ノー・ガンズ・ライフの名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『ノー・ガンズ・ライフ』とは、カラスマタスクによって「ウルトラジャンプ」で連載されたSF漫画作品である。本作は読みきりを2回経て、2014年に連載が開始された。
主人公は、作中で「拡張者」と呼ばれるサイボーグ、乾十三(いぬいじゅうぞう)。十三は、街で「処理屋」というトラブルシューターを営んでおり、頭頂部が拳銃になっているという、かなり奇抜な見た目のキャラクターである。
古臭い探偵小説のような物語である本作では、鉄の塊のような、武骨な男の言うハードボイルドなセリフが印象的である。

第3巻出典

拡張者対策局の局長であるオリビエの父親は軍警察であった。10年前、オリビエが士官学校に合格した頃、ノーズスコットの拡張技術研究施設で、捕虜の扱いに対して違法性があるという通報があり、オリビエの父はノーズスコットに向かった。そして、オリビエの父は暴走したヘイデン・ゴンドリーの手によって、死体となって戻ってきた。
10年後、ゴンドリーは脱走し、再び暴走してかつての同僚である復興庁の高官を殺害し、そしてもう一人の同僚である、初の全身拡張者メガ・アームド斎時定に狙いをつけた。しかし、ゴンドリーは十三とオリビエの部下・クローネンによって再び逮捕された。
その後、ゴンドリーが目を覚ますと、彼は自分が戦場にいると錯覚し、うわごとで自分の部隊や戦況のことを聞き、そしてまた意識を失った。そのゴンドリーの様子を見た時定は、自分の拡張体に武器を仕込み、「ゴンドリーに10年前の真相を語られるわけにはいかない」と言って、クローネンに不意打ちを食らわせた。時定はゴンドリーの口を封じようとし、事件に関わろうとするクローネン、十三を始末しようとしたのだ。生身のクローネンは一発で倒れ、十三は応戦するものの、時定の全身に装着された武器に翻弄され、タバコの鎮静剤が切れて暴走してしまう。
全ての黒幕は時定だった。彼はかつての同僚だった男からノーズスコットの研究所で起きた事件について脅迫を受けていたため、その男を殺害してしまったのである。そして、時定は事件の隠蔽ためにある組織に協力を仰いだ。組織はハルモニエの複製品を使ってゴンドリーを操り、犯人として仕立て上げたのだ。その組織こそベリューレンであった。

スキを見て逃亡しようとした時定の前にオリビエが現れた。オリビエは時定が独り言で言った、「ゴンドリーをけしかけて、研究所に査察に来た役人達を始末した」という言葉を聞き、時定が自分の父達を殺した黒幕だと気付いた。10年前、時定はノーズスコットの研究所で行われている非道な実験を隠蔽するために、査察に来た軍警察を暴走したゴンドリーに始末させたのだ。
怒りに燃えたオリビエは、暴走した十三に思わず時定を「殺して」と頼んだ。しかし、十三は時定に向かって振り下ろした拳を外してしまう。十三は事件の犯人を生きたまま連れ戻して欲しいというオリビエの最初の依頼に答えたのだ。
その姿を見たオリビエは、「人を取り締まる役目にある者は決して個人的な動機で権力を振るってはいけない」という父の信念を思い出し、「父は大義と言う取り留めないもののために己のささやかな幸せを犠牲にするような愚かで……けれども心の奥底からこの国の平和を願う強い男だった 」と時定に言った。

3巻に出てきた回想シーンによると、オリビエは十年前、士官学校に入学したとあるので、現在は少なくとも20代後半。その年齢で公共機関の局長を勤めているので大変な才女であることが分かる。
その彼女の父親は軍警察であった。軍警察とは憲兵とも言われている存在で、軍内部における規律と秩序を守り、軍隊の犯罪の取り締まりを行う機関である。しかし、その役割上憲兵は同胞から快く思われていない。回想シーンでもオリビエはそのことで父に苦言を呈していたが、父は誰かがやらなければならないことと言って、その職務を全うしていた。

