家政夫のナギサさん(わたナギ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『家政夫のナギサさん』とは、ソルマーレ編集部少女漫画レーベル『恋するソワレ』で連載の四ツ原フリコによるハートフルラブコメディ。製薬会社の医薬情報担当者(MR)として熱心に働く28才独身キャリアウーマンが、突然現れたおじさん家政夫との関係に振り回されるさまを描く。家政夫として働く男性を登場させることで「家事は女性がやるべき」という固定観念を外し、家事は雑用ではなく、整理能力や、料理は創造性や技術力など、様々な能力を要する仕事であり「女性だけでなく誰がやっても良い仕事」だと家事の認識を変えさせた。

『家政夫のナギサさん』の概要

『家政夫のナギサさん』とは、四ツ原フリコによるハートフルラブコメディ漫画である。NTTソルマーレが運営する電子書籍配信サイト『コミックシーモア』内の少女漫画レーベル「恋するソワレ」で2016年8月19日から配信連載している。製薬会社の医薬情報担当者(MR)の主人公メイが帰宅すると、なぜか自宅にいた男性から「お風呂になさいますか? ご飯にされますか? それとも…」 というお約束のセリフを投げかけられた。それは、突如雇う事になってしまった「オヤジの家政夫」ナギサであった。 20代女性の家に、生真面目で無愛想でいつも眉間にシワ寄せてるオヤジ家政夫がいることがどうしても我慢できず、メイは怒り心頭。しかし、仕事熱心なあまりに不健康かつ散らかった部屋が、ナギサのおかげで日に日に健康的な体になり、整頓された清潔感のある部屋となっていく。少しずつ二人に奇妙な友情が芽生え始める。そして日を重ねたことでわかってきたナギサの不可解な行動の原因が、ナギサの悲しい過去の経験からメイを同じ目に合わせたくないとの思いからだったことを知り、次第に愛情へと発展していく。仕事熱心なキャリアウーマンのメイと、「お母さん力」の高いナギサの、チグハグな二人が織り成すストーリーだ。2020年7月から、多部未華子主演『私の家政夫ナギサさん』としてテレビドラマ化。キャッチコピーは「おじさん、とっ散らかった私のココロもキレイにして!」。『わたナギ』と呼ばれ、最高視聴率19.6%を叩き出した。男女を問わず好感を得ている主演多部未華子の自然体の演技の影響もあるが、原作のような熱心に仕事をする女性が増え、それを支える包容力があり女性的な家事を完璧にこなす年上の男性が、現代女性から高い支持があった。世間からは、家政夫のナギサさんをイケてるオジさん「イケおじ」と呼び、ただ年齢を重ねているだけのおじさんではなく、見た目だけでなく人生経験も豊富で内面も魅力的なおじさんが現代女性から注目されていることを浮き彫りにさせた。

『家政夫のナギサさん』のあらすじ・ストーリー

家政夫のナギサがやってくる

主人公の相原メイは製薬会社のMR(医薬情報担当者)として、男性社員にも負けずに働き成績トップのキャリアウーマンである。仕事熱心なあまり家事は苦手で部屋は荒れ放題で不衛生、そして料理もできないため不健康な生活を送っていた。仕事命で結婚には程遠い28歳である。ある日メイが帰宅すると、エプロン姿の見知らぬおじさんが自分のブラジャーを持ち立っていた。メイに「お風呂になさいますか?ごはんにされますか?それとも…」とたずねる彼はスーパー家政夫の鴫野ナギサだ。生活能力の無いメイを見かねたメイの妹・ユイが独断で雇った家政夫だった。半ば強引にナギサを雇うことになったメイ。ナギサは強面で堅物そうに見える中年男性なのだが、家政夫としての仕事は超一流だった。メイが汚した部屋をたった一日で片付けてしまう腕前である。仕事一筋で家事を顧みないメイは、ナギサに「なんで家政夫なんかやってるんですか?」と訊ねる。メイには家事は女の仕事でつまらない仕事という固定観念があったからだ。ナギサの「小さい頃『お母さん』になりたかったんです」という答えを聞いたメイは、自分も子供の頃にナギサと同様「お母さん」になりたいという夢を持っていたことを思い出すのだった。 メイは、帰宅すると明るく清潔で温かくいい匂いがする、そんな家庭に憧れていたのだった。

