)の世帯平均視聴率が19.6%、個人視聴率は10.4%(共に関東地区)を記録し有終の美を飾る。『私の家政夫ナギサさん』最終回の平均視聴率は19.6%で、2016年10月放送の『逃げるは恥だが役に立つ』が記録した20.8%には及ばなかったものの、全話の期間平均視聴率は『逃げるは恥だが役に立つ』の14.6%を超えた15.1%を取り、TBS火曜ドラマの中では歴代1位の記録となった。その高視聴率の背景にはいくつかの要因があった。主人公メイはMRとしてバリバリ働くキャリアウーマンだが、家事が大の苦手で部屋は物であふれ散らかり放題。そんなメイに、視聴者からは「メイちゃんが私にそっくりすぎる」といった声が続々と上がり20~30代前半の現代女性からの共感を得た。また、メイを演じた多部未華子の自然体かつチャーミングな演技が大きな話題となった。ドラマでは、メイの恋愛模様だけではなく、家族との関係性、仕事への向き合い方なども丁寧に描かれている。特に、メイの妹で3年前に実家を飛び出したままのユイ(趣里)と、2人の母親(草刈民代)が和解する様子が描かれた第5話が話題になった。母親が、「どんなに成長して大人になっても、憎たらしいこと言ったり、言うこと聞かなくなっても、小さくて可愛いこの頃のイメージが重なるのよね。どこにいてもこの頃のままなのよ、親にとっては。だからかなぁ、あなたたちがいくつになっても、同じことばっかり言い続けて、ついつい厳しくなっちゃうのかしらね」と娘たちへの思いを話す場面も描かれ支持層に変化が現れた。それまでは、頑張る女性の“あるある”が描かれ、第5話で家族の話が展開されると一気に50歳以上の男女からの支持されるようになり、家族で視聴されている背景がうかがえた。ストーリーが平和なラブコメディーのため安心して子供と一緒に見れ、感動できる部分もあり大人も満足感のあるドラマであることが第5話で感じられて視聴者の幅が広がった。脚本の徳尾浩司や、監督の坪井敏雄ら男性陣が、「おじさんでもわかるようなネタを入れないと女性しか見ない」との懸念から、ドラマ中ではたびたびマンガ『北斗の拳』ネタが登場する。ネタがわからない人にも何となく聞いていて面白く、わかる人には大いに喜ばせ、さらに支持層を増やした。コロナ渦で混沌としている世の中に、幅広い年齢層がリラックスし素直に楽しめるドラマだったことで、最後まで高視聴率をキープし続けたと見られている。

『家政夫のナギサさん』の主題歌・挿入歌

ドラマ版主題歌:あいみょん『裸の心』

あいみょん『裸の心』

ノスタルジックで温かさを感じるメロディ、使用楽器はピアノやハーモニカを中心にした今っぽさがないところからも、あいみょんの真の魅力を感じさせる。あいみょん流の毒やトゲは今回は封印され、優しさが曲全体を包む柔らかい雰囲気だ。実は2017年からあった楽曲でドラマのための書き下ろしではないのだが、不思議と歌詞が『私の家政夫ナギサさん』の物語と見事にマッチしている。「いったいこのままいつまで 1人でいるつもりだろう だんだん自分を憎んだり 誰かを羨んだり」というフレーズは、仕事に奮闘するあまり恋愛しておらず、親や友人からは結婚のことを心配され、仕事では強力なライバルが現れ苦戦するメイの第一話とリンクする。「いつかいつかと 言い聞かせながら 今日まで沢山愛してきた そして今も」というフレーズは、メイが母親にとって理想の子供を演じるためにアラサーになるまで無我夢中で働き実績を上げ続けるが、本当は家族らしい温かさが母親に戻ることを望んでいる。このように歌詞とメイの生き様がマッチし、ドラマ視聴者の心をつなぎ涙が溢れてくるようなドラマチックな気持ちにさせた。

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