オリビエはそんな父のことを心の奥では尊敬していた。そして父が、ノーズスコットで行われた違法な実験を隠蔽するために殺されたと知り、怒りに燃えた。黒幕であった時定に殺意さえ抱いたが、暴走した十三が最後まで依頼人の願いを果たそうとするその姿に父と重ねたのか、オリビエは父の信念を思い出し、自分自身の大義を仰々しく口にする時定のことを「虚ろで矮小な犯罪者」と言い捨てた。
この場面で興味深いのは、時定の顔である。全身が拡張体になっている時定は、頭部も拡張体になっており、顔のデザインは常に微笑んでいるようだが、十三と戦っている間に殴られて悪鬼のような形に変形していた。それは、普段の時定は笑みを絶やさない紳士のようだが、実は鬼のような恐ろしい本性を隠し持っているという事を暗示しているようである。

クローネン・フォン・ヴォルフの名言・名セリフ/名シーン・名場面

クローネン・フォン・ヴォルフ

オリビエの部下で、EMSの実行班の班長。拡張者の動力伝達系に針を打ち込んで、動きを封じる技術を持つ。職務に忠実だが、神経質で融通の利かない男であり、上司であるオリビエの命令を無視して行動することもある。

十三とは犬猿の仲で、会うたびに口喧嘩が絶えない。

「いいか、この車は大戦前の年代物で、ここまでの状態の物は他には存在しない お前達拡張者のように何でも代用品があると思っている奴らには、その価値は理解出来んだろうがな」

第2巻出典

十三はオリビエに依頼されて、EMSから脱走し、殺人事件を起した過剰拡張者ゴンドリーを捜査していた。十三は被害者の1人である復興庁の高官フィリップ・ルカレの屋敷を捜査し、部屋の中にあった写真から、ゴンドリーが殺していたのは戦時中配属されていた自分の部隊の仲間であったことを知った。そして、初の全身拡張者でゴンドリーの同胞だった、メガ・アームド斎時定を次の標的にするのではないかと推察した。十三の言葉に従い、クローネンは十三と行動をともにすることになった。
時定の下にはクローネンの車で行くことになったが、その車は年代物のスポーツカーで、車に入った十三がタバコを吸おうとすると、クローネンは車に匂いがつくと言って、有無を言わさずにタバコを放り捨てた。そして十三に「いいか、この車は大戦前の年代物で、ここまでの状態の物は他には存在しない お前達拡張者のように何でも代用品があると思っている奴らには、その価値は理解出来んだろうがな」と言って険悪な眼差しを向けた。

クローネンは、少年漫画でいう所の主人公(十三)のライバルキャラで、拡張者の動力伝達系に針を打ち込んで、拡張体の動きを封じる特殊技能を持っており、並みの拡張者であれば対等以上に渡り合うことができる。
拡張者を嫌っており、十三とは犬猿の仲であるが、時には協力しあうこともある。それでも彼に敵意を消し去ることは無く、「お前が悪行に手を染めるなら、命に変えても捕らえてみせる」とまで言い放っている。十三とは反目しているが、己の職務を命がけで全うする姿など、どこか2人は似た一面を持っている。
ストイックな性格のクローネンだが、車に対してだけは並みならぬこだわりを持っており、彼の個性の一旦が分かる興味深い場面である。名言にはクローネンの車への思い入れが分かる一方、拡張者に対する嫌悪も込められている。

コルトの名言・名セリフ/名シーン・名場面

コルト

移民の少年。家族を養うために、非正規の拡張処理を受けて、建設現場で働いている。手癖が悪く、よく物を盗むが、根は快活で、家族を思いやる優しい心根の持ち主である。
メアリーを先生(メディコ)と呼んでいることから、スペイン系の移民のようである。
わずかな間に鉄朗と心を通わすが、悲しい最後を迎えてしまう。