ナギサへの信頼

ある日男性社員から、メイが仕事ができるのは枕営業をしているからではと嫌味を言われ、やけ酒を飲み帰宅する。そこにはナギサと、明るく清潔で温かくいい匂いがする家が迎えてくれた。 荒れていたメイは、帰ろうとするナギサの手を掴み「お母さん」として一緒にいることを求め、いつの間にか安心して眠りにつく。メイが眠りから覚めると、ベッドの下にナギサが寝ており驚愕する。何もなかったか自分の服や布団を確認していると、ナギサに「酒を飲むなら信用できる人がそばにいる時にした方がいいのと、帰り道に1人で歩きながら飲むのは控えた方がいい」と忠告される。昨夜のことを思い出し「お母さん行かないで」と言う自分の恥ずかしい姿を見られたメイは、ナギサの仕事は受け入れつつも、彼の存在を遠ざけるようになる。 そのことに気づいたナギサは、ユイに相談した。ユイはナギサほど条件が合って仕事ができる人は他にいなく、メイの家政夫であり続けてほしかったため、メイを家に呼び話し合う。そこでメイが仕事一筋になり男嫌いになってしまった原因はメイとユイの母親にあることが語られる。メイの母親は、仕事は出来たが男性社会で満足に認められなかった苦い経験から、娘たちには男性に負けない教育を与えた。しかし、母自身はお芝居やクラシックを聴きに行き、食事は出来合いやレトルトだったため、メイが憧れたあたたかい家庭とは反対の家庭だったのだ。 そんな家庭でメイとユイはどこか寂しさを感じながら育った。ユイは大学在学中に授かり婚により大学を中退。母はそんなことで人生をダメにするなんてと落胆し、ユイの結婚式にも参加せず、未だに母とユイの溝は深いままだ。ユイは、メイ一人に母親の期待が全部かかってしまったことをずっと心配していた。母親が敷いたレールの上で一人頑張る姉の姿を心配し、ナギサを雇ったのだった。母親の教育によって、仕事一筋、男性嫌いになったメイがナギサを遠ざける理由は、男性であるということを意識したからだった。 しかしユイは、ナギサは家庭や家族の大切さを知っている人だと、メイを説得する。心の奥底では家庭の温かさを求めていたメイに、その言葉は響き、再びナギサを受け入れていくようになる。その矢先に、メイは自分の仕事の成績が落ちていることに動揺する。メイは男性に負けずトップの成績でなければならないと焦り、「やはり無駄なことに時間を使う暇なんてなかった」とナギサに再び辛く当たろうとする。そんな時、突然メイの母親が訪ねて来たのだ。「こちらどなた様?いつから付き合っているの?」と笑顔で聞いてくる母親に否定し、ユイと同じ家政夫だと伝える。するとユイを良く思わない母親が不機嫌になり、不穏な空気を察したナギサは帰って行った。明朝、母親の期待に応えるべく徹夜で勉強したメイは、母親の目の前で倒れてしまう。母親が慌てる中、ナギサからの着信を受ける。電話口で、メイの体調よりもナギサの仕事のことを気にする母親に対してナギサは一喝、メイのもとに駆けつけようとする。病院では寝不足からくる発熱とストレスが原因だと診断される。家に着きメイをベットに寝かせ、雑炊を作ろうとするナギサ。自分がしてあげられることはないし、珍しくあなたに心を開いているからと帰ろうとする母親に、ナギサは酔っ払った時に「行かないでお母さん」と言っていたメイを思い出す。ナギサは、例え家事ができなくても、料理ができなくても、家政夫の自分ではなく、本物の母親が必要だと語り、母親と一緒にお粥を作る。メイは「そばにお母さんがいてくれるから今日のお粥が今まで食べた中で一番美味しい」と喜ぶ。母親はナギサのことを良い人だと褒め「ああいう人と結婚したいわ」と言われ焦るメイだった。

ナギサのMR時代

ナギサのおかげで、相川家が家族らしい関係を持つようになった。ユイや母親もいつのまにかメイの部屋に集まり、ナギサの料理で温かい一家団欒を感じる。メイは家政夫のナギサを信頼するようになり、ナギサ本人の事が気になるようになる。自分は恥ずかしいことも知られているのに、ナギサの事は全く知らない事にも歯がゆさを感じ、メイが色々問いかけると、翌日ナギサは履歴書を持参。そこでナギサの前職がメイと同じMRで、さらに自分の会社以上の大企業に勤めていた過去が明らかになり驚愕するメイ。やりがいがあり給料も良いMRの大企業を辞めてまで、どうして家政夫になったのかという疑問に、ナギサの口から多くは語られない。翌日、靴を磨きに行ったナギサの鞄から大きな着信音が鳴り、メイは音を止めようと慌てて鞄の中身をひっくり返してしまう。その中に、2年前の日付の女性物の手帳を見つけナギサに返すと、ナギサは今まで見たことのないような深刻そうな顔でその手帳を見つめていた。そんな中、メイの仕事が多忙になり、帰宅がどんどん遅くなっていく。心配するナギサは深夜にもかかわらず、家に帰らずにメイの帰宅を待っていた。ヘトヘトに帰宅し、「待たず帰ってくれていい」と言うメイに、ナギサは「メイさんのことが心配なんです」と執拗に心配する。心配も度を越して時間外までいようとするのは過保護すぎるとメイは文句を言い、どうしてそんなに世話を焼きたがるのかとナギサを強く非難する。ナギサの過保護には、メイと同じMR時代の苦い経験が影響しての事だった。次の日、険悪なムードは続いていたが仕方なくナギサに頼んで、契約先の病院に書類を届けてもらったメイは、その病院に居合わせた若い女性「箸尾さん」がナギサさんの過去に関係していることを突き止める。真実を問い詰めるべく、メイはナギサの自宅に押しかけ「助けに来たのではなくあくまで弱みを握るんです」と迫るメイに観念したナギサは過去を話し出す。母親が病気を患い少しでも助けたいとの気持ちでMRに転職したこと、箸尾はMR時代に面倒を見ていた後輩だということ、母親の死後ナギサの業務を請け負い多忙を極めた箸尾のSOSに気づけず、交通事故を起こした彼女はうつ病と診断され会社を辞めてしまった事を打ち明けた。 メイのことを執拗なまでに心配する理由は、メイの仕事への責任感と激務をこなす姿が、箸尾と重なってしまうからだった。手帳は箸尾が落としていったもので、ナギサから教わった仕事のイロハがびっしりと書かれていた。母親の容態が悪化していたことにも気づかず、慕ってくれていた箸尾の状態にも気づかずにいた自分は、人の為に生きたいと言いながら何もできなかった過去を忘れないため、自分への戒めとして手帳を持ち続けていたのだった。ナギサは病院で箸尾を見かけた時、うつ病はまだ治っていないのだと思い、自分ばかりが新天地でいい思いをしていていいのかと感じていた。まだ過去を引きずるナギサを見かねたメイは、箸尾を電話で呼びつけた。箸尾とナギサが2人で話した方が良いと思い、メイは帰ろうとしたが、帰ってはだめだと必死になるナギサを見て、頭をぽんっと撫で一緒にいると伝える。お互いに謝罪し合うナギサと箸尾。メイは箸尾に「今、幸せですか?」と尋ねると箸尾は意外にも「幸せです」とはっきり答えた。 実は箸尾は会社を辞めた後妊娠していることを知り、子供の為に自分を大事にしなければと病と立ち向かっていたのだ。ナギサは箸尾が未だに精神科に通院していると思っていのだが、子どもが保育園に入り病院で働くことなったので書類を取りに行っていたところに2人と出会ったのだった。箸尾が幸せを掴んだことを知り、涙を流すナギサだった。