「ならお前がオレの家族に言ってみろよっ 奴らを殺すのは悪いことだからお前達は我慢して死んでくれってさあ!!!」

第3巻出典

ある日、鉄朗はメアリーに自分の手足に取り付けた拡張体の調整をしてもらっていた。そんな時に大家のクリスティーナが道端に拡張者の少年が倒れていると言ってきた。少年の名はコルト。移民の少年で、病弱の母に代わって幼い妹二人を養うべく、手足を拡張体にして建設現場で働いていた少年で、以前に同じように道で倒れていた所をメアリーが助けたことがあった。コルトの拡張体は、違法なやり方で処置を施されたために、負担が大きく道端で倒れてしまったのである。
意識を取り戻したコルトは、メアリーに代金代わりに珍しい手の拡張体を渡して立ち去ったが、その際、補助脳を沈静させる薬を盗んで行った。
それを目の当たりにした鉄朗は、ハルモニエで彼の動きを一時的に封じて取り返そうとしたが、鉄朗のハルモニエの力に無邪気に驚くコルトは鉄朗を仕事に誘う。鉄朗がコルトから伝えられた場所にメアリーを伴って来ると、コルトがベリューレンの私設列車に爆破テロを行おうとしていた。
「人を殺した金で家族を養うつもりか」と言って止めようとした鉄朗にコルトは言った。「ならお前がオレの家族に言ってみろよっ 奴らを殺すのは悪いことだからお前達は我慢して死んでくれってさあ!!!」
その言葉を聞いた鉄朗は、黙り込んでしまった。

本作の舞台となっている街では、拡張者だけでなくコルトのような移民も存在している。彼らの社会的待遇は良いとは言えず、街では拡張体でないと就けない仕事もあるようなので、コルトのように非正規の拡張処理を受けて仕事にありつくしかなかった。そんな時、ベリューレンが新型歩行補助用の拡張体の被験体となれば拡張体を無料で提供してくれると言ったので、コルトの母親は被験者となったが、補助脳との相性が合わず、神経をやられて寝たきりとなってしまう。
ベリューレンはお互いの了承の上での事と言い、コルト達に補償を出さなかった。コルトには母の手術代と妹達を養うための金が必要だった。そんな時にスピッツベルゲンから、ベリューレンの役員の乗る私設車両を爆破するという仕事を貰ったのだ。ベリューレンへの復讐心も合わさって、コルトは車両を爆破しようとしたが、ベリューレンの私設兵に粛清されかかってしまう。間一髪のところで鉄朗がコルトを救い出したが、彼の体は限界に達していた。

現実の世界でも、社会的弱者がテロや犯罪に走ってしまう例は数多くある。その多くの理由は貧困によるものであったり、社会に対する不満によるものである。彼らの境遇を自己責任という者も多いが、コルトのように、移民や未成年というだけで職につけなかったパターンもある。
コルトの言葉には、テロに加担するしか手段を見出すことが出来ない社会的弱者の悲哀が込められている。

ベリューレンの私設兵の攻撃を受けて、致命傷を負ったコルトは、鉄朗のハルモニエの助力でどうにか拡張体を動かして、家族の待っているアパートの近くにたどり着き、最後はメアリーと鉄朗に看取られて息を引き取った。

コルトの死は、鉄朗の心に深い悲しみを植えつけることとなった。

ペッパーの名言・名セリフ/名シーン・名場面

ペッパー

ベリューレンのお抱えの処理屋で、ガンスレイブユニットの1人であるセブンのハンズ。粗暴な言動が目立つ少女で、ゴンドリーの事件で十三を見てから、彼に執着する。
小柄な体に合わず、長柄のバトルアックスを武器とする。
アレルギー体質なのか、硝煙の匂いを嗅ぐと、くしゃみが出てしまう。