年の差婚へ

メイのおかげで過去の自分を許すことができたナギサの中には、以前とは違うメイへの思いが芽生え始める。ナギサは、メイに初めはメイのブラジャーのサイズなんて興味がなかったけれど、最近少し気になっていることを白状する。親子の間だけではなく、男女間でも「お母さん」と呼ぶ関係がある、と意味深な言葉を残し買い物に出かけようとするナギサに、それは結婚という意味だと理解したメイは勢いで、「結婚しますか」と提案し、ナギサは了承する。 勢いで結婚することになり、結婚前のお試しということで同棲することになったメイとナギサ。メイにとっても、ナギサはいつの間にか男性として意識する存在に変わっていたのだった。何気ないナギサの行動や仕草に、男性らしさを感じ動揺するメイ。結婚するために、お互いの働き方や金銭の管理など今後の話をしようとナギサに言われ話し合うメイだったが、子供を産むかどうかの話から「子供を作る過程」の事が浮かびしどろもどろになったメイは寝ると言って部屋にこもった。翌日、メイの緊張や困惑を感じたナギサは心配する。メイはナギサへの思いを初恋だと自覚し、真面目に話し合いたいと思っていたのだが、現状維持というぬるま湯に浸かり現実と向き合わない日が続いたある日、「勝手な都合ですがやはりこの度の結婚の話はなかったことにさせてください」とナギサが頭を下げてきたのだった。ナギサはお互いに頭を冷やし改めて話し合いましょうと告げ、出て行ってしまう。それから10日が経ったメイの部屋は、見事なゴミ屋敷に戻っていた。ベットに横になっていたメイに小さい紙袋があたり、中身を見るとそこには指輪が入っていた。それを見て急ぎナギサの家に向かったメイは、なぜ結婚をやめると言ったのか、指輪を突き付けて理由を説明するように迫った。観念したナギサは、理由を語り出す。先日健康診断がありナギサは要精密検査を言い渡されてしまった。再検査の結果は問題なかったのだが、ナギサとメイの年の差を改めて考え、介護や病気でメイの将来を潰してしまう可能性が高いことを感じて恐ろしくなったのだった。芯の強いメイが、そんなものに負けないと言うことも分かっていたからこそ、そんな女性を留めてはいけないとナギサは思っていた。しかし、長年の心の荷物を簡単に降ろしてくれたメイを、手放してはならない女性だと思ったと正直に語る。ナギサが倒れても家事や介護をうまく出来ないかもしれない、その時はプロに助けてもらいましょうと笑うメイの頬にナギサは手をそっと添えた。その後帰宅したメイに、数日でごみ屋敷に戻った部屋の掃除とゴミだしを手伝うように言いながら、家政夫ではなく夫としててきぱきと働くナギサだった。

『家政夫のナギサさん』の登場人物・キャラクター

相原メイ(あいはら メイ/演:多部未華子)

製薬会社のMRとして多忙な日々をおくる28歳キャリアウーマン。自他共に認める負けず嫌いで、恋愛や結婚よりキャリア重視。営業の成績はいつもトップ、「私仕事できるんで!」と言い放つ気が強い自信家だが、実は誰よりも勉強し日々精進する努力家。しかし、子どものころの夢は「お母さん」と可愛らしい一面も持ち合わせている。その一方で、幼少期に母親が家庭的でなかった事に複雑な気持ちを抱いている。仕事に入れ込むあまり、家事をおろそかにしすぎてるのを見かねた妹に、家政夫を送られてしまい生活が一変する。

鴫野ナギサ(しぎの ナギサ/演:大森南朋)

家事代行サービス業者に勤めるスーパー家政夫である。掃除、洗濯、料理は昔から得意で、すべて完璧にこなす。依頼者に最適な空間作りをモットーにしている。表面的な仕事だけでなく依頼者の愚痴を聞く等、堅物そうな見た目とは裏腹に女子力が異常に高い。家政夫としての仕事に誇りを持っており、プロ意識をもって仕事をしている。実は家政夫の前はメイと同じくMRをしていた経験があるが、仕事に苦しむ後輩に気づかず救えなかった自責の念から退職。今も心に傷を負っている。小さい頃からの変わらぬ夢は「お母さん」という変わった願望を持つ。

ユイ(演: 趣里)

右コマ中央が相原ユイ。

メイの妹。鴫野ナギサと同じハウスキーピングの会社でパートとして働いている。大学1年のときにデキ婚して大学を中退したことで母親に勘当された、一児の母である。仕事だけではなく、あたたかい家庭を持つ幸せをメイにも感じてほしいと思っている。いつも働き過ぎなメイの様子と汚部屋を見かね心配し、ナギサをメイの家の家政夫として独断で雇った人物。

メイの母(演:草刈民代)

左下がメイの母。

有能であったが仕事をさせてもらえず見合い結婚させられたため、娘2人には「男に負けないエリート」となるように厳しく育てる。潔癖気味で家はきれいにしていたが、家庭的な母親ではなかった。そのためメイもユイもお母さんらしい愛情に飢えていた。勘当したユイとは仲違いしたままだが、一流企業で働くメイのことは認め今でもいい関係が続いている。

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