「印刷された言葉は“物”になる “物”は手にとって自分の“所有物”に出来る」

第4巻出典

警備局の依頼で、スピッツベルゲンのテロリストを捕獲した十三が自分の事務所に戻ると、見知らぬ2人組が事務所に居た。1人は十三のデスクにふんぞり返っている荒っぽい少女。もう1人は十三と同じガンスレイブユニットの拡張者であった。ただし、十三がリボルバーであるのに対し、この拡張者の頭部はオートである。少女の名はペッパー、拡張者はセブンという名前であった。
ペッパーは右手を拡張体に変えていた。その腕は、ガンスレイブユニットの制御を解除できる専用デバイスで、彼女はガンスレイブユニットのパートナーであるハンズであった。
2人はベリューレンのお抱えの処理屋であり、ゴンドリーをハルモニエの複製品を使って操り、事件を起こしていた張本人であった。
事の発端は、メガアームド斎時定が戦時中の元同僚からノーズスコットの事件で脅迫され、そのために元同僚を思わず殺してしまったことにあった。時定と裏で繋がっているベリューレンは、彼の犯行を揉み消すために、ペッパー達に事件の処理を依頼したのであった。この一件で十三を目撃したペッパーは、彼に興味を持ったために、十三の事務所に侵入したのだ。

事務所を眺め回したペッパーは、部屋に物があまり置かれていないことに呆れたが、デスクの上に本が置いてあるのを見て、「あたし本が好きだな」と呟き、「印刷された言葉は「物」になる、「物」は手にとって自分の「所有物」に出来る 」と言った。

見るからに荒くれものに見えるペッパーであるが、本が好きであったり、所有物に対する哲学的な考え方をする彼女の意外な一面を表したセリフである。

ペッパーは孤児で、ベリューレンの実験体として買われた。住む場所は借り物、自分の持ち物は何も無く、「セブン」と名付けた蜘蛛だけが心の拠り所であったが、その蜘蛛も別の孤児の元に行ってしまった。自分の所有物を持ったことの無い彼女は、次第に自分自身の存在が希薄になってきていた。そんな彼女に運命の転機が訪れた。拡張体との適合性の低さから、廃棄処分寸前だった彼女に最後のチャンスが与えられた。それは、ガンスレイブユニットの制御システムであるハンズの移植手術に耐えて、ベリューレンが唯一所持するガンスレイブユニットの7番機(後のセブン)を制御下に置くというものであった。
ペッパーは精神面が不安定であるために誰にも懐くことの無かったセブンを自分の物とするべく、自分の血を口移しで与え、強引に手なずけた。そして、ハンズの移植手術に耐えて、セブンを自分の所有物としたのである。

ペッパーは、自分自身の存在の希薄さを解消するための何かを心の奥底で求めていた。そのために、所有欲が人一倍強い少女となってしまったのだ。淡々と放つ言葉の中にも、物を所有することに執念を燃やす彼女の心が反映されている。

「唾つーけた♪」

第4巻出典

ペッパーは十三のことを気に入り、己の所有物にしたいと思って十三の事務所に相棒のセブンと供に侵入した。そして十三に、「あんたの持ち主はどこ?」と聞いた。彼女は十三にもハンズがいると思っていたのだ。そして、十三を強引にねじ伏せて自分の物にするために、セブンの体に備わっているガンスレイブユニットを解き放った。セブンの猛攻に、ハンズのいない十三はどんどん押されていき、とうとう左腕を破壊されてしまう。
満身創痍となった十三だが、なおもペッパーの所有物になることを拒んだ。十三が自分の信念を貫こうとする姿を見て、ペッパーはますます十三のことが欲しくなり、持っていた斧でさらなる攻撃を加えようとした。そこへ鉄朗が立ちふさがり、セブンをハルモニエを使って操り、ペッパーの斧を掴ませた。
騒ぎが大きくなり、ペッパーはその場を離れようとするが、その前に十三の顔を舐め「唾つーけた♪ 」と言って立ち去っていった。

ペッパーは自分の物と決めた物はマーキングをして自分の所有物であることの証をつける癖があるようである。彼女の所有欲の高さが現れている場面であり、ペッパーは第6巻の回想シーンでセブンにも自分の血を付けて同じ事をやっていた。
所有物に関する彼女の並みならぬ執念を表した行為とセリフだが、はっきり言って品がいいとは言えない。名言ならぬ迷言である。

セブンの名言・名セリフ/名シーン・名場面

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